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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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工事担当の代表取締役の、経理担当の代表取締役に対する監視義務違反について、第三者に対する損害賠償責任が肯定されたケース

目次

事実関係

A社は、上下水道給排水設備工事の請負等を業とする会社でした。Y1およびY2は、いずれもA社の代表取締役であり、Y1は経理面を、Y2は工事面を担当していました。

A社は、本件各手形振出しの当時、経済不況の影響を受けて、工事の受注が著しく減少し、負債が重なり経営状態が悪化しており、従業員への給料の支払いも難しい状況にありました。

Y1は、A社の営業資金として300万円の融資をB公庫に依頼し、その実現までのつなぎ資金としてCに金策を依頼して、Cに本件各手形を交付しました。

ところが、CはD社に金融を得させるためにD社に本件各手形を交付し、D社はXに同手形の裏書譲渡をして割引きを受けました。この割引金はD社の営業資金として費消され、結局A社にはまったく入金がなされませんでした。

A社は昭和50年11月下旬に倒産し、同年12月から翌年1月までを満期日とする本件各手形はいずれも不渡りとなりました。

これにより、Xは本件各手形金合計額相当の約378万円の損害を被りました。そこで、Xは、Y1・Y2に対し、商法旧266条ノ3第1項に基づき、損害賠償を求める訴えを提起しました。

判旨

裁判所は、Y1・Y2ともに、重大な過失により代表取締役としての任務を懈怠したとして、その責任を肯定しました。

Y2の責任が肯定されたポイント

本件手形振出しは、従業員への給料の支払いも難しいくらいに経営状態が悪化した状況下で行われました。

しかし、こうした状況下にもかかわらず、Y2は経理面をY1に任せて何ら意を用いませんでした。その結果、Y2は、Y1による本件手形振出しを看過し、防止することができませんでした。

以上のことから、裁判所は、Y2の責任を肯定しました。

コメント

本件では、経理担当の代表取締役であったY1の支払見込みのない手形振出しについての任務懈怠責任に加え、工事担当でY1とともに代表取締役の地位にあったY2のY1の業務執行に対する監視義務違反が問われています。

本判決は、Y2がY1による手形振出しを知らなかったとしても、A社の代表取締役としてY1の業務執行を「監視警戒しその違法行為を未然に防止すべき義務がある」として、Y2の責任を肯定しました。

本判決の立場によれば、複数の代表取締役の間で役割分担が定められている場合であっても、代表取締役は他の代表取締役の担当する業務執行を監視警戒しなければならないと解されます。

さらに、他の代表取締役による違法行為を知らなかっただけでは免責されないという厳しい判断がなされることになるでしょう。

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