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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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有限会社法30条ノ3第1項(取締役の対第三者責任)に関し、他の取締役に業務を任せていた有限会社の代表取締役の職務懈怠と、第三者の被った損害との間に相当因果関係がないとされたケース

目次

事実関係

Aは自ら溶接材料販売業の経営を行ってきましたが、会社組織として経営することを考えるようになりました。

そこでAは、有限会社Bを設立しましたが、対外的信用を得るために、当時別会社の代表取締役を務めていたYの承諾を得てYを名目だけの代表取締役に就任させました。

また、自らは取締役としてYから代表取締役の職印を預かり、専務取締役と称してYの包括授権の下、B社経営を行い、業務を独断専行してきました。

しかし、B社は資金繰りに窮し、融通手形による資金操作を行った末に倒産し破産してしまいました。

そこで、B社の債権者であるXは、B社が倒産したのは、Aの放漫杜撰な経営が原因であり、Aに経営を一任してAに対する監視義務を怠ったYには、代表取締役の職務を行うにつき重大な過失があると主張して、有限会社法30条ノ3第1項の責任を追及しました。

第1審ではXの主張が認められましたが、控訴審ではYの責任が否定されたため、Xが上告しました。

判旨

最高裁は、「代表取締役は、その地位および権限の重要性に鑑み、ひろく会社業務の全般にわたって意を用いるべき義務を負い、少なくとも、他の代表取締役その他の者に会社業務の一切を任せきりとし、その業務執行に何等意を用いることなく、ついにはそれらの者の不正行為ないし任務懈怠行為を看過するに至るような場合には、自らもまた悪意または重大な過失により任務を怠ったものと解するべき」としてYの任務懈怠を認めました。

しかし、当該任務懈怠とXの主張する損害との間に相当因果関係がないとして、Xの上告を棄却しました。

Yの監視義務違反が肯定されたポイント

本件のAは、対外的信用を得るために、Yを名目上の代表取締役に就任させていました。

Yは、経営の実権を包括的にAに授権し、自らB社の経営に関与したことはなく、AがB社の業務を独断専行していました。

以上のことから、最高裁は、Yの監視義務違反を肯定しました。

コメント

本判決は、YがAにB社の経営の実権を包括的に授権し、自ら経営に関与することなくAに独断専行を許していた点等から、Yの任務懈怠自体は認めています。

しかし、Yの被監視者であり、Xに対し本来責任を負うべき立場であるAの、故意または重過失による任務懈怠行為が証拠上認定できないとし、このような場合、Yの任務懈怠行為をXの主張する損害との間に相当因果関係がないと判断しました。

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