【新担保法制】集合債権譲渡担保権の明文化とその影響

集合債権譲渡担保権は、複数の債権(売掛金など)をまとめて担保にする制度です。個別債権が入れ替わっても担保権は継続し、将来発生する債権も対象に含められます。
企業が事業を継続しながら継続的な資金調達を行う際の重要な担保手段として活用されています。
令和7年5月に成立した「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(譲渡担保新法)では、従来の判例法理で認められていた集合債権譲渡担保が明文化されました。
これにより、法的安定性が向上し、中小企業の資金調達がより円滑になることが期待されています。
今回の記事では、明文化された集合債権譲渡担保権の内容、取立て権、担保価値維持義務について詳しく解説します。事業者の方が資金調達を検討される際の参考にしてください。
集合債権譲渡担保権とは
ここでは、集合債権譲渡担保権の基本概念と法的位置づけについて説明します。
集合債権譲渡担保権の定義
基本概念
集合債権譲渡担保権とは、現在存在する債権だけでなく、将来発生する債権も含めて一括して担保の目的とする権利です。
従来、この制度は判例法理によって認められていましたが、明文の規定はありませんでした。 企業の資金調達において重要な役割を果たしていたにもかかわらず、法的根拠が不明確だったため、実務上の不安定さがありました。
法的位置づけ
譲渡担保新法では、この点を明文化しました。 具体的には、集合債権譲渡担保権を定義する要素として、まず債権特定範囲があります。
これは譲渡担保債権の発生年月日の始期および終期、発生原因その他の事項を指定することによって、将来において属する債権を含むものとして定められた範囲です。
次に、特定範囲所属債権は債権特定範囲によって特定された債権を指します。
そして、集合債権譲渡担保契約は特定範囲所属債権を一体として目的とする債権譲渡担保契約であり、この契約による担保権を集合債権譲渡担保権と呼びます(法53条)。
これにより、将来債権を含む集合的な債権担保設定の法的根拠が明確になりました。

集合債権譲渡担保権の取立権
ここでは、集合債権譲渡担保権における取立権の仕組みと実務上の重要性について説明します。
取立権の明文化
従来の実務慣行
これまでの実務では、担保権の実行前は、担保権設定者が担保の目的となっている債権を自ら取り立てて、事業の運転資金にあてることを許容していました。
この慣行により、企業は担保を提供しながらも、日常の資金繰りに支障をきたすことなく事業を継続できました。
新法での規定
譲渡担保新法はこの実務慣行を明文化しました(法53条1項)。
集合債権譲渡担保契約において、債権特定範囲に属する債権を取り立てることができる旨の定めをしたときは、設定者は当該債権を取り立てることができると規定されています。
担保価値維持義務と実務への影響
ここでは、集合債権譲渡担保権における担保価値維持義務と実務上の影響について説明します。
担保価値維持義務の内容
義務の具体的内容
譲渡担保新法では、動産の場合の規定(法43条)が引用され、集合債権譲渡担保権の設定者は、特定範囲所属債権の一定の価値を維持する義務を負います(法54条1項)。
具体的には、集合債権譲渡担保権設定者は正当な理由がある場合を除き、債権特定範囲に属する債権の補充その他の方法によって、特定範囲所属債権の一体としての価値を集合債権譲渡担保権者を害しない範囲で減少しないように維持する義務を負います。
実務上の注意点
この義務により、設定者は債権の回収後は新たな債権を発生させて担保価値を維持すること、担保価値を著しく減少させる行為を避けることに注意する必要があります。
まとめ
令和7年6月6日に成立した譲渡担保新法により、集合債権譲渡担保権が明文化されます。
新法のポイントは、集合債権譲渡担保権の定義の明確化、将来債権を含む一括担保設定の法的根拠の確立、設定者の取立て権の明文化、担保価値維持義務の規定です。
これにより、集合債権譲渡担保権の法的地位が安定し、実務上の予測可能性が高まることが期待されます。

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