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所有権留保にも適用される!動産譲渡担保権の準用規定を徹底解説

分割払いで商品を購入する際、代金完済まで売主が所有権を留保する所有権留保契約は、実務で広く利用されています。
譲渡担保新法では、所有権留保契約に対して動産譲渡担保契約の規定を広範囲に準用する仕組みが導入されました。

これにより、所有権留保についても譲渡担保権と同様のルールが適用され、実行手続や破産手続における取扱いが明確になります。
ただし、すべての規定が準用されるわけではなく、所有権留保の性質に合わない規定は除外されています。

ここでは、第111条の準用規定の内容と実務への影響について説明します。

目次

所有権留保契約の基本

ここでは、所有権留保契約の基本的な仕組みについて説明します。

所有権留保契約とは、動産の売買契約などで、代金債務を担保するため、債務の完済まで売主が動産の所有権を留保する契約です。

具体例として、家電量販店で冷蔵庫を分割払いで購入する場合があります。
この場合、冷蔵庫の所有権は代金完済まで売主に留保され、買主は代金を完済して初めて所有権を取得します。

所有権留保には、商品の代金債務のみを担保する狭義の所有権留保と、他の債務も担保する拡大された所有権留保があります。
新法では、これらの所有権留保について、動産譲渡担保権の規定を広く準用することで、法的な取扱いを明確にしました。

第111条の準用規定の概要

ここでは、第111条による準用規定の範囲について説明します。

準用される規定の範囲

第111条第1項は、譲渡担保新法の第2章の規定のうち、動産譲渡担保契約に係る部分を留保所有権について準用すると定めています。

ただし、次の規定は準用から除外されています。

  • 第31条第1項(牽連性のある金銭債務のみを担保するための動産の譲渡の対抗力)
  • 第38条(転動産譲渡担保)
  • 第1節第3款(債権譲渡担保契約の効力)
  • 第1節第4款(その他の財産を目的とする譲渡担保契約の効力)
  • 第2節第2款(債権譲渡担保権の実行)
  • 第2節第3款(その他の財産を目的とする譲渡担保権の実行)

これらは、所有権留保が動産のみを対象とすることから除外されています。

準用されない規定

債権譲渡担保やその他の財産に関する規定は、所有権留保が動産のみを対象とする制度であることから、性質上準用できません。

主要な準用規定の内容

ここでは、所有権留保に準用される主要な規定について説明します。

根所有権留保契約の規定

第13条から第26条までの根譲渡担保契約に関する規定が準用されます。

根所有権留保契約とは、一定の範囲に属する不特定の債権を担保するために締結される所有権留保契約です。継続的な取引関係において、将来発生する複数の債務をまとめて担保する場合に利用されます。

準用により、極度額の定め、元本確定期日、元本確定事由などの規定が所有権留保についても適用されます。

集合動産所有権留保契約の規定

第40条から第45条までの集合動産譲渡担保契約に関する規定が準用されます。

集合動産所有権留保契約とは、将来において属する動産を含む範囲によって特定された動産を一体として目的とする所有権留保契約です。

たとえば、自動車販売店が在庫車両全体について所有権留保を設定する場合が該当します。在庫車両は入れ替わりますが、一定の範囲に属する動産全体に所有権留保の効力が及びます。

準用により、集合動産の処分権限、価値維持義務、物上代位の制限などの規定が適用されます。

所有権留保の実行手続

第60条から第91条までの動産譲渡担保権の実行に関する規定が準用されます。

これにより、所有権留保についても以下の実行方法が利用できます。

  • 帰属清算方式(留保売主等が動産を取得し清算金を支払う方式)
  • 処分清算方式(第三者に譲渡して清算金を支払う方式)
  • 裁判所の関与する実行手続(引渡命令や保全処分)

実行手続の詳細なルールが準用されることで、留保買主等の権利保護が図られます。

破産手続等における取扱い

第97条から第108条までの破産手続等における譲渡担保権の取扱いに関する規定が準用されます。

留保買主等について破産手続や民事再生手続が開始された場合、留保売主等は別除権者として扱われます。
ただし、一定の制約を受けることになります。

集合動産所有権留保の場合、破産手続開始後は留保所有権の効力が制限され、新たに在庫に加わった動産には効力が及ばなくなります。

実務への影響

ここでは、第111条の準用規定が実務に与える影響について説明します。

所有権留保について動産譲渡担保権の規定が広く準用されることで、実務上の取扱いが大きく変わります。

まず、所有権留保の実行方法が法定され、清算手続のルールが明確になりました。
従来は判例法理に委ねられていた部分が、法律で明確に規定されたことになります。

次に、集合動産所有権留保の制度が法定されました。在庫商品などを対象とする所有権留保について、明確な法的根拠が与えられます。

さらに、破産手続等における取扱いが明確になりました。倒産手続における留保売主等の権利行使の範囲や制約が法定され、予測可能性が高まります。
ただし、第111条第2項により、留保所有権を譲渡担保の目的とすることも可能です。この場合、第38条の転動産譲渡担保に関する規定が準用されます。

まとめ

第111条は、所有権留保契約に対して動産譲渡担保契約の規定を広範囲に準用する規定です。

準用により、根所有権留保契約、集合動産所有権留保契約、実行手続、破産手続等における取扱いなど、動産譲渡担保権に関する詳細なルールが所有権留保にも適用されます。

ただし、債権譲渡担保その他の財産に関する規定は、所有権留保が動産のみを対象とすることから準用されません
また、牽連性のある金銭債務に関する規定は、第109条で独自に規定されているため除外されています。

この準用規定により、所有権留保の法的取扱いが明確になり、当事者の権利義務関係の予測可能性が大きく向上しました。
実務においては、準用される規定の内容を正確に理解し、適切に対応することが重要です。

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