【弁護士解説】荷主は要注意!2026年施行「特定運送委託」の新設で何が変わる?軽貨物ドライバーへの発注も対象に【令和8年施行・取適法】

2024年問題に揺れる物流業界に、さらなる大きな変革が訪れます。
長年、事業者間の取引を支えてきた「下請法」が大幅に改正され、「中小受託取引適正化法」として令和8年1月1日から施行されます。
この改正の最大のポイントが、「特定運送委託」の新設です。
これまで主に独占禁止法上の告示で規律されてきた荷主から運送事業者への運送委託が、より強制力の強い法律の直接の規制対象となります。本記事では、この改正で荷主として何をすべきか、弁護士が分かりやすく解説します。
なぜ今、法改正?~物流の持続可能性確保へ~
今回の法改正は、ドライバー不足や燃料費高騰といった物流業界の深刻な課題に対応するものです。荷主と運送事業者間の取引をより公正なものとし、物流の持続可能性を法的に確保することを目的としています。
「特定運送委託」とは?~対象となる取引を解説~
「特定運送委託」とは、簡単に言えば、荷主が自社の事業のために行う物品の運送を、他の事業者に委託する取引全般を指します。
この法律が適用されるかは、委託側(荷主)と受託側(運送事業者)の資本金または常時使用する従業員数で決まります。
取引当事者 | 資本金基準 | 又は | 従業員数基準 |
委託事業者(荷主など) | 3億円を超える | 300人を超える | |
中小受託事業者(運送事業者など) | 3億円以下(個人含む) | 300人以下(個人含む) |
従業員数基準が加わった点が重要です。これにより、資本金が小さくても従業員の多い大企業が、個人事業主である軽貨物ドライバーに委託する場合も規制対象となり、保護される事業者の範囲が大きく広がりました。
【重要】荷主に課される新たな義務と禁止事項
今回の改正で、荷主には従来のルールに加え、より厳格な義務が課されます。
新たに課される4つの義務
- 給付内容等の明示義務
報酬額や業務内容を記載した書面(メール等も可)を直ちに交付する義務。 - 支払期日を定める義務
報酬は、業務完了日から60日以内のできる限り短い期間内で支払う義務。 - 書類の作成・保存義務
取引記録を2年間保存する義務。 - 遅延利息の支払義務
支払遅延や不当な減額に対し、年率14.6%の遅延利息を支払う義務。
新たに追加される2つの禁止事項
- 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
運送事業者からの価格交渉の求めに対し、正当な理由なく協議に応じないこと。 - 手形払いの原則禁止
報酬を手形で支払うことは原則禁止。
これらの義務違反には、公正取引委員会による勧告・公表や、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
個人事業主(フリーランス)への委託で特に注意すべき点
委託先が個人事業主のドライバーなどの場合、彼らは「フリーランス保護新法」の対象でもあるため、注意が必要です。両方の法律が適用されうる場合、荷主は両方の法律の良いとこ取りをした、より手厚い義務を負うとご理解ください。
具体的には、改正下請法とフリーランス保護新法、それぞれの法律にしかない義務も重ねて遵守する必要があります。
改正下請法に基づく義務の例
遅延利息の支払い、取引記録の作成・保存
フリーランス保護新法に基づく義務の例
育児介護等への配慮、ハラスメント相談窓口の設置
委託先が個人事業主である場合、これらの複合的な義務に対応しなければなりません。
企業が今から準備すべきこと
施行は令和8年1月からですが、準備は早期に着手すべきです。
- 契約書・発注書の雛形の見直し
法律の要件を満たすフォーマットへ改訂する。 - 発注・支払プロセスの確認
書面の即時交付や60日以内支払いを遵守できる体制を構築する。 - 社内規程の整備と周知
発注担当者向けのマニュアル作成や研修を実施する。 - 委託先の管理
委託先が個人事業主か法人かを把握し、適用される法律を確認する。
今回の法改正は、物流に関わるすべての事業者にとって影響の大きいものです。

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