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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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【受注者向け】これって「不当な経済上の利益提供要請」?下請事業者が知っておくべきNGケーススタディ

「決算が厳しいから協力してほしいと、協賛金を“お願い”された」

「うちの関連会社の商品を買ってくれないか、と遠回しに要求された」

「委託された作業とは別に、店舗の応援を無償で頼まれた」

親事業者との取引において、このような“お願い”や“要請”を受け、対応に困った経験はありませんか。

親事業者との関係を考えると断りにくく、つい応じてしまいがちですが、これらの行為は下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)で禁止されている「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があります。

この禁止行為は、その内容が多岐にわたるため、判断が難しいケースも少なくありません。この記事では、下請事業者の皆様が不当な要求から身を守れるよう、具体的なNGケーススタディを交えながら「不当な経済上の利益の提供要請」について詳しく解説します。

目次

下請法が禁じる「不当な経済上の利益の提供要請」とは?

下請法第4条第2項第3号は、親事業者が、自己のために、下請事業者に対して金銭、役務、その他の経済上の利益を不当に提供させることを禁止しています。

簡単に言えば、親事業者が下請事業者に対し、下請代金を支払うのとは別に、金銭の提供や無償でのサービスなどを不当に要求する行為を指します。

この規定は、親事業者がその優越的な地位を利用して、本来負担する必要のないコストや義務を下請事業者に押し付けることを防ぎ、下請事業者の利益を保護するために設けられています。たとえ下請事業者の合意があったとしても、その実態が不当であれば違反となるのが大きな特徴です。

ケーススタディで見る!典型的な違反事例

どのような行為が「不当な経済上の利益の提供要請」に当たるのか、公正取引委員会の資料などを基にした具体的なケーススタディをご紹介します。

ケース1:協賛金・協力金の要請

親事業者が、様々な名目で下請事業者に金銭の提供を要請するケースです。

  • 決算対策での協力要請 親事業者が「年度末の決算対策として、〇〇円協力してほしい」と要請し、下請事業者に協賛金を自社の銀行口座に振り込ませた。
  • 販売促進キャンペーンでの要請 親事業者が自社商品の販売促進キャンペーンを実施するにあたり、下請事業者に対し、その費用の一部として協賛金の提供を要請した。
  • レクリエーション費用への要請 親事業者が自社の社員のために行うレクリエーションの費用について、下請事業者に対して協賛金の提供を要請し、徴収した。

ケース2:無償での作業やサービスの提供要請

親事業者が、本来の委託内容に含まれない作業やサービスを、無償で提供させるケースです。

  • 取引と無関係な作業の強要 貨物運送を委託している親事業者が、委託した取引とは無関係の貨物の積み下ろし作業を、下請事業者に無償で手伝わせていた。
  • 店舗応援の強要 大規模小売業者が、プライベートブランド商品の製造を委託している下請事業者に対し、店舗の営業の手伝いのために従業員を無償で派遣させていた。
  • 返品送料の負担 親事業者の都合で商品を返品する際に、その送料を下請事業者に負担させていた。

ケース3:無償での知的財産権の譲渡要請

業務の過程で生じた権利などを、正当な対価を支払わずに親事業者に帰属させるケースです。

  • 図面の無償提供 親事業者が海外で金型を製造するため、それまで金型製造を委託していた下請事業者に対し、過去に納品された図面を無償で提供させていた。
  • 映像素材の無償譲渡 番組制作を委託している親事業者が、契約に基づき番組の知的財産権を譲り受けるだけでなく、番組で使用しなかった映像素材の知的財産権まで無償で譲渡させていた。

ケース4:型や治具の無償保管の強制

親事業者が所有する物品を、下請事業者に無償で管理させるケースです。

  • 長期間使用しない金型の保管 親事業者が、自社が所有する金型を下請事業者に貸与して部品を製造させていたが、その部品の発注を長期間行わないにもかかわらず、金型を無償で保管させていた。

「物の購入強制・役務の利用強制」との違いは?

「不当な経済上の利益の提供要請」と混同されやすいのが、同じく下請法で禁止されている「物の購入強制・役務の利用強制」です。

  • 不当な経済上の利益の提供要請(第4条第2項第3号) 親事業者が自己のために、下請事業者に金銭や役務などを提供させる行為です。 例:「協賛金を出してくれ」「無償で作業を手伝ってくれ」
  • 購入・利用強制(第4条第1項第6号) 親事業者が指定する物や役務を、正当な理由なく下請事業者に購入・利用させる行為です。 例:「うちの関連会社が販売している商品を買ってくれ」「指定の保険に入ってくれ」

両者は似ていますが、前者は親事業者が直接利益を得る形、後者は親事業者が指定する第三者などが利益を得る形、という違いがあります。どちらも優越的地位の濫用行為として厳しく規制されています。

「不当な」とはどう判断されるのか?

この禁止行為の条文には「不当に害してはならない」とあり、要請のすべてが直ちに違反となるわけではありません。

「不当」かどうかは、

  • 下請事業者に提供させる経済上の利益の内容
  • 提供させることによる下請事業者の不利益の程度
  • 要請の目的や態様

などを総合的に考慮して、ケースバイケースで判断されます。

下請事業者が任意に提供した場合でも、親事業者の優越的な地位を背景とした実質的な強制と認められれば、「不当」と判断される可能性は十分にあります。

もし不当な要求を受けたらどうすべきか?

親事業者から不当と思われる要求を受けた場合、その場で安易に承諾してはいけません。

  • 毅然と協議し、書面でのやり取りを求める まずは要求の根拠を尋ね、「認識の齟齬を避けるため」として書面での依頼を求めましょう。
  • 客観的な証拠を残す 交渉がこじれた場合に備え、メールのやり取り、議事録、電話の録音データなどの証拠を必ず保管してください。
  • 専門家や専門機関に相談する 当事者間での解決が難しい場合は、一人で抱え込まずに外部の窓口に相談することが重要です。
    • 公正取引委員会・中小企業庁:下請法違反の申告窓口です。
    • 下請かけこみ寺:無料で専門家のアドバイスやADR(裁判外紛争解決手続)を利用できます。
    • 弁護士:あなたの代理人として法的な観点から交渉を行い、具体的な金銭回収や将来の紛争予防までサポートします。

まとめ

親事業者による「不当な経済上の利益の提供要請」は、協賛金や無償サービスなど、様々な形で現れます。「お願い」や「協力依頼」という形をとるため、下請法違反であるとの認識がないまま、親事業者との関係を考えて応じてしまうケースも少なくありません。

しかし、こうした要求に応じることは、自社の経営を圧迫するだけでなく、不公正な取引慣行を助長することにもつながります。

「この要請は法的に問題ないだろうか?」と少しでも疑問に感じたら、決して一人で悩まないでください。当事務所では、下請法に関するトラブルについて、経験豊富な弁護士が親身に対応いたします。早期にご相談いただくことが、あなたの会社とビジネスを守るための最善の一手となります。

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