【発注者必読】知らないと危険!下請法が定める親事業者の11の禁止行為

下請取引において、発注者である親事業者は、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)により多くの義務を負い、また禁止されている行為があります。 前回は親事業者が守るべき4つの義務を解説しました。今回はその続編として、下請法が親事業者に課す11の禁止行為を解説します。
これらの禁止行為は、下請事業者との合意があっても、また親事業者に違法性の意識がなくとも違反となる可能性があります。法令遵守の徹底にお役立てください。
下請法における親事業者の禁止行為とは?
下請法における親事業者の禁止行為は、立場の弱い下請事業者を保護し、公正な取引環境を確保するために定められています。 親事業者がその優越的地位を利用して下請事業者に不利益を与えることを防ぐことが目的です。
重要なのは、これらの禁止行為は、たとえ下請事業者との合意があったとしても、また、親事業者に違法性の意識がなくても、下請法違反となる点です。
親事業者の11の禁止行為
受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
親事業者は、下請事業者に責任がないのに、発注した物品や情報成果物(以下「物品等」)の受領を拒否してはいけません 。発注取消や納期延期も該当する場合があります 。
- 具体例:親事業者の在庫過多を理由に、発注済みの商品の受領を拒否する 。
下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
親事業者は、物品等を受領した日から60日以内の定められた支払期日までに下請代金を支払わないといけません 。社内検査の遅れ等を理由に支払いを遅らせることはできません 。
- 具体例:社内検査に時間がかかったため、支払期日を過ぎて下請代金を支払う 。
下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
親事業者は、下請事業者に責任がないのに、発注時に定めた下請代金を発注後に減額してはいけません 。名目や金額、合意の有無を問わず禁止です 。
- 具体例:「予算が減った」等の理由で、一方的に下請代金から一定額を差し引く 。
返品の禁止(第4条第1項第4号)
親事業者は、下請事業者に責任がないのに、受領した物品等を返品してはいけません 。不良品の場合でも、受領後6か月を超える返品は問題となることがあります 。
- 具体例:親事業者の生産計画変更により不要となった部品を返品する 。
買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
親事業者は、通常支払われる対価より著しく低い額を下請代金として不当に定めてはいけません。下請代金は下請事業者と十分協議して決定する必要があります。
- 具体例:原材料価格高騰にもかかわらず、十分な協議なく一方的に単価を据え置く。
購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
親事業者は、正当な理由なく、下請事業者に対し自社指定の製品・サービス等を強制的に購入・利用させてはいけません 。
- 具体例:下請事業者に対し、親事業者やその関連会社が販売する商品の購入を要請する 。
報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
親事業者は、下請事業者が親事業者の違反行為を公正取引委員会等に知らせたことを理由に、取引数量削減等の不利益な取り扱いをしてはいけません 。
- 具体例:下請事業者が公正取引委員会に相談したことを理由に、発注量を減らす。
有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
親事業者は、有償支給した原材料等を用いた物品の下請代金の支払期日より早く、その原材料等の対価を下請代金から控除したり支払わせたりしてはいけません 。
- 具体例:下請事業者の加工期間を考慮せず、原材料支給後すぐにその対価を下請代金から差し引く。
割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
親事業者は、一般の金融機関で割引困難な手形(令和6年11月1日以降は手形期間60日超)を交付してはいけません 。
- 具体例:手形期間が65日の手形を下請代金の支払いとして交付する。
不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
親事業者は、自己のために、下請事業者に対し金銭や役務等を不当に提供させてはいけません 。協賛金や従業員派遣の強要などが該当します 。
- 具体例:決算対策として、下請事業者に協賛金の提供を要請する 。
不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第4条第2項第4号)
親事業者は、下請事業者に責任がないのに、発注取消や内容変更、受領後のやり直しをさせ、これに伴う費用を下請事業者に負担させてはいけません 。
- 具体例:親事業者の顧客都合による発注キャンセルで、下請事業者が負担した費用を支払わない。
禁止行為に違反するとどうなる?
親事業者がこれらの禁止行為を行うと、公正取引委員会から違反行為の取りやめや原状回復等を内容とする勧告を受けることがあります。勧告された場合、企業名や違反事実の概要等が公表され、社会的信用を大きく損なうおそれがあります。また、一部義務違反(3条書面の交付義務、5条書類の作成・保存義務)には50万円以下の罰金が科される可能性があります 。
まとめ:下請法違反のリスクを避けるために
下請法が定める親事業者の11の禁止行為は、公正な取引と健全な企業活動に不可欠なルールです。これらの禁止行為は、合意の有無や認識の有無にかかわらず適用されます。
自社の取引慣行が禁止行為に該当しないか定期的に確認することが重要です。判断に迷う場合や対応に不安がある場合は、速やかに弁護士などの専門家にご相談ください。法令遵守の徹底は、下請事業者との良好な関係を構築し、企業価値の向上とリスク回避に繋がります。