【発注者必読】下請法における親事業者が負う4つの義務とは?

下請取引を行う際、発注者である親事業者は、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)により様々な義務を負います。コンプライアンスが重視される現代、下請法の理解は不可欠です。
この記事では、親事業者が負うべき4つの基本的な義務について、具体的な内容や注意点をわかりやすく解説します。
下請法と親事業者の立場
下請法は、親事業者と下請事業者間の取引を公正にし、下請事業者の利益を保護することを目的としています。親事業者は、優越的立場から不当な行為を行わないよう、下請法で定められた義務を正確に理解し遵守する責任があります。
親事業者が負うべき4つの義務の概要
下請法は、親事業者に主に以下の4つの義務を課しています。これらを怠ると罰則の対象となるため注意が必要です。
- 発注書面の交付義務
- 支払期日を定める義務
- 書類の作成・保存義務
- 遅延利息の支払義務
以下で各義務を詳述します。
義務1:発注書面の交付義務(第3条)
親事業者は、下請事業者へ製造委託等をした場合、直ちに、発注内容を明確に記載した書面(3条書面)を交付しなければなりません。これは、口頭発注による契約内容の不明確さから生じるトラブルを防ぎ、下請事業者を保護するためです。
発注書面に記載すべき12の事項
発注書面には、原則として以下の事項を全て記載する必要があります 。
- 親事業者及び下請事業者の名称
- 委託した日
- 下請事業者の給付の内容
- 下請事業者の給付を受領する期日(納期)
- 下請事業者の給付を受領する場所
- 検査をする場合は、検査を完了する期日
- 下請代金の額(具体的な金額。正当な理由で記載できない場合は算定方法も可 )
- 下請代金の支払期日
- 手形を交付する場合の事項
- 一括決済方式で支払う場合の事項
- 電子記録債権で支払う場合の事項
- 原材料等を有償支給する場合はその品名、数量、対価等
交付のタイミングと例外
発注書面は発注後直ちに交付します。内容が未定で正当な理由がある場合は、その事項を記載せず当初書面を交付し、確定後速やかに補充書面を交付できます。支払方法等、共通の基本事項はあらかじめ書面通知すれば個々の発注書面への記載を省略できますが、発注書面にその旨を明記し関連付ける必要があります。
違反した場合
発注書面の交付義務違反は、親事業者(会社も含む)が50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
義務2:支払期日を定める義務(第2条の2)
支払期日の設定ルールと法定支払期日
親事業者は、下請代金の支払期日を、物品等を受領した日(役務提供の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内で定めなければなりません。支払期日を定めなかった場合は物品等を受領した日が、60日を超えて定めた場合は受領日から60日を経過した日の前日が、支払期日とみなされます。
義務3:書類の作成・保存義務(第5条)
記録すべき内容と保存期間
親事業者は、下請取引完了後、その取引に関する記録(給付内容、下請代金の額、支払状況など取引の経緯がわかる主要な事項)を書類として作成し、2年間保存しなければなりません。これは取引の透明性確保とトラブル解決のためです。
違反した場合
書類の作成・保存義務違反も、親事業者(会社も含む)が50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
義務4:遅延利息の支払義務(第4条の2)
支払遅延時のペナルティ
親事業者が支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、下請事業者に対し遅延利息を支払う義務があります。遅延利息は、物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から実際に支払う日までの期間について、未払金額に対し年率14.6%です。この利率は当事者間の合意よりも優先されます。
まとめ:親事業者が義務を遵守する重要性
親事業者が下請法の4つの義務を正確に理解し履行することは、下請事業者との公正な取引関係を築く上で不可欠です。 義務違反は罰金や勧告・公表だけでなく、企業の社会的信用を大きく損なうリスクも伴います。日々の取引でこれらの義務が果たされているか確認し、不明な点は弁護士などの専門家にご相談ください。下請法の遵守は、自社の企業価値を守り、持続的な成長を支える基盤となります。