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弁護士法人ネクスパート法律事務所

弁護士法人ネクスパート法律事務所は、中小企業の法務に強い法律事務所です。

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【弁護士解説】フリマアプリでトラブル!運営会社の責任は?

メルカリやヤフオクといったフリマアプリ、インターネットオークションは、個人間で手軽に売買できる便利なサービスです。しかし、「商品が届かない」「代金が支払われない」「偽物が送られてきた」といったユーザー間のトラブルも後を絶ちません。

このようなトラブルが発生した場合、取引相手と連絡が取れなくなってしまうと、泣き寝入りするしかないのでしょうか?サービスの運営会社(プラットフォーム事業者)に対して、何らかの責任を追及することはできないのでしょうか?

経済産業省が公表している「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、このようなユーザー間取引におけるプラットフォーム事業者の責任について、一定の考え方を示しています(I-8-1)。

本記事では、弁護士の視点から、この準則の内容に基づき、プラットフォーム事業者がどのような場合に責任を負う可能性があるのかを解説します。

出典:「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和7年2月版)
   電子商取引及び情報財取引等に関する準則について
   「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました|経済産業省

目次

プラットフォーム運営者の責任の原則

ここでは、ユーザー間取引におけるプラットフォーム運営者の基本的な法的立場について説明します。

結論から言うと、プラットフォーム事業者は、原則としてユーザー間の取引トラブルについて責任を負いません

多くのプラットフォーム事業者は、利用規約において「ユーザー間の取引には関与せず、責任を負わない」旨を定めています。法的に見ても、プラットフォーム事業者はあくまでユーザー同士が取引を行うための「場」やシステムを提供しているにすぎず、個々の取引の当事者ではないからです。

参考:メルカリ利用規約|メルカリ スマホでかんたん フリマアプリ
   サービス利用規約|Yahoo!オークション

取引はあくまでユーザー自身の責任において行われるものであり、相手方ユーザーの詐欺行為や契約不履行(商品未送付、代金未払い、不良品など)による損害について、プラットフォーム事業者に責任を問うことは原則としてできません。

プラットフォーム運営者が責任を負う可能性があるケース

ここでは、原則とは異なり、プラットフォーム運営者が例外的に責任を負う可能性がある具体的なケースについて説明します。

原則として責任を負わないプラットフォーム事業者ですが、以下のような例外的な場合には、ユーザーに対して損害賠償責任などを負う可能性があります。

例外①:取引に直接関与していなくても責任を負うケース

プラットフォーム事業者が個々の取引に直接関与していなくても、取引の「場」を提供する者としての注意義務を怠った場合には、責任を問われる可能性があります。

法令等に基づく措置を怠った場合

例えば、インターネットオークションにおいて、警察から特定の出品物(盗品等の疑いがあるもの)について競りの中止命令が出ているにもかかわらず、これを無視して競りを継続し、落札者が損害を被った場合(古物営業法第21条の7参照)。

消費者保護法上の要請への不対応

消費者庁長官等から、ユーザー(消費者)の利益を害するおそれのある出品(虚偽・誤認表示があり、販売業者も特定できないような場合)の停止等を要請されたにもかかわらず、正当な理由なく応じなかった結果、ユーザーに損害が生じた場合(取引DPF消費者保護法第4条)。

これらのケースでは、プラットフォーム事業者は、取引の場を提供する者として、違法行為や消費者被害の発生・拡大を防止するために取るべき措置を怠った(注意義務違反)として、損害賠償責任を負う可能性があります。

例外②:取引に実質的に関与している場合

プラットフォーム事業者が、単なる場の提供を超えて、ユーザー間の取引に実質的に関与していると評価される場合には、その関与の度合いに応じて責任を負う可能性が高まります。

出品代行

プラットフォーム事業者がユーザーから商品を送付してもらい、ユーザー名義で出品作業を代行し、手数料や報酬を得ている場合。この場合、事業者は出品物を直接確認できる立場にあるため、例えば偽ブランド品の出品に関与した場合には、買主に対して責任を負う可能性があります(古物営業法の規制対象となる可能性もあります)。

特定の売主・商品の推奨

単なる広告掲載を超えて、特定の売主の特集ページを設けて積極的に紹介したり、特定の出品物を「激安推奨品」などとして推奨したりした場合。このような推奨を信じて取引したユーザーに損害が生じた場合、推奨の態様によっては責任を負う可能性があります。

プラットフォーム事業者自身が売主となる場合

システム上、プラットフォーム事業者が売主として表示されている場合(たとえ売上金が実質的に出品ユーザーに帰属するとしても)、原則として売主としての契約責任を負います。

利用規約の免責条項は常に有効か?

ここでは、プラットフォーム事業者が利用規約で定めている免責条項の効力について説明します。

多くのプラットフォームの利用規約には、「ユーザー間の取引に関して一切責任を負わない」旨の免責条項が記載されています。

しかし、この免責条項も万能ではありません。特に、プラットフォーム事業者とユーザー(消費者)との契約には消費者契約法が適用される場合があります。

消費者契約法では、事業者の債務不履行(契約違反)や不法行為による損害賠償責任を完全に免除する条項や、事業者の故意・重過失による責任を一部免除する条項などは無効とされています(消費者契約法第8条)。

したがって、上記「例外②:取引に実質的に関与している場合」のように、プラットフォーム事業者が単なる場の提供者にとどまらず、取引に実質的に関与し、それによって何らかの義務(例えば、出品代行者としての注意義務など)を負っているにもかかわらず、利用規約で一切の責任を免除するとしている場合、その免責条項は消費者契約法により無効と判断される可能性があります。

まとめ

フリマアプリやネットオークションにおけるユーザー間トラブルについて、プラットフォーム事業者の責任は、原則として否定されます。利用者は基本的に自己責任で取引を行う必要があります。

しかし、プラットフォーム事業者が取引の場を提供する者としての注意義務を怠った場合や、取引に実質的に関与している場合には、例外的に責任を負う可能性があります。利用規約の免責条項も、消費者契約法などによって効力が制限される場合があります。

トラブルに遭ってしまった場合、まずは取引相手との解決を試みることが基本ですが、相手と連絡が取れない場合や、プラットフォーム事業者の関与が疑われる場合には、諦めずにプラットフォーム事業者の利用規約や具体的な関与の状況を確認し、弁護士に相談することをお勧めします。

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