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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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定型約款の規定が適用されない利用規約はどうなる?サイト利用規約の契約への組入れと、契約締結後の規約変更について

ウェブサイトを利用する際、「利用規約」への同意を求められることがよくあります。2020年4月施行の改正民法では、このような利用規約のうち一定の要件を満たすものを「定型約款」とし、個々の条項を読んでいなくても契約内容に組み入れるルールが定められました。(民法548条の2)
(法務省:約款(定型約款)に関する規定の新設)

しかし、すべての利用規約が定型約款にあたるわけではありません。では、定型約款に該当しない利用規約は、どのように扱われるのでしょうか?また、契約後に利用規約が変更された場合、その効力はどうなるのでしょうか?

経済産業省が改訂した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和7年2月版)では、この点に関する考え方が示されています(I-2-2)。

本記事では、弁護士の視点から、定型約款のルールが適用されないサイト利用規約の契約への組入れと、その後の変更について解説します。

出典:「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和7年2月版)
   電子商取引及び情報財取引等に関する準則について
   「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました|経済産業省

目次

定型約款ルールが適用されない場合とは

ここでは、サイト利用規約に民法の定型約款に関する規定(民法第548条の2~4)が適用されない主なケースについて説明します。

以下のいずれかに該当する場合、サイト利用規約には定型約款のルールは適用されません。

改正民法施行前(2020年4月1日より前)に契約が成立した場合

  • ただし、施行前に契約が成立していても、施行日以降に利用規約を変更する場合は、原則として定型約款の変更ルール(民法第548条の4)が適用されます(後述)。
  • 例外として、施行前に当事者の一方が定型約款ルールの適用を受けない旨を書面等で表示していた場合は、施行日以降も適用されません。

定型取引に該当しない場合

  • 定型約款は「定型取引」で用いられることが前提です。定型取引とは、不特定多数を相手とし、内容の画一性が双方にとって合理的な取引を指します。
  • 例えば、企業間のEDI(電子データ交換)による継続的な購買契約や、個別の交渉が前提となる業務委託契約などは、相手方の個性に着目する取引であり、定型取引に該当しない場合が多いと考えられます。このような取引の利用規約には、定型約款のルールは適用されません。

定型約款でない利用規約が契約に組み入れられる要件

ここでは、定型約款のルールが適用されない場合に、サイト利用規約が契約内容となるための要件について説明します。

定型約款に該当しないサイト利用規約でも、以下の要件を満たせば、利用者とサイト運営者との間の契約に組み入れられる(契約の一部となる)と考えられます。

  1. 契約関係の存在
    まず、利用者とサイト運営者の間に、ウェブサイトの利用や取引に関する何らかの契約関係が成立していることが前提です(単発の売買契約、継続的なサービス利用契約、複数の取引に共通する基本契約など)。
  2. 利用規約の適切な開示
    利用者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるよう、ウェブサイトに適切に掲載・開示されていることが必要です。
  3. 利用者による同意の認定
    利用者が、開示されているサイト利用規約に従って契約を締結することに同意していると客観的に認定できることが必要です。

具体的には、以下の場合に契約への組入れが認められると考えられます。

  • 利用規約への同意クリックが求められ、かつ利用規約が容易に閲覧できる状態で開示されている場合。
  • 同意クリックがなくとも、申込みボタン等の近くに利用規約へのリンクが明瞭に設置され、利用規約が取引条件であることが明確に告知されており、かつ利用規約が容易に閲覧できる状態で開示されている場合(インターネット取引が普及した現在では、このような告知・開示があれば、申込み行為をもって利用規約への同意があったと認定できることが多いと考えられます)。

逆に、ウェブサイトの目立たない場所に利用規約が掲載されているだけで、同意クリックも求められず、利用規約が取引条件であることが告知されていない場合は、契約への組入れは認められない可能性が高いです。

定型約款でない利用規約の変更と効力

ここでは、定型約款のルールが適用されないサイト利用規約が変更された場合に、既に成立している契約(特に継続的な契約)にどのような影響があるかを説明します。

民法の定型約款変更ルール(民法第548条の4)が適用されるか?

まず、サイト利用規約の変更に、民法の定型約款の変更ルール(民法第548条の4)が適用されるかを確認します。このルールが適用されれば、一定の要件(変更が利用者の一般の利益に適合する場合、または変更が合理的である場合など)を満たす限り、利用者の個別の同意なく変更後の規約が既存の契約にも適用されます。

改正民法施行日(2020年4月1日)以降に契約に組み入れられ、かつ定型取引に該当する場合

民法第548条の4が適用されます。

改正民法施行日前に契約に組み入れられたが、定型取引に該当し、かつ施行日以降に変更する場合

原則として民法第548条の4が適用されます。

上記以外の場合(変更が施行日前、反対の意思表示があった、定型取引でない等)

民法第548条の4は適用されません。

民法第548条の4が適用されない場合の規約変更

定型約款の変更ルールが適用されない場合、変更前の利用規約に基づいて既に成立している継続的な契約の内容を変更するには、原則として利用者の同意が必要です。

明示的な同意

利用者が変更後の利用規約に明確に同意すれば、変更後の規約が適用されます。

黙示的な同意

利用者による明示的な同意がなくとも、以下の要件を満たす場合には、黙示的に変更への同意があったと認定される可能性があります。

  • 事業者が利用規約の変更について利用者に十分に告知していること。
  • 利用者が変更内容を適切に確認できる状態で開示されていること。
  • 変更の告知後も、利用者が異議なくサイトの利用を継続していること。

ただし、黙示の同意の認定は慎重に行われるべきです。変更内容が利用者に与える影響の程度、変更の予測可能性、変更内容の合理性(法令対応やサービス改善など)といった点が考慮されると考えられます。

なお、改正民法施行前の裁判例には、利用者の個別の同意がなくとも、合理的な範囲であれば約款の変更を認めたものも存在します。(東京高判平成30年11月28日判時2425号20頁)

サイト運営者の留意点:変更履歴の保存

サイト運営者は、いつ、どのような内容の利用規約を掲載し、いつ、どのように変更したのかについて、履歴を記録・保存しておくことが重要です。万が一、適用される規約の内容について利用者と紛争になった場合、サイト運営者側が立証責任を負う可能性が高いためです。

まとめ

定型約款に該当しないサイト利用規約であっても、適切に開示され、利用者の同意があると認定できれば、契約内容として有効に組み入れられます。

しかし、その後の利用規約の変更を既存の契約に適用するには、原則として利用者の同意が必要です。定型約款の変更ルール(民法第548条の4)が適用されない場合は、黙示の同意が認められるケースもありますが、その認定は慎重に行われます。

事業者としては、利用規約の開示・告知方法や、変更時の利用者への通知・同意取得プロセスについて、準則の考え方を踏まえて適切に運用することが、紛争予防の観点から重要です。利用者としても、利用規約の内容や変更通知に注意を払う必要があります。

利用規約の効力や変更に関して疑問やトラブルが生じた場合は、弁護士にご相談ください。

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