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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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【弁護士解説】他人の動画の引用はどこまで許される?

目次

結論

結論として動画の引用が合法なのは、日本の著作権法が定める厳格な要件を満たした場合に限られます。

他人が作成した動画を、ご自身の動画やウェブサイト、SNSなどで使用したいと考える方は多いでしょう。日本の著作権法上、「引用」として認められる範囲であれば、著作権者の許諾なく他人の動画を利用することが可能です(著作権法第32条)。しかし、この「引用」の要件は非常に厳格であり、これを満たさない無断使用は著作権侵害にあたる深刻な違法行為となります。

「引用」として適法と認められるための要件

日本の著作権法に基づき、適法な引用と判断されるためには、一般的に以下の要件を全て満たす必要があります。

既に公表された著作物であること

引用の対象となる動画が、著作権者によって既に公開されている必要があります。

公正な慣行に合致すること

引用の方法が、社会的に認められている適切な方法である必要があります。

引用の目的上正当な範囲内であること

報道、批評、研究その他の正当な目的のために、必要とされる最小限の範囲での利用である必要があります。無目的に転載したり、自身のコンテンツの主な部分として使用したりすることは認められません。

自身の著作物と引用部分が明瞭に区別できること(明瞭区別性)

どこからどこまでが引用部分なのかが、ユーザーに明確に分かるように表示する必要があります(例:テロップ表示、引用元の明記など)。

自身の創作部分が主であり、引用部分が従であること(主従関係)

あくまで自身のコンテンツがメインであり、引用する動画はそれを補足するための補助的なものである必要があります。量的に、または質的に、引用部分が自身のコンテンツより目立ってしまうような利用は認められません。

出所を明示すること

引用元の動画のタイトル、著作者名、公開場所などを適切かつ分かりやすい方法で表示する必要があります。

これらの要件のうち一つでも欠けると、適法な引用とは認められず、著作権侵害となる可能性があります。

海外の動画を引用する場合の注意点

TikTokやYoutubeなどで、ほかの人がアップロードした動画を、自分の動画内で使いたい人も多いでしょう。

アメリカや韓国など海外の動画を日本国内で利用する際も、原則として日本の著作権法が適用されます。

まず、国際条約(ベルヌ条約など)により、海外の著作物も日本国内では日本の法律に基づいて保護されています。

確かに、アメリカの「フェアユース」など、著作権者の許可なく著作物を利用できる考え方も海外には存在します。しかし、このような考え方は、日本国内での著作物の利用には直接適用されません。あくまで日本の著作権法が定める「引用」の要件を満たす必要があります。

したがって、海外の動画だからといって日本のルールと異なる基準で利用できるわけではない点に注意が必要です。

動画に音楽が含まれている場合の注意点

引用したい動画にBGMや効果音として音楽が含まれている場合、これが最もリスクの高いケースの一つです。

動画という著作物とは別に、音楽(楽曲や音源)にも著作権や著作隣接権が存在します。動画の引用時に音楽も一緒に利用すると、これらの権利も侵害する可能性があります。

特に背景音楽など、動画のメインではない音楽は、たとえ引用の範囲内であったとしても、日本の「引用」の要件(引用の必然性など)を満たすことが難しい場合が多いです。自身のコンテンツでその音楽を引用として利用する必要性がないと判断されやすい傾向にあります。

 YouTubeなどの多くの動画プラットフォームでは、音楽に関する自動検出システムが高度に機能しています。権利者が音源を登録している場合、短時間の使用でも自動的に検出され、著作権侵害の申し立てが行われる可能性があります。これにより、動画の削除、収益化停止、アカウントへのペナルティといった措置を受けることがあります。これは、日本の法律上の引用要件を満たしているかに関わらず発生し得ます。

まとめ

他人の動画を利用することは、日本の著作権法上の「引用」の要件を全て満たした場合にのみ許される限定的な例外です。特に、海外の動画や音楽が含まれる動画の引用は、法的な判断がより複雑になり、プラットフォームの運用上のリスクも高まります。

安易な気持ちで他人の動画を使用することは避け、必ず日本の引用の要件を厳格に確認してください。少しでも不安がある場合や、引用の範囲を超える利用を検討する場合は、必ず著作権者から正式な許諾を得るか、著作権問題に詳しい弁護士に相談することを強くお勧めします。

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