【弁護士解説】Webマーケティング企業買収における法務DDの重要性

企業買収におけるデューデリジェンス(DD)は、買収対象企業の法的リスクを事前に精査する非常に重要なプロセスです。特にWebマーケティング企業は、デジタルビジネス特有のリスクに直面しているため、一般的な企業買収よりも複雑さが増します。広告に関する関連法令の遵守、データプライバシーの管理、知的財産の保護、多数の外部プラットフォームとの契約状況の確認など、法務DDで網羅すべき要素が多岐にわたります。弁護士が関与することで、これらのリスクを適切に把握し、企業買収をスムーズかつ安全に進めることが可能です。
Webマーケティング企業買収におけるデューデリジェンス(DD)の重要性
Webマーケティング企業の買収においては、他の業界とは異なる法務上の課題が浮上します。例えば、オンライン広告に関連する景表法、薬機法、医療法などの関連法令やガイドラインの遵守が求められます。
さらに、Webマーケティング企業は、SEOやデータ分析ツールに依存するビジネスモデルが主流であり、使用しているプラットフォームやツールのライセンス契約も重要です。これらの契約が適切に管理されていない場合、買収後に重大なリスクが表面化し、最悪の場合、事業の継続が困難になる可能性があります。これらの法的リスクを事前に特定し、買収価格の交渉や株式譲渡契約に特別補償条項を設けることで、リスクを最小限に抑えることが重要です。
Webマーケティング企業のDDでチェックすべきポイント
Webマーケティング企業に特有のリスクを考慮しながら、弁護士がチェックすべきポイントは多岐にわたります。本記事では、その中でも特に重要なポイントを解説します。
契約関係:デジタルプラットフォームやSEOツールの利用
多くのWebマーケティング企業は、GoogleやFacebook、Instagramなどのデジタルプラットフォームに大きく依存しています。それらのプラットフォームとの契約条件やサービス提供に関するライセンス条項を確認することで、将来的なリスクを軽減することができます。また、SEOツールの利用契約やサブスクリプション型のツールライセンスも見直す必要があります。これにより、ツールの利用停止や機能変更に際するビジネスへの影響を予防することができます。
広告:オンライン広告の適法性審査
Webマーケティング企業が扱うオンライン広告は、商材やサービスに応じて厳格な法令遵守が求められます。特に、景品表示法(景表法)、薬機法、医療法などの関連法規に従って広告が作成されていない場合、Webマーケティング会社自身が罰則を受けるリスクがあります。たとえば、健康食品を扱う場合、広告が医薬品的表記を行っていないかなど、詳細な審査が必要です。
このようなリスクを回避するためには、具体的な広告のチェックを行うことはもとより、企業が広告審査のプロセスを明確に定義し、定期的に監査を実施しているかを確認することが法務DDにおいて重要なポイントとなります。これにより、企業買収後に法的リスクが表面化することを防ぐことが可能です。
知的財産権の確認:デジタルマーケティングに特化した法務リスク
Webマーケティング企業のDDを行うに当たり、知的財産権の保護は重要なポイントの一つです。
特にWebマーケティングに関しては、オーナー経営者や会社独自のノウハウが蓄積しており、かかるノウハウに非常に高い価値があることが多いです。そのようなノウハウが内部で文書化されているか、適切な管理がされているか、また契約関係上、かかるノウハウが適切に保護される内容になっているかは重要なポイントになります。
例えば、SEOツールやコンテンツ制作に関する著作権、使用している商標が第三者のものを侵害していないか、自社に権利帰属がされているかなどについても重要なポイントとなります。かかる点に問題がある場合、訴訟リスクが高まり、買収後のビジネス運営に大きな障害をもたらす可能性があります。
また、Webマーケティング企業の契約書は、通常の企業と異なる独自のリスク要因を含んでおり、クライアントとの契約においては、成果報酬型の契約が多く見られるため、成果に関する定義や契約解除に関する取り決めが十分に明記されているかどうかを確認することが重要です。
労務:未払割増賃金の有無
Webマーケティング企業、その中でも特にスタートアップ企業においては、従業員との間で雇用契約ではなく、業務委託契約を締結していることがあります。かかる従業員が、労働法上の「労働者」に該当する場合には、雇用契約上の労働者と同様に時間外割増賃金が支払う必要があります。
時間外割増賃金については、請求権の消滅時効期間が3年とされているため(労働基準法第115条、第143条第3項)、割増賃金が多額にのぼる可能性もあります。
中には、インタビュー時に専門業務型裁量労働制を採用しており、時間外割増賃金が発生していない旨回答を受けることもありますが、専門業務型裁量労働制の適用範囲は相当限定的であることから、その点を含め精査する必要があります。
データ保護とプライバシー:個人情報保護法に基づく確認事項
Webマーケティング企業は、顧客データやユーザーデータを大量に取り扱います。そのため、個人情報保護法(日本では個人情報保護法、欧州ではGDPRなど)への対応が重要です。法務DDでは、個人情報保護法に則ったデータ保護のための内部体制が構築されているか、顧客から適切な同意を得ているか、またはデータの保管方法が安全であるかなどを精査します。これらの対応が不十分であれば、買収後に罰則や訴訟リスクを負う可能性があります。
企業買収における弁護士の役割の重要性
Webマーケティング企業には、デジタルプラットフォームやSEOツールに依存した特有の法務リスクが存在します。また、リモートワークやフリーランスの活用による労務問題も新たな課題として浮上しています。これらのリスクに対応するためには、弁護士が法務デューデリジェンスを通じて問題点を事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。
M&A後の法務リスクを軽減する弁護士のサポート
法務DDを実施することで、リスク管理に留まらず、買収後の企業統合を円滑に進めるための支援を受けることができます。ネクスパート法律事務所では、M&Aに豊富な経験を持つ弁護士がサポートします。ご相談は随時受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

弁護士に相談して早すぎることはありません
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弁護士 尾又比呂人 (第一東京弁護士会所属)