【弁護士解説】取締役の暴走を止めるには? 取締役の職務執行停止

株主総会で取締役を解任することができる
取締役が余計な支出をし、あるいは会社の信用を傷つけるような行為をしている場合、会社の利益を守るために取締役を解任する必要があります。株主総会で議決権の過半数の賛成を得ることができれば、取締役を解任することができます。
株主総会が適正に機能していれば暴走する取締役を解任することができますが、現実にはそうでない場合も多くあります。
暴走する取締役と友好的な株主が、過半数の議決権を持っているということもよくあります。そうなると、いくら取締役が暴走しているからといって、株主総会で取締役を解任することはできません。
訴訟で取締役の地位を失わせることができる ただし時間がかかる
取締役が不正行為をしたり、法令違反をしたりしているにもかかわらず、株主総会で取締役を解任できなかった場合、議決権の制限はあるものの、株主は取締役を解任することができます。
解任という手段でなくとも、そもそも取締役としての地位が無いことが確定すれば、その取締役は地位を失うため、解任したのと同じ効果を得ることができます。
取締役は株主総会決議で選任されるため、この株主総会決議に問題があったとして、株主総会決議の不存在・無効・取消しの訴えを提起することが考えられます。
決議が不存在・無効と確認され、または決議を取消すとの裁判が確定すれば、取締役は地位を失います。
なお、総会決議取消しの訴えは、株主総会決議の日から3ヶ月以内に訴えを提起しなければならない点に注意しましょう。
いずれの方法を採るにしても、裁判が確定するまで取締役は業務執行をすることができ、裁判の確定も時間がかかることがあります。
そうなると、取締役が不適切な行為をし続けることができてしまうのです。これではせっかく解任できたとしても、会社に損害が発生してしまいます。
取締役の職務執行停止の仮処分を利用して一旦取締役の業務執行を止める
仮処分には様々な種類があるのですが、取締役関係でいう仮処分は、裁判で求めている状態を一旦実現するということです。上のように裁判だけでは取締役は変わらず業務をすることができてしまいます。
これを避けるために職務執行停止の仮処分を使うと、その後取締役がした業務執行は無効なものとなるため、取締役が地位を失ったのと同じ状況を一旦達成することができます。
取締役の職務執行停止の仮処分ですが、いつでも認められるわけではありません。著しい損害を避けるために必要な場合にのみ認められます。
具体的には、取締役に経営能力がない場合、取締役が会社の重要な財産を自分のために流用しようとしている場合などです。
合わせて職務代行者選任の仮処分の申立てをすることもある
取締役の職務執行停止の仮処分をする際、必ず必要というわけではないですが、一緒に職務代行者選任の仮処分の申立てをすることがあります。これは、職務執行停止された取締役に代わり、会社の業務を臨時的に行う人を選ぶよう裁判所に申立てるものです。
職務執行を停止される取締役が代表取締役であった場合に申立てが行われることが実務上多いです。代行者は取締役と同じ権限を有するわけでなく、会社の日常的な業務しか行うことができない点には注意しましょう。
仮処分を申立てる際にはお金が必要になってきます。実現したいことと実現可能性などを検討して、どういう訴えを提起するか、仮処分を申立てるか考える必要があります。
また、裁判官をどのように説得するかも重要な課題となります。お困りの際は弁護士にご相談ください。