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弁護士法人ネクスパート法律事務所

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【新担保法制】代金完済まで所有権は売主に!所有権留保の新ルール明文化された所有権留保の概要

商品を分割払いで購入する際、代金を支払い終わるまで売主が所有権を持ち続ける仕組みがあります。
これが「所有権留保」です。

自動車をローンで購入したり、クレジットカードで家電を分割払いしたりする場合、実は法律上の所有権者は購入者ではありません。代金を完済するまで、売主や信販会社が所有権を持ち続けています。
この仕組みにより、売主や信販会社は代金回収を確保できます。

従来、所有権留保は法律に明文の規定がなく、判例によって認められてきました。
そのため、法的に不安定な部分がありました。しかし、譲渡担保新法により、所有権留保が明確に定義され、安定した制度として整備されました。

ここでは、所有権留保の基本的な仕組みと、新法でどのように規定されたのかを説明します。

目次

所有権留保とは

ここでは、所有権留保の基本的な仕組みについて説明します。

所有権留保の基本

所有権留保は、売買契約の中で使われる特約です。

商品を買主に引き渡しても、代金の支払いが完了するまで売主が所有権を持ち続ける仕組みを指します。
買主は商品を使用できますが、法律上の持ち主は売主のままです。

この仕組みにより、売主は代金を回収できない場合に商品を取り戻すことができます。買主が代金を支払えなくなったとき、売主は所有権に基づいて商品を引き上げることが可能です。

二者間と三者間の違い

所有権留保には、大きく分けて2つの形態があります。

二者間の形態

売主と買主の直接取引です。

買主が売主から商品を購入し、代金を分割で支払う約束をします。代金完済まで売主が所有権を持ち続けます。

三者間の形態

信販会社などが介在する取引です。

買主が信販会社に代金の立て替えを依頼します。信販会社は売主に代金を一括で支払います。その後、買主が信販会社への返済を完了するまで、信販会社が所有権を持ち続けます。

クレジットカードでの分割払いや自動車のオートローンが、この形態に該当します。

従来の問題点

所有権留保は、従来は法律に明文の規定がありませんでした。

判例(最判平21年3月10日第三小法廷・民集63巻3号385頁など)により認められてきた制度でしたが、法的な位置づけが不明確でした。
そのため、以下のような問題がありました。

  • 所有権留保の要件が明確でない
  • 実行方法に統一的なルールがない
  • 買主や第三者の権利保護が不十分

これらの問題を解決するため、譲渡担保新法で所有権留保が明文化されました。

新法での規定

ここでは、譲渡担保新法における所有権留保の規定について説明します。

所有権留保の明文化(第2条第16号)

譲渡担保新法の第2条第16号で、所有権留保が明確に定義されました。

この定義により、所有権留保の法的な位置づけが明確になり、安定した制度として運用できるようになりました。

定義は、二者間取引と三者間取引の2つの形態に分けて規定されています。

二者間取引(イ)

売主と買主が直接取引する形態です。

動産を売買する際、代金の支払いが完了するまで売主が所有権を持ち続ける契約を指します。
商品は買主に引き渡されますが、法律上の持ち主は売主のままという状態です。

ここでいう「動産」とは、土地や建物以外の物のことです。
ただし、建設機械など抵当権を設定できる特殊な動産は除かれます。

具体例

家電量販店で冷蔵庫を購入し、店舗独自の分割払いを利用する場合です。
冷蔵庫は購入者の自宅に配送されますが、代金を完済するまで家電量販店が所有権を持ち続けます。

三者間取引(ロ)

信販会社を挟んだ形態です。

買主が信販会社に代金の立て替えを依頼する形で取引します。具体的な流れは以下のとおりです。

  • 買主が商品を分割払いで購入したいと考え、信販会社に立て替えを依頼する
  • 信販会社は売主に代金を一括で支払う
  • 買主から信販会社への返済が完了するまで、信販会社が所有権を持つ

クレジットカードでの分割払いやオートローンが、この形態に該当します。

具体例

自動車販売店で車を購入し、オートローンを組む場合です。信販会社が販売店に代金を支払い、購入者は信販会社に分割で返済します。完済するまで信販会社が車の所有権を持ちます。

動産譲渡担保の規定の準用(第111条

第111条により、動産譲渡担保の規定が所有権留保にも準用されます。

これにより、所有権留保においても動産譲渡担保と同様のルールが適用されます。

この準用により、所有権留保の実行手続きが明確になり、買主の権利も適切に保護されることが期待されます。

まとめ

所有権留保は、代金完済まで売主または信販会社が所有権を持ち続ける仕組みです。

従来は判例により認められてきた制度でしたが、譲渡担保新法により明文化されました。第2条第16号で二者間取引と三者間取引の2つの形態が定義され、第111条により動産譲渡担保の規定が準用されます。

これにより、所有権留保の法的な位置づけが明確になり、売主・買主・信販会社の権利関係が安定しました。特に、実行手続きや清算義務などのルールが整備されたことで、トラブルを防ぎやすくなりました。

クレジットカードでの分割払いやオートローンなど、私たちの日常生活で広く利用されている仕組みが、より安定した法的基盤の上で運用されることになります。

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