そのデザイン、真似してませんか?意匠登録がなくても違法になる「形態模倣商品の提供行為」とは【不正競争防止法】

市場でヒットしている商品を見て、「このユニークな形、うちでもそっくりな商品を作れば売れるかもしれない。意匠登録もされていないようだし…」と考えたことはありませんか?
実は、たとえ意匠権や特許権がなくても、他人の商品のデザイン(形態)をそっくり真似たいわゆる「デッドコピー品」を販売する行為は、「形態模倣商品の提供行為」として不正競争防止法で禁止されています。
これは、企業の創造的な努力を守り、公正な競争を促進するための重要なルールです。
今回は、この「形態模倣」について、その目的から具体的な要件、そして注意すべき例外まで解説します。
なぜこのルールがあるのか?~開発者の努力を無駄にしないために~
新しい商品を開発するには、デザインの考案、設計、試作品の製作、マーケティングなど、多大な資金、労力、時間が投下されます。しかし、複写・複製技術が発達した現代では、第三者がその完成品を安易に模倣し、開発コストを全くかけずに市場に参入することが容易になっています。
このような「フリーライド(ただ乗り)」を放置すると、先行開発者は投下した資本を回収できず、新たな商品開発への意欲が阻害されてしまいます。
そこで不正競争防止法は、意匠登録の有無にかかわらず、他人の商品の形態を模倣した商品を市場に提供する行為そのものを「不正競争」と位置付け、先行開発者に簡易迅速な保護手段を与えることとしたのです。
「形態模倣」と判断されるための2つのポイント
法律上の「模倣」と判断されるには、2つの重要な要件を満たす必要があります。
- 依拠(いきょ)していること
他人の商品の形態を知った上で、それを手本として商品を作り出したことが必要です。
もし、全く偶然に、独自のデザイン開発の結果として同じような形態の商品が生まれたとしても、それは「模倣」にはあたりません。
- 実質的に同一であること
作り出された商品の形態が、元の商品の形態と「実質的に同一」であると評価される必要があります。
これは、商品を並べて細かく比較するのではなく、全体的な印象(全体観察)で判断されます。
わずかな変更を加えただけで、全体として酷似していると評価できる場合には、「実質的に同一」と見なされます。
最も重要!「3年間」という保護期間
この形態模倣の規制には、他の知的財産権と大きく異なる、極めて重要な例外規定があります。
それは、保護される期間が限定されている点です。
保護期間:その商品が「日本国内において最初に販売された日から起算して3年」
この規定の趣旨は、先行開発者の投下資本の回収を一定期間保護することにあり、意匠権のように長期的な独占権を与えるものではありません。
つまり、発売から3年が経過した商品の形態は、原則として誰でも自由に模倣・利用できるパブリックドメインの状態となります。ただし、その商品の形態が他の法律(例えば、商標法や著作権法)で保護されている場合は、別途その法律による規制を受けます。
その他の主な適用除外
3年の期間以外にも、以下のような場合は形態模倣の規制対象外となります。
- 商品の機能を確保するために不可欠な形態
その形態でなければ商品の機能が発揮できない、という必然的な形状は保護されません。
例えば、特定のコンセントに差し込むためのプラグの形状などがこれにあたります。
- ありふれた形態
同種の商品がごく一般的に有している、ありふれたデザインは保護の対象外です。
- 善意の取得者による譲渡等
模倣品であることを知らずに(かつ、知らないことに重大な過失なく)仕入れた者が、それを販売等する行為は保護されます。
新しい動き:デジタル空間での模倣も対象に
令和5年の法改正により、この形態模倣の規制はデジタル空間にも及びました。
具体的には、他人の商品の形態を模倣した商品を「電気通信回線を通じて提供する」行為も規制対象となったのです。
これにより、例えば、現実世界で販売されている特徴的なデザインの家具を無断で模倣し、メタバース空間で利用できるデジタルアイテムとして販売するような行為も、この法律の対象となります。
違反した場合の措置
民事上の措置
差止請求(第3条)
商品の譲渡、貸渡し、輸出入等の停止や、在庫品の廃棄を請求される可能性があります。
損害賠償請求(第4条)
被った損害の賠償を請求される可能性があります。
刑事上の措置
刑事罰(第21条)
「不正の利益を得る目的」で形態模倣品の提供行為を行った場合、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(またはその両方)が科される可能性があります。法人には3億円以下の罰金刑が定められています。
おわりに
商品のデザインは、顧客を引きつける重要な資産です。意匠登録をしていなくても、発売から3年間は不正競争防止法によってデッドコピーから強力に保護されます。
新商品を開発・販売する際には、他社の商品の発売時期やデザインを十分に調査し、意図せず「形態模倣」に該当してしまわないよう、細心の注意を払う必要があります。

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