【経営者向け】カスハラ対策:企業が実践すべき具体的措置【東京都ガイドライン対応】

顧客などからの迷惑行為、いわゆる「カスタマー・ハラスメント(カスハラ)」は、従業員の心身を疲弊させ、企業の生産性や評判を著しく損なう深刻な問題です。
東京都もこの問題に対応するため、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」およびその具体的な「指針(ガイドライン)」(以下「本ガイドライン」)を策定しました。
本記事では、経営者の皆様がカスハラから従業員と会社を守るために、本ガイドラインに基づき企業が具体的に何をすべきか、そのポイントを分かりやすく解説します。
【参考】
・東京都カスタマー・ハラスメント防止条例:東京都
・カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針:東京都
・カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針:東京都(スライド)
なぜ企業はカスハラ対策が必須なのか?
ここでは、企業がカスハラ対策に取り組むべき理由を説明します。
企業がカスハラ対策に取り組むことは、社会的な要請であると同時に、法的な責務でもあります。
企業には、従業員が安全で健康に働ける環境を提供する安全配慮義務(労働契約法第5条)があります。
カスハラを放置すれば、この義務違反を問われ、損害賠償責任を負うリスクがあります。
さらに、対策を怠れば、
- 従業員の離職
- 生産性の低下
- 企業イメージの悪化
- 採用難
といった経営上の損失に繋がりかねません。カスハラ対策は、企業を守るための重要な経営課題です。
【実践編】企業が取り組むべきカスハラ防止13の具体的措置
ここでは、本ガイドラインが示す、企業が具体的に取り組むべき13の措置を、実践的なポイントに絞って解説します。
- カスハラ対策の基本方針・基本姿勢の明確化と社内外への周知
- 経営トップが「カスハラを許さず、従業員を守る」という強い意志を表明します。
- 就業規則にカスハラ禁止を明記し、社内研修やポスターで周知します。
- 企業のウェブサイトや店舗で、顧客にも企業の姿勢を伝えます。従業員に安心感を与えることが第一です。
- 自社従業員がカスハラを行わないための方針明確化と周知
- 従業員が取引先などに迷惑行為をしないよう、方針を明確にします。
- 懲戒規定に取引先へのハラスメント行為を盛り込み、研修で注意喚起します。企業は加害者にもなり得るという認識が重要です。
- 相談しやすい相談窓口の設置と周知
- 従業員が安心して相談できる窓口(内部・外部)を設置し、利用方法を徹底周知します。
- 電話、メール、匿名相談など、複数の相談手段を用意することが望ましいです。実効性のある窓口が鍵です。
- 相談に対する適切かつ柔軟な対応体制の整備
- 相談受付後の対応フロー(事実確認、対応策検討、フィードバックなど)を明確にします。
- 相談担当者向けマニュアルを作成し、関係部署との連携体制を整えます。迅速・適切な対応が求められます。
- 相談者・関係者のプライバシー保護と周知
- 相談内容や個人情報の保護を徹底する措置を講じ、その旨を従業員に周知します。
- 情報管理を徹底し、安心して相談できる環境を担保します。
- 相談などを理由とする不利益取扱いの禁止と周知
- カスハラ相談や調査協力を理由とした不利益な取扱い(解雇、降格など)を禁止する旨を就業規則に明記し、周知します。報復をおそれず相談できる環境が不可欠です。
- 発生時の初期対応方法・手順の作成と訓練
- 現場従業員向けの初期対応マニュアル(安全確保優先、記録方法、報告手順など)を作成します。
- ロールプレイングなどで定期的に訓練し、冷静な初期対応力を養います。
- 社内における報告・相談、指示・助言の連携体制構築
- 現場から上司、本社担当部署へのエスカレーションルールを明確にします。
- 顧問弁護士など外部専門家との連携ルートも確保しておきます。組織的な対応を目指します。
- 事実関係の正確な確認と公正な事案対応
- 客観的証拠に基づき事実確認を行い、社内基準に照らして公正に対応します。
- 企業に非があれば謝罪・適切な対応を、不当要求には毅然とした態度で臨みます。証拠に基づく判断が重要です。
- 従業員の安全確保措置
- カスハラ発生時は、従業員の身体的・精神的安全確保を最優先します。
- 避難場所の確保、複数名での対応、防犯設備の活用などを検討します。安全が何よりも優先です。
- 従業員の心身への配慮(メンタルヘルスケア)
- 産業医やカウンセラーと連携し、被害従業員のメンタルヘルスケア体制を整備します。
- 相談しやすい雰囲気づくりと、上司による適切な声かけも重要です。早期のケアが回復を助けます。
- 従業員への教育・研修の実施
- 全従業員を対象に、カスハラの知識、対応方法、相談窓口について定期的に研修します。
- ケーススタディやロールプレイングなど実践的な内容を取り入れます。継続的な教育が意識を高めます。
- 再発防止策の検討と実施(PDCAサイクル)
- 発生事例を分析し、原因究明と具体的な再発防止策を策定・実行します。
- 対策の効果を検証し、継続的に見直し改善(PDCA)します。組織としての学びを次に活かします。
カスハラ対策を成功させるための企業の心構え
ここでは、企業がカスハラ対策を効果的に進めるための心構えを説明します。
上記の措置を実効性あるものにするには、企業全体の意識が重要です。
- 経営者の強いリーダーシップ:トップが率先して対策を推進する。
- 「コスト」でなく「投資」:対策費用は将来への投資と捉える。
- 予防法務の重視:問題発生を防ぐ環境づくりに注力する。
- ハラスメントを許さない企業文化の醸成:ルールだけでなく、組織風土を変える。
- 外部専門家の活用:必要に応じて弁護士などの知見を取り入れる。
おわりに~従業員と企業の未来を守るために~
ここでは、本記事のまとめと、経営者の皆様への行動喚起をします。
東京都の条例と本ガイドラインは、企業にカスハラ対策への真摯な取り組みを求めています。
これは負担ではなく、従業員がいきいきと働き、企業が成長するための重要なステップです。
本記事を参考に、まずは自社の現状把握から始め、具体的な対策に着手してください。
従業員が安心して働ける環境が、企業の競争力を高め、未来を支えます。
経営者のリーダーシップで、カスハラのない職場を目指しましょう。

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