相続の相談はどこにすればいい?相談内容に応じた相談先を紹介

相続に関する相談は、どこにすればよいのでしょうか?
相続の相談窓口は、相談内容や目的によって異なります。相談内容や課題とマッチしない相談窓口に相談すると、余計な費用や時間がかかることもあります。
この記事では、相続を相談できる専門家や専門家以外の相談先について解説します。
相続の相談窓口に迷ったときは、ぜひこの記事をご参考になさってください。
目次
相続を相談できる専門家の種類と相談内容
ここでは、相続を相談できる専門家の種類と相談できる範囲を解説します。
弁護士
弁護士は、法律に関する業務全般を取り扱う専門家です。
弁護士には、すべての裁判所(簡易裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、高等裁判所、最高裁判所)における代理権が認められているため、依頼者の代理人として相続に関するあらゆる問題に対応できます。
弁護士に相談できること
弁護士には、主に以下のことを相談・依頼できます。
◎ 遺言書の作成
◎ 遺言執行者としての選任
◎ 遺言書の検認
◎ 成年後見・任意後見・家族信託等の生前の財産管理
◎ 相続人間の紛争に関すること
◎ 相続人調査・相続財産調査
◎ 相続放棄・限定承認の手続き
◎ 相続財産管理人選任申立て
◎ 遺留分放棄
◎ 遺産分割協議の交渉代理
◎ 遺産分割協議書の作成
◎ 遺産分割調停や審判の代理
◎ 預貯金・有価証券・自動車等の相続手続き
◎ 遺留分侵害額の請求・裁判手続き
◎ 事業承継に関すること


司法書士
司法書士の主な業務は、不動産の名義変更に関する手続き(不動産登記)です。
家庭裁判所の手続きについては、書類作成のみ可能です。司法書士には、家事事件について代理権が認められていないため、交渉や手続きを代理できません。
司法書士に相談できること
司法書士には、主に以下のことを相談・依頼できます。
◎ 不動産登記手続き(相続不動産の名義変更等)
◎ 会社・法人の登記に関する手続き(法人の代表者変更等)
◎ 成年後見・任意後見・家族信託等の生前の財産管理
◎ 遺言書の作成支援
◎ 相続人調査
◎ 相続財産調査
◎ 遺産分割協議書の作成
◎ 裁判所に提出する書類の作成代行
◎ 預貯金・有価証券・自動車等の相続手続き
行政書士
行政書士は、書類作成業務や申請業務を代行する専門家です。
相続案件においては、権利義務に関する書類(遺産分割協議書、遺言書等)の作成業務や必要書類の収集を行えます。
行政書士の業務範囲に書類作成に関する相談は含まれますが、相続に関する法律相談や代理権は含まれません。
行政書士に相談できること
行政書士には、主に以下のことを相談・依頼できます。
◎ 遺言書の作成支援
◎ 相続人の調査
◎ 相続財産調査
◎ 相続関係図の作成
◎ 遺産分割協議書の作成
◎ 預貯金・有価証券・自動車等の相続手続き

税理士
税理士は税務の専門家です。相続のための節税対策や相続税の申告書の作成等を行います。
税理士に相談できること
税理士には、主に以下のことを相談・依頼できます。
◎ 生前贈与に関すること
◎ 相続のための節税対策
◎ 相続財産の評価
◎ 相続税の申告
◎ 準確定申告
◎ 相続税の更正請求
◎ 事業承継における税金対策
相続を弁護士に相談するメリット
ここでは、相続を弁護士に相談するメリットを解説します。
相続関連法に精通している
相続案件には、相続法の知識や経験だけでなく、相続に関連する法律の知識や経験が必要です。
弁護士は、法律全般の専門家であるため、次のような広範な知識・経験を駆使して相続に関する問題にオールマイティに対応できます。
- 民法全般
- 相続税法
- 保険法
- 信託法
- 不動産実務
- 事業承継(会社法・経営)に関する知識
- 家庭裁判所の運用に関する知識
代理人になってもらえる
弁護士は、相続手続き全般において依頼者の代理人として活動できます。
相続人間の交渉や調停・裁判で代理人になれるのは弁護士だけです。司法書士や行政書士では対応できないことも、弁護士であれば対応できることが多くあります。
弁護士に代理人として遺産分割協議に参加してもらうことで、相続人間の感情的なぶつかり合いを防ぎ、冷静に協議を進められるため、精神的なストレスも軽減されます。
相続人間での話し合いが整わず、調停や裁判になった場合も安心して任せられます。

ワンストップサービスを受けられる
相続では、相続登記や相続税申告など、司法書士・税理士等のサポートが必要な場面があります。弁護士は、相続手続きへの対応にあたり司法書士や税理士等と随時連携しています。
そのため、法律事務所を窓口として、ワンストップで相続手続きを総合的にサポートしてもらえます。

相続を司法書士に相談するメリット
ここでは、相続を司法書士に相談するメリットを解説します。
相続登記を任せられる
相続財産の中に不動産がある場合は、相続を原因とする所有権移転登記(相続登記)が必要です。司法書士は登記申請を代理できる専門家であるため、相続登記の手続きを任せられます。
弁護士でも登記はできますが、登記を専門的に扱っている弁護士が少ないため、弁護士に依頼する場合も、登記手続きは司法書士が担当するのが一般的です。
書類の作成を代行してもらえる
司法書士には、戸籍等の収集や裁判所に提出する書類等の作成を依頼できます。
相続案件において司法書士が作成できる書類の代表例は以下のとおりです。
- 遺言書(作成支援)
- 遺産分割協議書
- 遺言書の検認申立書
- 相続放棄の申述書
- 限定承認の申述書
相続財産に不動産が含まれており、かつ、相続人間に争いがない場合は、司法書士に遺産分割協議書の作成と相続登記を依頼することで、スムーズに手続きが進められます。
相続を行政書士に相談するメリット
ここでは、相続を行政書士に依頼するメリットを解説します。
書類の収集・作成を代行してもらえる
行政書士に依頼すれば、主に以下のような書類の収集・作成を代行してもらえます。
- 戸籍謄本等の収集(相続人調査)
- 遺言書の作成支援
- 遺産分割協議書の作成
- 相続関係図の作成
他の士業よりも費用が安い
行政書士に書類作成代行を依頼した場合は、他の士業に依頼した場合と比べて安く済むことがあります。
相続人間に争いがなく、書類作成だけ依頼したい場合には、行政書士に依頼するのが費用面で有利です。
相続を税理士に相談するメリット
ここでは、相続を税理士に相談するメリットを解説します。
相続発生前は節税対策が相談できる
相続が発生する前に、相続税に詳しい税理士に相談してあらかじめ対策をとることで節税効果を生み出せる可能性があります。
相続税に限らず贈与税や事業承継にかかる税金対策についても、アドバイスを受けられるでしょう。
相続発生後は相続税申告を任せられる
相続税の申告は、相続の開始があったこと知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなくてはなりません。申告が遅れると延滞料が発生します。
相続税申告は集めなければならない書類が多く、申告内容によって書類の種類が異なることもあります。相続に強い税理士に依頼すれば、必要な書類も熟知しているので申告手続きをスムーズに進められます。
特例の活用による相続税の減額や二次相続を見据えた遺産分割を提案してもらえることもあります。
専門家以外の相続の相談先
ここでは、専門家以外の相続の相談先を紹介します。
銀行・信託銀行
一部の銀行・信託銀行には、相続手続きを支援・代行するサービスがあります。
銀行や信託銀行自体が相続手続きを取り扱うものではなく、各士業と連携したり、専門家を紹介したりすることで、銀行等が窓口となって相続手続きを支援・代行します。
銀行・信託銀行に相談するメリット
銀行・信託銀行に相談するメリットは、主に以下のとおりです。
- 専門家を探す手間が省ける
- 信託・保険・金融商品等の幅広い提案を受けられる
銀行・信託銀行に相談するデメリット
銀行・信託銀行に相談するデメリットは、主に以下のとおりです。
- 自身で直接専門家に依頼する場合より費用がかかる
- 書類の収集を依頼できない
- 金融商品の契約等の勧誘を受けることがある
市役所
市役所や区役所では、行政サービスの一環として専門家(弁護士・司法書士・税理士)による無料法律相談が行われています。相続に関する疑問や悩みについても、無料で相談できます。
市役所に相談するメリット
市役所に相談するメリットは、主に以下のとおりです。
- 無料で利用できる
- 気軽に相談できる
市役所に相談するデメリット
市役所に相談するデメリットは、主に以下のとおりです。
- 相談時間が限られている(平日の日中/1回15~30分程度)
- 一般的なアドバイス以上の対応はしてもらえない
- 市役所の決まりにより相談した専門家に直接依頼できないこともある
まとめ
相談内容や目的別の相談先を以下のとおりまとめます。
- 相続人間に争いがある・ワンストップで解決したい:弁護士
- 相続税に関する相談をしたい:税理士
- 相続登記に関する相談をしたい:司法書士
- 書類作成だけ頼みたい:行政書士
- 相続後の資産運用を相談したい:銀行・信託銀行
- 相続に関する一般的な相続をしたい:市役所
相続の相続先は内容や目的別に探すのが重要です。相続人同士に争いがある場合は、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、代理人として交渉や調停・裁判等の手続きをスムーズに進められます。
初回の相談が無料の法律事務所もあるので、費用やサポート内容を聞いた上で、依頼するかどうか検討するとよいでしょう。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。