多重債務とは?多重債務に陥ったらどう解決すべきか
多重債務(たじゅうさいむ)とは、借金を繰り返して借入先が増え、返済が困難になった状態のことです。
お金に関する悩みは他の人に相談しにくい内容のため、誰にも打ち明けることができず多重債務に苦しんでいる人も多いです。
そこで今回は、多重債務に関して主に次の4点をご説明します。
- 多重債務についての基礎知識
- 多重債務に陥ってしまった人の傾向・原因
- 債務整理について
- 多弁護士に相談するのがおすすめの理由
- 多重債務解決の流れ
多重債務に苦しんでいる方は、自分だけで抱え込み苦しむのではなくすぐにでも弁護士に相談して解決しましょう。
目次
多重債務とは?
多重債務とは、複数の貸金業者から借金をしており、返済が困難になっている状態のことです。
金融庁の発表している多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向によると、2020年3月末の時点で、複数の消費者金融から借入をしている人の数は約120万人以上いることが分かっています。
参考:多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向より独自作成|金融庁
2006年にグレーゾーン金利を廃止する貸金業制度の大改正が行われたため、借入している人の数と借入額は年々改善を見せています。
しかし2012年から、貸金業法の規制対象外となる銀行カードローンを利用する人が急増したため、顕在化していない多重債務者も日本にはまだ数多く存在すると言われています。
多重債務に陥ってしまった人の傾向・原因
ここでは多重債務に陥ってしまった人の傾向・原因を紹介します。
借金をするきっかけ
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会が発表している2020年破産事件及び個人再生事件記録調に基づいて、多重債務を負担するに至った主な理由を以下に表としてまとめました。
負債の原因(人数比) | 割合 |
生活苦・低所得 | 60.69% |
病気・医療費 | 23.31% |
失業や転職 | 17.58% |
給料の減少 | 9.60% |
事業資金 | 16.13% |
負債の返済 | 20.48% |
保証債務 | 9.44% |
第三者の債務の肩代わり | 2.82% |
名義貸し | 1.29% |
生活用品の購入 | 14.76% |
ギャンブル・浪費 | 11.37% |
参考:2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査 |日本弁護士連合会
多重債務を負担するきっかけとして最も多いのが、生活苦・低所得を原因とするものです。
特に生活苦・低所得と生活用品の購入をきっかけとして、多重債務に陥ってしまった人の割合は年々増えています。
多重債務の状態に陥ることを防ぐためには、必要ない支出がないか見直すことが重要です。
自己破産件数の推移
金融庁が発表している多重債務者対策をめぐる現状及び政策の動向から、過去約20年日本でどのくらい自己破産が行われたのかを以下にまとめました。
2006年に改正貸金業法が導入されたことで、借入限度額を年収の1/3までに止める総量規制制度が開始。この制度の導入がきっかけで、徐々に自己破産の件数は少なくなっています。
しかし2020年度は新型コロナウイルスの影響もあり、前年度よりも多重債務者の数が増えた年でもありました。
今後新型コロナウイルスの影響による倒産や会社の業績悪化が加速すると、多重債務者が増え自己破産する人も増加することが予想されます。
多重債務から脱するには債務整理がおすすめ
1度多重債務の状態に陥ってしまうと、なかなか1人では抜け出すことができません。
ここでは多重債務の状態から脱するための手段である債務整理について解説します。
任意整理
任意整理とは、債務者に代わり弁護士が債権者と交渉を行い、利息のカットや分割払いでの返済に対応してもらうよう交渉することです。
裁判所を介さないため、スムーズに生活の立て直しを図れるのがメリットです。
自己破産
自己破産は、裁判所を通じて借金の返済義務を免除してもらう法的な手続きです。
他の債務整理の手段と比較すると、もっとも強制力のある処分であり、債務者は生活に必要な財産を除いて所有している財産を処分し返済しなければなりません。
財産を処分せざるを得ない一方で、抱えている借金の返済義務がなくなります。
自己破産のデメリットは次のとおりです。
- 一定の職業や資格の制限
- 所有している財産のほとんどを処分しなければならない
- 居住地の制限
- 郵便物の制限

個人再生
個人再生とは、借金額の一部を免除してもらい、残りを分割で支払う手続きです。
自己破産と異なり所有している不動産や車を処分することなく、借金問題を解決できます。
個人再生が認められるケースは次のような場合です。
- 債務の総額が5,000万円を超えない
- 将来において反復継続して収入を得る見込みがある
返済期間は原則3年間ですが、裁判所が特別な事情があると認めた場合5年間まで分割できます。
特定調停
特定調停とは、債務者と債権者の話し合いを裁判所が仲裁して、将来の返済条件を決定する制度です。
どの債権者と調停するかを決められるので、住宅や自動車ローンの債権者だけを除き特定調停をすることにより、所有している不動産や車を維持できます。
一方で特定調停のデメリットは次のとおりです。
- 取り立てが止まるまで時間がかかる
- 過払い金の返還が受けられない
- 調停が成立しないこともある
- 差し押さえが容易になる
多重債務を解決するには弁護士に相談するのがおすすめ
ここでは多重債務を解決するには弁護士に相談するのがおすすめの理由を解説します。
取り立てや催促の電話がなくなる
債務者が弁護士に債務整理の依頼をした場合、弁護士から債権者へ受任通知が送られます。
貸金業法では、弁護士から債権者へ受任通知が送られた場合、債務者に対して正当な理由がないにも関わらず連絡することを禁じています。
債権者は債務者に対して取り立てや催促の電話ができなくなるので、債務者は生活の立て直しだけに集中できます。
返済額を減らして余裕を持った生活を取り戻せる
多重債務で収入よりも月の返済額が多くなってしまうと、生活に余裕がなくなり追い詰められてしまいます。
厚生労働省の調査によると、多重債務が原因とみられる自殺者数は毎年一定数存在します。
自殺者数の約3%は多重債務に苦しんで自殺をしたとみられています。
少しでも返済額を減らすことができれば生活に余裕を取り戻せるので、多重債務にお悩みの方は弁護士に相談しましょう。
払いすぎたお金が返ってくる可能性も
過払い金請求により払いすぎたお金が返ってくる可能性もあります。
ただし過払い金請求訴訟には、債務整理と異なる手続きが必要です。
債務整理の手続きをしている過程で 、過払い金があることが分かったら請求訴訟とそれに伴う手続きもまとめて弁護士に委任できます。
周囲の家族や友人に知られることなく解決できる
できる限り家族や周囲に知られずに債務整理を進めたい方もいらっしゃるかと思います。
自力で債務整理の手続きを進めると、貸金業者から自宅宛に電話や郵便物が送られてくる場合があります。
しかし弁護士に依頼すれば、業者との連絡も全て代理してくれるので、自宅に連絡が来ることをきっかけに、家族に知られることはなくなります。
難しい手続きを全て代理でしてくれる
弁護士に依頼すれば必要な手続きは全て代理してくれるので、生活を立て直すことに集中できます。
弁護士に依頼した後の多重債務解決の流れ
ここでは弁護士に依頼した後の多重債務解決の流れを解説します。
相談後、請求や取り立ての電話が止まる
弁護士に相談して依頼した後は、最短即日で受任通知を発送します。
請求や取り立てに怯える必要もなくなるため、余裕を持って債務整理の手続きを進められます。
最適の債務整理手続きの選択
その人に最適の債務整理手続きを選択することになります。
借金額や年収によって最適の手続きは異なるので、弁護士と相談して決めなければいけません。
債務整理に強い弁護士であれば、最適の手続きを提案してくれるので、安心して任せられます。
過払い金の請求
借金をしている消費者金融や毎月の返済額でも異なりますが、過払い金が請求できるケースもあります。
具体的に、過払い金が発生している可能性が高く、消滅時効が完成していないであろうと考えられるのは、次の2つのいずれも満たすケースです。
- 2010年6月17日前に借り入れを開始した場合
- 借金を完済してから10年以内の場合
上記のいずれにも該当している場合、過払い金を請求できる可能性があるので弁護士に相談しましょう。
まとめ
1度多重債務の状態に陥ってしまうと、なかなか抜け出すのは困難です。
お金という他人には相談しにくい内容ですが、借金を借金で返済する生活が続いているようであれば、すぐにでも弁護士に相談することをおすすめします。