無職でも自己破産できる!自己破産できる条件と費用の捻出方法
無職・無収入の方も、自己破産できます。手続後に返済の必要がない自己破産では、就労や収入の有無は要件とされていません。
とはいえ、手続きにかかる費用や弁護士費用を用意できないと不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、自己破産できる条件や費用の捻出方法、その他無職の方が自己破産する場合の注意点を解説します。
無職・無収入で自己破産を検討中の方は、ぜひご参考になさってください。
目次
無職でも自己破産ができる!自己破産できる条件とは?
自己破産は、次の2つの手続きから成り立っています。
- 破産手続:破産者の財産を処分してお金に換え、それを債権者に配当する手続き
- 免責手続:借金の返済義務を免除してよいか調査・判断する手続き
それぞれの手続きを進めるためには、次の2つの条件を満たさなければなりません。
- 破産手続きを開始するための条件:支払不能の状態であること
- 免責を許可するための条件:免責不許可事由に該当しないこと
無職・無収入の方が自己破産するためには、上記2つの条件に加えて費用面もクリアしなければなりません。
ここでは、無職・無収入の方が自己破産するために必要な3つの条件を解説します。
- 支払不能の状態であること
- 免責不許可事由がないこと
- 破産手続きの費用を支払えること
ひとつずつ確認しましょう。
支払不能の状態であること
裁判所に破産手続きを開始してもらうためには、支払不能の状態であることが認められなければなりません。
支払不能とは
支払不能とは、債務者が弁済能力の欠乏のため、弁済期が到来して即時に弁済しなければならない債務を一般的かつ継続的に弁済できない客観的経済状態を意味します。
支払不能かどうかは、裁判官が本人の財産・信用・収入その他の事情を考慮してケースバイケースで判断します。
財産がなくても、信用や就労によって収入が得られれば返済能力があると判断されることもあります。自分で払えないと思うだけでは認められません。
免責不許可事由がないこと
自己破産を申立てても、必ず免責が許可されるとは限りません。債務者に免責不許可事由がある場合、免責が許可されないことがあります。
免責不許可事由とは
破産法は、免責を許可できない理由や事情として、11項目の免責不許可事由を定めています。
以下の事情があると、免責不許可事由があると判断されます。
- 自己または他人の利益を図る目的・債権者を害する目的で財産を隠匿・処分した
- クレジットカードで購入した商品を売却して現金化した
- 特定の債権者にだけ優先して借金を返済した
- ギャンブルや浪費により財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした
- 確実な返済がないのに、これがあるように装って借り入れした
- 財産に関する書類や帳簿などを隠したり、改ざんしたりした
- 債権者名簿に虚偽の記載をしたり、一部の債権者を隠して記載しなかったりした
- 裁判所が行う調査において、説明を拒んだり虚偽の説明をしたりした
- 破産管財人の業務を妨害した
- 前回の免責許可決定から7年以内の再申立てである
- 破産法に定められている義務に違反した
免責不許可事由があっても、裁判所が諸般の事情を考慮して、免責を与えることが相当であると判断した場合には、裁判所の裁量によって免責が許可されるケースもあります。これを裁量免責といいます。

免責不許可事由があるから自己破産できないと諦める必要はありません。
免責不許可事由がある場合でも、裁量免責が得られるケースは決して少なくありません。少しでも不安な点があれば当事務所にお気軽にご相談ください。
破産手続きの費用を支払えること
自己破産を申立てて、手続きを開始してもらうためには、破産手続きの費用を裁判所に支払わなければなりません。
破産手続きに必要な費用には、主に次の4つの費用があります。
- 申立手数料(収入印紙代)
- 予納郵券(郵便切手代)
- 官報広告費用(予納金)
- 引継予納金(管財人報酬)

ひとつずつ説明します。
申立手数料(収入印紙代)
申立手数料とは、破産を申立てる際に必要な手数料です。
裁判所に収入印紙1,500円分を納めます。
予納郵券(郵便切手代)
予納郵券とは、債権者に対して裁判所からの通知を郵送する際に必要な郵便切手です。
申立ての際に管轄裁判所が指定する金額・内訳で郵便切手を納めます。
東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額・内訳は以下のとおりです(2024年9月24日~)。
金額 | 内訳 |
4,950円 | ・500円×4枚 ・180円×1枚 ・110円×22枚 ・50円×4枚 ・10円×15枚 |
官報公告費用(予納金)
官報公告費用とは、自己破産したことなどを官報に掲載して公告するために必要な費用です。官報公告費用は、予納金として管轄裁判所が指定した金額を申立時に納付しなければなりません。
東京地方裁判所の官報公告費用の額は以下のとおりです。
- 同時廃止事件:11,859円
- 破産管財事件:18,543円
引継予納金(管財人報酬)
引継予納金とは、破産管財事件において、破産管財業務にかかる実費や破産管財人の報酬にあてられる費用です(同時廃止事件の場合は不要)。引継予納金の額は、借金の総額や財産状況等に応じて、申立後に裁判所が定めます。
東京地方裁判所における引継予納金の目安は以下のとおりです。
- 少額管財:20万円~
- 通常管財:50万円~
無職の人が自己破産する場合に必要な書類
ここでは、無職・無収入の方が自己破産する場合に必要な書類を紹介します。
自己破産の必要書類
自己破産に必要な書類のうち、管轄裁判所の窓口またはウェブサイトで取り寄せる申立書類は、以下のとおりです。
- 申立書
- 債権者一覧表
- 滞納公租公課一覧表
- 財産目録
- 陳述書
- 家計収支表
自己破産の申立てには、上記申立書類のほか、次の書類を添付しなければなりません。
- 戸籍謄本(発行後3ヶ月以内のもの)
- 住民票(発行後3ヶ月以内のもの)
- 賃貸借契約書
- 財産の内容・内訳が分かる資料
- 債務の内容・内訳が分かる資料
- 収入証明書(源泉徴収票、所得証明書、年金証書、生活保護受給証明書等)
- その他(診断書、障害者手帳等)
自己破産に必要な書類の詳細は、下記関連記事をご参照ください。
無職でも所得証明書の提出が必要
無職の場合は、収入証明書として、直近1年分の所得証明書(非課税証明書)を提出します。非課税証明書は、市区町村役場で発行してもらえます。
病気等の理由があれば、必要に応じて医師の診断書を提出することもあります。
生活保護、失業保険等の公的扶助や年金などを受給している場合は、受給証明書等の提出も必要です。
無職の場合は同居家族の収入証明等も必要
自己破産では、本人のみならず同居家族の資料の提出を求められることがあります。
無職・無収入の場合には、家計全体の収支状況を明らかにするため、次の資料の提出を求められる可能性が高いでしょう。
- 同居家族の収入証明書
- 同居家族の預貯金通帳(光熱費や家賃の引き落とし口座)
無職で費用が払えなければ自己破産できない?|費用を用意できない場合の対処法
自己破産を弁護士に依頼する場合は、弁護士費用も必要です。弁護士費用の相場は30万円~50万円程度が一般的です。
破産手続きにかかる費用や弁護士費用を用意できない場合は、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、自己破産に必要な費用を用意できない場合の対処法を紹介します。
家族・親族から援助を受ける
本人に収入ない場合、家族や親族に援助してもらう方法があります。
家族・親族に援助してもらったお金で、自己破産に必要な費用を支払うこと自体は問題ありません。
ただし、家族・親族から援助を受けるときは、次の点に注意しましょう。
- 家族・親族からの援助が借入れではないことを客観的に説明できるようにする
- 援助されたお金は自己破産の費用以外には使わない
- 援助された相手に返済しない
法テラスの扶助制度を利用する
費用が払えない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用する方法があります。
一定の条件を満たせば、以下の費用を立て替えてもらえます。
- 実費:23,000円
- 弁護士費用:132,000円~187,000円
立て替えてもらった費用は、毎月5,000円から分割返済できます。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
生活保護を受けている場合
生活保護を受けている場合は、上記に加えて引継予納金も立て替えてもらえます。
自己破産の手続きが終了した時点で、生活保護を受給し続ける状態であれば、立替金の返済が免除されます。
無職なのに収入があると偽ってキャッシングしたら自己破産で免責されない?
ここでは、無職・無収入の方が、収入や就労の有無を偽って借り入れた場合のリスクを解説します。
借入金の使途によっては免責されない可能性もある
お金を借りる際に収入を偽って審査を受けていた場合は、免責を得られない可能性があります。詐術による借入は、免責不許可事由にあたるからです。申込書類に虚偽の記載をしただけでなく、収入証明書を偽造するなど、その行為が悪質な場合は、詐欺破産罪に問われることもあります。
嘘をついて借り入れたお金をもっぱらギャンブルや遊興費等に費消した場合は、免責が許可されない可能性が高まります。
生活のための借入であれば裁量による免責を受けられることもある
免責不許可事由がある場合でも、次のような事情があれば、裁判官の裁量によって免責を受けられる可能性があります。
- 嘘をついて借金をした経緯に同情に値する事情がある
- 借入れたお金を生活費や返済に費消していることが明らかである
- 浪費やギャンブル等の行為は認められない
- 行為の悪質性が低い(積極的に騙す意図がなかった)
- 真摯に反省している
実家暮らしの無職でも家族に内緒で自己破産できる?
ここでは、家族に内緒で自己破産できるかどうかを解説します。
同居家族にバレる可能性が高い
自己破産では、同居家族を含めた世帯全体の収支状況を報告しなければなりません。裁判所によっては、同居家族の給与明細や通帳等の提出が求められることがあります。
これらの書類を同居家族に内緒で集められなければ、家族に伝えて協力を得なければなりません。
家族が連帯保証人になっている場合は、連帯保証人となっている家族を債権者として申告する必要があるため、同居・別居を問わず自己破産することを知られます。
自己破産後に無職の状態で賃貸物件は借りられる?
ここでは、自己破産後の賃貸契約に関する注意点を解説します。
先に就職先を見つけた方が無難
自己破産後に賃貸借契約を締結する場合は、先に就職先を見つけた方が無難です。
無職の場合、貯金残高などを示して支払能力があることを証明できなければ、入居審査に落ちる可能性が高いからです。
保証人を立てれば賃貸物件を借りられる可能性もある
保証人を立てれば賃貸物件を借りられる可能性があります。
安定した収入のある人を保証人に立てれば、契約者本人が家賃を払えない状況になっても、保証人から家賃を回収できると判断され、入居審査に通りやすくなります。
信販系の保証会社は使えない
信販系の家賃保証会社は、入居審査に際して信用情報を照会するため、自己破産後は使えなくなります。自己破産すると5~10年間は信用情報に事故情報が登録されるからです。
自己破産後は、信販系以外の保証会社を利用できる物件を探しましょう。
無職で自己破産ができない場合に他の債務整理は使える?
ここでは、無職・無収入の方が任意整理・個人再生を利用できるかどうかを解説します。
無職だと個人再生は使えない可能性が高い
無職・無収入の方は、原則として個人再生を利用できません。
個人再生では、再生計画に基づく返済を原則3年間(最長5年間)継続できる安定した収入が必要だからです。
ただし、無職であっても年金受給者であれば、個人再生が認められるケースもあります。
個人再生で収入源は問われませんので、非正規雇用者(アルバイト・パート・派遣社員)でも、継続的に安定した収入が見込まれれば、個人再生を利用できます。
無職でも任意整理は使える場合もある
任意整理は、裁判所が関与しない手続きであるため、返済原資が問われません。
よって、次のような場合は、無職・無収入の方でも任意整理を利用できます。
- 家計のやりくりによって返済原資を賄える
- 家族の援助を受けられる
- 年金による収入がある
- 就職・就労の予定がある
まとめ
無職・無収入であっても、次の2つの条件を満たせば自己破産できます。
- 支払不能の状態であること
- 免責不許可事由がないこと
借金問題にお困りの方は、おひとりで悩まず当事務所の無料相談をご利用ください。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。