自己破産後も生活保護は受けられる?生活保護受給中も自己破産できる?
「自己破産をすると生活保護を受けられない」「自己破産をしてからでないと生活保護を受けられない」と、真逆の噂がインターネットに掲載されていますが、どちらが正しいのでしょうか。
この記事では、自己破産と生活保護にまつわる以下の疑問について解説します。
- 自己破産後も生活保護は受給できる?
- 生活保護を受けるには自己破産を先行した方が良い?
- 生活保護受給中に自己破産できる?
- 生活保護受給中は費用の援助が受けられる?
- 生活保護の受給と自己破産に関する注意点は?
自己破産や生活保護の利用を検討している方は、是非ご参考になさってください。
目次
自己破産後も生活保護は受給できる?
ここでは、自己破産後に生活保護を受けられるケース・受けられないケースを説明します。
生活保護を受けられるケース
自己破産をしてから生活保護を受けることは可能です。ただし、生活保護を受けるには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
- 資産を持っていない
- 働けない
- あらゆる公的扶助を活用している
- 扶養義務者からの扶養がない
ひとつずつ見ていきましょう。
資産を持っていない
次の財産がない、あるいはこれらを処分しても最低限の生活費に満たないことが1つ目の条件です。
- 預貯金
- 不動産
- 車
- 保険の払戻金
働けない
病気・怪我など身体上の理由で働けないなど、働く能力がないことが2つ目の条件です。働くことができても、収入が自治体ごとに定められている基準額以下であれば生活保護を受給できる場合があります。
あらゆる公的扶助を活用している
生活保護以外の国や自治体からの援助(公的扶助)を利用できる場合は、公的扶助の利用を優先することが3つ目の条件です。当該公的扶助を利用しても最低限の生活費を補えない場合は、生活保護を受給できます。公的扶助の具体例には、次のものがあります。
- 老齢年金
- 遺族年金
- 障害年金
- 失業手当
- 自立支援・技能訓練給付金
扶養義務者からの扶養がない
以下のとおり、扶養を受けられないことが4つ目の条件です。
- 家族や親族等の扶養義務者がいない
- 家族や親族による援助が受けられない
- 扶養を受けていても最低限の生活費に満たない
生活保護を受けられないケース
次のいずれかに該当する場合は、生活保護の4つの要件を満たさないため生活保護を受給できません。
- 働いて十分な収入を得られる
- 家族・親族の援助を受けられる
- 生活保護以外の公的援助を受けられる
- 売却できる資産が残っている
生活保護を受けるには自己破産を先行した方が良い?
ここでは、自己破産と生活保護どちらを先にした方がよいかについて解説します。
借金がある場合は自己破産を先行した方が良い
自己破産と生活保護は同時に利用できます。借金がある場合は、以下の理由により自己破産を先行すべきです。
- 自己破産を先にすれば、借金取り立てが止まる
- 生活保護申請を先にしても、生活保護費から借金を返済できない
自己破産を先にすれば、借金取り立てが止まる
自己破産を先行した場合に得られるメリットは、自己破産を先にすれば、借金取り立てが止まることです。
生活保護を申請しても債権者からの督促は止まりません。
自己破産を弁護士に依頼すれば、債権者に受任通知を送付しますので、債権者からの督促が止まります。
自己破産により借金の返済は免除されたものの、病気や怪我で収入を得られない場合は生活保護の申請を検討しましょう。
生活保護申請を先にしても、生活保護費から借金を返済できない
生活保護申請を先行した場合のデメリットは、生活保護を受給しても借金を返済できないことでしょう。
生活保護費は、健康で文化的な最低限度の生活のために支給されるお金であり、借金の返済にあてることが認められていません。
借金がある場合、ケースワーカーから「自己破産をしてから生活保護の申請をするように」と指導されることがあります。生活保護費を借金返済に使わないようにするためです。
生活保護費を借金の返済にあてた場合、次のようなおそれがあります。
- 生活保護が停止される
- 生活保護費の返還や徴収金の支払いを求められる
生活保護受給中に自己破産できる?
ここでは、生活保護受給中の自己破産について説明します。
生活保護の受給に自己破産は影響しない
生活保護受給中に自己破産しても問題ありません。
返済義務が免除される自己破産は、唯一、生活保護の受給に影響しない債務整理です。他の債務整理は、返済を要する手続きのため生活保護受給中は原則利用できません。
生活保護受給中は費用の援助が受けられる?
生活保護受給中は、以下のとおり、自己破産にかかる費用の援助を受けられます。ここでは、自己破産にかかる費用と法テラスの代理援助について説明します。
自己破産にかかる費用
自己破産にかかる費用には次の2種類があります。
- 手続費用
- 弁護士費用
手続費用
裁判所に支払う自己破産手続きに必要な費用です。手続きの種類によりますが2万円〜50万円程度で、財産状況等によって変動します。
内訳は以下のとおりです(裁判所によって異なる)。
申立手数料 | 予納郵券※ | 官報広告費 | 引継予納金 |
1500円 | 5000円程度 | 12000円~19000円程度 | 20万円以上 |
※東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額は4,950円です(2024年9月24日~)。
弁護士費用
自己破産を弁護士に依頼した場合の費用です。相場は30万円~50万円程度です。
法テラスの代理援助
予納金・弁護士費用の立替え
法テラス(日本司法支援センター)には、予納金と弁護士費用の立替払いの制度があり、一定の条件を満たせば、この制度を利用できます。自己破産手続終了時も生活保護を受給している場合は、立替金の返済が免除されます。
法テラスの立替払いを利用する方法
法テラスの立替払い制度は、次の2つの方法で利用することができます。
- 法テラスに依頼する
- 法テラスと契約している弁護士に直接依頼する
上記2.の場合を持ち込み方式といいます。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
生活保護の受給と自己破産に関する注意点は?
ここでは、生活保護の受給と自己破産に関する注意点を説明します。
不正受給は免責されない可能性がある
生活保護の不正受給により生活保護費の返還を求められた場合、その返還義務は自己破産で免除されません。自己破産後も返還金を支払い続ける必要があります。
生活保護受給中であることを隠して借金はできない
生活保護受給者であることを隠して、お金を借りることはできません。
虚偽の申告で借金をした場合、免責不許可事由に該当すると判断され、借金の返済義務を免除されない可能性があります。生活保護受給中は借金の申込みを控えましょう。
まとめ
自己破産と生活保護は同時に申請でき、自己破産が生活保護の認定や支給額に影響を及ぼすことはありません。
生活保護受給中は、法テラスを利用することで自己破産にかかる費用を免除してもらえます。法テラスを利用したい場合には、弁護士への相談時にあらかじめ伝えましょう。
個別の事情については弁護士に相談することをおすすめします。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。