自己破産前にすべきこと・すべきでないこと
借金が支払不能になった場合に利用できるのが自己破産です。
しかし、自己破産の手続きではいくつか注意しなければならない点があります。場合によっては免責が認められず、自己破産できないことも。
そこで今回は、自己破産を知る前に知っておきたいことについて、主に次の4点を中心に解説します。
- 自己破産前に知っておくべきこと
- 自己破産前にするべきこと
- 自己破産前にやってはいけないこと
- 免責不許可・詐欺罪に問われる可能性も
借金を抱えて困っており自己破産手続きをするか迷っている人は、今回の記事を通して正しい知識を身につけましょう。
目次
自己破産前に知っておくべきこと
ここでは自己破産前に知っておくべきことを解説します。
自己破産のデメリットを事前に知っておく
自己破産をすることで金融機関からの取り立てがなくなります。借金の支払いから解放されることで、生活を立て直す余裕ができます。
しかし、自己破産はメリットばかりではありません。
具体的なデメリットは次のとおりです。
- ブラックリストに登録される(一定期間クレジットカード・ローンが利用できなくなる)
- 生活に必要な最低限度の財産以外は処分しなければいけない
- 官報に名前が掲載される
- 住所を自由に変えられなくなる
- 一定の資格・職業に制限がかかる
- 郵送物が制限される
- 連帯保証人に影響が出る
自己破産にはデメリットも伴うので、きちんと理解して手続きを進めるかどうか決めましょう。
自己破産以外の方法も検討する
自己破産は借金がある人全てに適した解決方法というわけではありません。
借金問題は以下の自己破産以外の方法でも解決できます。
- 任意整理
- 個人再生
いわゆる債務整理は自己破産以外にも取り得る手段があるため、その人に最適の方法を選ぶ必要があります。
以下に自己破産と他の手続きの違いをまとめたので、どの手続きを選択すれば良いのか考える際の参考にしてください。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
借金の減額 | 原則利息のみ | 1/5程度まで減額可能 | 全額免除 |
手続きが複雑か | 弁護士に依頼すれば簡単 | 必要書類の作成裁判所への出廷の必要あり | 必要書類の作成や裁判所への出廷が必要 |
デメリット | ブラックリストに載る | ・ブラックリストに載る
・債権者を選べない ・ローン支払い中の財産は手放す必要あり ・官報に掲載される |
・ブラックリストに載る
・債権者を選べない ・家や車などの財産を手放す必要あり ・官報に掲載される ・資格や職業が制限される |
周りにバレるか | 債権者にはバレる | バレる可能性が低い | バレる可能性が低い |
手続きに必要な期間 | 1~3ヶ月 | 6ヶ月〜1年 | 3~6ヶ月 |
自己破産前にするべきこと
ここでは自己破産前にするべきことを解説します。
給料の振り込み口座の変更をする
銀行から借金をしている場合、自己破産をすると銀行口座が凍結されることがあります。
銀行が口座を凍結する理由は、口座にある預金とローンを相殺するためです。
口座が凍結されると入出金ができなくなるため、給料の振り込みと引き出しができません。
口座の凍結は自己破産の手続きが進み、保証会社により代位弁済が行われるまで継続します。場合によっては何ヶ月か時間が必要になるので、あらかじめ給料の振込口座は変更しておきましょう。
基本的に自己破産をしたこと自体が勤めている会社にバレる可能性は低いです。
しかし、口座が凍結されて給料を振り込むことができないとなると、自己破産が露見してしまう可能性があります。
連帯保証人に通知する
自己破産をすると、連帯保証人や保証人になっている人へ支払いの請求がされます。
特に親戚や家族など顔見知りが連帯保証人となっている場合、人間関係に影響が出かねません。
連帯保証人が返済不可能な場合、その人も自己破産する必要があるので必ず手続き前に通知しましょう。
携帯の乗換えをしておく
携帯をお持ちの場合、自己破産前に乗換えしておきましょう。
最近では端末代を分割払いで支払いしている人も多いです。しかし、分割払いの残金が残っている場合、自己破産をするとお持ちの携帯・スマホは解約されます。なお、携帯電話の会社によっては、機種代と利用料金を分けて取り扱っているところもあるので、月々の利用料金を支払っていれば解約されないこともあります。
自己破産の手続きを進めてから、残金を支払うと偏頗弁済を疑われる可能性もあります。
偏頗弁済とみなされると、自己破産が認められないので注意してください。
弁護士に相談する
自己破産の手続きは自力でもできます。
しかし自己破産手続きは複雑なので、弁護士に相談したほうが良いです。
必要な書類や記載事項など不備があると手続きが滞り、自己破産を終えるまで時間がかかってしまいます。スムーズに手続きを終えて、日常生活を取り戻すためにもまずは弁護士に相談しましょう。
自己破産後の生活を考えておく
自己破産をすることで返済がなくなり経済的な自由を取り戻せます。
しかし会社経営をしている人が自己破産をする場合、事業が破綻して収入がほとんどないケースも多いです。
せっかく自己破産をして借金が亡くなったにも関わらず、収入がないためまた借金をしてしまっては意味がありません。
自己破産をする前から、手続きを終えた後の生活をどうするのか考えることで、スムーズに再出発できます。
弁護士費用を用意しておく
自己破産をする場合、弁護士に依頼をするのが一般的です。
弁護士も自己破産をする人はお金がないと把握しているので、後払いや分割払いなど費用に関して柔軟に対応してくれる場合も多いです。
自己破産前にやってはいけないこと
ここでは自己破産前にやってはいけないことについて解説します。
名義変更
自己破産前に財産の名義変更をすると、財産隠しを疑われるのでやってはいけません。
自己破産で処分する財産は本人名義のものです。
できるだけ財産を残そうと家族や配偶者の名義に変更する人もいますが、これは免責不許可事由に該当します。
離婚
すぐにでも離婚をしなければならない理由がある場合を除いて、自己破産前に離婚をすることは避けた方が良いです。
離婚に伴う財産分与をした後に自己破産をする場合、財産分与の内容によっては財産隠しの目的で離婚したのではと疑われます。
悪質な財産隠しだと裁判所に判断されると、最悪の場合詐欺破産罪として処罰されます。
こういった理由から、疑われることを避けるためにも自己破産をしてから離婚した方が良いでしょう。
新たな借り入れ
自己破産の場合、借金が免除されるので直前の新たな借り入れは魅力的に感じられるかもしれません。
しかし、新たな借金は裁判所に厳しくチェックされます。
悪質だと認められると、免責許可が下りないどころか詐欺罪の罪に問われる可能性もあります。
財産処分
自己破産前に、所有している不動産や車などの財産を処分することは避けましょう。
自己破産前の財産処分行為は自由に行なえます。
しかし、財産処分が債権者の不利になると認められた場合、詐害行為として免責不許可事由に該当します。
また単純に処分行為が問題視されるだけではなく、処分して得たお金をどのように使ったのかもチェックされます。
特定の債権者への返済
自己破産の前に、自己の判断で家族や親族だけに返済をするのは避けてください。
複数の借入先があるなど債権者が複数いる場合、特定の債権者へ返済することを偏頗弁済といいます。
自己破産をする人が偏頗弁済をすると、債権者全体に対して不公平となるので禁じられています。
家族や親族に借金をしている人が、身内のためを思い少しでも返済してしまうと、偏頗弁済とみなされ免責不許可事由となるおそれがあります。
財産を隠す
自己破産をする時の財産を隠す行為は、免責不許可事由に該当します。
財産隠しの代表的なケースとしては次のとおりです。
- 預金口座の一部を申告しない
- 預金口座から現金を引き出して隠しておく
- 現金を親族や家族に預けて隠す
- 離婚による財産分与や贈与で財産を所有していないと偽造する
破産することを周囲に伝える
自己破産することを周囲に伝えること自体は、特に問題のある行為ではありません。
しかし人づてに自己破産することが広まってしまい、債権者まで伝わってしまうとトラブルが発生する可能性もあります。
自己破産すると知った債権者は、できるだけお金を回収しようと強引な催促や掘り立てをしたり、財産となるものを持ち出したりすることも多いです。
トラブルに発展する可能性を防ぐためにも、自己破産することは誰にも伝えることなく手続きを進めましょう。
免責不許可事由・刑事罰の対象になる可能性もあるので注意
万が一自己破産前にやってはいけないことを犯すと、免責不許可事由に該当して自己破産が認められない場合もあります。
また免責不許可事由に該当するのではと疑われると、同時廃止事件から管財事件になり、裁判所へ納める費用も増加します。
さらに悪質な行為であると認められた場合、詐欺破産罪として刑事罰の対象にもなるのです。(詐欺破産罪は1,000万円以下の罰金もしくは10年以下の懲役又はその両方)
自己破産が認められず刑罰の対象になると何のメリットもないので、免責不許可事由に該当する行為は絶対に避けましょう。
まとめ
自己破産前にはやらなければいけないこととやってはいけないことがあります。
何も知らずに疑わしい行為をしてしまうと、自己破産が出来ず借金に苦しむ生活が長引きかねません。
弁護士に相談すれば、自己破産の手続きをスムーズに終えられます。
自己破産をするかお悩みの方は、まず弁護士に相談しましょう。