自己破産はどこまで調べられる?財産隠しがバレる理由と調査内容
自己破産をする場合、財産などを調査されることになります。
自己破産でこのような調査が行われるのにはいくつか理由があります。
- 本当に借金が返済できないのか
- 高価な財産を隠していないか
- 自己破産が認められない免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)がないかどうか
借金の返済義務がなくなる手続きであれば、誰もが利用したいと考えるでしょう。
しかし、それでは債権者(お金を貸した側)が損をすることになりますし、誰もお金を貸してはくれなくなります。
そのため、本当に借金が返済できずに困っている人だけが利用できるように、しっかりと調査が行われるのです。
この記事では、自己破産の手続きでどこまで調べられるのかについて下記の点を解説します。
- 自己破産で調査される内容3つと調査方法
- 自己破産で財産隠しがバレる理由やリスク
- 財産を残しながら借金を整理する方法
目次
自己破産で調べられることは3つ
自己破産を申し立てると、裁判所は自己破産を申し立てた人について、下記の内容の調査を行います。
- 自己破産する人の財産
- 借金や借り入れ先
- 借金をした理由
なお、こうした調査を行うのが、裁判所が選任する破産管財人(はさんかんざいにん)です。
破産管財人には、自己破産で財産の調査や管理、処分などの重要な役割があります。
ここでは、自己破産で調べられる内容を解説します。
自己破産する人の財産
自己破産で調べられる項目の1つは、自己破産する人がどのくらいの財産を所有しているのかです。
所有している財産を調査するのには下記のような理由があります。
- 収入や財産状況から本当に返済ができないのかどうか確認するため
- 一定以上の高価な財産は換金して、債権者に分配して借金を少しでも補填するため
ただし、財産調査が行われるのは、少額管財事件や管財事件の手続きがとられた場合です。
財産がないようなケースや、借金の経緯に不透明な点がなければ、財産調査が行われない同時廃止事件という手続きになります。
借金額や債権者
自己破産で調べられる2つ目の項目は、借金の金額や債権者(借り入れ先の業者)についてです。
先述した通り、高価な財産は債権者に分配されるため、借金の額だけでなく債権者の調査も行われます。
また、借金の金額と収支を照らし合わせて、本当に返済ができないのかどうかも調査されます。
借金には、一般的な貸金業者や金融機関以外にも、個人の借り入れも含まれるため、忘れずに申告しましょう。
借金をした理由
自己破産で調査対象となる3つめの項目は、借金をした理由や経緯です。
自己破産には、免責不許可事由といって、自己破産が認められない不正行為が定められています。
そのうちの1つが、ギャンブルや投資、浪費などによる借金です。
要するに、自分が遊びで作ってしまった借金はそう簡単に自己破産が認められないということです。
そのため、借金をした理由が調査されることになります。
ギャンブルや投資や浪費があるからといって、免責がおりないというわけではありません。
実務上は、裁判所の裁量で免責がおりるケースが多いです。
ただし、ギャンブルなどであまりに多額な借金がある場合は、免責がおりない可能性もあるため注意が必要です。
自己破産で調査されないこと
自己破産では、自己破産を申し立てる人の①財産、②借金、③借金の理由が調査されます。
一方で、下記のものは調査の対象外です。
- 本人の携帯の中身
- 家族の財産や借金
- 前科や犯罪歴
本人の携帯の中身
自己破産をすると、自分の携帯の中身まで見られるのではないかと不安に思っている人もいるでしょう。
自己破産をするからと言って、携帯の中身やLINEのやり取り、SNSなどの内容をチェックされることは基本的にありません。
ただし、オンラインカジノなどギャンブルをしていると疑われた場合は、携帯などの中身がチェックされる可能性があるでしょう。
家族の財産や借金
同じく、自己破産をしても、自己破産をする本人以外の家族の財産や通帳、借金、身辺調査などをされることはありません。
だからといって、財産を隠す目的で、家族に金品などを贈与するのはやめましょう。
過去2年以内に処分した財産は申告義務があり、その他資料からも贈与が発覚する可能性があります。
前科や犯罪歴
自己破産の手続きで前科や犯罪歴などの身辺調査が行われることはありません。
財産調査はどこまで調べられる?
自己破産では下記のような財産が調査の対象となります。
- 預貯金口座、退職金
- 持ち家や土地などの不動産
- 車やバイク
- 20万円以上の価値のある財産(貴金属やブランド品など)
- 保険(生命保険の返戻金など)
- 株などの有価証券 など
ここでは、自己破産の財産調査はどこまで調べられるのか解説します。
通帳などの提出書類から調査する
自己破産では下記のような資料をもとに財産を調査します。
- 財産目録
- 源泉徴収票や給与明細
- 退職金見込額証明書
- 家計簿
- 過去2年分の預金通帳のコピー
- 退職金見込額証明書
- 不動産登記事項証明書
- 車検証
- 株やFXの取引明細 など
例えば、給与明細や源泉徴収表、通帳のコピーなどから、収入や保険加入の有無、入出金はすべてチェックされることになります。
破産者との面談で確認する
提出した資料や書類に不明瞭な点があれば、破産管財人がとの面談の中で確認されることになります。
破産管財人は、自己破産の手続きに詳しい弁護士が行うため、資料や書類に不審な点があれば、すぐに見抜かれてしまうでしょう。
また、借金の理由に関して、ギャンブルや浪費についても調査が行われます。
もし破産管財人に非協力的な態度をとったり、虚偽の説明をしたりすれば、自己破産が認められなくなるため、真摯に対応しましょう。
郵送物から調査する
自己破産の手続きが開始されると、郵便物は破産管財人に転送され、チェックされることになります(破産法第82条)。
これは郵便物から、申告漏れた借金や財産などがないかどうか確認するためです。
そのため隠していても、保険の解約通知や銀行からの案内書によって、返戻金や無申告の銀行口座などが発覚するケースがあります。
郵便物のチェックは手続き開始決定から手続きが終了して数日経過するまで行われます。
情報照会や現地調査をする
破産管財人は、情報照会や現地調査で財産を調査するケースがあります。
例えば、必要と判断した際に下記の機関に情報照会を行うことが可能です。
- 銀行に預金残高の照会をする
- 保険会社に返戻金の照会をする
- 法務局や税務署で、不動産登記や固定資産税、自動車税などの照会をする
- 証券会社に、株の配当金など有価証券に関して照会をする
口座や土地、車など申告しなくてもバレないだろうと思っても、こうして照会が可能であるため、破産管財人に知られる可能性があります。
また、現地調査といって実際に持ち家や車を自宅まで調査しに来るケースもあります。
借金はどこまで調べられる?
破産管財人は、借金の金額や債権者数、借金の原因などについても調査を行います。
手続きから債権者が漏れてしまうと、処分した財産を債権者で分け合う際に、損失を補填できない債権者が出てきてしまう恐れがあるためです。
破産債権届出書から債権者を確認する
破産管財人は、破産債権届出書や債権者一覧表という書類をもとに、借り入れ状況や債権者について調査を行います。
引用:債権者一覧表|裁判所
こうした内容と申告内容に誤りがないかどうか確認されます。
また、先述した通り、郵便物の請求書などからも手続きから漏れた債権者がいないかチェックされます。
一般的な貸金業者や金融機関以外の個人からの借り入れも自己破産の対象です。
知人などからの借金に関しても漏れがないように記載しましょう。
通帳の利用明細から確認する
自己破産では、過去2年分の通帳のコピーの提出を求められます。
破産管財人は、通帳のコピーをもとに、入出金の記録、借金の返済記録、個人間の借り入れがないかどうかなどを、財産調査も兼ねて一緒に調査します。
信用情報の開示請求をする
信用情報とは、ローンや借り入れの支払いの記録のことです。
この信用情報の支払い記録を開示することで、申告が漏れている債権者がいないかどうか調査される場合もあります。
信用情報は借り入れた本人が開示することもできるため、手続き前に確認しておくと安心です。
借金の理由はどこまで調べられる?
先述した通り、自己破産では借金の理由がギャンブルや浪費、投資などでないかどうか調べられます。
自己破産は、返済義務がなくなる強力な手続きですが、債権者にとって大きな不利益となるため、不正行為がないよう厳格に調査が行われます。
自己破産を認めない不正行為や借金の理由を、免責不許可事由(破産法第252条)と言います。
例えば下記の行為が免責不許可事由に該当します。
- 借金の理由がギャンブルや浪費、投資などによるもの
- 債権者が損をするように財産を隠したり処分したりすること
- 特定の債権者だけ優先して返済を行うこと
- 破産管財人の業務に協力しないこと
- 過去7年以内に自己破産をしていないこと など
破産管財人との面談で借金の理由や、何にお金を使ったのか詳しく聞かれることになります。
ただし、ギャンブルなどがあっても、裁判所の裁量で免責が得られる可能性がありますので、手続きにはしっかり協力しましょう。
自己破産で財産隠しがバレる理由
自分が所有している財産を没収されて、債権者に分配されたくないからと財産を隠せないかと考えている人もいるかもしれません。
あるいは、書類や資料を提出するだけで、本当に隠している財産がバレるのだろうかと疑問に思う人もいるでしょう。
ここでは、自己破産で財産隠しがバレる理由を解説します。
2年分の通帳や家計簿で入出金がわかるから
先述した通り、自己破産では、給与明細、過去2年分の通帳のコピーや家計簿、源泉徴収票などの提出を求められます。
給与明細からは、給料の振り込みがわかりますし、通帳のコピーからは、引き落としの記録がわかります。
さらに、家計簿や申告している支出から、不自然なお金の流れがないかどうかも確認されます。
引き落とし額が大きいのに、大した支出がなければ、タンス預金などを疑われる可能性があるでしょう。
納税記録から車などの所有がわかるから
同じく、破産管財人は税務署や法務局などに、記録を照会することができます。
そのため、固定資産税や登記から不動産の所有、自動車税から車を所有していることがわかります。
また、過去2年以内の名義変更や贈与なども調査が行われるため、家族に名義変更した車や不動産、相続で受けた財産も知られることになるでしょう。
郵便物から返戻金がわかるから
先述した通り、郵便物は破産管財人に転送されます。
そのため、保険の解約通知から、返戻金を受け取っていることが知られることになります。
さらに、投資や毎月引き落とされた保険料は口座からも確認できますし、源泉徴収票から保険を契約しているかどうかもチェックできます。
あらゆる資料の提出を求められるため、所有財産やお金の有無を破産管財人に隠し通すことは難しいでしょう。
自己破産で財産隠しをするリスク
今所有している財産を手放したくないからと財産を隠すと大きなリスクを負うことになります。
破産詐欺罪に問われる
債権者に損をさせるなどの目的で財産隠しを行うと、詐欺破産罪に問われるおそれがあります。
(詐欺破産罪)
第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、下記の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用:破産法第265条|e-Gov
罰則は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこの両方が科せられることになります。
免責が降りない
また、財産隠しは免責不許可事由に該当し、免責が降りません。
免責決定後に発覚すれば、免責は取り消しになります。
財産を手元に残したいからと不正行為をすると、借金を免責してもらうことはできなくなります。
財産を残しながら借金を整理する方法
もし財産を失わずに借金を整理したいのなら、下記で紹介する方法を検討してみてください。
自由財産を拡張してもらう
自由財産とは、自己破産で処分の対象とならない財産のことです。
この自由財産を拡張してもらうことで、一部の財産が手元に残せる可能性があります。
例えば、地方でどうしても車を手放せない場合や、高齢で他の生命保険に加入できないため保険を解約できないような場合であれば、これらの財産を自由財産として手元に残せる可能性があります。
特に車は、仕事や子どもの送迎に必要などの事情があれば、残せるかもしれません。
車を処分するしかないと諦めてしまう前に一度弁護士に相談してください。
他の債務整理を検討する
自己破産で財産を失いたくない場合は、個人再生や任意整理を検討しましょう。
任意整理 | 貸し付け業者と交渉を行い、今後発生する利息などをカットする手続き |
個人再生 | 裁判所の許可のもと借金を最大で10分の1まで減額できる手続き |
借金が100万円以上で高額な場合は、借金を大幅に減額できる個人再生がおすすめです。
手続きによって条件やメリットデメリットが異なるため、まずは弁護士に相談して自分に適した手続きを確認しましょう。
自己破産の財産調査でよくある質問
ここでは、自己破産の財産調査についてよくある質問に回答します。
借金を何に使ったのかわからない場合はどうする?
借金を何に使ったのかわからない場合は、一度弁護士に相談してください。
自己破産をする以上、借金の理由は必ず確認されることになります。
まずは弁護士に相談をして、そもそもなぜ借金をしたのかという部分から説明して、まずは全体を思い出すようにしましょう。
どこから借りたのかわからないという人は、信用情報に開示請求を行ってください。
自己破産で通帳はどこまで調べられる?
自己破産で調べられる通帳は過去2年分です。
ただし、手続きに影響するような不審な入出金がある場合は、さらに遡って確認される可能性があります。
まとめ
自己破産は借金の返済義務がなくなる強力な手続きですが、債権者にとっては大きな不利益となります。
そのため、本当に借金が返済できないのか、どの程度の財産があるのか、借金や債権者はどのくらいいるのか、借金の理由は何かといった部分がこと細かく調査されることになります。
破産管財人は、給与明細から通帳、納税の記録などあらゆる資料を確認できるため、財産を隠し通すのは難しいでしょう。
また、財産を隠した場合、免責が降りないだけでなく、罪に問われる可能性があります。
財産を残したい、手続きで不安な点があるという人は、弁護士に相談しましょう。