詐欺罪の構成要件や逮捕後にとるべき対応を解説

詐欺は立証が難しい犯罪といわれます。一方で、統計上の起訴率は高く、詐欺で逮捕されると厳しい刑事処分が下る可能性があります。

 

この記事では主に以下の点について解説します。

 

  • どのような条件がそろえば詐欺罪が成立するか
  • 詐欺罪に類似する犯罪
  • 詐欺事件の傾向
  • 詐欺で逮捕された後にとるべき対応

 

今後の対応にご活用ください。

 

詐欺罪とは

刑法246条第1項は、人を欺いて財物を交付させた者は10年以下の懲役に処すると定めています。

 

詐欺の典型的な手口としては、以下のようなものがあります。

 

  • 犯人が電話などで親族や公共機関の職員を名乗り、被害者を信じ込ませて現金やキャッシュカードをだまし取る特殊詐欺
  • 結婚する意思がないのに結婚をにおわせて金をだまし取る結婚詐欺
  • 嘘の投資話を持ちかけて金をだまし取る投資詐欺

 

また、刑法246条には第2項があり、前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も同項と同様とすると規定されています。

 

2項に該当する犯罪行為としては、無銭飲食や無賃乗車などがあります。

 

詐欺罪の構成要件

次に、詐欺罪の構成要件を確認します。構成要件とは、犯罪が成立するための条件のことです。

詐欺罪の構成要件は以下の7つです。

  1. 欺罔(ぎもう)
  2. 錯誤
  3. 財物の処分
  4. 財物の移転
  5. 1から4までに因果関係が認められること
  6. 故意
  7. 不法領得の意思

 

欺罔

欺罔とは、人を欺(あざむ)き、だます行為です。結婚詐欺でいえば、結婚する意思がないのに結婚をにおわせ、「結婚する前に親の借金を返したい」などと嘘をつくことです。

 

欺罔については、故意に行ったと認められる必要があり、以下のようなケースでは詐欺罪が成立しない可能性が高いです。

 

  • レストランで食事をし、財布を持ってきたつもりだったが自宅に忘れていた
  • 「ボーナスが振り込まれたら必ず返す」と言って友人から金を借りたが、会社が倒産してボーナスが支給されなかった

 

錯誤

構成要件の2つ目は、欺罔行為によって相手が錯誤に陥っていることです。

加害者の嘘を被害者が信じていなければ、詐欺罪は成立しません。

 

例えば、結婚詐欺の被害者が加害者に結婚の意思がないことに気付き、加害者の主張が嘘だとわかっていながら、好意を抱いてお金を渡していた場合は、詐欺罪が成立しない可能性があります。

 

財物の処分

構成要件の3つ目は、財物の処分です。これは被害者がお金など財物を処分する(加害者に渡す)ことです。

 

ポイントは、だまされていながらも被害者が自らの意思でお金を渡したかどうかです。加害者が被害者の目を盗んで金を持ち去った場合などは、詐欺罪ではなく窃盗罪が適用される可能性があります。

 

財物の移転

構成要件の4つ目は、財物の移転です。これは実際に被害者の財物が加害者に移転することです。

 

因果関係

5つ目に、上記各行為に因果関係が必要となります。例えば、錯誤の箇所で挙げた例で、被害者が錯誤に陥ったから財物を交付したという関係が認められないため、因果関係なしとして詐欺罪が成立しません。

 

故意

構成要件の6つ目は、故意です。上記の1から4の構成要件についての認識が必要となります。すなわち、人をだまして(欺罔行為)、相手を錯誤に陥らせ(錯誤)、財物の交付を受ける(財物の処分)つもりで各行為を行う必要があります。

 

不法領得の意思

最後に、不法領得の意思が必要となります。すなわち、判例上、権利者を排除して他人の物を自分の所有物として、その経済的用法に従い利用処分する意思が必要とされています。

 

これら7つの構成要件がすべてそろってはじめて、詐欺罪が成立します。

 

詐欺罪の罰則

詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。

 

詐欺罪の時効

詐欺罪の公訴時効は7年です。公訴時効とは、犯罪行為が終わってから法律の定める期間が経過すれば、犯人を起訴ないし処罰できなくなることです。

 

詐欺罪以外に問われうる罪

詐欺罪に類似した罪として、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)、準詐欺罪(刑法第248条)などがあります。

 

電子計算機使用詐欺罪とは

電子計算機使用詐欺罪は昭和62年に刑法に設けられた規定です。

 

通常の詐欺罪は、を欺いて財物をだまし取る行為を処罰の対象としています。

 

しかし、これではコンピューター(電子計算機)を欺いて財産上不法の利益を得る行為に対応できないことから、電子計算機使用詐欺罪が創設されました。

 

例)

拾った他人名義のクレジットカードで、カードに記載されている名前や番号を用い、商品を購入した

 

電子計算機使用詐欺罪の法定刑も10年以下の懲役です。

 

準詐欺罪とは

未成年者の判断能力の未熟さに乗じたり、高齢者の判断能力が低下していることを利用したりして、財産上不法な利益を得る行為が準詐欺罪に該当します。

 

例)

認知症の高齢者を銀行に連れていき、預金を引き出させて現金をだまし取った

 

準詐欺罪のポイントは、欺罔と錯誤がなくても成立する点です。人をだます行為を必要としません。認知症の高齢者に「お金を渡して」と頼み、被害者が言う通りに渡した場合、だます行為はしていませんが、準詐欺罪に問われる可能性があります。

 

準詐欺罪の法定刑も10年以下の懲役です。

 

詐欺未遂罪とは

詐欺は未遂でも罰せられます。つまり、財物の処分、移転が行われなくても、財物をだまし取ろうと人をだます行為に及んだ場合は、詐欺未遂罪に問われます。だまそうとした相手が錯誤に陥っていなくても、成立します。

 

近年は、特殊詐欺に対して警察が被害者の協力を仰ぎ、だまされたふり作戦を実施して特殊詐欺の受け子を逮捕するケースが増えています。

 

被害者はだまされたふりをしているだけで錯誤に陥ってはいませんが、欺罔行為は認められるため、詐欺未遂罪が成立します。

 

補足:詐欺と知らずに加担していた場合、逮捕される?

特殊詐欺に関しては、グループの指示役、キャッシュカードなどを受け取る受け子、ATMから現金を引き出す出し子、なりすまし電話をかけるかけ子など、犯行の分業化が進んでいると指摘されています。

 

末端の受け子役などについては、インターネット上で高額アルバイトなどとうたい、内容を詐欺とは告げずに募集しているケースがあります。

 

特殊詐欺の受け子などを詐欺と知らずに担っていた場合、逮捕されるのでしょうか。

 

結論から述べると、逮捕される可能性は高いです。最高裁判所は、詐欺とは認識していなかったと無罪を訴える受け子役の被告人に、有罪を言い渡す判決を出しています。詐欺を疑わせる高額アルバイトには気をつけましょう。

 

詐欺で逮捕されるとどうなる?事件の傾向を解説

次に詐欺事件の傾向を解説します。詐欺事件の傾向については、令和2年版犯罪白書で確認できます。

 

詐欺の認知件数

令和2年版犯罪白書によると、令和元年の詐欺の認知件数は3万2207件でした。平成29年に4万2571件に達して以降、認知件数は減少傾向にあります。

 

詐欺の検挙数・検挙率

令和元年の詐欺の検挙件数は1万5902件でした。認知件数に占める検挙件数の割合(検挙率)は49.4%で、検挙率は平成29年以降、上昇傾向にあります。

 

詐欺の身柄率

令和元年の詐欺の身柄率は57.9%でした。身柄率とは、警察などが被疑者を逮捕し身柄を検察に送致した人数(A)と、検察庁で被疑者を逮捕した人数(B)を合わせた数(A+B)が、詐欺の逮捕総数(C)に占める割合(A+B/C×100)を意味しています。

 

詐欺の勾留請求率

勾留請求率は、上記のA+Bに対して、検察官が勾留の請求をした人数(D)が占める割合(D/A+B×100)を計算することで求められます。令和元年の詐欺の勾留請求率は98.9%で、高い水準を示しています。

 

詐欺の起訴率

令和元年の詐欺の起訴総数(E)は7863人でした。不起訴総数(F)は5921人で、起訴率(E/E+F×100)は57.0%でした。同年の刑法犯の起訴率は38.2%で、詐欺は起訴率の高い犯罪です。

 

詐欺事件で逮捕された後の流れ

詐欺事件で逮捕された後は、以下の順番で刑事手続きが進みます。

 

  • 警察から検察官に被疑者の身柄を送致(逮捕から48時間以内)
  • 検察官による勾留請求(送致から24時間以内)
  • 勾留決定(原則10日間、最長で20日間)または勾留請求却下(釈放)
  • 起訴または不起訴(釈放)
  • 起訴された場合、起訴後勾留の可能性(原則2か月間、以後1か月ごとの更新が可能)

 

逮捕後の流れの詳細は以下の記事で解説しています。

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詐欺逮捕で弁護士に相談するメリット

詐欺で逮捕された場合、弁護士に刑事弁護を依頼することで、刑事処分が軽くなる可能性が高まります。詐欺は初犯であっても実刑が下るおそれもあるだけに、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

 

取り調べへの対応方法がわかる

弁護士に刑事弁護を依頼するメリットの1つ目は、取り調べに関する助言が得られることです。

 

警察官や検察官は取り調べでさまざまなことを被疑者から聴取し、聴き取った内容を供述調書にまとめます。供述調書は刑事裁判で証拠になる重要な書類で、何を供述するかは慎重に考えなければなりません。

 

弁護士は個々のケースに応じて、被疑者が不利にならないよう適切にアドバイスできます。

 

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被害者と示談交渉を進められる

弁護士に刑事弁護を依頼するメリットの2つ目は、弁護士に示談交渉を任せられる点です。被害者との間で示談が成立し和解できれば、検察官や裁判官は被害者の処罰感情が和らいでいると判断できます。

 

こうした要素は、不起訴になったり刑事裁判で執行猶予が付いたりする可能性を高めます。

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まとめ

令和元年の刑法犯の起訴率は38.2%でした。詐欺の起訴率は57.0%と高く、被害額や犯行態様によっては初犯であっても実刑が下る可能性は否定できません。

刑事処分を軽くするには、弁護士に刑事弁護を依頼して示談交渉を進めるなど、早急な対応が欠かせません。詐欺に関してご相談したいことがあれば、ネクスパート法律事務所にお問い合わせください。

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