自転車窃盗は逮捕される?防犯カメラで発覚?現行犯以外で捕まる?
法務省によると、2022年の自転車窃盗の認知件数は12万8,883件で、前年比で20%増加しています。
自転車窃盗が増加した背景には、個人のモラルの低下や、犯罪組織が関与していると言われています。
一見軽微な犯罪ですが、自転車窃盗で捜査が行われれば、後日逮捕されるケースもあります。
この記事では、自転車窃盗について以下の点を解説します。
- 自転車窃盗の検挙率や逮捕されるケース
- 自転車窃盗で逮捕されるとどうなるのか
- 自転車窃盗をしてしまった場合にすべきこと
目次
自転車窃盗は捕まる?
自転車窃盗は、法的に窃盗罪として扱われます。
何かの拍子に警察に発覚すれば、逮捕や刑事処分を受ける可能性があるでしょう。
自転車窃盗で捕まるかもしれないと不安であれば、窃盗行為をしないのが賢明です。
すでに自転車の窃盗をしてしまい、不安な人は、後述する対処法を参考にしてください。
ここでは、自転車窃盗の検挙率や逮捕されるケースについて解説します。
自転車窃盗の検挙率は約7%
法務省によると、2022年の自転車窃盗の検挙率は約7%と、認知件数に対して少ない割合となっています。
自転車窃盗の被害件数は増加傾向ですが、実際に被害を受けてから被害届が提出されるまでには時間がかかり、窃盗犯の特定が困難になっていると考えられます。
一方で、自転車で移動している際に、警察から話しかけられて、所有者の確認が行われて、窃盗が発覚するケースもあるため、軽く考えるのは危険です。
自転車窃盗で逮捕されるケース
前述した統計によると、2022年に自転車窃盗を含む窃盗罪で逮捕された割合は31.6%でした。
そもそも逮捕には種類があり、疑わしいというだけで即座に逮捕されるわけではありません。
①現行犯逮捕 | 犯罪に使用したと明らかな凶器を所持しているなど、現に罪を犯した人に行われる逮捕 |
②通常逮捕 | 罪を犯したと疑うに足る相当な理由がある場合に、裁判所の許可を得て発付された逮捕状にもとづいて行われる逮捕 |
③緊急逮捕 | 重大な罪を犯したことが明らかで緊急を要する場合に逮捕状の発付前に行われる逮捕
※指名手配犯の逮捕など |
自転車窃盗の場合は、職務質問などで発覚する現行犯逮捕のケースが多いでしょう。
逮捕されないものの、捜査や取り調べだけが行われて、処分を受ける在宅事件となることもあります。
在宅事件は身柄拘束を受けませんが、起訴(刑事裁判になること)されたり、罰金刑が科されて前科がついたりすることもあるため、逮捕されないから問題ないと考えるのは危険です。

防犯カメラから現行犯以外で逮捕されるケース
自転車窃盗は、現行犯以外で逮捕されるケースもあります。
2020年には、自転車を繰り返し窃盗していた男性が、防犯カメラの映像から特定されました。
男性は、宅配サービスの配達員で、早く配達するために3台(3万5,000円相当)の自転車を盗んだ疑いがありました。
当初は身柄拘束をされずに事情聴取を受けていましたが、連絡が取れなくなり逮捕されました。
このような逮捕は通常逮捕といい、逃亡や証拠隠滅のおそれがある際に行われる逮捕です。
防犯カメラから犯行や被疑者(容疑者)が特定されることもあります。
参考:ウーバー配達員、自転車窃盗容疑 「多く配達するため」|朝日新聞デジタル
自転車窃盗をした場合の罰則
ここでは、自転車窃盗をした場合に問われる可能性のある罪を解説します。
窃盗罪
自転車を盗むと窃盗罪が成立します。窃盗罪の罰則は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
(窃盗)
第二百三十五条他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪が成立する条件は次のとおりです。
- 他人が占有する財物をであること
- それを自分や他人の占有に移すこと(窃取)
- 他人の財物を盗む意識と許容があること
- 不法領得の意思にもとに行われたこと
不法領得(ふほうりょうとく)の意思とは、他人の占有物を自らの物として、経済的に利用したり、処分したりしようとする意思のことです。
例えば、自分が利用するためや、売却目的で自転車を盗めば窃盗罪が成立します。
一方で、無断で利用して後で返却する意思があったり、自分の自転車と間違えたり、単に嫌がらせとして隠すことを目的としている場合、不法領得の意思はないと判断されます。
ただし、一時的な利用でも、長時間利用すれば、不法領得の意思があると判断される可能性もあります。
占有離脱物横領罪
放置自転車を盗んだ場合は占有離脱物横領罪に問われる可能性があります。
占有離脱物横領罪とは、遺失物など他人の占有を離れた物を横領した場合に成立する罪です。
罰則は1年以下の懲役、または10万円以下の罰金、もしくは科料(1,000円以上1万円未満の罰金)が科されます。
(遺失物等横領)
第二百五十四条遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
占有離脱物横領罪が成立する条件は、①遺失物など他人の占有を離れた物であること、②それを自分の物にする意思にもとづいて管理下に置くことです。
住居侵入罪
自転車を盗まなくても、窃盗目的でマンションの敷地内に入った場合、住居侵入罪が成立する可能性があります。
住居侵入罪の罰則は3年以下の懲役、または10万円以下の罰金です。
(住居侵入等)
第百三十条正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
器物損壊罪
自転車を盗む際に鍵を壊して盗んだ場合は、器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪の罰則は、3年以下の懲役、または30万円以下の罰金、もしくは科料です。
(器物損壊等)
第二百六十一条前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
自転車窃盗で逮捕された場合
自転車窃盗で逮捕された後の流れや処分について解説します。
自転車窃盗で逮捕された後の流れ
自転車窃盗に限らず、逮捕された場合は、逮捕から48時間以内に取り調べが行われ、事件が検察へ引き継がれることになります(送致)。
これは、事件を起訴するか、不起訴にするか判断する権限が検察にあるためです。その後、検察は24時間以内に勾留の要否を判断します。
勾留は、逮捕と同様に逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に、裁判所の許可を得て警察の留置場に身柄を拘束することです。
その勾留期間中に、検察が起訴か不起訴かを判断します。起訴されれば、刑事裁判にかけられて、刑罰が科されることになります。
軽微な事案なら微罪処分になることがある
窃盗や占有離脱物横領罪など比較的軽微な事案なら、警察官の判断により微罪処分となり、警察署ですぐに身柄が解放されることもあります(刑事訴訟法第246条)。
微罪処分となると、検察に送致されないため、起訴もされず、前科もつかずに済みます。
なお、微罪処分は各地方検察庁の指示にもとづいて、対象となる事件やケースが決められています。
対象となる軽微な事件としては、窃盗や占有離脱物横領罪、暴行罪などが挙げられます。
被害額が2万円以下、反省を示しており、被害者の処罰感情が厳しくないことなども基準となります。
ただし、身柄が釈放されたからといって、必ずしも微罪処分になったとは限りません。
そのまま、事件の書類だけ検察に送致されて、在宅起訴となるケースもあります。
検察から連絡が来たら、在宅事件として捜査されており、今後処分が下される可能性があると考えた方がよいでしょう。
20歳未満は少年事件となる
自転車窃盗をした人が20歳未満の場合は、少年事件の扱いとなります。少年事件の場合も、逮捕から勾留までは成人とおおよそ同じ流れです。
しかし、更生の可能性が成人よりも高い少年の場合、刑罰でなく矯正教育が必要だと考えられており、検察ではなく、家庭裁判所が処分を決定します。
家庭裁判所では、少年院送致や、保護司のもと更生を目指す保護観察などの処分が下されます。
法務省によると、2022年に家庭裁判所で送致された事件の33.9%が少年院送致や保護観察などになっていますが、割合としては多くありません。
勾留されると10~20日間身柄を拘束される
勾留された場合は、10~20日間留置場に身柄を拘束をされることになります。
外界とは完全に隔絶されるため、当然ながら、出社や登校ができなくなります。
なお、2022年に窃盗罪で逮捕された人のうち、約97.3%が勾留されているため、逮捕されれば高確率で勾留されると予想されます。
参考:罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員 -自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く- - 処理時年齢別・性別 別|e-Stat 政府統計の総合窓口
有罪となると罰金でも前科がつく
起訴される場合、正式な裁判で裁かれる公判請求と、簡易的な書面のみの手続きで罰金刑が科される略式請求があります。
正式な裁判で有罪となれば、罰金や執行猶予がついた場合でも前科がつきます。同様に、略式請求により罰金刑で済んだ場合も、前科がつきます。
自転車窃盗で在宅事件となった場合の流れ
自転車窃盗の場合、逮捕されずに、在宅事件として捜査を受けることも考えられます。
ここでは、在宅事件となった場合の流れについて解説します。
警察や検察から呼び出されて取り調べを受ける
警察や検察に呼び出されて取り調べを受ける場合、在宅事件として捜査されている可能性が高いです。
身柄拘束は受けませんが、定期的に検察に呼び出されて取り調べを受けるなどの捜査が行われるでしょう。
検察から呼び出される回数は、罪を認めていればおおよそ1、2回程度ですが、呼び出しまでに2~3か月ほどかかることもあります。
なお、検察や警察からの呼び出しに応じない場合は、逮捕されることもあるため、素直に応じるようにしましょう。
在宅のまま起訴される
検察が自転車窃盗に対して、起訴して裁判で裁いてもらうべきだと判断されれば、そのまま在宅起訴されるケースもあります。
在宅起訴された場合は、呼び出された日に裁判に出席し、裁判を受けることになります。
自転車窃盗をしてしまった場合
一見軽微な犯罪ではありますが、自転車窃盗が発覚すれば、警察の捜査を受けることになります。
自転車窃盗をしてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?ここでは、自転車窃盗をした場合にとれる手段や対処法について解説します。
弁護士に相談して取り調べのアドバイスをもらう
もし自転車窃盗について、検察や警察から呼び出しを受けている場合は、自分で弁護士を探して相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、今後の流れや、どのくらいの処分となるのかの見立て、そして取り調べに関するアドバイスをもらえるでしょう。
そもそも自転車を間違えて持ち去ってしまったなど、窃盗するつもりがなかったのであれば、弁護士と相談のもと、無罪を主張する方針も検討すべきです。
自首や出頭をする
自転車窃盗の検挙率は高くはありませんが、突然警察に逮捕されるのが不安であれば、自首や出頭をする方法もあります。
自首 | 事件発覚や犯人特定前に、警察に犯罪事実を申告すること |
出頭 | 警察が犯罪事実を認識して捜査をしている場合に自ら警察に出向くこと |
なお、自首は刑罰が減軽される理由の一つで、処分が軽くなる可能性があります。
(自首等)
第四十二条罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
引用:刑法第42条|e-Gov
自首することで、逃亡や証拠隠滅のおそれもないため、突然の逮捕も回避できると考えられます。
被害者と示談をする
被害者と示談をすることも有効な手段です。示談が成立すれば、被害が回復されたとして、刑事処分が軽くなる可能性が高いです。
窃盗罪に限らず、被害者がいる犯罪では、多くの場合示談を申し入れます。
ただし、自転車窃盗の場合は、加害者側が被害者と面識がある場合などを除き、被害者を特定するのは困難です。
また、弁護士以外が捜査機関から被害者の連絡先を入手することはできません。
面識があるとしても、直接示談を持ちかけると、トラブルに発展する可能性があるため、弁護士を通じて示談を申し入れるのが一般的です。
なお、窃盗罪の示談金は、被害額+精神的な苦痛に対する慰謝料となります。
被害者の処罰感情や処分の見通し、交渉によっても異なります。
逮捕されたら弁護士に相談する
自転車窃盗で逮捕されてしまった場合は、弁護士に相談してください。
逮捕された人には、当番弁護士制度を利用する方法があります。当番弁護士は逮捕された人が一度だけ無料で呼べる弁護士です。
取り調べに関するアドバイスから、そのまま私選弁護人として依頼することも可能です。
家族が弁護士を探して依頼することもできます。刑事事件の実績がある弁護士を探して依頼してください。
自転車窃盗についてよくある質問
自転車窃盗は初犯なら不起訴になる?
確かに、自転車窃盗は比較的軽微な犯罪であり、しっかりと反省し、被害者と示談が成立していれば、不起訴になる可能性が高いです。
ただし、今回発覚しただけで、これまでに何度も自転車窃盗を繰り返しているなど、常習性が認められたり、余罪が多数あったり、被害金額が高額であるような場合は、初犯でも起訴や重い処分が科される可能性があります。
取り調べで嘘をついてしまったらどうなる?
取り調べや職務質問で嘘をついて、後でその嘘が発覚すると、不利な状況に陥る可能性があります。
後から本当のことを言っても、供述に一貫性がないため、さらに疑いをかけられるおそれもあります。
また、取り調べで供述調書に署名や押印をしてしまうと、裁判になった際に覆すことはできません。
供述調書は内容に誤りがないか確認し、誤りがあれば訂正を申し入れ、確認した上で署名や押印をするようにしてください。
一番良いのは弁護士に相談をすることです。一人で解決を図ろうとせず、弁護士に相談してください。

自転車を間違ったり後で返したりした場合も罪になる?
自転車を間違って持ち去った場合は、窃盗の意思がないため、窃盗罪は成立しません。
ただし、窃盗罪を疑われた際に、自分で窃盗の意思がなかったと説明や証明することは難しいでしょう。
逮捕された場合は、まず黙秘し、弁護士を呼ぶのが最善です。逮捕されていない場合は、弁護士に相談した上で、対処するようにしましょう。
自転車を後で返そうと思っていた場合も、窃盗罪は成立しない可能性がありますが、実際に利用した時間や頻度などによっては、窃盗罪が成立する場合もあります。
個人で判断をするのは危険です。警察から連絡があった場合は、弁護士に相談してください。
自転車窃盗をしたら会社や学校に連絡される?
社会人の場合、自転車窃盗をしたからといって、警察から会社に連絡されることはありません。
会社に連絡がいくのは、被疑者の犯罪が会社や会社の人に関与して捜査が必要な場合だけです。
一方、学生の場合は、警察から学校に連絡がいく可能性があります。これは、警察が各都道府県や市の教育委員会と連携して、非行防止のために、情報共有を行っているからです。
学校に連絡が入ったからといって、直ちに退学処分が下されるわけではありません。
学校の校則や、生徒がどのような犯罪に関与したか、刑事処分の内容によって処分が決定されます。
早期に被害者に謝罪や示談を行い、不起訴処分となれば、退学が回避できる可能性もあるため、弁護士に相談するのがおすすめです。
まとめ
自転車窃盗は一見軽微な犯罪に見え、検挙率も高くはありません。
しかし、万が一窃盗の事実が発覚すれば、警察の捜査や逮捕、長期の身柄拘束や刑事処分などのリスクがあります。
防犯カメラによって被疑者が特定されるケースもありますし、逮捕されなくても在宅起訴される可能性があります。
自転車窃盗に身に覚えがあり、逮捕されるのではと不安に感じているのであれば、窃盗行為をやめましょう。
もし警察から連絡があれば、捜査が行われている可能性があります。不安な人は弁護士に相談してください。