自首のメリット・デメリット|その他注意点について解説
自首(じしゅ)とは、自らが犯した犯罪について、事件が発覚する前に捜査機関へ出向き申告することです。
何らかの罪を犯した場合、いつか逮捕されてしまうのではないかと不安になるのではないでしょうか。不安な毎日が続くのであれば自首した方が良いと思っても、その後の流れや、メリット・デメリットも気になります。
この記事では、主に以下の点を解説します。
- 自首とは何か
- 自首のメリット・デメリット
- 自首前後の流れ
- 自首をする際に知っておきたいポイント
自首とは
テレビドラマなどでは、警察に行って罪を犯しましたと申告すれば自首が成立するようなイメージがありますが、それだけでは自首とは認められないケースがあります。
ここでは自首の成立と不成立、出頭との違いについて解説します。
自首が成立する要件
自首の定義は、以下のとおりです。
- 警察などの捜査機関へ
- 犯罪や犯人が特定される前に
- 自らの犯罪事実を申告し
- 訴追を求める
※訴追(そつい):検察官が刑事事件について公訴を提起し、それを遂行すること
自首は捜査機関が事件を把握していない場合や、犯人が不明の場合に成立します。何らかの事件で取り調べを受けている際に、警察が把握していない余罪について申告しても、自首にあたります。
自首が不成立になる場合
捜査機関が事件や犯人を把握している場合は、自首とは認められない可能性があります。
事件の被疑者として取り調べを受けている際に、自らが犯人であると認めたり、全国に指名手配を受けたりしている場合も、自首とは認められないでしょう。
自首と出頭の違い
自首は、事件が発覚する前に捜査機関に出向くことです。
出頭は、捜査機関が事件の発生を確認し犯人が特定されている状態で、捜査機関に出向くことです。自首と出頭では、捜査機関が事件および犯人を特定しているかどうかが違います。
自首には該当しない場合でも、後で起訴された際に情状が考慮され、処罰が軽くなる可能性があります。
自首のメリット5つ
自首には主に以下のメリットがあります。
- 不安な毎日から解放される
- 家族や職場への急な連絡を避けられる
- 逮捕されないこともある
- 不起訴処分の可能性が高まる
- 処罰が軽くなる可能性がある など
不安な毎日から解放される
罪を犯した場合、多くの人はいつ発覚するのだろう、いつ逮捕されるのだろうと不安な毎日を送ります。
自首することで、この先いつ逮捕されるのかという不安から解放されます。処罰される可能性もありますが、弁護士に相談・依頼すれば、アドバイスをもらえたり、弁護活動をしてもらえたりします。
もし自首後にそのまま逮捕された場合でも、弁護士と話ができれば精神的な負担が軽くなります。
家族や職場への急な連絡を避けられる
逮捕される際に事前の通知はありません。急に警察が自宅や職場に来て逮捕されますが、これは逃亡や証拠隠滅を防止するためです。そこで家族や会社に犯罪の被疑者になっていることが知られます。
自首する際は、家族や職場へも少なからず影響がでるので事前に報告する必要があります。結果的に知られてしまいますが、急に警察が来て逮捕されるより、心理的なショックも少なく、職場への影響も最低限に抑えられます。
逮捕されないこともある
逮捕は、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある場合にされます。自首を行うと、逃亡や罪証隠滅の可能性が低いと考えられて、逮捕されない可能性があります。
不起訴処分の可能性が高まる
自首は、罪を犯したことを反省していると考えられ、供述を信用してもらいやすくなります。
例えば、傷害罪で逮捕された場合、捜査機関は被害者からの話を先に聞きますが、被害者と被疑者では言い分が違うことがあります。被害者は自分が受けた暴力の内容は話しても、逆に被害者が被疑者にした暴力の話をしなかったり控えめに話したりするケースなどです。
逮捕されてから、被疑者が自分に有利な内容を話してもなかなか信用してもらえない場合もあります。しかし自首ならば、被害者を傷つけた場合でも、そこにどんな事情があったのか、実は自分も傷つけられていたなどの状況を報告できます。その事実が認められれば、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
検察官が自首したことを情状として認め、不起訴処分にする可能性もあります。不起訴処分になれば前科も付きません。
処罰が軽くなる可能性がある
自首は犯人が罪を認め反省していると認められやすく、情状によって量刑が軽くなる可能性があります。
刑法では、その刑を減軽できると定められています。ただし、犯罪によっては減軽されないこともあるので、自首すれば罪が軽くなるとは限りません。
刑法
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
引用:e-Gov法令検索
また、自首していることが被害者に伝われば、示談をしやすくなる可能性があります。示談が成立すれば不起訴の可能性や処罰が軽くなる可能性が高くなります。
自首のデメリット2つ
自首には主に以下のデメリットがあります。
- 処罰される可能性が高くなる
- 自首した日に逮捕されることもある
処罰される可能性が高くなる
警察などの捜査機関が事件を認識していなければ、そのまま事件発覚に至らず処罰されずにすむかもしれません。自首したことで、取り調べを受け、処罰される可能性は高くなります。
警察が事件を認識しているかどうか、犯人の特定ができているかどうかは、自分で調べる方法はありません。迷っている間に逮捕されてしまう場合もあります。罪を犯したことを後悔しているのであれば、自首を検討しましょう。
自首した日に逮捕されることもある
自首は自分が犯した罪についての申告であり、罪を認めている状態です。証拠が揃っていればその日のうちに逮捕される可能性があります。
自首前後の流れ
自首するための準備をする
自首するかどうかご家族を含めて慎重に検討しましょう。自首はその後の人生に大きな影響をあたえる可能性があります。
弁護士に相談するのも1つの方法です。弁護士に依頼後であれば、ケースによっては自首に同行してもらえる場合があります。また、自首に同行してもらえない場合でも、今後の対応に関するアドバイスを貰えたり、上申書や身柄請書の作成をしてもらえたりする場合があります。
警察などの捜査機関へ出向く
自首は、犯罪捜査規範によれば、管轄区域内かどうかを問わないとされています。お近くの警察署へ出向きましょう。ただし、出張中や旅行中の出来事だった場合は、現地の警察署に移送される可能性があります。
(告訴、告発および自首の受理)
第六十三条 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
2 司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。
取り調べを受ける
捜査機関から取り調べを受けます。事件の状況や詳細などを申告すると、その内容について確認しながら自首調書が作成されます。証拠があればそれを提出し、事実を報告しましょう。
捜査機関は、以下の点についても注意しながら捜査を行います。
- 犯罪がすでに発覚していたものではないか
- 他に存在する真犯人を隠すためのものではないか
- 自身が他に犯した罪を隠すために自首したものではないか
逮捕もしくは在宅事件になる
重大な事件の場合はそのまま逮捕される可能性がありますが、取り調べの結果、軽微な事件で逃亡のおそれがない場合は帰宅が許され、在宅事件になる可能性が高くなります。
逮捕後の流れについては以下の記事をご参照ください。
自首したい方に知って欲しいポイント3つ
自首の仕方によってもその後の状況がかわる場合があります。ここでは、自首する前に知って欲しいポイントを解説します。
自首すべきか?判断基準は?
自首しようと思っても証拠がない場合があります。被害届も出されていなければ、そもそも事件として扱われない可能性があります。それでも、自首した方が良いのでしょうか?
自首すべきかどうかは難しい判断です。ご家族と相談する必要もあるでしょう。ご自身が罪を犯してしまったことを後悔して反省しているなら、自首して罪を償うという考え方もあります。
証拠がなく被害届も出ていなければ、その時点では自首として成立しません。後日被害届が出されて立件された場合は、最初に出向いた日に遡り自首が成立します。
自首する際の注意点
自首の日時調整をする
そのまま逮捕される場合もあるので、家族や職場と日程などの調整をしましょう。職場には引継ぎが必要な業務もあるので、なるべく迷惑がかからないようにしましょう。
証拠などを持参する
自首をすると、捜査機関は犯人に間違いがないかどうかを確認します。防犯カメラに写っている場合は、事件時に来ていた洋服なども確認します。また、盗撮などの場合はパソコンや携帯電話の中身を確認する必要があるので、持って行く必要があります。その他、準備できる証拠はすべて持って行きましょう。
刑罰を軽くしてもらいたいがために、証拠の一部を処分してしまうと、証拠隠滅となり逆に刑罰が重くなる可能性があります。自首するかどうか迷っている場合は、証拠は処分せず、すべて保管しておきましょう。
逮捕された場合に必要なものを持参する
自首後、逮捕に続き勾留される場合もあるので、着替えと現金を持参しましょう。勾留中に他の人が残していったものを貸してもらえる場合もありますが、洗濯がしてあるといっても他人のものは気が進まないといったこともあります。特に下着などは持参する方が良いでしょう。現金は便箋や鉛筆など必要な日用品を購入する場合があるので必要です。
弁護士に自首同行の依頼もできる
自首は一人で行くものと思っていらっしゃる方もいるかもしれません。犯罪のケースにもよりますが、弁護士にご相談・ご依頼いただくことで、自首に同行してもらえる場合があります。
弁護士が自首同行する際には、上申書や身柄請書などを事前に作成して警察に提出もできます。自首をお考えの際は、まずは弁護士にご相談ください。
まとめ
罪を犯した時、今後は二度としないと反省し自首することで得られるメリットがありますが、自首が成立するかどうか微妙なケースもあります。
早めに弁護士に相談し依頼することで、自首後の弁護活動を含めてアドバイスがもらえます。
ネクスパート法律事務所では、ご相談を24時間受け付けておりますので、まずはお電話、メール、お問い合わせフォームよりご連絡ください。