更新日:2026年10月26日 (月)

公開日:2021年12月28日 (火)

供述調書とは?作成の流れや署名時の注意点・証拠能力を解説

供述調書とは?作成の流れや署名時の注意点・証拠能力を解説 供述調書とは?作成の流れや署名時の注意点・証拠能力を解説

サマリー

警察や検察の取り調べを受ける際、どのような書面に署名を求められるのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

取り調べで話した内容を捜査機関がまとめた「供述調書」は、後の刑事裁判で証拠として採用され、判決に大きな影響を与える可能性がある重要な書類です。

納得できない内容のまま署名・押印してしまうと、後から覆すことが困難になる場合もあります。

この記事では、供述調書の基本的な概要や作成の流れ、署名・確認時の注意点のほか、証拠能力に疑義が生じるケースや適切な対処法について分かりやすく解説します。

供述調書とは?刑事裁判における証拠としての位置付け

供述調書とは?刑事裁判における証拠としての位置付け

刑事事件において被疑者が警察官や検察官の取り調べを受ける際、聴き取られた発言内容をもとに捜査機関が書面としてまとめる書類を「供述調書」と呼びます。

取り調べでのやりとりを整理して作成されるものであり、捜査官からの質問に対する供述内容が記録されます。

この供述調書は、捜査機関が事件の経過や事実関係を整理する記録にとどまらず、その後の刑事手続きにおいて非常に重い位置付けを持ちます。

検察官によって起訴された場合、刑事裁判において証拠として提出され、裁判官が事実の有無や量刑を判断するための資料として扱われることがあります。

供述調書が刑事裁判で証拠として採用された場合、その記載内容は裁判の帰趨を左右する重要な判断材料になり得ます。

実際の公判では、被告人や証人が法廷で行う証言と、過去の取り調べ段階で作成された供述調書の内容とが食い違う場面が生じることがあります。

法廷での供述と捜査段階の調書の内容が異なるとき、裁判官がどちらを信用すべきかが争点となるケースも少なくありません。

刑事訴訟法第321条第1項第2号や第3号では、被告人以外の供述調書に関して、公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき「特別の情況」があるときには、調書を証拠にできる旨が規定されています。

公判廷での発言の信用性に疑義が生じた場合、裁判官が取り調べ時の供述調書のほうを信用する可能性も想定されます。

このように、取り調べの場でどのような内容が書面に記録されるかは、後の公判手続きにも直結する極めて重要な要素となります。

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供述調書が作成される手続きの流れ

刑事事件の捜査において供述調書を作成する権限は、法律上定められた捜査機関にあります。

刑事訴訟法第198条第3項では、検察官、検察事務官、司法警察職員(警察官など)が取り調べに際して被疑者の供述を調書に録取できると規定されています。

したがって、捜査の過程で供述調書を作成するのは主に警察官や検察官です。

取り調べを進めるにあたり、捜査官はまず被疑者に対して、自己の意思に反して供述する必要がない旨(供述拒否権)をあらかじめ告知しなければなりません。

取り調べでは、事件当日にどこで何をしていたのかといった具体的な行動、被害者との関係性、行為に至った動機など、事件に関連する多様な質問が投げかけられます。

捜査官はこれらに対する被疑者の回答を聞き取り、事実関係を整理していきます。

記載形式と書面化のタイミング

通常、供述調書の書面化は取り調べの終盤に行われます。

聞き取った内容を基に捜査官が文章を作成しますが、その形式は「私は」という一人称を用いて時系列に経緯をまとめる「物語式」で綴られるのが一般的です。

一方で、被疑者が事実関係を否認している場合や供述の細部が争点となる事案では、捜査官の質問と被疑者の回答を一問一答の形で記録する「問答体」が用いられるケースもあります。

内容確認から調書完成までの手順

文章の作成が終わると、捜査機関側の一方的な解釈や誤記が含まれていないかを確認するための手続きへと進みます。

完成までの主な流れは以下のとおりです。

  1. 捜査官が作成した供述調書を被疑者自身が閲覧する、または捜査官が読み聞かせる
  2. 供述した内容と調書の記載に相違がないか、被疑者が一文ずつ確認する
  3. 記載内容に問題がなければ、被疑者が署名(サイン)し、押印(または指印)を行う

捜査官は調書を被疑者に直接読ませるか、声に出して読み聞かせることによって内容の合致を確認します。

この確認を経て被疑者が自筆で署名し押印することで、供述調書は正式に完成します。

署名押印がなされた供述調書は、本人がその内容を認めた書面として扱われるため、手続きの最終確認は極めて慎重に行われます。

供述調書を作成・確認する際の注意点

供述調書は、被疑者本人が署名・押印することで正式な書面となり、後の刑事裁判で証拠として用いられる可能性が生じます。

そのため、捜査官から提示された書面の内容を入念に確認し、慎重に対応することが極めて大切です。

納得できない場合は署名押印を拒絶できる

刑事訴訟法第321条第1項柱書の規定に基づき、供述調書は被疑者が署名または押印しなければ証拠として扱われません。捜査機関から強く求められたとしても、記載された内容が自分の認識と異なるときは、署名や押印を拒む権利があります。

一度署名・押印してしまうと、後からその内容を争うことは容易ではないため、納得がいかない場合には署名を拒むことが基本的な対処となります。

内容の訂正や増減変更を申し立てる

調書を閲覧したり読み聞かせを受けたりした際、表現のニュアンスが違っていたり事実と異なる記述があったりした場合は、訂正を求めることが可能です。

刑事訴訟法第198条第4項では、供述者が増減変更の申し立てをしたときは、その供述を調書に記載しなければならないと定められています。

文言の追加や削除、表現の修正を具体的に申し立てることで、自らの意図に沿った記載に正すことができます。

憲法上の権利である黙秘権の行使とその留意点

日本国憲法第38条により、何人も自己に不利益な供述を強要されないという黙秘権が保障されています。

質問に対して一切口を閉ざすことや、特定の質問にだけ答えないことも法的に認められています。

黙秘権を行使することで不本意な供述を避けられる利点がある一方、状況によっては自白している場合と比べて身柄拘束が長期化する懸念など、考慮すべき側面もあります。

黙秘権をどのように行使するかについては、慎重な検討が求められます。

虚偽の供述を避け事実を正確に話す重要性

自己を有利に見せようとして事実と異なる虚偽の供述を行うことは、後の手続きにおいて不利益を招く原因となり得ます。

捜査機関は取り調べだけでなく、防犯カメラ映像や指紋といった各種の物的証拠を幅広く収集しています。

客観的な証拠と供述内容の矛盾が判明した場合、供述全体の信用性が疑われることになり、裁判で不利に働く可能性があります。

そのため、取り調べでは事実と異なる虚偽を述べないことが重要です。

供述調書が証拠として採用されない可能性のあるケース

自白の任意性に疑義がある場合の証拠能力の否定

取り調べにおいて被疑者が署名押印した供述調書であっても、あらゆる状況で証拠として認められるわけではありません。

刑事訴訟法第319条第1項では、強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長い抑留や拘禁の後の自白など、任意にされたものではない疑いのある自白は証拠とすることができないと定められています。

本人の自由な意思に基づかない状況で作成された疑いがある供述調書は、裁判において証拠能力が否定される可能性があります。

長時間・深夜に及ぶ過度な取り調べによる署名

取り調べが休憩も十分に与えられず長時間にわたって行われた場合、被疑者は肉体的・精神的に著しく疲弊します。

その結果、「この苦しい場から早く解放されたい」「終わらせるために言われたとおりにサインしてしまおう」と思い詰めて署名押印に至ることがあります。

また、深夜に及ぶ取り調べについても同様の問題が生じます。

現行犯逮捕直後で緊急の裏付けが必要など、やむを得ない特段の事情が認められる場合を除き、合理的な理由のない深夜の過酷な取り調べによって作成された供述調書は、自白の任意性に疑義が生じやすいと考えられています。

自白の強要や利益供与によって引き出された供述

捜査官が大声で怒鳴ったり机を叩いたりして自白を執拗に迫るなど、威迫や脅迫に近い態様で不利な供述を強要された場合も、任意性が疑われる典型例です。

被疑者が心理的圧迫を受けて自己の意思に反する供述をさせられたと判断されれば、証拠能力が認められない場合があります。

さらに、「罪を認めればすぐに釈放してやる」「認めなければ重い罪にする」といった利益供与や不利益の告知を持ちかけて供述を引き出す行為も違法性が問われます。このような約束や誘導を信じて作成に応じた供述調書は、裁判で証拠として不採用になる要因となり得ます。

不当な取り調べへの対処と弁護士への相談

取り調べにおいて威圧的な言動を受けたり、意図しない供述調書が作成されそうになったりした場合、その場の状況を適切に記録し、外部からの支援を得ることが重要になります。

密室で行われる取り調べに対しては、客観的な事実を残す手段や早期の助言が有効な対策となります。

取り調べの状況を記録する「被疑者ノート」の役割

捜査機関による取り調べの具体的な様子を記録するための手段として、「被疑者ノート」と呼ばれる記録用紙が用いられることがあります。

これは弁護士から差し入れられることが多く、取り調べの日時や担当官の言動、質問や回答の内容などを本人が記憶に基づいてメモしておくものです。

後から取り調べの違法性や強要の有無を争う際、当時の状況が詳細に書き残されていれば、供述の任意性を判断するための有力な資料となり得ます。

記憶が薄れる前に事実関係を整理して書き留めておくことは、不当に不利益な扱いを受けるリスクを減らす手助けになります。

取り調べの経緯をメモに残しておくことは、後に供述調書の任意性を検討する際の客観的な手がかりになります。

逮捕直後の接見がもたらす重要性

刑事事件で逮捕された場合、勾留の決定が出るまでの最大72時間は、原則として家族などの一般人による面会が制限されます。

外部との連絡が絶たれるこの期間であっても、弁護士であれば立会人なしで被疑者本人と接見することが認められています。

精神的な孤立や不安から捜査機関の誘導に乗ってしまうことを防ぐためにも、逮捕直後の早い段階で面会を行う意義は極めて大きいといえます。

早期に接見を通じて法的な権利や今後の見通しを確認することが、その後の刑事手続きにおける適切な防御活動の基礎となります。

供述調書への対応について助言を受ける意義

供述調書が持つ法的な重みや影響を十分に把握していないと、捜査官の言う通りに署名・押印してしまい、後から想定外の不利益を被るおそれがあります。

一度成立した調書の内容を公判で覆すことは容易ではないため、取り調べ初期の慎重な判断が求められます。

弁護士からは、質問に対してどこまで答えるべきか、あるいは黙秘権を行使すべきかといった具体的な方針について助言を受けることができます。

また、提示された供述調書に納得がいかない場合の訂正申立てや署名拒絶の方法について事前に把握しておくことで、落ち着いて取り調べに臨むことが可能になります。

コラム監修者

佐藤 塁

佐藤 塁

所属:代表(東京オフィス)

東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。

早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。

公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。

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