不貞慰謝料請求調停とは|調停をするメリット・デメリットを紹介

  • 最終更新日: 2025.04.15

配偶者の不貞が発覚したら、不貞相手に慰謝料を請求したいと思うかもしれません。
しかし、不貞相手との交渉や訴訟を思い浮かべ、「不貞相手と直接交渉する自信がない」「弁護士に慰謝料請求を依頼したら高額な費用がかかりそう」などの不安から、ためらう人もいるでしょう。

不貞相手に慰謝料を請求する方法は、交渉や訴訟だけではありません。裁判所の手続きの一つである、民事調停を利用する方法もあります。

この記事では、不貞慰謝料請求調停とは何か、不貞慰謝料請求調停のメリット・デメリットなどについて解説します。
選択肢の一つとして不貞慰謝料請求調停について知っていただき、今後の対応をご検討ください。

不貞慰謝料請求調停とは

不貞慰謝料請求調停とは、配偶者に不貞をされた人と不貞相手が慰謝料について話し合い、お互いが合意することで紛争の解決を図る、民事調停手続きです。

調停は、どちらの言い分が正しいのかを決めるものではありません。
法律だけでなく社会の良識にかなった解決を図るため、裁判官と一般市民から選ばれた調停委員(通常は2人)が調停委員会を構成し、当事者双方の言い分や気持ちを聞きながら調停を進め、歩み寄りを促します。

調停の手続きは法廷ではなく、裁判所内の調停室で行われます。訴訟のように公開されないため、第三者に知られたくないことも話しやすいでしょう。

不貞相手に対する慰謝料請求調停は、原則として、不貞相手の住所のある地区の裁判を受け持つ簡易裁判所に申し立てます。

なお、離婚後に元配偶者に慰謝料を請求する場合は、元配偶者の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。慰謝料請求する相手によって管轄する裁判所が異なりますので、ご留意ください。

不貞慰謝料請求調停のメリット

不貞相手に慰謝料を請求する際に民事調停を利用する主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 調停委員を間に挟むため不貞相手との直接交渉を避けられる
  • 合意内容が守られない場合は強制執行ができる
  • 終了までの手続きが簡易なため自身で手続きしやすい

以下で、詳しく解説します。

調停委員会を間に挟むため不貞相手との直接交渉を避けられる

民事調停は、調停委員会を間に挟むため、不貞相手との直接交渉を避けられます。

調停の話し合いは、調停委員会(裁判官・調停委員2名以上)、申立人(あなた)、相手方(不貞相手)で行います。

調停委員会がいることで、お互いに感情的になりにくく、落ち着いて話し合えるでしょう。当事者双方が合意できるように、調停委員会が解決策を提示するなどして調整を試みてくれるため、交渉が苦手な人も安心して利用しやすいです。

相手方である不貞相手と顔を合わせたくない場合は、別々の部屋で待機し、交互に調停室に入ってそれぞれの言い分を調停委員会に聞いてもらい、話し合いを進められます。

調停委員会を間に挟むため、不貞相手との直接交渉を避けられることは、民事調停のメリットです。

合意内容が守られない場合は強制執行ができる

民事調停で合意した内容が守られない場合は、強制執行ができます。

調停で当事者双方が合意した内容は、裁判所によって調停調書にまとめられます。調停調書は確定判決と同じ効力を持つため、合意した慰謝料が支払われない場合、強制執行の申立てができます。

強制執行とは、調停調書や判決などで債権・債務が確定したにもかかわらず、相手方が金銭を支払わない場合に、相手方の財産を差し押さえて強制的にお金を回収する手続きです。

法的効力がある調停調書が作成されるため、合意内容が守られない場合は速やかに強制執行ができることは、民事調停のメリットです。

終了までの手続きが簡易なため自身で手続きしやすい

調停は、申立てから終了までの手続きが簡易なため、自身で手続きしやすいです。

調停申立書に記入し提出すれば、申立てができます。調停申立書は、申し立てをする簡易裁判所の窓口やホームページで入手できます。終了までの手続きも簡易なため、法律の知識がなくても、一人で対応できるでしょう。

終了までの手続きが簡易で自身で手続きしやすいことは、民事調停のメリットです。

不貞慰謝料請求調停のデメリット

不貞慰謝料請求調停には、以下のようなデメリットもあります。

  • 裁判所に出頭する必要がある
  • 解決までに時間がかかる
  • 双方が合意しないと解決できない

以下で、詳しく解説します。

裁判所に出頭する必要がある

調停は裁判所内の調停室で行われるため、裁判所への出頭が必要です。

調停は平日の日中に行われるため、仕事や家庭の予定を調整する必要があるでしょう。

あなたが都合をつけて裁判所に出頭しても、相手方である不貞相手が欠席すれば話し合いができません。期日を再設定し、改めて裁判所に出向く必要があります。

調停は当事者双方が裁判所に出頭する必要があるため、不貞相手が欠席した場合は話し合いができないことを念頭に置いておきましょう。

解決までに時間がかかる

調停は、解決までに時間がかかる可能性があります。

ケースにより異なりますが、調停期日はおおよそ1〜2か月に1度のペースで設定されます。1回の調停で合意できるケースは少なく、複数回の期日が設定されることが多いです。

不貞相手との話し合いがスムーズに進まない、不貞相手が裁判所に出頭しないなどとなれば、調停手続きが打ち切られる可能性もあり、紛争が長期化することも考えられます。

解決までに時間がかかる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

双方が合意しないと解決できない

調停は当事者の合意を基本としているため、双方が合意しないと解決できません。

以下のような場合は、合意ができないと判断されて手続きが打ち切られます(調停不成立)。

  • 当事者双方の意見が折り合わず、話し合っても解決する見込みがない
  • 不貞相手が裁判所に出頭しない

せっかく調停を申し立てても、調停不成立となり解決できない可能性があることを念頭に置いておきましょう。

不貞慰謝料請求調停の申立てをする際にかかる費用

不貞慰謝料請求調停の申し立てをする際は、以下の2つの費用を裁判所に納付する必要があります。

申立手数料

申立手数料は、申立書に収入印紙を貼付して納付します。
手数料の金額は、不貞相手に請求する慰謝料額により変動します。

申立手数料額について、詳しくは以下の裁判所WEBサイトをご参照ください。
参考:手数料(courts.go.jp)

関係者に書類を送る際に使用する郵便料金

郵便料金は、郵便切手で納付します。

納付する郵便切手の額・内訳は、それぞれの裁判所により異なります。調停を申し立てる簡易裁判所に確認してください。

東京簡易裁判所に民事調停を申し立てる場合の郵便料金は、2,950円(内訳:500円2枚、100円16枚、50円4枚、10円15枚)です。

参考:東京簡易裁判所 民事調停(courts.go.jp)

不貞慰謝料請求調停で合意ができなかったらどうなる?

不貞慰謝料請求調停で合意ができなかった場合は、手続きが打ち切られます(調停不成立)。ただし、すべてが不成立となるわけではなく、調停に代わる決定が示されるケースもあります。以下で、詳しく解説します。

調停不成立となれば訴訟を提起するケースが多い

調停不成立となれば、訴訟を提起するケースが多いです。

弁護士に交渉を依頼するつもりもなく、当事者間の話し合いで解決できないのであれば、当事者以外の第三者である裁判官に判断を委ねることで、どちらの言い分が正しいか決着をつけるよりほかないでしょう。

訴訟を提起する場合、あなたの主張を記載した訴状や主張を裏付ける証拠等の準備、申立手数料や郵便料金の納付が必要です。

なお、調停が不成立になったことを告知した日から2週間以内に訴訟を提起した場合は、調停の申し立てをする際に納付した申立手数料は、訴訟提起の手数料に流用できます。

調停で合意ができなかったら訴訟になる可能性があることを、心に留めておきましょう。

調停に代わる決定が示されるケースもある

調停に代わる決定が示されるケースもあります。

調停に代わる決定とは、調停成立の見込みがないものの、当事者双方の意見が大筋で一致している場合などに、調停委員の意見も踏まえて、裁判所が適切と思われる解決案を示す制度です。

実務上、決定が行われる場合の例としては、次のようなケースです。

  • 基本的な部分は合意に達しているが、付随的な部分で合意に至っていない場合
  • 当事者の感情的な理由や法律の解釈適用の点から合意に達していない場合
  • 当事者が合意による調停成立は希望しないが、裁判所の決定なら受け入れる余地がある場合
  • 一方当事者が欠席した場合で、欠席当事者が調停委員会の解決案に同意した場合

調停に代わる決定は、調停成立と同じ効力を持ちますが、決定の告知を受けてから2週間以内に、どちらかの当事者が異議を申し立てた場合は、決定の効力がなくなり、調停不成立となります。

調停の経過や紛争の態様によっては、調停に代わる決定が示されるケースもあります。

おわりに

不貞相手に慰謝料を請求する方法として調停を利用すれば、当事者以外の第三者を交えた話し合いで解決を図れます。

当事者双方が合意できれば、確定判決と同じ効力を有する調停調書が作成されるため、合意内容が守られない場合は速やかに強制執行ができます。

しかし、不貞相手が裁判所に出頭しない、意見が折り合わないなどの理由から調停不成立となる可能性もあります。調停に費やした時間と労力が無駄になる可能性があることも踏まえて、対応を検討しましょう。

不貞相手に対する慰謝料請求の方法で悩んでいるなら、弁護士に相談することも検討してみてください。あなたが置かれている状況を考慮した、適切な方法をアドバイスしてもらえるでしょう。

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