不倫相手の配偶者から慰謝料請求を受けている方の中には、自己破産してしまえば慰謝料請求に応じなくていいのではないか?と考える方もいるかもしれません。
倫理道徳的な観点からすれば、ちゃんと支払ったほうがよいです。
しかし、法律上は自己破産してしまえば不倫の慰謝料請求を免れることができるケースが多いです。
本記事では、不倫で慰謝料請求をされており、自己破産を検討されている方に過去9800件以上の不倫トラブルに対応してきた弊所が自己破産によって慰謝料請求を免れるのかについて解説します。
目次
不倫慰謝料は自己破産により、原則として支払い義務を免れます
自己破産により不倫慰謝料の支払い義務は原則としてなくなります(支払い義務を免れることを「免責」といいます)。
あなたは不倫をしている立場にあるため、不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされてしまいます。しかし、自己破産をすると、一定の場合を除いてあなたの慰謝料債務は免責されます。
慰謝料債権が非免責債権に該当する場合は支払い義務を免れることはできません
1章で紹介したように、自己破産をすることで不倫慰謝料の支払い義務を免れることができるのが原則です。
例外的に、慰謝料債権が非免責債権(債務の支払いが免責されない債権)に該当すると、慰謝料の支払い義務を免れることはできません。
破産法上、非免責債権にあたる場合は、以下のとおりです(破産法253条参照)。
- 租税等の請求権(例:住民税、固定資産税、国民年金、下水道料金等)
- 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求
- 一定の義務によって支払わなければならない請求(例:養育費、婚姻費用の分担、扶養義務など)
不倫による慰謝料債権は上に列挙した非免責債権のうち、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当する可能性があり、これに該当した場合には例外的に自己破産をしても、あなたは慰謝料を支払わなければなりません。
不倫(不法行為)が「悪意」をもって行われた場合とは、不倫が「故意を超えた積極的な害意」をもって行われた場合をいうと裁判所は示しています。不倫(不法行為)が故意を超えた積極的な害意があると判断されるためには、あなたに不倫相手の家庭の平穏を害する意図があったと言えるかどうかという点を裁判所は一つの判断基準としています(東京地裁平成28年3月11日判決参照)。
とはいうものの、裁判所の示した「悪意」の意味や判断基準は抽象的でわかりにくいです。
そのため、3章以下で紹介する裁判例をご覧いただいてわかるように、「悪意」があるか否かは各事件の個別的、具体的な事情によって判断が分かれます。
自己破産によってあなたの請求されている慰謝料が非免責債権に該当するかについて、あなた自身では判断がつかないかもしれません。そのような場合は弁護士に相談し、法律家の観点から非免責債権に該当するのか見通しを立ててもらうことをお勧めします。
ネクスパート法律事務所では浮気・不倫に関する相談を9800件以上承ってまいりました。
内縁関係・婚約中のパートナーの浮気で150万円以上の慰謝料請求をご検討の方はぜひお気軽に当事務所までご連絡ください。
不倫慰謝料が非免責債権に該当するかが争いとなった裁判例
【東京地裁令和2年11月26日】
【事案の概要】
原告が夫の不倫相手である被告に対して、慰謝料請求をしたところ、被告が自己破産した。
原告は被告に対する慰謝料債権は非免責債権であると主張して、慰謝料債権が非免責債権に該当するかが争われた事案【判決内容】
・破産法253条1項2号の「悪意」の内容について
「破産法253条1項2号は,「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」を非免責債権とする旨を規定しているところ,同号にいう「悪意」は,単なる故意ではなく,他人を害する積極的な意欲,すなわち「害意」をいうものと解するのが相当である。」・本事件の不倫慰謝料債権が非免責債権にあたるかの具体的判断について
「被告及びCの不貞関係において,被告が一方的にCを篭絡して本件不貞行為に及んだなどの事情は認められない」こと、「Cは,原告と別居した際,未成年の子を連れておらず,夫婦共有財産を持ち出し」ていないことなどを考慮し、「本件不貞行為の際,被告において,本件婚姻関係に対し社会生活上の実質的基礎を失わせるべく不当に干渉する意図,すなわち原告に対する害意があったとまでは認められない。」
東京地裁令和2年11月26日判決は、東京地裁平成28年3月11日判決と同様に不倫慰謝料が非免責債権に該当しないと判断しています。そのため、自己破産をした債務者は不倫慰謝料の支払いを免れました。
裁判例を参照すると、不倫慰謝料が非免責債権に該当するための「悪意」の判断基準は確立してきていますが、不倫慰謝料が非免責債権に該当するという判断はなかなかされていません。
まとめ
不倫をしたことについてはあなたに落ち度がありますが、慰謝料請求をされれば、冷静な判断ができない状態に陥ってしまうことも不思議ではありません。
不倫は周囲知られたくない内容で頼れる人がいないという方も多いと存じます。
そのような方で、150万円以上の慰謝料請求を受けている方は弊所までお気軽にご相談ください。