裁判所は、訴状の送達にあたり、第1回口頭弁論期日を指定して、被告に対し、それ以前の一定期間内に答弁書を提出することを求めます。
裁判を起こされたという事実だけでも心理的な負担を感じられることが多い中、答弁書という書類の存在を初めて知り、書き方もわからず何から手をつけてよいのか途方に暮れる方もいるかもしれません。
答弁書とは、訴状に書かれた原告の請求を認めるかどうかや、原告の主張に対するあなたの言い分などを記載する書面です。書き方を知らずに安易に認否を記載した答弁書を提出すると、後々矛盾が生じたり、取り返しのつかない事態を招いたりすることもあります。
この記事では、答弁書の具体的な書き方や注意点を解説します。
答弁書の書き方や今後の方針に悩まれている方は、ぜひご参考になさってください。
目次
答弁書の書き方【記入例】
通常、訴状とともに裁判所から送られてくる書類の中には、次の書類が同封されています。
- 手書きで記入できる答弁書のひな形
- 答弁書の書き方や注意点の説明書
具体的な書き方が分からない方は、まず以下の記入例をご参照ください。
※裁判所によって、細かな体裁が異なる場合があります。
次章以下では、さらに詳しく答弁書の書き方を解説します。
答弁書の書き方【手順】
答弁書には、次の事項を記載します。
裁判所によっては、①~➃の事項が記載された答弁書のひな形を送ってくれることもあります。
⑦~⑨は、訴状に書かれた内容に対してあなたの言い分を述べる項目で、答弁書の中核をなす部分です。
各事項の書き方を、以下で詳しく説明します。前章の記載例と照らし合わせてご確認ください。
①事件番号・事件名の書き方
答弁書の左上部に事件番号および事件名を以下のように記載します。
【記入例】 令和○年(ワ)第○○○号 ○○請求事件 |
裁判所では事件毎に、上記のような事件番号と事件名を付して事件を管理しています。
事件番号および事件名は、裁判所から送られてきた第1回口頭弁論期日呼出状(こうとうべんろんきじつよびだしじょう)に記載されていますので、確認してください。
訴状にも事件名が記載されていますが、稀に裁判所が付した事件名が異なる場合があるので、必ず期日呼出状で正式な事件名を確認して記入しましょう。
②当事者等の書き方
事件番号・事件名の直下に当事者名を以下のとおり記載します。
【記入例】 原 告 ○ ○ ○ ○ 被 告 ○ ○ ○ ○ |
当事者の氏名は、訴状や期日呼出状に記載されていますので、その表記どおりに記載しましょう。
③作成年月日の書き方
答弁書の表題の右上に、作成年月日を以下のとおり元号で記載します。
【記入例】 令和○年○月○日 |
作成年月日は、その提出年月日と一致させるのが通常ですが、第1回口頭弁論期日の日付を記載しても差し支えありません。
➃裁判所の書き方
答弁書の表題の左下側に、答弁書を提出する裁判所(宛名)を記載します。
以下のとおり、裁判所名だけでなく、担当部・係名まで記載してください。
【記入例】 ○○地方裁判所 ○○部 ○○係 御中 |
裁判所・担当部・係名も、期日呼出状に記載されています。
⑤送達場所の書き方
裁判所(宛名)の右下ほどには、あなたが裁判所からの書類を受け取る場所と氏名・連絡先を記入し、氏名の横に押印をします。
【記入例】 (送達場所) 〒 ○○○-○○○○ ○○県○○市○○町△丁目□番▽号 被 告 ○ ○ ○ ○ 印 電 話 ○○ - ○○○○ - ○○○○ FAX ○○ - ○○○○ - ○○○○ |
FAXがない場合は、FAX番号の記載は不要です。
住所以外の場所で書類を受け取る場所や受取人を指定する場合は、その送達場所と送達受取人も記載します。
⑥請求の趣旨に対する答弁の書き方
請求の趣旨に対する答弁は、原告の請求を全面的に認める場合を除き、以下のとおり記入します。
【記入例】 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 との判決を求める。 |
原告の請求を認めてしまうと、あなたは請求の趣旨に書かれた請求額を一括で支払わなければならなくなるからです。
例えば、訴状の請求の趣旨に、次のように記載されていたとします。
【訴状の例】 第1 請求の趣旨 1 被告は、原告に対し、金550万円およびこれに対する令和〇年〇月〇日から支払い済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 との判決および仮執行の宣言を求める。 |
請求の趣旨第1項には、一括でとは記載されていませんが、分割でと書いていない限り、550万円とそれに対する利息の一括払いを求めていることを意としています。
そのため、いかに原告の請求が真っ当で、事実上争う余地がないと思われるときでも、通常は原告の請求を棄却する旨の答弁を行います。
原告の請求を概ね認める場合でも、分割や支払時期の調整を含めた和解による解決を望む場合は、請求棄却および訴訟費用の負担を求める旨を記載してください。
あなたが、できる限り慰謝料を減額して欲しいと求める立場にあり、かつ答弁書の段階ではその減額主張が裁判官に認めてもらえるかがわからない場合も、原告の請求を棄却する旨の答弁を行うことは合理的であると言えます。
⑦請求の原因に対する答弁の書き方
請求の原因に対する答弁では、訴状の請求の原因に書かれた個々の事実について、どの部分を認め、どの部分が間違っていて、どの部分が知らないのかを記載します。これを請求の原因に対する認否といいます。
認否は、基本的には次の3つから選んで記載します。
- 認める
- 否認する
- 不知
実務上は、上記の文言を用いますが、裁判所から訴状とともにお手元に届いた答弁書のひな形には、法律に詳しくない方にも理解しやすいよう、かみ砕いた表現で記載されていることもありますので、下表で確認しましょう。
なお、上記3つの原則的な認否の仕方のほかに、争うと記載することがあります。これは、原告の事実評価や法的主張を争うときに用います。
書き分けに悩む場合、おおよその区別としては、次のように捉えると良いでしょう。
- 原告が主張する事柄にそんな事実はないと思う場合:否認する
- 原告が主張する事柄にそんな義務はないと思う場合:争う
訴状とともに送られる答弁書のひな形では、この点を厳格に分けた記載を求められることはほとんどありません。原告の法律的な主張にしろ、事実に関する主張にしろ、あなたが否定していることが裁判所に伝わればよいので、基本的には上記3つの原則的な認否の仕方でこたえると良いでしょう。
否認する場合は、その理由やあなたが認識している事実を書き添えなければいけませんが、請求の原因に関する答弁では、2、3行程度に留めると裁判官が読みやすくなります。
長くなる場合は、次に説明する「被告の主張」の段落を設けて、否認した事実に対するあなたの主張(理由)やその他の主張をまとめて書く方法もあります。
💡 Point 💡
減額や分割の話し合い(和解)を希望する場合は、請求の原因に書かれた事実について、概ね認めることが多いかもしれませんが、答弁書で請求の原因に書かれた事実の全てを認めることは避けましょう。
請求原因事実をすべて認めてしまうと、原告が和解に応じなかった場合、裁判所が原告の請求を認める判決を出すことがあるからです。
原告の主張が概ねそのとおりだと思うときでも、請求の原因に書かれた事実の中に、あなたが知らない部分や事実と異なる部分がある場合は、その部分については否認や不知の認否をすることを心がけてください。
⑧被告の主張の書き方
被告の主張では、主に次の2つのことを記載します。
- 請求の趣旨に対する答弁で否認した理由やあなたが認識している事実
- 原告が主張する事実と両立しうる別個の事実
一つ目は、原告の主張する事実は真実ではないことを主張するものです。
例えば、請求の原因に書かれた「令和○年○月○日、被告は訴外○○と○○県に泊りがけの旅行に行き、同日、不貞行為に及んだ」との原告の主張を否認した上で、以下のように、あなたが認識している事実を記載することです。
【例】 被告が、訴外○○と共同で主催する○○の打ち合わせのため、○○に同行したことはあったが、宿泊した部屋は別であり、不貞行為はない。 |
つまり、「原告が主張するような事実はない!真実は○○だ。」という主張です。
この部分がさほど長くならない場合は、別途被告の主張の段落を設けず、請求の原因に対する答弁の中で記載しても差し支えありません。
二つ目は、原告が主張する事実と両立しうる別個の事実を主張するものです。
例えば、請求の原因に書かれた「令和○年○月頃から継続的に不貞関係があった」との原告の主張に対して、不貞行為の存在を認めつつ、次のような別個の事実を主張することです。これを抗弁といいます。
【婚姻破綻の抗弁の例】 不貞行為を開始した時期には、原告と訴外○○の夫婦関係は破綻していたので、慰謝料は発生しない。 |
【消滅時効の抗弁の例】 本件不貞行為は令和○年○月○日に行われ、原告がこの事実を知ったのは同年○月○日である。同日から本件訴訟の提起まで3年以上が経過している。原告主張の慰謝料請求権については消滅時効が完成しているため、被告は本書をもってこれを援用する。 |
【弁済の抗弁の例】 本件不貞行為は、原告にとって、被告と訴外○○の共同不法行為となる。 すなわち、被告の原告に対する不貞慰謝料債務は、不真正連帯債務となるところ、訴外○○は、令和○年○月○日、原告に対し、300万円を弁済した。 よって、被告の原告に対する慰謝料債権は、弁済によって消滅している。 |
原告の主張する「不貞行為があった」ことは認めるけど、原告の請求が成り立たなくなる事実(婚姻破綻や時効消滅、弁済など)があるから、「慰謝料を支払う義務はない!」という主張です。
被告の主張では、上記2つのどちらに該当するのかを意識しながら記載すると、裁判官に事実関係を理解してもらいやすくなります。
⑨添付書類の書き方
あなたの言い分を裏付ける書類があれば、添付書類の欄に以下のように書証番号と書類名を記載しましょう。
【記入例】 添付書類 1 乙第1号証(・・・書類名・・・)の写し 1通 2 乙第2号証(・・・書類名・・・)の写し 1通 3 乙第3号証(・・・書類名・・・)の写し 1通 |
書証は、次の要領で作成します。
- 事前にその書類のコピーを3部取る
- ①でコピーをした写しの右上部余白に乙第○号証と順次番号を付す
形式的には別個の文書でも、文書の利用や機能面から関連する文書については枝番号(乙第1号証の1、乙第1の2等)を付しても構いません。
被告の主張の中で、引用できる書証があれば、次のように該当部分の文末に括弧書きで書証番号を書きます。
【記入例】 被告の主張 1 ○○○○は、○○○○である(乙第1号証)。 |
証拠書類の作成・提出方法は、以下の裁判所WEBサイトをご参照ください。
参考:証拠書類の提出について (courts.go.jp)
参考:証拠書類のコピー 参考例 (courts.go.jp)
答弁書の書き方にお悩みの方にお伝えしたい3つのポイント
答弁書の書き方にお悩みの方に、次の3つの大切なポイントをお伝えします。
- 答弁書を自作する場合は書式・体裁のルールを守る
- 請求の趣旨を認める旨の答弁書を出す前に弁護士に相談する
- 被告の主張は簡潔に書く
答弁書を自作する場合は書式・体裁のルールを守る
答弁書は、裁判所から送付されたひな形を使わず、ご自身で一から作成しても構いませんが、裁判所に提出する文書には、サイズや書式・体裁に推奨されているルールがあります。
推奨されているルールを守れていないからといって、答弁書を受け付けてもらえないことはありませんが、最低限、次の2点を満たした体裁で作成することをおすすめします。
- A4サイズの用紙(縦置き)に横書きで記載する
- 用紙の左端より3cm程度の余白(綴じ代)を設ける
これは、裁判所で取り扱う文書はA4サイズに統一されていること、裁判の当事者から提出された書類はファイルに綴じられることが理由です。A4サイズよりも小さい用紙で文書を作成したり、用紙の左側いっぱいに文字が書かれていると、ファイルに綴じたときに埋もれてしまったり、読みづらくなったりします。
せっかく苦労して書いた文書を、裁判官にしっかり読んでもらうためにも、なるべく書式・体裁のルールを守るようにしましょう。
推奨されるルール(書式設定)を反映したWordファイルを以下にご用意しておりますので、ダウンロードしてお役立てください。
💡 ※Google ChromeからだとWordファイルがダウンロードできないことがあります。恐れ入りますが、その場合にはMicrosoft Edgeからのダウンロードをお願いいたします。
答弁書は片面印刷で3部印刷します。枚数が複数にわたる場合は、用紙左端のスペース2か所をホチキス留めして、そのうちの2部を裁判所に提出しましょう。
請求の趣旨を認める旨の答弁書を出す前に弁護士に相談する
原告の主張に全く反論がないと思う場合でも、請求の趣旨を認める旨の答弁を行う前に弁護士に相談することをおすすめします。
原告の請求を全面的に認めると裁判は終了し、裁判所が、あなたが原告の請求を全面的に認めた旨の調書(請求認諾調書)を作成すると、原告はそれに基づく強制執行が可能となります。
あなたに、原告の請求を全面的に認め、かつ、請求された金額を一括で支払う意思および経済的余裕があり、とにかく裁判を早期に終わらせたいという場合でない限り、請求を認める旨の答弁を行うべきではありません。
ご自身では、全く反論の余地がないと思われる場合でも、慰謝料を減額できる事由があるかもしれませんし、分割払いを求める和解に原告が応じてくれる可能性もあるかもしれません。
よって、原告の請求を認める答弁書を提出する前に、弁護士に相談することを強くおすすめします。
被告の主張は簡潔に書く
答弁書は、原告の主張や原告本人を非難するためのものではなく、原告の主張に対するあなたの反論や言い分を裁判官に読んでもらうためのものです。
そのため、裁判官にとって分かりやすい文書を作成できるよう心掛けることが重要です。
大都市の裁判官は、常時、一人あたり200件程度の事件を抱えており、1日に受け持つ期日が10件を超えることは珍しくありません。裁判官が1つの事件にかけられる時間は少ないことを考慮すれば、一読して理解できる書面を目指して答弁書を作成しましょう。
簡潔にわかりやすく書くポイントは、以下のとおりです。
- 一文はなるべく短く
- 主語と述語は離さない
- 接続詞は適切に使う
- 一文一意というように、一つの文に込めるメッセージは一つにする
書面の作成にパソコンを使うと、ついつい念のためにと、色々書きたくなってしまうかもしれません。
しかし、平成25年に一般社団法人法曹界が発行した司法研修所「本人訴訟に関する実証的研究」21頁(司法研究報告書第64輯第3号)では、弁護士を立てずに本人が提出した書面について、裁判官が「明らかに事案の判断に無関係な主張をしていた」とする割合は全体の約40%に及びます。
基本的には余事記載は有害無益と考え、必要なことを全て書き、必要のないことを書かないという意識を持って作成にあたることをおすすめします。
期限に間に合わない場合の答弁書の書き方|そのまま使えるWordファイルあり
何らかの理由で、提出期限までに、具体的な反論やあなたの言い分をまとめた答弁書を作成できない場合は、次のような簡略的な答弁書を提出する方法があります。
本来、答弁書には、請求の趣旨に対する答弁のほか、請求の原因に書かれた事実に対する認否等を書き、あなたの言い分を裏付ける証拠を記載しなければなりません。
ただし、やむを得ない事由によりこれらを記載できない場合には、次回以降に提出する書面(準備書面)で、具体的な認否・反論をしたり、証拠を提出したりすることが認められています。
記載例は、以下のとおりです。
次のような事情で、答弁書の提出期限に間に合わない場合は、上記内容の簡略的な答弁書を提出すると良いでしょう。
- 提出期限までに訴状を読み込み、具体的な認否・反論を行う時間がない
- 答弁書を提出する前に弁護士に相談したいが、期限までに法律相談に行けそうにない
形式面の記載事項(○で記した部分)をご自身で入力していただくだけで、そのまま提出できるWordファイルをご用意しましたので、以下からダウンロードしてお役立てください。
💡 ※Google ChromeからだとWordファイルがダウンロードできないことがあります。恐れ入りますが、その場合にはMicrosoft Edgeからのダウンロードをお願いいたします。
さいごに
本記事では、答弁書の書き方をご紹介しましたが、1.2で紹介した期限に間に合わない場合の答弁書の書き方を除き、ご自身で適切な答弁書を作成できるか不安を覚える方はたくさんいらっしゃるかもしれません。
実際に、2010年に既済となった地方裁判所の民事第一審通常訴訟の被告が本人対応だった事件202件のうち、答弁書について補正を促したり、書証の符号・番号について説明等を行ったりした事件は、123件(60.9%)であることが報告されています(前掲・司法研修所編『本人訴訟に関する実証的研究』14頁)。
答弁書の書き方にお悩みのあなたには、ぜひ、弁護士への相談・依頼を積極的にご検討いただきたいです。
弁護士が選任されている場合、裁判所が答弁書について補正を促したり、書証の符号・番号について説明等を行ったりすることはほとんどありません。1回あたりの期日に要する時間もご自身で進めるよりも短くなる可能性があります。
答弁書の提出後も、1~2か月ごとに期日が指定され、当事者が交互に準備書面を作成・提出するやりとりが続きます。
弁護士に依頼すれば、これらの書類の作成はもちろん、裁判所への代理出頭や証拠の選定を任せられます。
不貞慰謝料の裁判を起こされ、今後の対応にご不安な方は、ぜひ一度、ネクスパート法律事務所にご相談ください。