Twitterへの投稿により誹謗中傷を受けたときには、できるだけ早く、多くの人が見る前に削除したいと考える方が多いのではないでしょうか。
この記事ではTwitterへ投稿された誹謗中傷を削除する方法について解説します。
Twitterで削除依頼の対象となる投稿とは
どのような投稿が削除依頼の対象になるのかを解説します。
Twitterルールに反する投稿
Twitterルールには、以下のような行為等を禁止していることが記載されています。
このルールに反する投稿は削除依頼の対象となります。
- 個人または集団に向けた暴力をほのめかす脅迫
- 特定の人物を標的とした嫌がらせに関与したり、他の人にそうするよう扇動したりすること(誰かが身体的危害を被ることを願う、または望むことも含まれます)
- 人種、民族、出身地、社会的地位、性的指向、性別、性同一性、信仰している宗教、年齢、障碍、深刻な疾患を理由にして他者への暴力を助長したり脅迫または嫌がらせを行ったりする投稿
- 自殺や自傷行為の助長や扇動
- 他のユーザーの個人情報(自宅の住所や電話番号など)を、明確な許可を受けずに公開または投稿すること(個人情報を公開すると脅迫する行為、または他者にこれを促す行為も禁止)
- 本人の同意を得ずに撮影または配布された、私的な画像や動画の投稿や共有
- 誤解や困惑を招いたり、他者を欺いたりするような方法で、個人、グループ、組織になりすます行為
- 何らかの損害につながる可能性が高い、合成または操作されたメディアを、ユーザーを欺くことを意図して共有すること
- 著作権や商標など、他者に帰属する知的財産権を侵害すること
誹謗中傷により権利侵害を受けている投稿
誹謗中傷の削除依頼をするには、権利侵害を受けていることが必要です。
権利侵害の代表例は以下のようなものです。
名誉毀損
公然の場で、具体的な事実内容と思われることを示し、第三者の社会的評価を低下させる行為
侮辱
公然の場で、具体的な事実を示さず、第三者の社会的評価を低下させる行為
プライバシー侵害
公然の場で、本人が他人に知られたくない個人に関する情報を公表する行為
肖像権侵害
公然の場で、撮影や公表を許可していない肖像写真等を公表する行為
削除依頼の対象とならない投稿
Twitterルールに反せず、権利侵害も受けていない投稿には削除を依頼できません。
例えば、名誉毀損を理由に削除依頼をする場合、その投稿が誰の(どの法人の)話題なのかが判断できなければならず、誰が被害者かを判断できなければ権利侵害を受けているとはいえません。
また、「○○という店の料理は『まずい』」というような、その投稿が誰の話題なのかは判断できるが意見論評にすぎない場合は、投稿者がこのお店で料理を食べていないことを主張立証しなければならず、かなり困難となります。
このように、権利侵害の有無や立証できるかの判断が難しい部分もありますので、弁護士に相談されることを検討してみてください。
Twitterの誹謗中傷を削除依頼する方法
投稿内容が削除依頼の対象になると判断できたら削除依頼を行います。以下では、削除依頼の方法を解説します。
証拠を保存する
削除依頼をする前に誹謗中傷されたツイート等を保存します。
誹謗中傷された各ツイートのURL、ツイート本文、ツイート日時が表示された画面と、ツイートしたアカウントのトップページをスクリーンショット等で保存します。
これらの情報を保存しておかないと、投稿者の特定や損害賠償請求もしたいと考えた場合に必要な証拠が無くなってしまいます。
投稿者に削除依頼をする方法
最もイメージしやすい方法が、投稿者に直接連絡して削除依頼をする方法です。
しかし、投稿者本人ですので素直に削除依頼に応じてくれない可能性がありますし、削除を依頼してきたことを投稿しさらに誹謗中傷を続ける危険もあります。
Twitter社に削除依頼をする方法
次の方法として、Twitterのヘルプセンターから違反報告をすることで、Twitter社に削除依頼をします。
「Twitterおよびセンシティブなコンテンツを使用する」を選択し、必要事項を選択・入力し送信します。
違反報告を行った場合でも必ず削除されるとは限らず、Twitter社が内容等を考慮し判断します。
Twitter社としては利用者の表現の自由を大切にしていますので、削除依頼に対して慎重な審査がされ、違反ではないと判断されると削除依頼には応じてくれません。
削除されない場合の方法
Twitter社の審査結果と裁判所の判断は同じわけではありませんので、Twitter社の審査で削除をしないと判断された内容であっても、裁判(仮処分)で権利侵害を受けているとの判断がされれば削除命令が出されます。
通常の民事訴訟を利用することもできますが、解決までに時間がかかりますので、より迅速な手続きである仮処分の手続きの方が、できるだけ早く削除してほしいと考えている方には適しています。
仮処分命令が発令されると、命令を受けた相手方の多くが削除に応じますので、その後の本訴訟は不要になります。
削除の仮処分は以下のような流れになります。
裁判所へ削除の仮処分命令申立
仮処分申立書、権利侵害の証拠(疎明資料)を提出します。
米国法人であるTWITTER,INC.を債務者として申し立てます。米国法人が相手方であっても民事訴訟法等の規定により東京都千代田区を管轄する東京地方裁判所で手続きを行いますが、申立書類等の英訳文が必要です。
債権者面接、双方審尋
債権者の主張を聞き、債務者に反論の機会を与えるものです。
担保決定
通常、仮処分には担保の提供が必要ですが、Twitter社は担保不要との方針なので無担保上申をすることにより担保を提供せずに発令を受けることができます。
発令
削除の仮処分命令が発令され、命令を受けた相手方の多くが削除に応じます。
この手続きは法律の専門知識や経験がないと当事者のみでの対応は難しいので、弁護士に依頼することを検討してみてください。
投稿以外の削除
検索結果削除請求
Google等に対して、検索結果のURL、タイトル、抜粋(スニペット)の削除を請求します。投稿が削除できないときや、削除すると炎上しそうなときに利用します。
任意の請求(フォームからの請求)で削除されなかった場合は、削除の仮処分を申し立てます。
Googleオートコンプリート、サジェストの削除請求
Google等の検索ボックスに検索キーワードを入力した際に表示される候補キーワードをGoogleオートコンプリートまたはサジェストといいます。
この中に不適切なものがある場合にフォームから削除請求をします。
キャッシュの削除請求
削除が成功したのに、検索サイトの検索結果には残ってしまう場合もあります。
この場合はフォームからの削除請求や削除の仮処分を申し立てます。
Twitterで誹謗中傷をされた場合の対応(削除依頼以外)
投稿を削除するだけでなく投稿者へ損害賠償請求もしたいと考えた場合の、削除依頼以外の対応を解説します。
投稿者を特定する
削除のみでなく、損害賠償請求や、同様の投稿をやめさせたいと思っても投稿者が誰かわからなければ請求できませんので、以下のような流れで投稿者を特定する必要があります。
Twitter社へ投稿者IPアドレス開示請求
裁判手続きによらなくても開示請求は可能ですが、ほとんど開示に応じてくれません。
発信者情報開示仮処分申立
裁判手続きによらない開示請求には応じてくれませんので、裁判所へ発信者情報開示の仮処分を申し立て、投稿者のIPアドレスの開示を請求します。
IPアドレスからプロバイダを特定
開示されたIPアドレスから投稿者が接続したプロバイダを特定します。
プロバイダへ投稿者の個人情報開示請求
接続プロバイダに対して投稿者の個人情報開示請求をすることは可能ですが、ほとんど開示に応じてくれません。
通信ログ保存依頼、発信者情報消去禁止仮処分命令申立
プロバイダのログの保存期間は3か月程度であることが多く、ログが保存されていなければ投稿者の特定はできなくなってしまいますので、訴訟手続きの前にログの保存期間が経過してしまうおそれがある場合には、プロバイダにログ保存依頼をします。
より確実にログを保存してほしいときは、ログ保存仮処分(発信者情報消去禁止仮処分命令申立)を申し立てます。
Twitterの場合、プロバイダがNTTドコモまたはソフトバンクであると投稿者を特定できない可能性が高いです。
発信者情報開示請求訴訟を提起
接続プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起します。
仮処分の手続きを利用するには保全の必要性が認められなければなりませんが、プロバイダは発信者の情報を保有しているので、保全の必要性が認められません。なので、Twitter社に対しては仮処分を行いましたが、プロバイダに対しては訴訟を行うことになります。
投稿者特定
訴訟で勝訴判決が確定すると発信者情報が開示され、投稿者が特定できます。
ただし、ここで開示されるのは接続プロバイダの契約者情報ですので、以下のような契約者情報が開示された場合は、実際の投稿者まで特定するためにさらに調査が必要か、特定が難しくなってしまいます。
企業
その企業の従業員が投稿したのか等を調査します。
インターネット事業者
その事業の顧客が投稿したのであれば、さらに発信者情報開示請求を行います。
ネットカフェ
投稿した会員を特定することは難しくなります。
ホテル
フリーWi-Fiが利用されていると投稿者の特定は難しくなります。
慰謝料請求をする
開示された発信者情報により、投稿者が特定できたら損害賠償請求等を行います。
任意交渉
裁判によらず任意交渉で示談がまとまることもあり、訴訟の判決による慰謝料よりも高額の慰謝料となることもあります。
慰謝料以外にも、再発防止、削除、謝罪広告を求めることも考えられます。
損害賠償請求訴訟
任意交渉では解決しなかった場合には訴訟提起となります。訴訟提起後でも判決の前に裁判上の和解をすることもあります。
名誉毀損による慰謝料の額は、請求者が個人の場合は10~50万円、法人の場合は50万~100万円といわれています。
また、調査費用を投稿者に請求することができる場合もあります。
【慰謝料請求ができるケース】
- 投稿者が特定できた場合
- 投稿者に資力がある場合
【慰謝料請求が難しいケース】
- プロバイダにログが保存されていなかった場合
- 発信者情報は開示されたがネットカフェ等で、投稿者の特定が難しい場合
- 投稿者に資力がない場合
Twitterの削除依頼を弁護士に依頼するメリット
自分で削除依頼を行う場合と比べて、弁護士に誹謗中傷の削除依頼をするメリットを解説します。
早く対象となる投稿を削除することができる
削除依頼をするときには的確な違反報告・権利侵害報告をする必要があり、自分で削除依頼をしても削除されない場合は報告内容が的確でないことが理由として考えられます。
経験や知識のある弁護士が行えば的確な報告をすることができます。
仮処分申立等、法律の専門知識が必要となる手続きに対応できる
Twitter社へ削除依頼をしても削除してもらえなかった場合には、裁判所への手続きが必要になり、法律の専門知識がないと自分でやろうとしても難しいので、専門家である弁護士に依頼することで、対応することができます。
投稿者特定等、削除依頼以外もまとめて依頼できる
投稿の削除だけでなく投稿者特定や慰謝料請求も行いたい場合でも、自分でやろうとしても難しいですが、弁護士であればまとめて対応することができます。
まとめ
Twitterへ投稿された誹謗中傷を削除する方法は、以下の通りです。
- 投稿者に削除依頼をする
- Twitter社に削除依頼する
- 裁判所へ削除の仮処分命令を申し立てる
裁判所への申し立てが必要になる場合もありますし、投稿者の特定もしたいと考えた場合にはプロバイダのログの保存期間が3か月程度であることが多いので、早めに対応することが重要です。
ご自身での削除依頼が難しいと感じたら、弁護士に依頼することを検討してみてください。