借金滞納で裁判を起こされるとどうなる?裁判までの流れ・対応を解説
借金の返済が難しくなった場合、気になるのが滞納し続けると裁判を起こされるのかという点です。今回は借金を返済せずに滞納し続けているとどうなるのかを中心に、以下の点について解説します。
- 借金で裁判を起こされたらどうなるのか
- 借金滞納の裁判を無視してはダメな理由
- 借金滞納で裁判を起こされるまでの流れ
- 借金滞納で裁判を起こされるのを防ぐ方法
すでに借金を滞納しており、今後どうなるのか不安に感じている方は参考にしてください。
借金で裁判を起こされたらどうなるのか?
借金を滞納し続け裁判を起こされた場合、どうなるのでしょうか?
勝訴しうるケースと敗訴しうるケース、それぞれ解説します。
裁判で勝訴しうる3つのケース
ここでは、裁判で勝訴しうる3つのケースについて解説します。
消滅時効が完成している場合
消滅時効とは、債権者が一定期間権利を行使しないことで、債権そのものが消滅することです。
民法第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する
- 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
- 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
借金に関しては、最後に返済した日から5年経過した場合、消滅時効が成立します。時効が成立している場合、弁護士に依頼して時効援用通知書という書面を債権者に対して内容証明郵便で送れば、時効援用となり借金返済義務がなくなります。
ヤミ金業者相手の場合
借金をした相手がヤミ金業者の場合、債務が残っていても返済義務はありません。
最高裁は、闇金融業者が著しく高利で貸し付けを行った場合、利息分だけでなく、支払った元本・利息の全額を損害として請求できる、と判決を下しています。
期限の利益を失っていない場合
期限の利益とは、返済期日まで借金返済を待ってもらえる権利のことです。期限の利益を失っていない場合、裁判を起こされたとしても勝訴する可能性が高いです。
期限の利益を失うケースは次の4つのケースが該当します。
- 約束の期日まで返済しなかったとき
- 契約違反をした
- 再生手続きをした
- 契約のときに年収をごまかすなど虚偽の申告をした
借金において期限の利益を失うケースのほとんどが、返済を滞納した場合です。何度も繰り返して借金の返済を滞納した場合、期限の利益を失って一括請求されます。
裁判で敗訴したらどうなる?
借金の裁判で敗訴した場合、判決で認められた金額を迅速に返済する法律上の義務が生じます。
裁判敗訴後にも返済を行わない場合、給料の差押えや所有している財産の強制処分など強制執行が裁判所によって行われます。
借金滞納の裁判を無視してはいけない3つの理由
ここでは借金滞納の裁判を無視してはいけない3つの理由を解説します。
差し押さえまでの期間が早まる
借金の滞納を続けており時効も成立していない場合、債権者からの手紙を無視し続ける人も多いです。
しかし裁判所に対して何も異議を申し立てないと、債権者が請求したとおりの金額が認められて、そのまま強制執行される可能性があります。
差し押さえまでの期間も早まるので、返済の準備を行うこともできません。裁判所から訴状が届いたら、まずは弁護士に相談して適切な対応をしましょう。
債権者と有利な条件で和解できなくなる
借金滞納をして裁判をおこされるまで債権者の連絡を無視すると、有利な条件で和解する機会を逃します。
早い段階で債権者と連絡を取れば、一時的な返済の猶予や毎月の返済額の変更などに関して、和解を行うことも可能です。
裁判まで至ってしまうと、債権者としても裁判費用や借金を回収したいと考えるため、和解は困難です。
強制執行される
裁判に敗訴した場合、所有している財産や資産を強制執行により差し押さえられる可能性があります。
給料を差し押さえられた場合、債務者は毎月の給料から強制的に一定額徴収されます。さらに預金口座が差し押さえられた場合は、預金も徴収されるため残高が0円になる可能性もあります。
借金の滞納で裁判を起こされるまでの流れ
ここでは、実際に借金を滞納してから裁判を起こされるまでの流れについて解説します。
遅延損害金が発生する
借金を滞納すると、遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、債務者が返済を滞納した場合に、債権者の損害を賠償するために支払う損害賠償金のことです。
通常遅延損害金は金利よりも高く設定されているので、滞納が長引くと返済が難しくなります。
債権者から催促・取り立ての通知が送られてくる
返済日が過ぎても借金を返済しない場合、まずは債権者から催促・取り立ての通知が送られてきます。
1度目の通知は返済が遅れていることを知らせる内容にすぎませんが、滞納が長期化すると法的手段を行う旨の文章が送られてきます。
強制解約後一括請求が行われる
2ヶ月以上滞納が続くと、期限の利益を失うため、債権者から残債務の一括請求書が届きます。
一括請求書が届いた時点で、信用情報機関で管理されている信用情報に傷がつきます。いわゆるブラックリストに載った状態です。1度ブラックリストに載ると、5〜10年間はクレジットカードの作成やローンの契約ができません。
差し押さえの通知が送られてくる
一括請求の通知も無視した場合、債権者から差し押さえの通知が送られてきます。
この段階まで至った場合、いつ債権者から給料や財産が差し押さえられてもおかしくありません。
裁判所から支払い督促・訴状が送られてくる
差し押さえ通知を無視していると、裁判所から支払い督促・訴状が送られてきます。
支払督促が送られてきた場合、異議申し立て書を提出しなければ、給料や財産が差し押さえられます。
訴状が送られてきた場合、決められた期日に裁判所へ行かないと自動的に裁判に敗訴します。敗訴した場合、自動的に給料や財産の差し押さえへ移行します。
財産の差し押さえ
裁判所からの支払督促・訴状を無視していると、強制執行により財産の差し押さえが行われます。
債務者本人だけではなく、家族や親族にも影響が及びかねません。ここまで放置せずに早い段階で弁護士に相談すれば、債務整理や債権者との和解交渉により差し押さえを防げます。
借金滞納で裁判を起こされるのを防ぐ方法
ここでは借金滞納で裁判を起こされるのを防ぐ方法について解説します。
所有している財産を処分して返済にあてる
借金の滞納が続くと、ブラックリストへの登録や財産の差し押さえに発展するおそれがあります。
そのため、債権者から催促や取り立ての通知が来る前に、所有している財産などを処分して返済にあてることをおすすめします。
1度返済をした後に、債権者と交渉すれば返済の猶予や毎月の返済額の変更に関する和解を行うことも可能です。裁判まで発展すると、和解などの選択肢がなくなるので、できるだけ早い段階で対処しましょう。
債務整理を利用する
借金の返済に充てる財産もない場合、債務整理の利用を検討しましょう。
債務整理とは、借金の額を減らしたり、ゼロにしたりする法的な手続きのことです。債務整理は3つの種類があり、それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下のとおりです。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
借金に対する効果 | ・利息のカット
・返済期間の調整 |
最大90%減額される | 免除になる |
手続きに必要な期間 | 2~6ヶ月 | 4~6ヶ月 | 6ヶ月から半年以上 |
裁判所へ支払う費用 | 0円 | 約30万円前後 | ・同時廃止:1~3万円
・管財事件:50万円 |
手続き後の返済期間 | 3~5年 | 3~5年 | なし |
官報への掲載 | 掲載されない | 掲載される | 掲載される |
再度借り入れができるまでの期間 | 5年間 | 5~10年間 | 5~10年間 |
どのような人が向いているか | 利息がなければ借金の返済ができそうな人 | ・持ち家を残しながら借金を減額したい人
・借金が減れば返済の見通しが立つ人 |
・財産や資産がない人
・借金の返済見込みがない人 |
どの手続きが適しているか、その人の抱えている借金額や収入によって異なります。まずは弁護士に相談して、どの手続きがピッタリなのかアドバイスをもらいましょう。
時効を援用する
時効が成立している場合、時効援用すれば借金の返済義務がなくなります。時効援用の流れは、以下のとおりです。
- 借金が時効を迎えているかチェックする
- 時効を迎えていた場合、時効援用通知書の作成を行う
- 債権者に対して内容証明郵便で時効援用通知書を送付する
- 債権者からの連絡には対応しない
- 時効の成立
1点注意したいのは、債権者からの連絡には絶対に対応してはいけないことです。連絡に対応した場合、債務の承認とみなされて時効が中断するおそれがあります。
時効の援用は、通知書を債権者に対して送付すれば終了するので、債権者から連絡があっても対応する必要はありません。
まとめ
どうしても借金の返済が難しい場合でも、滞納を続けて債権者からの連絡を無視し続けてはいけません。
早い段階で対処すれば、債権者との和解交渉や債務整理による借金の減額・免除も可能です。
お金に関しての悩みは打ち明けづらいですが、返済が難しい・無理だとわかった時点で弁護士に相談してください。