個人再生における清算価値保証原則とは?
個人再生の申し立てをする際には、清算価値保証原則を守らなければなりません。
借金を減額、あるいは分割支払いへの変更をしてもらうためには正式な再生計画が必要で、裁判所に認定される再生計画を策定するためには清算価値保証原則のルールに合致することが条件となります。
今回は、個人再生の再生計画で知っておきたい清算価値保証原則について詳しく解説していきましょう。
目次
清算価値保証原則とは
債務を減額してもらいながら再生を目指す個人再生では、どのくらいの率で債務を減額するか、どのくらいの期間で返済をするか、法律に定められた基準に基づいて具体的な再生計画を立てます。
再生計画は、もし破産した場合には、債権者に対してどのくらいの配当がされていたかを想定して計画を立てていきます。
破産手続きでは破産者の財産を処分して金銭に換え、債権者に対して配当を行うことが基本です。そのため個人再生手続きでは、破産を仮定して算出した配当率より少ない額を再生計画にはできません。
つまり、破産した場合の配当率以上の額を弁済することがルールで、これを「清算価値保証の原則」と呼びます。
なぜ清算価値保証原則が求められるのか
個人再生手続きをすると、借金の減額や分割払いへの変更が可能です。しかも、財産を処分することも必須ではありません。
お金を借りた債務者にとってはありがたい制度である個人再生も、お金を貸した債権者にとっては貸したお金が回収できないことを意味します。
もし債務者が財産を持っているのに処分せず、個人再生で借金の減額などが認められるなら、債権者にとっては支払われるものが支払われない状態が続くことを意味するでしょう。
減額、分割支払いを認める以上は、破産した場合よりも多い金額が支払われるべきです。そのため、個人再生手続きでは破産したと仮定した場合の金額よりも多く返済をするという清算価値保証の原則が求められます。
個人再生を行うには、破産した場合以上の金額を支払わなければならないと考えてください。
個人再生で清算価値にしない財産もあるの?
個人再生の再生計画では、破産した場合の配当率以上の弁済が原則です。破産手続きをする際には、自由財産になると規定されている本来的自由財産は処分しなくてもよいとされています。
つまり、個人再生の清算価値を算定する際にベースとする破産した場合の配当についても、自由財産は含まなくても良いと考えるのが通常です。
次の財産については個人再生でも清算価値に含まないことが通例となっています。
- 99万円までの現金
- 残高が20万円以下の預貯金
- 価値が20万円以下の自動車
- 家財道具
- 自己の居住する賃借物件の敷金
- 支給見込み額の8分の1が20万円以下である退職金
- 見込み額が20万円以下の生命保険解約返戻金
- その他,差押えを禁止されている財産
実務上、これらの財産は個人再生の清算価値に含めずに運用されているものの、裁判所ごとに判断が異なることもあるため、個人再生の案件を多く扱っている弁護士からアドバイスを受けておくと安心です。
個人再生の清算価値は実際にどう算定するの?
実際に個人再生での清算価値はどのように算定するかを見ていきましょう。
①清算価値を算定するタイミング
まず、算定基準となるタイミングは再生手続きスタート時が原則です。
ただ、再生手続きを開始した後に財産が増えた場合は、増えた分についても清算価値に含まなければなりません。
再生計画が裁判所に認可されるタイミングでの支払総額が、清算価値を下回らないように作成します。
②清算価値を計算する財産目録
基本的に、清算価値の算定方法についての運用は裁判所が行います。個人再生の申し立てを行う際には、財産目録を裁判所に提出し、清算価値を計算する流れです。
財産目録とは次のようなものです。
- 現金や預貯金
- 貸付金
- 社内預金や財形などの積立金
- 退職金(見込み額)
- 保険(解約返戻金)
- 自動車など
- 不動産や有価証券
- 相続財産
- 20万円以上の高級品
③最低弁済額を超えているか
清算価値保証原則をクリアしていても、最低弁済額基準をクリアしていないと個人再生手続きは利用できません。
法律で定められている最低弁済額とは、小規模個人再生では借金の総額から算出されます。
給与所得者の個人再生の場合は平均年収などをもとにした算出ルールが決められているので、詳しくは弁護士などの専門家に確認しましょう。
なお、最低弁済額が高額で予想配当額を超えていた場合でも、清算価値保証原則は適用されます。
個人再生の計画弁済総額は、破産した場合の清算価値から算出する予想配当額か、最低弁済額のいずれか高額となる金額です。
まとめ
個人再生の手続きにあたっては、清算価値保証原則のルールに合致した支払い計画を作ることが大切です。
再生計画が認められなければ手続きが打ち切られてしまい、破産の手続きに移行することになってしまいます。
住宅ローンの有無や過払い金が発生する可能性など、人それぞれ事情は違い、個別のケースに合わせた個人再生の手続きを行うことになります。
まずは、手遅れになる前に個人再生に強い弁護士のアドバイスを受けましょう。無料相談などを上手に活用して事情に沿ったアドバイスを受けながら、手続きを進めることをおすすめします。