債務整理と住宅ローンの関係|任意整理後も自宅を残せるか解説
債務整理と住宅ローンの関係を気にしている人は多いはずです。
- 債務整理したら住宅ローンは返さなくてよくなる?
- 債務整理したら住宅を差し押さえられる?
- 債務整理後に住宅ローンは組める? など
結論、住宅ローンを債務整理することはできますが、住宅を差し押さえられてしまう可能性が高いです。
ローンが返済されなくなったとき、ローン会社は住宅を売却することで借金を回収するからです。ただし、住宅ローンの返済を継続しながら、他の借金だけを整理することも可能です。
債務整理後は信用情報が悪化し、住宅ローンの審査に通りにくくなりますが、時間の経過などにより再びローンを組める可能性もあります。
この記事では、債務整理と住宅ローンについて解説します。
目次
住宅ローン返済中の債務整理
まずは、住宅ローン返済中の債務整理について解説します。
住宅ローンがどうなるかは手続方法によって変わる
住宅ローン返済中に債務整理をすること自体は可能です。しかし、持ち家を残せるかは債務整理の方法によって変わります。
債務整理の方法は4種類あります。
- 任意整理(自宅を残せる)
- 特定調停(自宅を残せる)
- 個人再生(自宅を残せる※)
- 自己破産(自宅を残せない)
※住宅ローン特則を利用した場合
住宅ローンを今後も返済をする必要があるのか、自宅を残すことができるかなど、手続別に見ていきましょう。
家を残せる手続と残せない手続
持ち家を残せる手続は「任意整理」「特定調停」「個人再生(住宅ローン特則を利用した場合)」です。
自己破産では家を残すことはできません。また、個人再生も条件によっては住宅ローン特則を利用できない場合もあります。
手続別に解説いたします。
任意整理の場合(自宅を残せる)
任意整理は借入先である債権者と交渉し、金額や返済期間など互いに合意した内容で返済を行っていく手続方法です。直接債権者と交渉するので裁判所は介しません。
任意整理をする対象は自分で選べるため、住宅ローンを組んでいる金融機関を対象から外せば持ち家に影響はありません。
任意整理することによって今まで返済に回していた余剰分を住宅ローン返済に充てられる場合もあります。
住宅ローンだけでなく、次のような場合も任意整理は非常に有効な手段であると言えます。
- 車のローンが残っている場合
- 奨学金など保証人がいる借入れで保証人に迷惑をかけたくない場合
特定調停の場合(自宅を残せる)
また、任意整理と似ている手続に「特定調停」があります。こちらは任意整理とは異なり裁判所を介して行う手続きです。
任意整理と同様、交渉する債務者を選べます。住宅ローンを組んでいる金融機関を対象から外せば、持ち家を手放す必要はありません。
特定調停については以下の記事で解説しているのでご参照ください。
個人再生の場合(自宅を残せる)
個人再生は任意整理とは異なり債務整理をする対象は選べません。すべての債権者を対象としなければなりませんが、住宅ローン特則を利用することで住宅ローンを個人再生の対象から外すことが可能です。
つまり、裁判所から認められれば、住宅ローンを払い続け自宅を残し、住宅ローン以外の借金を大幅に減額できます。
どのくらい減額できるかは借入れの総額等によって異なります。最低弁済額の基準については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
しかし、住宅ローン特則を利用できない場合やそもそも個人再生できない場合もあるので注意が必要です。
【住宅ローン特則を利用できない場合】
- 住宅ローン特則を利用したい家とは別の所に住んでいる
- 家を他の借金の担保として借入れをしている
【個人再生できない場合】
- 借入の総額が5000万円を超える場合
- 短期間でアルバイトを転々としているなど「将来的に継続又は反復した収入がある」とは認められない場合
自己破産の場合(自宅を残せない)
自己破産は全ての借入を清算する手続です。住宅ローンも対象となるため、家を手放すことになります。
住宅ローンを完済していたとしても、20万円以上の資産は処分の対象となるため、家を手元に残すことはできません。
自己破産が持ち家に与える影響については以下で詳しく解説しています。
車をお持ちの方はぜひこちらもご参照ください。
持ち家を残す=住宅ローンは返済する必要あり
いずれにしても家を残す方法の債務整理手続きを選択した場合、住宅ローンはそのまま返済を続ける必要があります。
住宅ローンの返済が難しい、家を手放してでも解放されたいと思われた場合は、自己破産で全ての借入を清算することになります。
債務整理後でも住宅ローンは組める?
債務整理を一度でも経験してしまうと、住宅ローンを組めなくなってしまうのかと思う方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、事故情報抹消後であれば住宅ローンを組めます。
今後のローンを組む上で知っておきたいキーワード「信用情報」「事故情報」について確認していきましょう。
信用情報・事故情報とは
信用情報は、クレジットカードやローン等の契約・利用状況に関する情報で、その人に支払い能力があるかを客観的に表すものです。
長期間の滞納や債務整理した場合、その情報が事故情報として載ってしまい、その期間クレジットカードやローン等の審査に非常に大きな影響を与えます。
自分の信用情報は、信用情報機関に開示請求をすることによって確認できます。
信用情報機関については以下で詳しく解説しています。
事故情報として登録される期間
事故情報として登録されている期間は信用情報機関によって異なりますが、一般的に任意整理は5年、個人再生や自己破産は10年です。
事故情報が登録されている5年から10年は、住宅ローンを組むことは難しいでしょう。
事故情報抹消前でも、債務整理から期間がある程度経っている、債務整理をした借入を全て返済している、安定した雇用・収入であるなど、一定の条件を満たす場合は住宅ローン審査に通ることもあります。
債務整理後に住宅ローンを組みたい場合の注意点
ここでは、債務整理後に住宅ローンを組みたいときの注意点について解説します。気を付けるべき点は以下のとおりです。
- 事故情報が消えているか確認する
- 一度に複数の住宅ローンの申込は避ける
- 債務整理をした借入先と同じグループの会社は避ける
事故情報が消えているか確認する
ローン審査が通らなかった場合、その情報が一定期間残ってしまいます。そのため、住宅ローンの申込をする前に自分の事故情報が消えているかを確認した方がいいでしょう。
一度に複数の住宅ローンの申込は避ける
住宅ローンの申込をすると、金融機関が信用情報機関に照会をかけます。
短期間に複数の申込をすると、照会をした履歴が何件も残ってしまうので色々なところから住宅ローンの申込を断られている人とみなされてしまいます。
住宅ローンを申し込む機関は慎重に考え、審査に通らなかった場合は一定期間空けてから申し込むことをおすすめします。
債務整理をした借入先と同じグループの会社は避ける
信用情報から事故情報が消えたとしても、過去に債務整理をした金融機関や同じグループの会社を避けた方が無難です。
債務整理をした金融機関は独自に顧客の事故情報を管理しており、その情報は同じグループ会社に共有されているといわれています。
そのため、住宅ローンの申込を事故情報抹消後にしても、企業内に債務整理した情報が残っていて審査が通らない可能性があります。
住宅ローンではなく、新たに賃貸物件を借りたいと思っている方は以下の記事をぜひご参照ください。
他の借金はなるべく完済しておく
住宅ローンの審査では、現在の借り入れ状況が重要な判断基準になります。
債務整理後に借金が残っていると、金融機関は「返済能力に不安がある」と判断しやすくなります。
特に、カードローンやキャッシングの利用履歴があるとマイナス評価につながりやすいため、住宅ローンの申請前にできる限り完済しておくことが望ましいです。
債務整理後の住宅ローン審査でチェックされやすいポイント
債務整理をしてからどのくらいの時間が経過したかにもよりますが、過去に債務整理をした人は、住宅ローン審査の基準が厳しくなります。
以下のポイントを抑えておくことで、審査通貨の可能性を高めることができます。
住宅ローン完済時の年齢
住宅ローンの審査では、完済時の年齢が重要なポイントの一つです。
一般的に、多くの金融機関では完済時の年齢を75歳までとしているケースが多く、それを超えるローン契約は難しくなります。
たとえば、50歳で35年ローンを組むと85歳となるため、審査に通りにくくなります。定年後も安定して収入を得られる保証がないためです。
そのため、完済時の年齢が高齢になりそうな場合は、借入期間を短くしたり、定年前に完済できるプランを立てるなどの対策が必要です。
年収・雇用形態・勤続年数
当然ですが、住宅ローンの審査に当たっては、申込者の年収・雇用形態・勤続年数が重要です。
【年収】
一般的に、年収の5~7倍程度であれば、住宅ローンを組みやすいといわれています。例えば、年収400万円であれば、2000~2800万円です。
債務整理後で不安がある人は、年収の5倍以下の金額のローンであれば、審査に通りやすくなります。
【雇用形態】
正社員や公務員など、安定した職業についている人は審査に通りやすくなります。
反対に、契約社員やパート、個人事業主の場合は、収入が不安定と見なされ、審査が厳しくなることがあります。
【勤続年数】
勤続年数も重要な要素で、短期間での転職が多いと「安定した収入が見込めない」と判断されやすいです。
一般的には、同じ会社に3年以上勤務していると審査に通りやすいといわれています。
頭金の有無・金額
頭金が多い方が、貸付額が少なくなるため、住宅ローン審査を通りやすくなります。
一般的には、物件価格の20%以上の頭金を用意するのが望ましいとされています。
たとえば、3,000万円の住宅を購入する場合、600万円以上の頭金を準備すると、審査の印象が良くなります。
頭金なし(フルローン)の場合、金利が高くなったり、審査基準が厳しくなったりする可能性があります。
現在の借金の有無
先ほども触れましたが、現在の借金の有無は住宅ローン審査において重要なポイントです。
他の借入が多いと、金融機関は「新たな住宅ローンの返済が困難になるのではないか」と判断し、審査が不利になることがあります。
なるべく他の借入は完済して、審査のハードルを下げるのが望ましいです。
債務整理後に住宅ローンが組めなかったときの対処法
債務整理後に住宅ローンを申し込んでも、審査に通らないことがあります。
しかし、住宅ローンを諦める必要はありません。以下の対処法を試すことで、住宅ローンの審査に通る可能性を高められます。
配偶者名義で住宅ローンを組む
債務整理の影響で、自分名義の住宅ローンを組めない場合、配偶者の名義でローンを組むのもひとつの方法です。
配偶者に安定した収入があり、信用情報に問題がなければ、住宅ローンの審査に通る可能性が高まります。
ただし、住宅ローンの名義を配偶者にすると、住宅の所有権も配偶者になりますし、離婚時に所有権やローンの支払いでトラブルになる可能性があります。
配偶者名義で住宅ローンを組む際は、将来的なリスクも考慮すべきです。
ペアローンを利用する
ペアローンとは、夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む方法です。
2人分の審査が必要ですが、単独よりも借入額を増やせたり、審査を通りやすくなったりなどのメリットがあります。
当然、どちらかが返済できなくなって破綻するなどのリスクもあるため、利用の際は十分な検討が必要です。
連帯保証人を用意する
連帯保証人を立てることで、住宅ローンの審査に通りやすくなります。
連帯保証人とは、契約者が返済できなくなった際に、代わりに支払い義務を負う人のことです。一般的には、収入や信用情報が安定している親族が選ばれます。
金融機関は、連帯保証人の収入や信用状況もしっかりと審査します。
ローン審査の通過には有効な手段ですが、連帯保証人には大きな責任が伴うため、事前に十分な話し合いをし、納得したうえで申し込むことが大切です。
比較的審査の甘い業者に申し込む
住宅ローンの借入先を変えてみるのも一つの手段です。
一般的に、大手の銀行(UFJ・三井住友・みずほなど)は審査が厳しいといわれています。
対して、地方銀行や信用金庫の場合、比較的柔軟な対応をしてくれる傾向にあります。
フラット35は信用情報の影響が少ないため、債務整理後の住宅ローン申し込みには向いているかもしれません。
債務整理と住宅ローンに関するよくある質問
住宅ローン返済中に債務整理するとどうなる?
債務整理の手続きによって結果が異なります。任意整理や個人再生の場合、買った家で暮らしながら、住宅ローンの返済を継続できます。
自己破産の場合、住宅ローンも整理対象となり、原則として自宅は競売にかけられます。
債務整理後に住宅ローンを組めた人はいる?
債務整理後でも、一定期間が経過し信用情報が回復すれば、住宅ローンを組める可能性はあります。
一般的には、任意整理で5年、個人再生・自己破産で5〜10年が経過すると信用情報から事故情報が削除され、ローン審査を受けやすくなります。
住宅ローンは任意整理できない?
住宅ローンは担保付きのため、任意整理の対象にはできません。返済が滞ると、ローン会社は担保権を行使し、自宅を競売にかける可能性があります。
任意整理は債権者との交渉による手続きですが、住宅ローンは担保があるため、金融機関が応じることはほとんどありません。
まとめ
現在住宅ローンがある方は任意整理や個人再生であれば家を残すことができます。
また、自己破産で家を手放すことになるとしても、早期に手続きをしたらその分早く生活を立て直せます。
ご自分がどの債務整理手続きを利用できるのか、どのくらいで生活を立て直せそうか、まずはネクスパート法律事務所にぜひご相談ください。当事務所では、借金に関するご相談は無料でお受けしています。