債務整理をすると賃貸借契約はできない?
債務整理をしたら今住んでいる家の賃貸借契約はどうなるのでしょうか?
また、引っ越しをしたくても、新たに賃貸借契約を結ぶことはできないのでしょうか?
債務整理をしたからといって、法律上、賃貸借契約ができなくなるということはありません。
ただし、家賃の滞納がある場合や、債務整理後に引っ越しをする場合など、注意が必要なケースがいくつかあります。
この記事では、「債務整理をすると賃貸借契約はできない?」について解説していきますので、参考になさってください。
目次
債務整理をしたら今住んでいる家の契約はどうなる?
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産の3つの手続きがあります。
3つのうちどの手続きを選択したとしても、債務整理を理由に現在住んでいる賃貸物件から追い出されてしまうということはありません。
以前は賃貸物件の借主が自己破産をすると、貸主が賃貸借契約を解約することができることが民法上定められていましたが、平成16年の民法改正でその規定は削除されています。
家賃を滞納したまま債務整理をしたらどうなる?
家賃を滞納したまま債務整理をすると、賃貸借契約を解除され、今住んでいる賃貸物件から出て行かなくてはならない可能性があります。
自己破産と個人再生は、裁判所に申立てを行う手続きです。
すべての債権者(お金を貸してくれた人や会社)を平等に扱わなければならず、一部の債権者を手続きの対象から外して返済することはできないため、滞納家賃を支払うこともできません。
そのため、家賃を滞納したまま手続きを進めようとすると、賃貸借契約を解除され立ち退きを求められる恐れがあります。
一方で任意整理は裁判所は介さず、債権者と債務者(お金を借りている人)の話し合いにより合意した内容で返済をしていく手続きのため、対象とする債権者を選ぶことができます。
今住んでいる家に住み続けたい場合には、家賃の滞納については債務整理の対象から外して手続きをすることが可能です。
ただし、家賃を滞納している場合、債務整理をするかしないかにかかわらず、ある程度滞納額がたまると、賃貸借契約を解除されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
債務整理をしたら新たに賃貸借契約を結べない?
債務整理をしたあと、法律上賃貸借契約を結ぶことに制限がかかるようなことがないのは先述のとおりです。
ただし、新たに賃貸物件を借りられるかどうかの審査の際に、債務整理をしたことが影響してきます。
マンションやアパートなどの賃貸物件を借りる際には、まずは大家さんが審査をします。
大家さんによる審査では、大家さんによって判断基準が異なるため、基準によっては審査に通らないこともあります。
また、最近では家賃保証会社(賃貸保証会社)の利用が必要な物件も多く、この家賃保証会社による審査では、債務整理をしたことを理由に審査が通らない可能性があります。
なぜ債務整理をしたことを理由に家賃保証会社により審査が通らないかというと、これには、信用情報機関に登録されている信用情報が関係しています。
信用情報機関とは、加盟しているクレジットカード会社などから個人のクレジットやローンに関する信用情報を収集し、加盟している会社からの照会に応じて情報提供を行う機関のことです。
債務整理をすると、信用情報に事故情報として登録されます。いわゆるブラックリストに載ると言われる状態です。
信用情報に事故情報が登録されてしまうと、5年~10年程度は事故情報が削除されません。
新たにクレジットカードを作れない、借金ができない、ローンが組めないなどの影響があります。
信販系の家賃保証会社の審査では、信用情報機関から信用情報を照会していると言われています。
債務整理をすると信用情報に事故情報が登録されていますので、信用情報期間からの信用情報を照会している家賃保証会社の審査は通らないでしょう。
①家賃保証会社ではなく、個人が保証人となれば契約できる物件を選ぶ
家賃保証会社以外の個人が保証人となって契約できる物件に申込をすることです。
ただし、大家さんの審査はありますので、保証人や賃貸借契約を結ぶ本人の収入などから審査が通らない可能性もあります。
②信販系ではない家賃保証会社を利用できる物件を選ぶ
家賃保証会社の中でも、信用情報機関に加盟していない信販系でない会社であれば、審査が通りやすくなるでしょう。
③しばらくの間実家や友人宅に住むなどする
信用情報機関に事故情報が登録されているのは一般的に5年~10年程度と言われています。
その後は事故情報が削除されるため、信販系の家賃保証会社の審査にも通る可能性があります。
まとめ
債務整理をしたことで賃貸借契約が結べなくなったり、解除されるというようなことはありません。
ただし、家賃を滞納している状態で自己破産や個人再生の手続を進めると、滞納家賃が払えなくなり、その結果、契約を解除されてしまう可能性があります。
今住んでいる賃貸物件に住み続けるためには、家賃を滞納しないことが重要です。
もっとも、自己破産や個人再生を考えている場合、ほかの借金の返済をしていないのに、家賃の滞納だけを解消してしまうと、その後の手続きに大きな影響を与える可能性があります。
自己判断はせず、弁護士に相談することをおすすめします。
債務整理には3つの手続きの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
今住んでいる賃貸物件を出たくないなどの事情がある場合、個別の事情については債務整理を依頼する弁護士に相談するとよいでしょう。