個人再生ができないケースとは?
財産をすべて処分することが前提の自己破産と違い、個人再生は住宅ローンがついた自宅や自動車を残したまま債務を大きくカットすることが可能です。
そのような手元に残したい財産がある場合に有効な個人再生ですが、個人再生ができない(最初から申し立てができないケース、失敗するケース)があります。
申立てが棄却される場合、手続きが廃止になる場合、再生計画が不認可となる場合、認可決定後に取り消しとなる4つのケースがあります。
ここではそれらの個人再生ができないケースを、わかりやすく解説します。
目次
申し立てが棄却される場合
開始決定の要件を満たさない場合、申立て自体が棄却されます。
主なものを解説します。
住宅ローン以外の債務額が5000万円を超える時
住宅ローンと担保がついている借金以外の借金が、5000万円を超えると個人再生は申立てができません。
収入が不足または継続する見込みがない場合、給与が得られない時
個人再生はカットされた債務を3年から5年で支払うことが前提ですので、支払う収入の見込みがないと判断されれば棄却されます。
再生手続きの費用が準備できないとき
手続にかかる費用の見込み額をあらかじめ裁判所に納めなければなりません。
費用は裁判所や弁護士に依頼するかで変わりますが、数万円~30万円前後必要です。
費用が事前に準備できなければ、棄却されてしまいます。
手続きが途中で廃止される場合
開始が決定されると債権額の調査や認否がなされ、債権者の書面決議に進みます(小規模個人再生の場合。給与所得者等再生手続では書面決議はありません)。
書面決議に進む前に廃止される場合もあれば、書面決議により否決され廃止になる場合があります。
最も多いケースは、書面決議により否決される場合です。
再生計画案が書面決議で否決されるとき
再生計画につき債権者が同意するかの決議が、書面で行われます。
明確な反対の意思表示が議決権者の半数を超えるか、議決権額(議決権者が持つ債権額)の半数を超えると、再生計画案は否決されます。
否決されると、手続きは途中で廃止となります。
再生計画が不認可となるケース
書面決議で再生計画が否決とならなくても、裁判所が再生計画を不認可とする場合があります。
再生計画が再生債権者の一般の利益に反する時
再生債権者の一般の利益に反する時とは、「債権者は債務者が破産した時より多くの債権を回収できない時」です。
債権者は、破産した場合に得られる金額(清算価値といいます)より多くの金額の回収が可能として個人再生に応じます。
清算価値より再生計画の万斉額が少ない時は、不認可となります。
住宅の所有権等を失う可能性があるとき(住宅ローン特則※利用時)
住宅ローン特則を利用して家を残そうとしても、住宅を失う恐れが大きければ計画を認可しても目的が果たせないからです。
具体例で言うと、税金滞納による差押がされたままでは不認可となる可能性が高くなります。
住宅ローン債権者の差し押さえや一般債権者の差し押さえであれば、個人再生手続により中止させることができます。
しかし優先債権である公租公課の滞納による差押は、個人再生手続によっては中止できません。
個人再生開始決定前に滞納した公租公課をすべて支払うか、分納を認めてもらうしかありません。
※住宅ローン特則:個人再生における住宅資金特別条項の別称で、担保のついた住宅ローン等はそのまま支払いながらその他の債務は個人再生を行うための特則。
再生計画の認可決定後に取り消しとなる場合
再生計画が認可され確定した後でも、取り消しとなる場合があります。
ちなみに再生計画が取り消されると、カットされた一般債務は全て元通りになり、支払い義務も当然免除されませんので注意しましょう。
再生債務者が再生計画に従った返済を怠った場合
再生計画に従った返済は3年から5年続きます。
その返済がされるとの前提で個人再生が認可されたわけですので、返済がされなければ個人再生の認可は取り消されるのは当然です。
再生債務者が返済を怠れば、債権者が裁判所に再生計画の取消しを申し立てます。
なお再生計画の取消しを申し立てることができる債権者は「再生計画で裁判所が認めた総債権額の10分の1以上の債権額を有する」必要があります。
では「返済を怠った」とはどの程度をいうのでしょうか。
法律を厳密に解釈すれば1回でも遅れれば返済を怠ったと言えますが、実際はその程度では債権者も再生計画の取消しを申し立てることはほとんどありません。
返済の遅れが1回や2回、しかも数日程度のうっかりミスなら再生計画の取消し申し立ての手間を考え、申立てはしない可能性が高いでしょう(それでもあくまで可能性の問題で、必ず申し立てないとは言い切れません)。
返済が何回も遅れ、しかも数週間や数カ月にわたれば債権者も取り消しを申し立てる可能性が高くなります。
しかしあくまで原則は「1回も1日も遅れない」と考えるようにしましょう。
まとめ
個人再生はメリットの多い制度ですが、条件が法律で定められ誰でもできるものではありません。
各段階のポイントを押さえ、慎重に手続きを進める必要がります。
数多くの個人再生を成功させてきた当事務所には、数多くのノウハウが蓄積されています。