自己破産と債務整理どっちがいい?自己破産と債務整理の違い
自己破産と債務整理は、別の手続きだと認識している方も少なくありません。
債務整理とは、それ自体が個別の手続きとして存在するわけでなく、借金を整理する手続きの総称です。
借金問題を根本的に解決する前提として、債務整理の方法や制度の違いを理解することが大切です。
この記事では、自己破産とその他の債務整理との違いについて、次のとおり解説します。
- 自己破産と債務整理の違いは?
- 自己破産とその他の債務整理の違いは?
- 自己破産とその他の債務整理のメリットを比較!
- 自己破産とその他の債務整理のデメリットを比較!
- 他の債務整理中に自己破産することは可能?
- 他の債務整理を自己破産に切り替えるメリット
- 他の債務整理を自己破産に切り替えるデメリット
借金にお悩みの方が、ご自身に合った債務整理の方法を検討できる助けになれば幸いです。
目次
自己破産と債務整理の違いは?
ここでは、自己破産と債務整理の関係について解説します。
自己破産
自己破産とは、借金の返済義務を減免してもらう債務整理の手続きの一つです。具体的には、個人または個人事業主である債務者が裁判所に申立てて、裁判所の免責許可を受けることにより返済義務が免除されます。

債務整理とは
債務整理とは、借金の減額・支払の猶予・免除等により、法的に借金問題を解決する手続きの総称です。
債務整理には、主に次の4つの方法があります。
- 自己破産
- 個人再生
- 任意整理
- 特定調停
他の債務整理
自己破産以外の債務整理の方法を紹介します。
個人再生
個人再生は、個人または個人事業主である債務者が申立てて、裁判所に返済計画を認めてもらうことにより、借金そのものを概ね5分の1に減額する手続きです。
減額後の借金を原則3年間(最長5年間)で分割返済するため、将来的に継続した安定収入が見込める方でなければ利用できません。
任意整理
任意整理は、債権者と交渉して、将来利息のカットや返済期間の延長をしてもらう裁判外の手続きです。過払金がない場合、元本自体を減額してもらうことはできません。
法人・個人または個人事業主を問わず利用できますが、債権者の同意なしに借金を減額できません。
特定調停
特定調停は、簡易裁判所に申立てると、調停委員が仲介役となり債権者との和解交渉を支援してもらえる手続きです。法人・個人または個人事業主を問わず幅広く利用できます。
自己破産とその他の債務整理の違いは?
ここでは、自己破産とその他の債務整理の違いを解説します。
自己破産・個人再生・任意整理・特定調停の比較一覧
自己破産とその他の債務整理の違いを以下の一覧表で確認しましょう。
自己破産 | その他の債務整理 | |||
個人再生 | 任意整理 | 特定調停 | ||
裁判所の関与 | 有 | 有 | 無 | 無 |
借金の減額幅 | 借金がゼロになる※1 | 概ね5分の1に減額される | 将来利息・遅延損害金のカット | 将来利息・遅延損害金のカット |
対象となる借金 | すべて | すべて | 選べる | 選べる |
財産の処分の有無 | 20万円以上の価値のある財産が処分される | 処分されない※2 | 処分されない※2 | 処分されない※2 |
資格制限 | 有 | 無 | 無 | 無 |
保証人への影響 | 有 | 有 | 交渉先の選択により回避できる | 交渉先の選択により回避できる |
借金の原因 | 問われる | 問われない | 問われない | 問われない |
官報への掲載 | 有 | 有 | 無 | 無 |
手続期間 | 3ヶ月~1年 | 6ヶ月~1年 | 3~6ヶ月 | 3~6ヶ月 |
返済期間 | 返済不要 | 3~5年 | 3~5年 | 3~5年 |
ブラックリスト登録期間 | 5~10年 | 5~10年 | 5年 | 5年 |
※1 非免責債権の支払義務は免除されません。
※2 担保や所有権留保が付いている財産のローンが残っている場合は、当該財産を債権者に回収される可能性はあります。
自己破産とその他の債務整理のメリットを比較!
ここでは、自己破産とその他の債務整理のメリットをそれぞれ解説します。
自己破産のメリット
自己破産の主なメリットは以下のとおりです。
借金がゼロになる
自己破産の最大のメリットは、借金がゼロになることです。
ただし、税金や社会保険料など破産法で定められたいくつかの債権(非免責債権)の支払義務は免除されません。
個人再生のメリット
個人再生の主なメリットは以下のとおりです。
- 財産を残せる
- 資格制限を受けない
ひとつずつ説明します。
財産を残せる
個人再生は、財産を手元に残して借金を整理できます。住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンを支払いながら、マイホームに住み続けられます。
ただし、住宅ローン以外の債権の担保が設定された自宅や所有権留保付ローンが残っている車は手元に残せません。
資格制限を受けない
個人再生では返済能力を維持させる観点から、資格や職業の制限を受けません。
自己破産では資格制限を受ける職業に就いている方も、仕事を続けながら借金を整理できます。
任意整理のメリット
任意整理の主なメリットは以下のとおりです。
- 裁判所が関与しない
- 交渉する債権者を自由に選べる
- 財産を残せる
ひとつずつ説明します。
裁判所が関与しない
任意整理は、債務整理の中で唯一裁判所が関与しない手続きで、借金の原因を問われることもありません。
他の債務整理に比べて手続きが簡単で必要書類も少なくて済みます。
交渉する債権者を自由に選べる
任意整理では、交渉する債権者を自由に選べます。
保証人が付いている借金や、家族・友人からの借金を任意整理の対象から外せるため、それらの人に迷惑をかけずに借金を整理できます。
財産を残せる
任意整理では、ローンやクレジットで購入した商品・車・自宅なども、当該ローンを対象外とし、約定通りの返済を続けることで残したい財産を手放さずに済みます。
特定調停のメリット
特定調停の主なメリットは以下のとおりです。
- 自分で手続きできる
- 費用が安く済む
ひとつずつ説明します。
自分で手続きできる
特定調停は、簡易裁判所に申立書類が備え付けられており、調停委員が当事者の仲介役する役割を担うため、弁護士に依頼しなくても自分で手続きできます。
費用が安く済む
弁護士に依頼せず自分で手続きする場合は、費用が安く済みます。特定調停の申立てに必要な費用は、次のとおりです。
- 収入印紙代 債権者1社につき500円
- 郵便切手代 430円※1
- 資格証明書取得費 600円※2
※1 東京地方裁判所の場合(裁判所により異なります)
※2 債権者が法人の場合
自己破産とその他の債務整理のデメリットを比較!
ここでは、自己破産と他の債務整理のデメリットをそれぞれ解説します。
自己破産のデメリット
自己破産の主なデメリットは以下とおりです。
- 借金の理由が問われる
- 一定の財産が処分される
- 資格制限を受ける
- 官報に掲載される
- ひとつずつ説明します。
借金の理由が問われる
自己破産では、借金の理由が収入に見合わない浪費やギャンブルなどの場合は、免責されない可能性があります。
一定の財産を処分される
自己破産では、原則として一定の価値のある財産は処分されます。
資格制限を受ける
資格に関する各種法令において、破産者の資格制限が定められています。そのため、破産手続きの開始により、一時的に資格の登録ができなくなったり、資格を使った職業につけなくなったりすることがあります。
資格制限を受ける代表的な例は、弁護士・税理士・公認会計士などの士業や、生命保険募集人及び損害保険代理店、警備員などです。
官報に掲載される
自己破産すると、住所や氏名などの情報が官報に掲載されます。
個人再生のデメリット
個人再生の主なデメリットは以下のとおりです。
- 財産があると返済額が増える
- 官報に掲載される
ひとつずつ説明します。
財産があると返済額が増える
個人再生には、持っている財産以上の額を債権者への返済にあてなければならないルール(清算価値保障原則)があります。
そのため、一定の価値がある財産(自己破産で処分の対象となる財産)を有している場合は、返済額が増えることがあります。
官報に掲載される
個人再生すると、住所や氏名などの情報が官報に掲載されます。
任意整理のデメリット
任意整理の主なデメリットは以下のとおりです。
- 交渉が成立しないこともある
- 強制執行等はとめられない
ひとつずつ説明します。
交渉が成立しないこともある
任意整理は裁判所が関与しないため、自己破産や個人再生のような強制力がありません。債権者から合意を得られず、交渉が成立しないこともあります。
強制執行等は止められない
任意整理は、裁判所を通した手続きではないため、法的に強制執行を止める効果を有しません。
特定調停のデメリット
特定調停の主なデメリットは以下のとおりです。
- 書類の収集・作成に手間がかかる
- 債権者からの督促がすぐに止まらない
ひとつずつ説明します。
書類の収集・作成に手間がかかる
弁護士に依頼せず、自分で特定調停を申立てる場合は、申立書類の作成や書類の収集を自ら行わなければなりません。
書類の作成方法が分からない場合は、簡易裁判所に問い合わせればサポートを受けられますが、時間や手間を要するため、時間に余裕のない方には負担がかかります。
債権者からの督促がすぐに止まらない
弁護士に依頼した場合は、受任通知の送付により督促を止められますが、特定調停を自分で行うと、債権者からの取り立てはすぐに止まりません。
自力で行う場合は、申立てが受理された旨の通知(債権者への調停の受付票のコピー送付)により、督促が止まります。
他の債務整理中に自己破産することは可能?
ここでは、他の債務整理から自己破産への切り替えが可能かどうかを解説します。
自己破産への切り替えは可能
他の債務整理手続きの途中でも、自己破産に変更できます。
切り替え時には弁護士との再契約が必要
解決方針を変更する場合は、弁護士との再契約(委任契約)が必要です。
方針変更に伴い弁護士費用も変動しますので、追加の費用がかかる場合があります。
他の債務整理を自己破産に切り替えるメリット
ここでは、他の債務整理を自己破産に切り替えるメリットを解説します。
個人再生を自己破産に切り替えるメリット
個人再生を自己破産に切り替える主なメリットは以下のとおりです。
借金の支払義務がなくなる
返済を前提とした制度である個人再生と異なり、自己破産は、裁判所に免責を認められれば返済義務がなくなります。
自己破産に切り替えることで、借金の返済から解放されます。
任意整理を自己破産に切り替えるメリット
任意整理を自己破産に切り替える主なメリットは以下のとおりです。
- 借金の支払義務がなくなる
- 強制執行を止められる
ひとつずつ説明します。
借金の支払義務がなくなる
返済を前提とした手続きである任意整理と異なり、自己破産は、裁判所に免責が認められれば返済義務がなくなります。
自己破産に切り替えることで、借金の返済から解放されます。
強制執行を止められる
自己破産を申立てると、破産開始決定前に強制執行中止命令の申立てが可能です。中止命令が出れば破産手続開始決定を待たずに強制執行を止められます。
特定調停を自己破産に切り替えるメリット
特定調停を自己破産に切り替える主なメリットは以下のとおりです。
借金の支払義務がなくなる
返済を前提とした制度である特定調停と異なり、自己破産は、裁判所が免責を認めれば返済義務がなくなります。
自己破産に切り替えることで、借金の返済から解放されます。
他の債務整理を自己破産に切り替えるデメリット
ここでは、他の債務整理を自己破産に切り替えるデメリットを解説します。
個人再生を自己破産に切り替えるデメリット
個人再生を自己破産に切り替える主なデメリットは以下のとおりです。
- 一定の財産が処分される
- 資格制限を受ける
ひとつずつ説明します。
一定の財産が処分される
自己破産すると、個人再生では手元に残せた財産も手放さなければならないことがあります。
マイホームの保持を目的として個人再生を利用していた場合、自己破産に切り替えれば自宅を失うことになります。
資格制限を受ける
自己破産では資格制限を受けます。資格制限を回避するために、個人再生を利用していた場合、自己破産に切り替えることで一定期間、資格を使用した仕事ができなくなります。
任意整理を自己破産に切り替えるデメリット
任意整理を自己破産に切り替える主なデメリットは以下のとおりです。
- 一定の財産が処分される
- 資格制限を受ける
- 官報に載る
ひとつずつ説明します。
一定の財産が処分される
自己破産すると、一定の価値のある財産は手放さなければなりません。裁判所により異なりますが、原則として20万円以上の価値のある財産は処分の対象となります。
資格制限を受ける
自己破産すると、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの間、一部の資格・職業が制限されます。
法令の定めにより資格制限を受ける職業に就いている場合は、一定期間、資格を用いた仕事ができません。
官報に載る
自己破産すると、手続き全体を通して合計2回、主に以下の内容が官報に掲載されます。
- 事件番号
- 氏名
- 住所
- 手続きの内容
- 裁判所名
特定調停を自己破産に切り替えるデメリット
特定調停を自己破産に切り替える主なデメリットは以下のとおりです。
- 一定の財産が処分される
- 資格制限を受ける
- 官報に載る
ひとつずつ説明します。
一定の財産が処分される
自己破産すると、一定の価値のある財産は手放さなければなりません。裁判所により異なりますが、原則として20万円以上の価値のある財産は処分の対象となります。
資格制限を受ける
自己破産すると、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの間、一部の資格・職業が制限されます。
法令の定めにより資格制限を受ける職業に就いている場合は、一定期間、資格を用いた仕事ができません。
官報に載る
自己破産すると、手続き全体を通して合計2回、主に以下の内容が官報に掲載されます。
- 事件番号
- 氏名
- 住所
- 手続きの内容
- 裁判所名
まとめ
自己破産と他の債務整理の違いをおさらいしましょう。
- 自己破産も債務整理の1つ
- 自己破産では全ての借金が免除される
- 他の債務整理は借金を減額できるが返済義務が残る
- 任意整理・特定調停は、整理する借金を選べる
- 資格制限を受けるのは自己破産のみ
- 借金の理由が問われるのは自己破産のみ
- どの債務整理を利用してもブラックリストに載る
どの債務整理を選択すべきかの判断は、独断せず弁護士に相談することをおすすめします。
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