代位弁済とは?デメリットや第三者弁済との違いを分かりやすく解説
銀行や消費者金融からの借入を返済できず、数ヶ月滞納すると、突然、見知らぬ会社から借金の返済を求められることがあります。
これは、自分(債務者)の代わりに、保証会社が借入先に対して返済を行い、その肩代わり分を請求されている状況である可能性が高いです。
このように、自分の代わりに保証会社が借金の返済をすることを代位弁済と呼びます。ここでは、代位弁済の仕組みやリスク、具体的なケースについて解説します。
目次
代位弁済とは
代位弁済とは、債務者が返済できなくなった場合に、第三者がその債務を肩代わりして返済する行為を指します。
例えば、債務者がカードローンや住宅ローンの返済を滞納した場合、保証会社や連帯保証人が債務者に代わって弁済を行うことが一般的です。
代位弁済が行われると、元々の債権者に対する債務は消滅しますが、代わりに弁済を行った第三者に対して新たな債務が発生します。
例えば、AさんがB社からお金を借り、返済できなくなったときに、保証会社であるC社がAさんの代わりにB社に返済をしたとします。
するとAさんとB社のお金の貸し借りはなくなりますが、AさんがC社にお金を借りているという新たな状況が発生します。
代位弁済と第三者弁済の違い
代位弁済と第三者弁済は、借りた本人以外の個人や会社が借金を肩代わりし、返済するという点で共通していますが、明確な違いが存在します。
・代位弁済は保証人や保証会社が行うものであり、債務者本人が返済できなくなったとき、本人に代わって返済するという、保証人(保証会社)自身の義務(債務)を履行する行為
・第三者弁済は、保証人や保証会社など、本人に代わって返済する義務がないものによる、代理の借金返済
見てわかる通り、代位弁済と第三者弁済は、本人に代わって借金を返済する義務がある者か、ない者か、どちらが返済を行うかによって決まります。
第三者弁済でも、物上保証人など債務者本人が返済しないと自分が損をすることになる者がいますが、それでも、物上保証人には借金を返済する義務があるわけではありません。
代位弁済の流れ
代位弁済の基本的な流れについて説明します。
債務者が借金やローンを滞納する
代位弁済が発生する主なケースは、債務者が借金やローンの返済を滞納した場合です。
例えば、カードローンや住宅ローンなどの定期的な返済ができなくなると、債権者は債務者に対して支払いを請求しますが、それでも返済が行われない場合に代位弁済が行われます。
代位弁済は債務者が借金を滞納してすぐに行われるわけではなく、数ヶ月滞納した後に行われることが多いです。
第三者が債権者に代位弁済する
債務者が返済を続けられない状況が続くと、実際に代位弁済が行われます。
保証会社や連帯保証人が債権者に対して代わりに弁済を行います。この段階で、債権者は本来の債務者に対する債権を放棄し、第三者が弁済を行ったことで債務は一時的に解消されます。
具体的には、AさんがB社から借りていた借金は、保証会社のC社がAさんに代わって返済したため、AさんとBさんのお金の貸し借りが解消したという意味です。
第三者が債務者に弁済した分を請求する
代位弁済を行った第三者は、債権者に代わって債務者に対して支払いを求める権利を取得します。
つまり、債務者は、代位弁済を行った第三者に対して新たに返済義務を負うことになります。この際、第三者から一括で支払いを求められるケースが多いです。
イメージしやすいようにAさんを主役として具体例をあげます。
- AさんがB社からお金を借りる
- Aさんが返済できなくなり、保証会社であるC社がB社に返済をする(代位弁済)
- AさんとB社のお金の貸し借りがなくなる
- AさんはC社からお金を借りていることになり、C社から一括返済を受ける
代位弁済を行う第三者は誰?
序盤でも軽く説明しましたが、代位弁済を行う第三者とは誰なのかを説明します。
保証会社や信用保証協会
代位弁済を行う第三者として最も一般的なのは、保証会社や信用保証協会です。これらの機関は、債務者が返済不能になった際に、債権者に代わって債務を弁済します。
保証会社は、主に住宅ローンやカードローン、賃貸契約において利用されます。
代位弁済を行ったあと、債務者本人に肩代わり分を請求するかどうかは自由ですが、ビジネスとして保証会社をやっている以上、債務者に返済を求めてくる可能性が高いです。
連帯保証人の家族や友人
連帯保証人として、家族や友人が代位弁済を行うケースもあります。
連帯保証人は、債務者が返済できなくなった場合に全額を肩代わりする義務を負っているため、弁済後は債務者に対してその分を請求する権利を持つことになります。
ただし、請求する権利はあるものの、実際に請求するかどうかは人それぞれです。
そもそも請求しない人もいれば、請求はするものの、保証会社のように法的措置を取るまでする人は多くないかもしれません。
代位弁済のリスクやデメリット
代位弁済のリスクやデメリットを紹介します。
一括請求される
第三者弁済が行われたあとは、債務者に対して一括請求が行われるのが一般的です。
代位弁済前の借入の時点では、分割払いの契約になっていますが、代位弁済をした保証会社とは分割払いの契約は結んでいません。よって、一括払いを求められる可能性が高いです。
現実的に一括払いをするのは難しいので、分割払いの交渉をするなどしなければならないでしょう。
もともとの借入先と違い、代位弁済をした保証会社などは、返済がなければ、比較的速やかに法的措置などの強制措置を取ってくる傾向にあるので、その点も注意が必要です。
遅延損害金が発生する
代位弁済が行われたあとでも、保証会社などに肩代わりしてもらった分を返済できなければ、遅延損害金が発生して借金が膨らんでいきます(遅延損害金とは)。
返済が遅れれば遅れるほど金額が大きくなるため、返済が困難になるリスクがあります。
ブラックリストに載る
代位弁済が行われると、個人情報信用機関にその記録が残り、いわゆる、ブラックリストに登録された状態になります。
ブラックリストに登録されると、新たに借入をしたり、クレジットカードを作成したりなど、借金に関するアクションを取るのが困難になります。
ブラックリストから解除されるには、借金を完済してから5年ほどかかると言われています。
財産を差し押さえられる
代位弁済後、債務者が肩代わりを受けた分の返済を行わない場合、代位弁済をした保証会社が法的措置を取ってくる可能性があります。
仮に裁判で「借金を返済しなさい」と判決が下ったあとも返済しないでいると、いよいよ強制執行となり、給与や預金、不動産などの財産を差し押さえられてしまう可能性が高いです。
代位弁済の時効
代位弁済をした保証会社や保証人は、主債務者に対して、肩代わりした分を請求する権利を持ちます。しかし、その権利にも時効があり、その権利を行使しないまま一定期間が経つと時効を迎え、請求する権利を失います。
その期間に関しては、民法第166条に記載されています。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
【民法:e-gov】
保証会社や保証人目線で言うと、代位弁済をした日から5年経過すると時効を迎えます。
権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、と記載がありますが、これは代位弁済分を主債務者に請求できることを知らなかった場合、時効までの期間が10年になるという意味です。
もっとも、保証人になった時点で、代位弁済分を主債務者に請求できると知っているのが普通なので、5年で時効を迎える可能性が高いです。
騙されて保証人になってしまったなどの事情がない限り、時効が10年になる可能性は低いでしょう。
代位弁済が行われた際の自己破産への影響
代位弁済が行われたあとは、保証会社などから主債務者に対して一括での返済が求められます。
主債務者に収入がなかったり、借金額が大きすぎて返済が現実的に困難な場合、やむを得ず自己破産を選択する可能性もあるでしょう。
ここでは、代位弁済が行われた際の自己破産への影響について説明します。
一括請求が払えず自己破産するケース
代位弁済後に一括返済を求められ、債務者が返済不能となった場合、やむを得ず自己破産を選択する場合があります。
裁判所が自己破産を認めた場合、基本的にすべての債務(借金に限る)が免除されることになります。
自己破産をされると、保証会社は債務者から借金を回収するのが難しくなります。
自己破産の申し立て後に代位弁済されたケース
自己破産の手続き後に代位弁済が行われた場合、債権者が貸主から保証会社に代わります。
自己破産の申し立てをした後に代位弁済が行われた場合には、裁判所にその旨を報告し、適切に手続きが進められるようにしましょう。
代位弁済が行われるケース例
カードローンの滞納
カードローンを数ヶ月滞納した場合、保証会社が代位弁済をする可能性があります。
例えば、三菱UFJ銀行のカードローンであるバンクイックを滞納した場合、保証会社であるアコムが代位弁済を行います。
その後はアコムから、一括返済を求められることになります。
奨学金の未払い
奨学金の場合、機関保証と人的保証がありますが、機関保証の場合は保証機関、人的保証の場合は連帯保証人が代位弁済を行うことがあります。
保証機関が代位弁済をしたあとは、本人に代位弁済額の一括請求を行います。
連帯保証人が代位弁済をした場合については、連帯保証人と話し合いを行う必要があるでしょう。
住宅ローンの滞納
住宅ローンを3~6か月ほど滞納すると、期限の利益の喪失(分割払いの権利を失った)に関する通知が届いた後、保証会社から代位弁済通知書が届きます。
保証会社が住宅ローンを代位弁済した後は、保証会社から一括での返済を求められます。一括での返済ができないと、保証会社はローンで購入した不動産を売却(競売)する準備を始めます。
現実問題、住宅ローンの残債を一括返済するのは困難です。競売にかけられてしまうと、市場価格より安く売却されてしまうなどのメリットもあるため、その前に任意売却したり、自己破産したりなどの判断が求められます。
代位弁済でよくある質問
代位弁済に関するよくある質問を紹介します。
代位弁済の一括請求を分割払いにできる?
代位弁済の後、保証会社から一括請求を受ける可能性が高いですが、これを分割払いにするのはそう簡単ではありません。
自分で交渉してみて、どうしても分割払いが認められなかった場合は、弁護士に相談しましょう。
任意整理という手続きをすることで、利息や滞納した遅延損害金をカットしたうえで、分割払いが出来るようになる可能性があります。
代位弁済されるとローンは組めない?
代位弁済されると信用情報機関に記録が残り、ブラックリストに登録された状態となります。
ブラックリストは、滞納した借金を完済してから5年ほどで記録が消えますが、その期間中は、住宅ローンを組むのが難しいでしょう、
家賃の滞納で代位弁済されることはある?
家賃の滞納においても、家賃保証会社が代位弁済を行う可能性があります。その後、保証会社から滞納分の家賃を請求されることになるでしょう。
まとめ
銀行や消費者金融からの借り入れを返済できず、数ヶ月滞納すると、債務者本人に代わって保証会社が返済をすることがあります。これを代位弁済と呼びます。
代位弁済が行われると、債務者と債権者のお金の貸し借りはなくなりますが、債務者と保証会社間で新たなお金の貸し借りが発生します。
当初は分割払いが可能だったとしても、保証会社とは分割払いの契約を結んでいない可能性が高いので、保証会社から肩代わり分の一括返済を求められる可能性があります。
代位弁済後、保証会社は債務者に対して返済を求めてきますが、当初の債権者と比べて、法的措置に移行するまでのスピードが早い場合があるので注意をしましょう。
返済が難しい場合は、分割払いの交渉をしたり、弁護士に相談をして債務整理をすることになります。
代位弁済が行われ、一括返済を求められたが返済ができずに困っている人などは弁護士に相談しましょう。
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