借金完済後も過払い金請求できる?返済中の過払い金請求との違いは?
過払い金は、借金を返済した後(完済後)でも返済中でも請求できます。
完済後と返済中の過払い金請求では、何が違うのでしょうか?
この記事では、次のとおり解説します。
- 完済後も過払い金請求できる?
- 完済後に過払い金請求するメリット
- 完済後に過払い金請求するデメリットや注意点
- 返済中の過払い金請求
- 過払い金請求は完済後・返済中のどちらにすべき?
過払い金の請求を検討中の方は、ぜひご参考になさってください。
目次
完済後も過払い金請求できる?
完済後に過払い金請求できるかどうかは、取引の時期や借入先によって異なります。
ここでは、過払い金請求の対象となる取引の時期や借入先を解説します。
2010年6月17日以前に取引がある場合
2010年6月17日以前に取引がある場合、過払い金が発生している可能性があります。
2010年6月18日に貸金業法が改正されるまで、グレーゾーン金利の貸付が黙認されていたからです。
グレーゾーン金利とは
グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利を超え、出資法の上限金利には満たない金利のことです。
かつては、利息制限法を超えた貸付に罰則がなかったため、貸金業者は出資法の上限金利である29.2%を基準に利息を設定していました。
2010年の法改正により、利息制限法と出資法の上限金利が統一され、グレーゾーン金利が撤廃されました。これにより、払い過ぎた利息を過払い金として請求できるようになりました。
過払い金が発生しない借入もある
2010年6月17日以前に取引があっても、過払い金が発生しない借入もあります。
次に挙げる借入は、通常、利息制限法の範囲内の利率であるため、原則として過払い金は発生しません。
- 銀行系カードローン
- クレジットカードのショッピング利用分
- 信用金庫からの借入れ
- 住宅ローン
- 車・バイクのローン
- 奨学金
2010年6月17日以前に取引がない場合
2010年6月18日以後は、利息制限法の範囲内で金利が設定されているため、過払い金が発生しません。2010年6月17日以前に取引がない場合は、原則として過払い金を請求できません。
完済後に過払い金請求するメリット
ここでは、完済後に過払い金請求するメリットを解説します。
払い過ぎた利息が戻ってくる
過払い金請求により、払い過ぎた利息が戻ってきます。回収した過払い金により他の借金を返済できる可能性もあります。
ブラックリストに載らない
完済後の過払い金請求では、ブラックリストに載りません。
ただし、次のいずれかに該当する場合、ブラックリストに載る可能性があります。
- キャッシング枠を完済していても、ショッピング枠に残債がある場合
- 関連会社からの借入がある場合
完済後に過払い金請求するデメリットや注意点
ここでは、完済後に過払い金請求するデメリットや注意点を解説します。
過払い金を請求した貸金業者とは以後取引できない
過払い金を請求した貸金業者とは、原則として以後取引ができなくなります。独自の社内データに過払い金請求の情報が残されるからです。
完済日から10年経過すると過払い金請求できない
過払い金請求の時効は、最終取引日から10年です。完済から10年以上経過している場合は、過払い金を請求できません。
ただし、借金を一旦完済し、後に同じ債権者から借入をしている場合は、一度目の取引の完済日から10年を経過していても過払い金を請求できる可能性があります。
貸金業者が倒産している場合は過払い金請求できない
貸金業者がすでに倒産している場合や倒産に伴い債権譲渡した場合は、過払い金請求できません。
貸金業者が倒産手続き中の場合は、裁判所に債権届出書を提出することで過払い金を請求できます。ただし、倒産手続きでは配当率が低いため、回収は期待できません。
返済中の過払い金請求
ここでは、借金を返済中の過払い金請求について解説します。
返済中に過払い金請求するメリット
過払い金が発生している場合は、返済中でも請求できます。過払い金の請求により、次のようなメリットが受けられます。
- 借金を減額できる
- 過払い金を回収できる
残っている借金の額によって、得られるメリットが異なります。返済中に過払い金請求を行う場合に、残債務はどのように取り扱われるのでしょうか。次の2つのパターンに分けて見ていきましょう。
- 借金の残額が過払い金より多い場合
- 借金の残額が過払い金より少ない場合
ひとつずつ説明します。
借金の残額が過払い金より多い場合
借金の残額が過払い金より多い場合は、過払い金と相殺することで残債務を減額できます。
例えば、残っている借金が100万円で、50万円の過払い金が生じている場合、次のとおり相殺できます。
残っている借金(100万円)-過払い金(50万円)=借金の残高(50万円) |
この場合、過払い金請求後は、相殺後の50万円を返済することになります。
借金の残額が過払い金より少ない場合
借金の残額が過払い金より少ない場合は、過払い金を回収できます。
例えば、残っている借金が50万円で、100万円の過払い金が生じている場合、次のとおり、50万円を受け取れます。
過払い金(100万円)-残っている借金(50万円)=過払い金50万円 |
ただし、実務上、実際に回収・相殺できる金額は、利息その他過払い金請求に関する主張の争いにより、異なることがあります。個別の回収見込額については弁護士に確認しましょう。
返済中に過払い金請求するデメリット
返済中に過払い金を請求した場合、ブラックリストに載る可能性があります。ブラックリストに載るか載らないかは、次の2つのケースによって異なります。
- 借金の残額が過払い金より多い場合
- 借金の残額が過払い金より少ない場合
ひとつずつ説明します。
借金の残額が過払い金より多い場合
借金の残額が過払い金より多い場合は、ブラックリストに載ります。借金が残る以上、債務整理(任意整理)として取り扱われるからです。
具体例を挙げて説明します。
残っている借金が100万円で、過払い金が50万円の場合、相殺しても50万円の借金が残ります。
残っている借金(100万円)-過払い金(50万円)=借金の残高は50万円 |
過払い金を請求しても、残額50万円の借金の返済義務が残ります。
ブラックリストに載ると、概ね5年間クレジットカードやローンの審査に通らなくなります。
借金の残額が過払い金より少ない場合
借金の残額が過払い金より少ない場合は、ブラックリストに載りません。
具体例を挙げて説明します。
残っている借金が50万円で、過払い金が100万円の場合、過払い金により借金を完済でき、余分に払った50万円が戻ってきます。
過払い金(100万円)-残っている借金(50万円)=過払い金50万円 |
ただし、次の場合には、ブラックリストに載る可能性があります。
- キャッシングの過払い金とショッピング利用分を相殺しても残債務が残る場合
- 関連会社からの借入がある場合
過払い金請求は完済後・返済中のどちらにすべき?
過払い金請求は、完済後・返済中のどちらにすべきでしょうか。
ここでは、過払い金を請求するタイミングの判断基準を紹介します。
完済後はほとんどデメリットがない
完済後の過払い金請求は、請求先と以後取引ができない点以外、ほとんどデメリットがありません。
完済後に過払い金請求した方がよいケース
以下の理由により、ブラックリストに載りたくない場合は、完済後に過払い金を請求した方がよいでしょう。
- マイホームを購入する(住宅ローンの申込)予定がある場合
- 車を購入する(カーローンの申込)予定がある場合
- 奨学金の保証人になる予定がある場合
- 新規クレジットカード申込の予定がある場合
返済中は一定のデメリットが存在する
返済中は、過払い金の額が残債務を上回らない限り、原則としてブラックリストに載ります。
返済中に過払い金請求した方がよいケース
次のようなケースでは、返済中に過払い金請求することで、負担が軽減されることがあります。
- 複数の借金がある場合
- 毎月の返済額を減らしたい場合
まとめ
完済後の過払い金請求では、ブラックリストに載ることはありません。過払い金が発生していれば払い過ぎた利息が戻ってきます。
返済中の場合は、借金が減額されたり借金がゼロになったりする可能性があります。借金の残額より過払い金が多い場合は手元にお金が戻ってきます。
過払い金請求には10年の時効がありますので、過払い金請求をご検討の方はなるべく早く弁護士に相談しましょう。