破産宣告とは?したらどうなる?自己破産との違いや条件などを解説
破産宣告とは、裁判所に対して自己破産の申し立てをして、それが認められ、破産の手続きが開始することをいいます。
破産宣告は過去の法律用語で、現在は破産手続きの開始決定などと呼ばれます。
自己破産をすると借金の返済が免除されます。借金が多すぎたり、収入がないなどの理由で生活が破綻してしまった人も、建て直しのチャンスを得ることができます。
ここでは、破産宣告とは何なのか、したらどうなるか、メリットやデメリット等を説明します。
破産宣告とは
まずは破産宣告が何なのかを理解していきましょう。
破産手続きの開始を決定すること
破産宣告とは、債務者(借金がある人)が経済的に破綻し、債務の支払いが不可能な状態にあることを裁判所が認め、破産手続きの開始を決定することを指します。
破産手続きの目的は、債務者の生活を再建させること、債務者の財産を公平に債権者に分配することです。
破産宣告と自己破産の違い
自己破産は借金の返済を免除する手続きです。そして、その自己破産手続きの開始を決定することが破産宣告です。
もう少し具体的に説明すると、債務者が裁判所に対して自己破産の申し立てをし、それによって破産宣告が行われるのが一般的です。
破産宣告したらどうなる?
次に破産宣告したら(破産手続きの開始が決定したら)どうなるかを説明します。
勝手に財産を処分できなくなる
破産宣告したら、自分(申立人)が所有する財産を自由に処分できなくなります。
破産宣告後は、申立人の財産の処分の権限などは、破産管財人に移ります。破産管財人とは、破産手続きを進めるために、裁判所が選んだ弁護士のことです。
自己破産をする際、申立人が所有している財産は差押え、換金し、債権者(貸主)たちに配当されます。
申立人が自分の財産を勝手に処分したり、譲渡してしまったりすると、債権者たちが本来得られるはずだった金銭を奪うことにも繋がります。
ですので、破産宣告したら申立人は所有する財産に関する権限を失います。
ちなみに、自己破産には2種類の手続きがあります。
- 同時廃止…破産手続き開始とともに借金の免除も決定する
- 管財事件…破産手続き開始後、破産管財人が申立人の財産を処分したりする
財産を処分する権利を失うのは、管財事件の場合のみです。同時廃止は、そもそも申立人がお金になるような財産を所有していない場合に採用されるため、これといった制限は発生しません。
債権者は取り立てができなくなる
破産宣告後、債権者は債務者に対して取り立てをすることができなくなります。
破産手続きは、破産管財人が申立人の借金や財産について調査し、換金をしたあと、債権者に対して平等に配当を行うための手続きです。
この段階に入って取り立てを行うことで、債務者が一部の債権者に返済などをしてしまうと、特定の債権者にのみお金が渡ることになってしまいます。
こうなってしまっては、債権者に平等にお金を配当することが困難になり、自己破産が成り立たなくなってしまいます。
こういった理由から、債権者は債務者に対して取り立てができなくなりますし、差押えなどの強制執行もできなくなります。
債務者に一部制限がかかる
破産宣告後、以下の理由で、債務者の生活に一部制限がかかります。
- 郵便物を本人が受け取る前に破産管財人がチェックする:隠された借金がないかなどをチェックするため
- 引っ越しをする前に裁判所の許可が必要:裁判所が申立人の居所を把握し、いつでも連絡を取れるようにするため
- 一部の職業や資格に制限がかかり、仕事ができなくなる:その職業の信頼性を守るため、公平な職務を全うできるようにするため
③についてですが、制限がかかるのは弁護士や税理士などの士業、金融、保険、不動産関係の仕事に多いです。これについて細かく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
免責許可が下りれば借金が免除になる
破産宣告後、免責許可が下りれば借金が免除になります。免責許可が下りるタイミングは、自己破産の手続きの種類によって変わります。
- 同時廃止:破産宣告と同時に借金が免除になる
- 管財事件:破産宣告後、申立人の調査や財産の処分、債権者への配当などが終わってから借金が免除になる
破産宣告後、免責許可を得ることで、ようやく申立人は借金から解放され、生活を再建することができるでしょう。
破産宣告の条件
次に、破産宣告に必要な条件を紹介します。破産宣告には以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 支払不能な状態であること
- 免責不許可事由に該当しないこと
- 借金が非免責債権だけではないこと
それでは、それぞれの条件について説明します。
支払不能な状態であること
まず、破産宣告には、支払不能な状態であることが必要です。簡単にいえば、まだ自力で借金を返済できる余地がある人は、自己破産できません。
支払不能は法律用語ですので、もう少し詳しく説明します。
- 抱えている借金をすべて期日通りに支払えない状態
- 一時的な金欠ではなく、現在の収入や財産では借金の完済ができない状態
一般の人は、複数借入があっても、それを支払期日までにすべて支払うことができます。破産宣告は、それが一時的ではなく、今後もずっとできない状態を指します。
もちろん、これは自己破産の申立人が自己判断するものではなく、裁判所が判断します。
上記の説明が難しいと感じた人は、本当にお金のない人、返済が不可能な人でないと自己破産はできない、と考えておけば問題はありません。
免責不許可事由に該当しないこと
破産宣告後に借金を免除してもらうためには、「免責不許可事由」に該当しないことが必要です。免責不許可事由とは、発覚したら自己破産が認められない行為のことをいいます。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
【引用:破産法 – e-gov】
発覚したら自己破産が認められなくなる行為については、破産法の252条に記されていますので、誰にでもイメージしやすい形で紹介します。
- 自己破産で差し押さえられる前に財産を売却する、隠す、譲渡などをする
- 自己破産を遅らせるために、クレカの現金化や、闇金などからお金を借りるなどする
- 特定の債務者だけを優遇して返済する
- 浪費やギャンブル、投資で借金を作る
- すでに返済能力がないのに、あるふりをして借入をする
- 帳簿など、業務や財産に関する書類を偽造したり、隠したりする
- 裁判所に虚偽の債権者名簿を提出する
- 裁判所の業務に協力しない、嘘をついたりする
- 過去7年以内に自己破産や個人再生(給与所得者等再生、ハードシップ免責)をしている
上記にある通り、自己破産を前提とした借り逃げ行為や、債権者に不利益を与えるような行為をすると、自己破産が認められなくなるため注意しましょう。
すでにこれらの行為に心当たりがある場合は、隠し通そうとせず、裁判所にきちんと説明する必要があるでしょう。
借金が非免責債権だけではないこと
自己破産で返済が免除されるのは、貸金業者や個人から借りたお金(借金)だけです。
それ以外の支払い義務に関しては、非免責債権と呼ばれ、自己破産をしても免責されません。非免責債権の例を以下にあげます。
- 滞納した税金
- 社会保険料
- 婚姻費や養育費
- 反則金や罰金
- 慰謝料や損害賠償金※
- 従業員への給料の支払い
- 債権者名簿に記載されなかった借金 など
※他人を傷つけたり、他人の物を壊したりすると、治療費や修理代、慰謝料の支払いなどが発生します。
これを損害賠償金と呼びますが、これの支払いが免除されるかどうかは、申立人に故意・または重過失があったかどうかがポイントとなります。
例えば、故意とは暴力行為や煽り運転、重過失とは居眠り運転などを指します。こういった行為の場合は、非免責債権となり、自己破産をしても支払いが免除されないので注意しましょう。
破産宣告のメリット・デメリット
破産宣告のメリットとデメリットを紹介します。
メリット
まず、破産宣告によって、債権者からの取り立てが止まります。返済もストップさせることができるので、精神的にも、経済的にも楽になるでしょう。
自己破産を弁護士に依頼すると、その事実が債権者たちに通知されます(受任通知)。受任通知を受け取った債権者は、債務者本人に対して取り立てをすることができなくなります(破産法21条1項9項)。
自己破産の手続きを自分で行う場合、受任通知がないため、債権者からの取り立ての連絡は止みません。破産宣告によって、はじめて取り立てがストップするのです。
次のメリットはいうまでもなく、借金の返済が免除されること。これによって、生活再建を目指すことができます。
デメリット
自己破産によるデメリットはいくつかあります。
- ブラックリストに登録され、5~10年ほど、貸金業者から借入をしたり、クレカを作るのが困難になる
- 借金がなくなる代わりに、自分の財産も失うことになる(生活に必要な最低限のものは残せる)
- 手続き期間中、一部の職業や資格に制限がかかり、仕事ができなくなる
- 官報(国 の機関紙)に自己破産した事実と個人情報が載る
自己破産をためらう人は、車や自宅を所有していて、それを失いたくないという人が多いです。もし上記の①~④が気になる人は、個人再生も検討してみましょう。
個人再生は、5,000万円までの借金を5~10分の1に圧縮できる手続きです。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
破産宣告するには?手続きの流れ
破産宣告の流れについてですが、極論、破産宣告をしたいだけであれば、弁護士に依頼をすればそれだけで済みます。基本的な手続きは任せておいて、裁判所での面談などだけ参加すれば問題ありません。
破産宣告から、借金の支払いが免除されるまでの流れは以下の通りです。
- 弁護士に相談・依頼をする
- 弁護士が債権者に対して通知をする(受任通知)
- 裁判所に提出する書類の用意をする
- 必要書類を集めて裁判所に申し立てをする
- 破産手続きの開始(破産宣告)
- 免責の許可(借金の免除)
申立人がこれといった財産を持っていない場合には、このような手続きで手続きが完了します(同時廃止)。
申立人が一定の価値がある財産を所有している場合、それを差押え、換金したり、債権者たちに説明する必要がでてきます。このステップは、上記フローチャートの⑤と⑥の間に入ります。
破産宣告にかかる費用
次に、破産宣告(自己破産)にかかる費用を説明します。自己破産にかかる費用は、大きく分けて、弁護士に払う費用と、裁判所に払う費用の2種類があります。
裁判所費用
自己破産において、裁判所にかかる費用は以下の通りです。
- 同時廃止事件の場合:1.5~3万円程度
- 少額管財事件の場合:20万円以上
- 通常管財事件の費用:50万円以上
破産の申立人がこれといった財産を所有していない場合、同時廃止事件として扱われるため、裁判所に納める費用が安くなります。費用の内訳は以下を参考にしてください。
- 申立手数料(収入印紙代):1,500円
- 予納郵券(郵便切手代):数千円程度(裁判所によって異なる※)
- 官報公告費用(予納金):1~2万円程度
※東京地方裁判所の場合、予納郵券(郵便切手代)は4,950円です(2024年9月24日~)。
申立人が財産を所有している場合、それを管理、売却、債権者に配当するために破産管財人が必要となります。そのため、上記の費用に加えて、破産管財人の報酬として、裁判所に引継予納金を支払う必要があります。
金額は以下をご覧ください。
- 少額管財事件の場合:20万円~
- 管財事件の場合:50万円~
少額管財事件になるか、管財事件になるかは、申立人が所有している財産の額や、免責不許可事由の有無などによって変わります、
弁護士費用
まずは弁護士にかかる費用です。自己破産をする場合、弁護士費用は40万円~かかると考えておきましょう。以下は費用の内訳です。
詳細・金額など | |
相談料 | ・弁護士に悩みを話し、アドバイスをもらうための費用 ・30分/5,000~10,000円程度、初回無料であることも多い |
着手金 | ・弁護士に正式に自己破産を依頼したときにかかる費用 ・途中で解約などしても、返金されない可能性が高い ・30~60万円程度が相場 |
成功報酬 | ・弁護士が自己破産を成功したときにかかる追加報酬 ・0~30万円程度が相場 |
実費 | ・弁護士が職務で使った実費を負担する ・交通費、切手代など |
破産宣告でよくある質問
最後に破産宣告でよくある質問を紹介します。
破産宣告したら家族はどうなる?
破産宣告したとしても、申立てした本人以外には直接的な影響はありません。間接的な影響としては、以下のような懸念があります。
- 申立人名義の家や車がなくなることで家族の生活が変わる
- 申立人が借金の保証人になれないことで家族がお金を借りられない
- 申立人がブラックリストに登録することでローンを組めなくなり、影響を受ける
破産宣告で家は失う?
破産宣告をした場合、申立人名義の家は失う可能性が高いです。その家を売却、換金して、債権者たちに配当するためです。
破産宣告をすることで家を失うのであれば、手続き前に家を自分で売却をしてしまうことをおすすめします。その方が破産手続きがシンプルになり、手続きにかかる弁護士費用や裁判所の費用を押さえることができるからです。
二回目の破産宣告はできる?
二回目の破産宣告はできない、という法律はありませんので、理論上、何度でも自己破産は可能です。
その代わり、免責不許可事由にあてはまる状況で二度目の破産宣告をしようとすると、裁判所から却下される可能性が高くなります。
例えば、1度目がギャンブルによる自己破産、2度目もギャンブルによる自己破産などのケースです。
まとめ
破産宣告とは、自己破産の手続きの開始を決定することをいいます。以前は破産宣告という言葉が使われていましたが、現在は、自己破産の開始手続き決定、などと呼ばれます。
破産宣告を行うことにより、借金の支払いが免除され、申立人は新しい生活のスタートを切ることができます。
破産宣告は、破産法に定められた条件を満たした人だけが認められます。もしあなたが借金に困っているのであれば、一度弁護士に相談してみましょう。
自己破産だけでなく、その他の手続きも含めてベストなアドバイスがもらえます。
ネクスパート法律事務所では、借金に関して、初回30分の無料法律相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。