自己破産時にネット銀行はばれる?出し忘れやpaypay送金のリスク
自己破産の際は、自分の財産を漏れなく申告する必要があります。
通常の銀行口座はもちろんのこと、ネット銀行や電子マネーも対象になります。
自己破産前にネット銀行にお金を移したり、ネット銀行の存在を隠そうすると、自己破産が認められなくなるかもしれません。
ここでは、ネット銀行を出し忘れた場合のリスクや、PayPayなどの送金履歴が調査されるケースについて解説します。
目次
自己破産時にネット銀行を隠したらばれる?
ネット銀行を隠そうとするのはリスクが高いため、避けるべきです。
ここでは、ネット銀行を隠してもばれる理由について説明します。
自己破産の依頼時にすべての口座情報を求められる
弁護士に自己破産を依頼する際、ネット銀行を含めたすべての銀行口座の申告が求められます。
残高の有無にかかわらず、通帳や取引履歴を提出するよう指示されるのが一般的です。
申告漏れがあると、手続きがスムーズに進まなくなるおそれがあります。ネット銀行も例外ではありません。
裁判所や管財人はネット銀行も調べる
ネット銀行だからといって調査対象外になることはありません。
管財人(裁判所が選任した弁護士)は、給与明細や確定申告書、他の銀行口座の入出金履歴などをもとに、ネット銀行の存在を突き止めることができます。
たとえば、他行の口座からネット銀行へ送金された履歴があれば、その時点で新たな口座の存在が明らかになります。
口座を作成しただけで全く利用していない場合はさておき、何らかの形で利用しているのであれば、ネット銀行であっても隠すのは難しいでしょう。
自己破産時にすべての銀行口座を申告しなければならない理由
ネット銀行を含め、すべての銀行口座を申告しないと、後で発覚した際に、財産隠しとみなされるおそれがあります。
ここでは、すべての銀行口座を申告しなければならない理由を説明します。
破産者のすべての財産を調べる必要があるから
自己破産では、申立者がどのような財産を持っているかをすべて明らかにする必要があります。
財産のうち、生活に最低限必要なものは、自由財産として手元に残せますが、それ以外は破産財団として処分・換金され、借金の返済にあてられます。
銀行口座に入っている預金も、残高によっては破産財団に組み入れられる対象です。
そのため、すべての銀行口座の存在と中身を正確に把握できなければ、裁判所は破産手続きを進められないのです。
過去にお金の出入りがあった可能性があるから
「最近は使っていない口座だから申告しなくても大丈夫」と自己判断してはいけません。
自己破産では、過去の取引履歴も重要な確認項目になります。
使っていない口座でも、過去の取引内容を裁判所や管財人が確認します。
たとえば、親や知人にだけ返済をしていた場合、不公平な返済(偏った返済)とみなされることもあります。
こうした情報を確認するためにも、すべての口座を正しく申告する必要があるのです。
まだお金が残っている可能性があるから
長期間使用しておらず、存在自体を忘れているような口座であっても、わずかでも残高が残っている可能性があります。
自己破産の手続きでは、申立者が所有しているすべての財産を把握したうえで進める必要があるため、こうした口座も申告しなければなりません。
仮に本当に忘れていた場合でも、後から口座の存在が発覚すると、財産を隠していたとみなされ、手続きに悪影響を及ぼす可能性があります。
自己破産時にPayPayで送金するとバレる?
ネット銀行も申告が必要と知り、PayPayに資金を移せば見つからないと考える人もいるかもしれません。
ここでは、自己破産時にpaypayにお金を移したことがバレる理由について説明します。
通帳がなくてもバレる可能性はある
PayPayを使っていたことは、チャージ元の口座の取引履歴から発覚します。
PayPayへのチャージは銀行口座と連携されるため、WEB明細や取引履歴に“PayPayチャージ”と記録されます。
裁判所や管財人はこうした履歴を通じて電子マネーの存在を把握できます。
つまり、通帳がなくても、銀行口座の履歴を確認すれば、paypayを利用していたことが明らかになります。
PayPay残高は現金と同様に扱われる
PayPay残高は、店舗での買い物や他人への送金などが可能なため、事実上、使えるお金として認識されます。
現金と同じ価値を持つため、破産手続きでは財産として扱われます。少額でも申告が必要であると考えましょう。
PayPayが財産隠しにならないように注意
PayPayの利用を破産申立書に記載しなかったり、チャージした残高を申告しなかったりすると、財産隠しと見なされるおそれがあります。
これは、免責不許可事由(破産による借金免除が認められない理由)に該当することもあり得るため、利用の有無は正直に伝えることが重要です。
自己破産時に通帳を出し忘れるリスク
故意でない:提出しなおせばよい
通帳の出し忘れが故意でない場合、発覚した時点で速やかに提出すれば問題になることは少ないです。
裁判所や管財人も人為的なミスは想定しており、再提出によって破産手続きが大きく不利になることは基本的にありません。
ただし、ミスが重なると疑われる可能性があるため、注意すべきです。
故意である:財産隠しと見なされる
意図的に通帳や口座の存在を隠したと判断されると、それは財産隠しとして重大な問題になります。
金額が大きかったり、最近まで使っていた口座を申告しなかった場合は、故意と見なされやすくなります。
このような行為は免責不許可事由に該当する可能性があり、最悪の場合、自己破産が認められないおそれもあります。
後から口座が出てくる:破産手続きが長引く
破産手続きの途中で申告していなかった口座が判明すると、管財人による調査が振り出しに戻る可能性があります。
その結果、手続きが長引き、免責が下りるまでに時間がかかることもあります。
スムーズに破産を進めるためにも、最初の段階で、すべての口座情報を正確に申告することが大切です。
自己破産前に使ってない口座は解約すべき?
自己破産を検討している段階で、長期間利用していない口座を解約するかどうか迷うことがあります。
しかし、破産手続きではすべての財産を明らかにする義務があるため、自己判断で口座を解約すると、財産を隠そうとしたと疑われるおそれがあります。
たとえ残高がごくわずかでも、過去に高額の入出金があった場合、通帳がなければ説明が難しくなり、手続きが長引いたり不利になったりする可能性もあります。
基本的には、使っていない口座であってもそのままにして、通帳や取引履歴を含めて申告するのが無難です。
自己破産で財産隠しがバレなかったケースは?
一見すると、財産を隠してもバレなかったように見えるケースもあります。
しかし、実際には破産手続き後に発覚したり、予想外のルートから情報が漏れることも多いため、財産隠しは非常にリスクが高い行為です。
バレなかったケースと実際のリスク
中には、ネット銀行の口座や電子マネー残高を申告せず、自己破産を終えたケースもあります。
しかし、これは単にバレなかっただけにすぎず、運がよかっただけともいえます。
実際には、管財人が調査を進める中で申告漏れが発覚し、免責不許可や取り消しになる事例も少なくありません。
他にも、破産手続き中や後になって、第三者からの通報や調査によって発覚することもあります。
財産隠しが発覚すれば、自己破産の手続き自体に悪影響を及ぼすため、非常に大きなリスクを伴います。
破産手続き後に発覚することも
破産手続き中に財産隠しが発覚しなかったとしても、免責決定後に通報や調査により明らかになるケースがあります。
たとえば、他の債権者や元配偶者・家族から情報提供を受けた裁判所や、税務調査をきっかけに隠していた資産が判明することがあります。
このような場合、すでに免責が認められていたとしても免責の取消しを申し立てられる可能性があり、最悪の場合、破産詐欺罪に問われることもあります。
破産詐欺罪に該当すると、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることもあるため、破産手続きでは誠実な対応が何より重要です。
自己破産時に通帳を管財人はどこまで調べる?
自己破産では、申立者が持っているすべての銀行口座について、過去の取引履歴を管財人が確認します。
ここでは、通帳の履歴を何年前までさかのぼって調べられるのか、その目安や理由について解説します。
1年以内:原則全件調べられる
自己破産では、申立前1年以内の通帳の入出金履歴は基本的にすべて確認されます。
この期間は財産の移動や浪費、偏った返済などが特に疑われやすく、破産手続きにおいて重要な判断材料となります。
給与振込や生活費の支出に加えて、親族への送金なども確認対象です。
2~3年程度:財産隠しや高額出費が疑われる場合
財産隠しや特定の貸主への優先的な返済(偏頗弁済)の可能性がある場合、管財人は2〜3年ほどさかのぼって調査を行います。
高額な買い物や預金の移動が過去にあった場合は、その目的や内容を問われることもあります。
5~10年程度:不自然な贈与や高額支出等が疑われる場合
過去の資産の移動が不自然な場合、5〜10年前までさかのぼって調査されることもあります。
特に不動産の売却や高額な贈与があった場合には、その内容や使途の説明を求められることがあります。
重大な財産隠しと判断されると、免責が認められないリスクもあります。
自己破産時に解約した口座の履歴も調べられる?
先ほど、自己破産の前に銀行口座の解約はしない方がいい、と説明しました。
しかし、知らずに解約してしまった人もいるかもしれません。
ここでは、自己破産時に解約した口座の履歴も調べられるのか、解説します。
解約した口座も過去の取引履歴を求められる
たとえ自己破産前に解約してしまった口座でも、過去の取引履歴を提出するよう求められることがあります。
特に、過去に給与の振込先だった口座や、高額の入出金があった口座は調査対象になる可能性が高いです。
金融機関によっては、解約後でも数年間は履歴を発行できる場合があるため、忘れずに申告しましょう。
解約済みの口座が調査対象になりえるケース
自己破産前に解約した口座であっても、取引内容によっては調査対象になることがあります。
たとえば、解約直前に多額の現金を引き出していた場合は、財産隠しが疑われます。
加えて、他人への送金が不自然に多いと、名義貸しや財産の不正移転といった疑いを持たれることもあります。
さらに、自宅に現金があるにもかかわらず、通帳にその出金記録がないような場合には、どこからその現金が出てきたのか、を調べられる可能性が高くなります。
まとめ
自己破産の手続きでは、すべての財産を正確に申告することが求められます。
ネット銀行や電子マネーも対象であり、使っていないから、通帳がないから、などの理由で隠すことはできません。
調査は取引履歴やチャージ元の口座などから広く行われ、隠そうとしても発覚する可能性が高いです。
申告漏れや財産隠しが故意と判断されれば、免責が認められないことや、破産詐欺として刑事罰を受けるリスクもあります。
スムーズに手続きを進めるには、すべての口座・資産情報を誠実に開示することが何より重要です。