銃刀法違反で逮捕された後の傾向と対応
銃刀法違反で逮捕されると、どのような刑事処分を受けるのでしょうか。
本コラムでは、主に以下の3点について解説します。
- 銃刀法違反の概要
- 銃刀法違反事件の傾向
- 銃刀法違反逮捕で弁護士に相談するメリット
目次
銃刀法違反とは
銃刀法の正式名称は銃砲刀剣類所持等取締法です。
ここでは、22条が定めている刃物の携帯の禁止と、銃砲・刀剣類の所持の禁止について説明します。
22条:刃物の携帯の禁止
22条は、何人も業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。と規定しています。
刃物とは、人を殺傷する性能があり、鋼または鋼と同程度の硬さを有する材質でできている片刃または両刃の刀剣類以外のものとされています。
刃体の長さは、刃物の切先(先端)から柄の部分の切先に最も近い点を結ぶ直線の長さで測定し、6センチを超えるものは業務その他正当な理由なく携帯できません。
例えば、仕事に向かう調理師が包丁をバッグに入れて持ち歩いている場合や、店で刃物を購入して自宅に持ち帰っている場合は、業務その他正当な理由に該当します。
刃物の携帯とは、自宅または居室以外の場所で刃物を手に持ち、あるいは身体に帯びるなどして、すぐに使用できる状態で身辺に置くことを意味します。また、その状態がある程度継続している場合に、刃物を携帯しているとみなされます。
ただし、22条は刃体の長さが8センチ以下のはさみ・折りたたみ式のナイフはこの限りでないとし、処罰の対象外にしています。
銃刀法違反にあたるケース
護身用として、刃体の長さが6センチを超える刃物を携帯していた場合、銃刀法違反に当たります。護身目的は正当な理由とはいえません。
また、業務その他正当な理由なく、模造刀(金属でつくられ、刀剣類に著しく類似する形態を有する物)を携帯することも銃刀法違反にあたります。
罰則
22条の規定に違反した場合の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
軽犯罪法の適用
刃体の長さが6センチ以下の刃物であれば、業務その他正当な理由なく携帯できるかというと、そうではありません。銃刀法違反が適用されなくても、軽犯罪法が適用される可能性があります。
軽犯罪法1条2号は、正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者は、拘留または科料に処すると規定しています。
拘留は1日以上30日未満、身柄を拘束される刑罰で、科料を命じられると1000円以上1万円未満の範囲でお金を納付しなければなりません。
銃砲・刀剣類の所持の禁止
銃刀法3条は、法定の除外事由がない限り、銃砲または刀剣類を所持することを禁止しています。22条の携帯とは異なり、禁止されているのは所持のため、自宅で保管している場合でも罪に問われます。
銃砲とは
銃砲とは、けん銃・小銃・猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲および空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を持つ銃で、弾丸の運動エネルギーの値が人の生命に危険を及ぼし得るものとして政令で定める値以上になるもの)のことです。
刀剣類とは
刀剣類には、以下のものがあてはまります。
- 刃渡り15センチ以上の刀、やり、なぎなた
- 刃渡り5センチ以上の剣、あいくち、45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ
罰則
3条違反の罰則には、主に以下のものがあります。
- けん銃の違法所持:1年以上10年以下の懲役
- 猟銃の違法所持:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 刀剣類の違法所持:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
銃刀法違反で逮捕されるとどうなる?銃刀法違反事件の傾向を解説
銃刀法違反で逮捕されると、どのような刑事処分を受けるのでしょうか。令和2年版犯罪白書と検察統計で銃刀法違反事件の傾向を確認します。
身柄率19.7%
令和元年の銃刀法違反事件の身柄率は19.7%でした。身柄率は以下の計算式で求められます。
(警察が逮捕し身柄を検察官に送致した人数+検察庁で逮捕した人数)÷被疑者総数×100
同年の刑法犯の身柄率は36.5%、特別法犯の身柄率は33.8%で、銃刀法違反事件の身柄率は低いです。
特別法犯とは、刑法犯以外の罪の総称で、銃刀法違反罪は特別法犯に含まれます。
起訴率19.2%
令和元年に銃刀法違反罪で起訴されたのは1077人でした。不起訴だったのは4547人で、起訴率(起訴総数÷(起訴総数+不起訴総数)×100)は19.2%でした。
過失運転致死傷等を除く刑法犯の起訴率は38.2%、道路交通法違反を除く特別法犯の起訴率は49.3%で、銃刀法違反罪は起訴率も低いです。
起訴猶予率78.9%
検察官は、犯罪の嫌疑が認められる場合でも、被疑者の境遇や犯罪の軽重などを考慮して被疑者を不起訴にすることがあります。こうした不起訴処分を起訴猶予といいます。
令和元年の銃刀法違反罪の起訴猶予人数は4027人で、起訴猶予率(起訴猶予人数÷(起訴総数+起訴猶予人数)×100)は78.9%でした。
同年の過失運転致死傷等を除く刑法犯の起訴猶予率は51.7%、道路交通法違反を除く特別法犯の起訴猶予率は45.4%で、銃刀法違反罪の起訴猶予率は比較的高いです。
銃刀法違反で逮捕された後の流れ
銃刀法違反で逮捕された後は、以下の流れで刑事手続きが進みます。
逮捕後の流れについて詳しく知りたい方は、以下記事をご参照ください。
銃刀法違反逮捕で弁護士に相談するメリット
銃刀法違反で逮捕された場合は、弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。以下、その理由を説明します。
取調べへの対応の仕方がわかる
警察官や検察官は、被疑者を逮捕すると取調べを行います。取調べで被疑者が供述した内容は供述調書にまとめられ、被疑者にサインするよう求めてきます。
この供述調書に被疑者がサインすると、供述調書は刑事裁判で証拠になります。取調べで何を供述するかは重要で、不用意な供述で不利にならないよう注意しなければなりません。
弁護士は被疑者の家族が面会できない期間でも被疑者と接見し、取調べにどう臨むべきか助言できます。
不起訴になる可能性が高まる
銃刀法違反事件は起訴率が低く起訴猶予率が高いため、適切な刑事弁護を受けられれば不起訴になる可能性は高まります。
例えば、路上で警察官の職務質問を受け、隠し持っていた刃物が見つかって現行犯逮捕された場合は被害者がいません。こうしたケースでは、反省の意を示すとともに再犯防止のための具体的な取り組みを考える必要があります。
仮に過度の不安から護身目的で刃物を携帯していたのであれば、過度の不安を治療するために通院するといった対策が考えられます。
弁護士は事案に応じた具体策を提示し、被疑者を弁護します。
まとめ
業務その他正当な理由なく刃体の長さが6センチを超える刃物を携帯していると、銃刀法違反にあたる可能性があります。護身目的は正当な理由とはみなされません。刃体の長さが6センチ以下の刃物でも、正当な理由なく隠して携帯すれば、軽犯罪法に抵触します。
銃刀法違反罪は起訴猶予率が比較的高く、刑事弁護によって不起訴になる可能性はあります。銃刀法違反に関してお悩みのことがあれば、ネクスパート法律事務所にご相談ください。