盗撮の再犯で逮捕されるとどうなる?初犯との違い・逮捕後の対応
この記事は、2023年7月13日までに発生した盗撮行為に適用される法律について説明した記事です。
2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に施行された改正刑法で新設された撮影罪については、以下の記事をご参照ください。
盗撮は再犯が多いといわれます。
平成27年版犯罪白書は、性犯罪を含む事件で懲役刑の有罪判決を受け、平成20年7月1日から平成21年6月30日までの間に裁判が確定した1791人を対象とした特別調査の結果を報告しています。
特別調査では、対象者を性犯罪の罪名や犯行態様などに応じて類型化し、盗撮は盗撮型としてまとめています。この盗撮型に該当したのは77人で、そのうちの50人(64.9%)に性犯罪の前科がありました。
盗撮行為で警察に捕まり、それが再犯の場合、どのような刑事処分になるのでしょうか。本コラムでは、以下の点を解説します。
- 再犯の加重規定
- 盗撮初犯と再犯の違い
- 盗撮再犯で逮捕された場合の対応
目次
盗撮の再犯で逮捕された場合の刑罰
盗撮の再犯で逮捕された場合の刑罰を説明します。
再犯とは
再犯とは、一般的には再び罪を犯すことを意味します。一方、刑法が規定する再犯は、一般的に使用されている再犯よりも範囲が限定的で、刑法上の再犯にあたるときに適用される刑の加重規定というものがあります。
刑法上の再犯については後に詳しく説明し、本コラムで再犯を使用するときは、特段のことわりがない限り、一般的な意味での再犯を指しています。
平成27年版犯罪白書で報告されている特別調査では、裁判の確定から5年間に再び罪を犯し、再度、有罪が確定した者を対象にした再犯調査も実施しています。
盗撮型77人の再犯率は36.4%で、性犯罪7類型の中で、痴漢型(44.7%)に次ぐ2番目の高さでした。さらに、盗撮型77人を出所受刑者(28人)に限ってみると、再犯率は60.8%に上り、7類型の中で最も高い割合でした。
刑法上の再犯(刑法第56条)
ここで、刑法上の再犯について説明します。
刑法第56条は、懲役に処せられた者がその執行を終わった日、またはその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とすると規定しています。
例えば、前の罪で刑に服したが刑期を終えてから5年が経過している場合や、前の罪が罰金刑のみで済んだり執行猶予が付いたりしている場合は、刑法上の再犯の要件に該当しません。
再犯加重(刑法第57条)
刑法第57条は、再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とすると定めています。刑法上の再犯に該当する場合、言い渡される刑の期間が2倍になる可能性があるということです。
例えば、東京都迷惑防止条例が定める盗撮行為に対する法定刑は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。これが刑法上の再犯になると、最長で2年の懲役が言い渡されます。
都道府県迷惑防止条例違反の場合
もっとも、刑法上の再犯にあたらなくても、盗撮の常習性が認められれば、刑が加重されるおそれがあります。
常習者は刑が加重
東京都迷惑防止条例は、常習として盗撮行為をした者を、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処すると定めています。盗撮の再犯で逮捕されたときに、刑法上の再犯に該当しなくても、盗撮の常習性があると判断されれば、最長で2年の懲役が言い渡されます。
盗撮の常習性については、前科前歴の有無や盗撮行為の回数、手口、盗撮行為をしていた期間などが考慮されます。常習と判断される基準となる客観的な数字があるわけではありません。

盗撮の初犯との違い
盗撮の初犯と再犯では、以下の違いがあります。
起訴されやすい
再犯は初犯に比べ、起訴されやすいです。
検察官は被疑者の起訴・不起訴の判断に際し、被害者の処罰感情や犯行態様、被害の程度、反省の有無などを考慮します。
被疑者が初犯か再犯かも検討材料の1つで、再犯は被疑者にとって不利な情状です。
略式裁判では済まない可能性も
盗撮の初犯であれば、ほとんどのケースが略式裁判で略式命令を受け、罰金刑のみで刑事手続きが終わります。ところが、盗撮の再犯となれば、略式裁判では済まない可能性があります。
略式裁判とは
略式裁判とは、簡易裁判所で事件を審理する手続きで、略式命令で科すことができる刑罰は100万円以下の罰金または科料に限られています。
通常の裁判とは異なり、公開の法廷で公判を開くのではなく、検察官が提出した書面に基づき、裁判官が事件を審理します。略式裁判の特徴は、通常の裁判よりも審理期間が短く、結論が出るのが早い点です。
略式裁判は被疑者が同意しなければできませんが、略式裁判になれば罰金刑が言い渡されます。
盗撮の再犯で検察官が罰金刑のみでは済まないと判断すれば、起訴されて通常の裁判を受けることになります。
執行猶予が付きにくい
刑事裁判に発展した場合、盗撮の再犯は初犯と比べて執行猶予が付きにくいです。
執行猶予は言い渡される懲役が3年以下のときに、裁判官が情状を考慮して付すことがあります。被告人の反省態度や被害者との示談成立の有無などが情状として考慮され、初犯か再犯かも検討材料の1つです。再犯は基本的に、被告人に不利に作用します。
盗撮の再犯で逮捕された場合にすべきこと
盗撮の再犯で逮捕された場合は、すぐに弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
弁護士に刑事弁護を依頼
刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、以下のことを目指して弁護活動を行います。
早期釈放を目指す
1つ目は、被疑者の早期釈放です。
早期釈放を実現するには、被疑者に逃亡・証拠隠滅のおそれがないと認められなければなりません。
逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを示すためには、釈放後の被疑者を監督する身元引受人を立てたり、盗撮に関する証拠品を捜査機関に提出したりする必要があるでしょう。

不起訴の獲得を目指す
刑事弁護の依頼を受けた弁護士は早期釈放の実現に加えて、不起訴の獲得も目指します。
盗撮の再犯の場合は、初犯に比べて起訴されやすい傾向がありますが、被害者との間で示談が成立しているなど、被疑者に有利な情状を積み重ねていけば、不起訴になる可能性はあります。
執行猶予の獲得を目指す
盗撮の再犯で起訴された場合は、執行猶予の獲得を目指します。
執行猶予を獲得するには、被害者との示談交渉に加えて、再犯防止策を講じることも必要です。さらなる再犯のおそれが高いとみなされると、執行猶予が付きにくくなるからです。
盗撮再犯の対応で重要なこと
盗撮の再犯で逮捕された際は、以下の対応をとることが重要です。
示談交渉
1つ目は被害者との示談交渉です。被害者との間で示談が成立すれば、被害者に、加害者に対する刑事処罰を求めない意思を示してもらえる可能性があります。
被害者が刑事処罰を求めていないとわかれば、不起訴になる可能性や執行猶予が付く可能性が高まります。

再犯防止策
盗撮は再犯率が高い犯罪であるため、再犯防止策を講じることも重要です。
再犯のおそれが高いと判断されると、起訴の可能性や執行猶予が付かない可能性が高くなります。
性依存症の治療を行っている医療機関に通院するなど、再犯防止策を示すことも必要です。
再犯防止のために家族ができること
盗撮を繰り返さないためには、家族の協力も欠かせません。犯罪によって周囲との関係が途絶え、孤立感から再犯に至るケースが少なくないからです。
家族が通院に付き添ったりコミュニケーションをとったりして、本人を支えることが肝要です。
まとめ
盗撮の再犯で逮捕されると、初犯に比べて起訴されやすく、罰金刑だけでは済まない可能性があります。盗撮の再犯で逮捕された場合は弁護士に刑事弁護を速やかに依頼し、被害者との示談交渉や再犯防止策の検討を進める必要があります。
盗撮の再犯で弁護士のサポートが必要な方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。