起訴とは?起訴後の手続きや起訴を回避するための対策などについて解説

起訴(きそ)とは、検察官が裁判所に事件の審判を求めることです。刑事裁判で有罪判決が下されると、刑罰を受けることに加え、前科がついてしまいます。

日本では起訴されると99.9%有罪判決が下されると言われています。今後の人生を左右しますので、加害者になったしまった方や、そのご家族の方は起訴について理解を深めておいた方がいいでしょう。

 

この記事では、次のような疑問にお答えします。

  • 起訴/不起訴とは何か?
  • 起訴/不起訴の違いはどこにあるのか?
  • もし起訴されてしまったらどうしたらよいのか?
  • 起訴されないために何ができるのか?

 

起訴/不起訴とは何か?

起訴という言葉はよく聞きますが、そもそも起訴とは一体どのようなものなのか、不起訴と対比しながら解説いたします。

 

  1. 起訴とは
  2. 不起訴とは
  3. 起訴の種類

 

起訴とは

検察官が、事件の捜査の結果に基づき、裁判所に対してその事件の審理を求めることを起訴といいます。

 

起訴する権限は検察官のみが有しています(刑事訴訟法第247条)。被害者などの一般の人や、司法警察職員等の他の機関による起訴はできません。

 

起訴するためには、事件について第1審の裁判権を有する裁判所に対し、起訴状を提出しなければなりません。

 

起訴状

起訴状とは、検察官が公訴を提起する場合に、裁判所に提出する書面のことです。(刑事訴訟法第256条第1項)

 

起訴状には、以下被告人の情報が記載されます。

  • 本籍
  • 住居
  • 職業
  • 名前
  • 生年月日
  • 身体的な特徴
  • 被告人本人の顔写真
  • 公訴事実および罪名

被告人が氏名を黙秘している場合には、氏名不詳と記載されます。

 

起訴状一本主義

起訴状一本主義とは、起訴時には「起訴状のみを提出する」原則をいいます。(刑事訴訟法256条第6項)

 

検察官が起訴するときに、裁判官に事件について予断を生じさせるおそれのある書類等を添付したり、引用したりしてはならないという原則です。

 

不起訴とは

検察官が捜査の結果に基づいて、「この事件は裁判を求める必要がない」と判断することを不起訴といいます。

 

以下の5点に当てはまる場合は、不起訴となります。

  • 訴訟条件を欠く場合
  • 被疑事件が罪とならない場合
  • 犯罪の嫌疑がない場合
  • 犯罪の嫌疑が不十分の場合
  • 起訴猶予の場合

 

以下、説明します。

訴訟条件を欠く場合

訴訟条件を欠く場合とは、被疑者が死亡したときや、親告罪において告訴が取り下げられたときなどで、起訴するための法律上の条件を欠く場合です。

 

被疑事件が罪とならない場合

被疑事件が罪とならない場合とは、被疑者が犯行時14歳に満たないときや、被疑者が犯罪時心神喪失であった場合などです。

 

犯罪の嫌疑がない場合

犯罪の嫌疑がない場合とは、被疑者が人違いであることあるいは犯人でないことが明白となった場合や、犯罪を認定する証拠がないことが明白となった場合などです。

 

犯罪の嫌疑が不十分の場合

犯罪の嫌疑が不十分の場合とは、被疑者が犯罪を行った嫌疑がないわけではないが、それを立証するだけの証拠が不十分である場合です。

 

起訴猶予の場合

起訴猶予とは、犯罪を証明するだけの十分な証拠があり、被疑事実が明白である場合において、以下の点を考慮し検察官が裁量により起訴を猶予する場合などです。

 

  • 被疑者の性格
  • 年齢および境遇
  • 犯罪の程度
  • 情状並びに犯罪後の状況 等

 

実は、不起訴処分の9割以上が起訴猶予です

 

起訴猶予は、検察官が裁量により起訴を見送る場合などであり、完全に無罪放免となったわけではありません

 

もし、その後に何らかの事情変更があり、「やはり起訴すべきである」と判断された場合には、起訴されてしまう可能性があります。

 

起訴の種類

起訴には、通常の手続きによる起訴と、簡易な手続きによる起訴の2種類があります。

簡易な手続きによる起訴は、略式手続と即決裁判手続きの2つに分かれます。

 

通常起訴(公判請求)

検察官が起訴相当と考えて裁判所に起訴状を提出(通常の起訴)した場合には、公開された法廷において刑事事件の裁判手続きが開始され、被告人の処遇を決定することになります。

 

検察官は、起訴状記載の犯罪事実を裏付けるべく事件の裁判に立ち会い、証拠の提出、証人の尋問を行うなどして、犯罪事実の立証を図ります。

 

弁護人はこれに対し、以下のような方法で戦っていきます。

  • 刑を少しでも軽くすべく行動する
  • 検察官の主張等の不合理性を弾劾する
  • 証拠能力を争う 等

 

検察官は、証拠調べの終了後、求刑を含む論告を行い、裁判所が最終的な判断をし、判決を下します。

 

簡易な手続きによる起訴

簡易な手続きによる起訴とは、簡略化された手続きによる起訴のことです。

通常の起訴のような厳格な審理は求められないため、手続きがスピーディーに進みます。

 

通常の起訴の場合、厳格な手続きで審理が進められるため、判決まで長時間かかります。しかし、簡易な手続きによる起訴は、厳格な審理を要求されないため、否認事件や重大事件などに適用されてしまうと、被疑者・被告人は主張したいことをきちんと主張させてもらえないまま手続きが終了してしまう恐れがあります。

 

そのため、簡易な手続きによる起訴は、以下の2点に該当する場合のみおこなえます。

  • 被疑者の同意がある
  • 軽微な事件である

 

略式手続(略式命令請求)

略式手続とは、被疑者の同意を得て、公判を開かず簡易裁判所が書面審理で刑を言い渡す簡易な刑事手続きです。

 

50万円以下の罰金または科料の刑を科す場合に限られ、交通事故(業務上過失致傷、道交法違反)といった事件のときに用いられることの多い手続きです。

 

略式手続の場合、罰金または科料が科されるので、身柄は釈放され、刑務所に行くことはありません。

 

即決裁判手続き(即決裁判請求)

即決裁判手続きとは、事案が明白かつ軽微な事件について、即決裁判手続きによって審判する旨の決定をし、判決言渡しまで原則として1日で行う手続きです。

 

即決裁判手続きの場合は、通常の裁判と同様に法廷で審理が行われますが、原則としてその日のうちに判決が言い渡されます。懲役または禁錮刑が言い渡されるときには、必ず執行猶予がつきます。

 

即決裁判手続きをする要件は以下の3つです。

 

  • 死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる事件ではないこと
  • 事案が明白である等の事情を考慮し、即決裁判手続きによることが相当であること
  • 即決裁判手続きによることについて被疑者の同意があること

 

起訴された場合:裁判(公判)手続きの流れ

通常起訴された場合の流れを説明します。

 

  1. 公判準備
  2. 冒頭手続(①~④)
  3. 証拠調べ手続(⑤~⑩)
  4. 証拠調べ終了後の手続き(弁論手続)(⑪~⑬)
  5. 判決言い渡し

 

公判準備

公判前整理手続き

公判前整理手続きとは、第1回公判期日前に事件の争点および証拠の整理をおこなうため、裁判官、検察官側、弁護人側を交えて確認する手続きです。

 

公開前整理手続きは公開・非公開など決められていませんが、ほぼ非公開で行われています。

 

公判前整理手続きをする目的

公判前整理手続きをする目的は2つあります(刑事訴訟法第316条の2第1項)。

  • 充実した公判をおこなう
  • 審理を継続的、計画的、かつ迅速におこなう

 

重大事件や複数の被害者・被告人が存在する複雑な事件などで、裁判が長期化せず、迅速かつ正しく適正に行われることを目的として、公判前整理手続きがおこなわれます。

 

公判前整理手続きの対象となる裁判

公判前整理手続きは平成17年11月に施行されたばかりのまだ新しい制度です。対象としている裁判は、以下のとおりです。

  • すべての裁判員裁判
  • 被告人が無罪や無実を主張している否認事件
  • 争点が多岐にわたり整理が望ましいと思われる事件 など

 

公判前整理手続きで整理される内容

公判前整理手続きで整理される内容は、以下のとおりです。

  • 訴因や罰条
  • 事件の争点
  • 証拠の決定または却下、証拠調べの順序
  • 被害者参加の確認
  • 公判期日の決定や変更、進行についての必要事項 など

 

被告人も公判前整理手続きに参加できる

被告人が公判前整理手続きに参加することで、事件の争点が何であるか、何をめぐり検察官と争うのか、検察側の主張や証拠などを把握・理解できるメリットがあります。

 

被告人が公判前整理手続きに参加すると、担当の裁判官と顔を合わせることになります。悪い印象を持たれないように十分気を付けなければなりません。検察官の発言に腹を立て暴言を吐いたりせず、冷静に対応しなければなりません。

 

また、よくわからないまま不用意に発言すると不利益が生じる場合もあります。発言したいときには事前に弁護士とよく相談することをおすすめします。

 

冒頭手続(①~④)

人定質問

裁判官が、被告人に対して氏名や本籍地、住所地等を質問し、以下の点を確認します。

  • 出廷している被告人が誰であるか
  • 出廷している被告人が本人であるか

 

起訴状朗読

検察官が起訴状を朗読します。これにより、以下の点が明示されます。

  • 被告人がどのような犯罪行為によって起訴されているか
  • その行為がどの犯罪に該当するとして起訴されているか

 

黙秘権等の告知

裁判官が被告人に対して、黙秘権等の権利があることを説明します。

 

起訴事実に対する認否

裁判官が、検察側・弁護人側双方から起訴状に対する言い分を聞きます。

 

証拠調べ手続(⑤~⑩)

刑事裁判においては、検察官が立証責任を負います。もし検察官による犯罪の証明が不十分であれば、裁判所は無罪の判決を下さなければなりません。

 

証拠調べ手続は、刑事裁判の中でも重要です。

証拠調べをするためには、原則として検察官と弁護士が、それぞれの証拠を取り調べるように裁判所に請求する必要があります。

 

検察官の冒頭陳述

冒頭陳述とは、証明責任を負う検察官が、これから証拠によって証明しようとする事実を述べることです。

述べるポイントは…

  • 証拠によって証明する予定の事実
  • 犯行の動機や計画性
  • 犯行の具体的な状況
  • 犯行前後の行動
  • 被告人の生い立ちや生活状況 など

 

被告人・弁護人の冒頭陳述

通常の裁判では、検察官だけが冒頭陳述を行います。検察官の冒頭陳述に対して、弁護人も裁判所の許可を得て冒頭陳述ができますが、めったにしません。

 

ただし、公判前整理手続きをした裁判および裁判員裁判では、弁護人も冒頭陳述をおこないます。弁護人の冒頭陳述は、検察官の冒頭陳述のすぐ後に実施されます。

 

検察官の証拠調べ請求および証拠調べ(証人尋問・被告人調書等の請求・被告人質問等)

検察官には立証責任があります。検察官は合理的な疑いを入れない程度にまで、公訴事実の存在を証明しなければなりません。

裁判所によってその請求が認められた証拠に限り、証拠調べが実施されます。

具体的な流れは…

  • 検察官が個々の証拠の取調べを請求する
  • 裁判所が被告人側の意見を聴く
  • 裁判所が証拠取り調べを実施するか判断する

 

被告人・弁護人の証拠調べ請求および証拠調べ(証人尋問・被告人質問等)

被告人側の立証は、公訴事実の存在について検察官の立証が合理的な疑いを入れない程度にまでは証明されていないと裁判官に考えさせるだけで十分です。

 

公訴事実の存在に争いがない事件については、主に被告人にとって有利な情状の存在を証明することが目的になります。

 

検察官側の立証の場合と同様に、裁判所は被告人側が取調べを請求した証拠を採用するかどうかを決定します。裁判所によってその請求が認められた証拠に限り、証拠調べが実施されます。

 

証拠調べ終了後の手続き(弁論手続)(⑪~⑬)

証拠調べが終了すると、検察官、被告人側がそれぞれ事件に関する意見を述べる弁論手続に入ります。

 

事件に関する意見とは、下記3つに関する意見です。

 

  • 有罪か無罪か
  • 犯罪の悪質性や被告人の更生可能性等情状に関する点
  • 有罪だとすれば、どれくらいの刑に処するべきかという点

 

論告・求刑

検察官が述べる意見を論告、刑の重さに関する意見を求刑と呼びます。

 

論告・求刑は、検察官が提出した証拠により裁判所がどのような事実を認定し、どのような罪名で、どのような刑罰を科すべきかについて、検察官による最終的な意見の陳述です。

 

弁論

弁護士は最終弁論という形で意見を述べます。

 

被告人の最終陳述

弁論に引き続き、被告人も事件についての意見を述べます。これを最終意見陳述といいます。

 

判決言い渡し

弁論手続が終了すると、裁判官は判決宣告期日を指定します。

 

判決言渡し手続きにおいては、公訴事実の存在が合理的な疑いを入れない程度に証明され、かつ、その事実が刑罰法令に触れるときは有罪判決が言い渡されますます。犯罪の証明がないときまたは被告事件が罪とならないときは、無罪判決が言い渡されます。

 

不起訴を目指す重要性

ここからは不起訴を目指す重要性を解説いたします。

起訴された場合の有罪率は99%!

日本の刑事裁判では、有罪率が99%以上です。

 

つまり、一旦起訴されてしまうと、ほとんどのケースで有罪になることを意味します。

 

他方、検察官が扱う刑事事件の約60%が不起訴になっています。

起訴されてしまうとほぼ確実に有罪となり前科がつきますが、不起訴処分で終われば前科はつきません。

 

そのため、不起訴処分を獲得するために、できる限りの手を尽くすべきです。

 

起訴された場合のデメリット

公判請求をされた場合には、誰でも傍聴が可能な公開の法廷で裁判を受けなければなりません。

 

加えて、検察官や裁判官からの質問に回答する必要があります。自分に不利なことを言わないように細心の注意を払って答弁しなければなりません。

 

公判期日が指定され、判決がなされるまで、引き続き勾留された状態が続くおそれもあります。

 

起訴された場合には有罪率が高いので、有罪判決がでて、前科がついてしまう可能性が高くなります。無罪判決を勝ち取ることは容易ではありません。

前科がついてしまった場合には今後の人生において様々なデメリットが発生します。

 

不起訴処分を得られれば前科はつきません。不起訴処分を勝ち取ることがどれだけ重要か、おわかりいただけると思います。

 

不起訴を獲得するためにできること

不起訴処分を獲得するためにできることを解説します。

 

  • 早急に対応する
  • 否認事件の場合
  • 検察官送致前
  • 被害者との示談や被害弁償、贖罪寄付など
  • きちんと反省する
  • 不起訴処分の理由は通知されず

 

早急に対応する

まずは早急に対応することが重要です。逮捕から起訴・不起訴の判断が下されるまでの期間は、長くても23日間しかありません。

逮捕される前であれば、逮捕を避けるための活動を、起訴前であれば、不起訴処分の獲得を目指すための活動をすることが重要です。

 

否認事件の場合

否認事件の場合には、否認や黙秘を貫き、自白の供述調書を取られないことが重要です。

 

否認事件の場合には、取調べも厳しいものとなるので、取調べへのアドバイスを受けたり、不当な取調べに対する抗議をしてもらったりするなど、弁護士のサポートがあるほうが良いでしょう。

 

また、無罪を証明できる証拠を集めたり、捜査機関が集めた証拠の信用性を綿密に検討し、無罪であること・捜査機関側の証拠が信用できないことを検察官に対して主張したりしていくことになりますが、この場合にもやはり弁護士のサポートが必要だといえます。

 

検察官送致前

逮捕前の段階から被害者に対する被害の弁償や、被害者との示談交渉をすることにより、検察官へ送致される前に被害届を取り下げてもらい、捜査終了となる場合もあります。

 

被害者との示談や被害弁償、贖罪寄付など

検察官に送致されてしまった後でも、被害者がいる事件の場合には、被害者との示談が成立すると、不起訴の可能性が高まります。

 

親告罪ではない場合でも、被害弁償がなされていたり、贖罪寄付行為などがあり、被害者が被疑者を許したり示談が成立した場合には、起訴して処罰する必要性が低下します。これらの事情が検察官に評価されて、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。

 

きちんと反省する

事件内容や程度にもよりますが、被疑者本人が罪をしっかり反省し、再犯のおそれが無い、あるいは非常に低いと評価されれば、不起訴で身柄解放される可能性もあります。

 

不起訴処分の理由は通知されず

被疑者が不起訴になる理由は様々なものがありますが、不起訴になった理由は被疑者に対し開示されません。

 

留置管理係の人から、帰ってもいいですよと言われて、突然釈放されることになります。不起訴処分になりましたということも通知されませんし、書類が届くこともありません。

 

不起訴処分の理由を知りたい場合には、不起訴処分告知書の申請書を検察官に提出します。弁護人を選任している場合には、弁護人が申請してくれます。

 

なお、勾留による身柄拘束期間は通常最大20日間と定められているため、期限内に証拠を集めきれなかったが、もう少し時間をかければ証拠を集められると検察官が考えた場合には、不起訴処分にせず、処分保留で釈放することもあります。

 

その場合には後日起訴される可能性もあるので、気を緩めることなく不起訴処分獲得に向けて示談交渉等をおこなう必要があります。

 

まとめ

起訴されてしまうと有罪になり、前科がつく可能性が高いです。一度ついた前科は消せません。起訴されてしまう前に、なるべく早く、刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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