大麻で逮捕|初犯の場合、処分はどうなる?【弁護士が回答】
大麻に関する犯罪は近年増加しており、大麻初犯で逮捕される若者が増加しています。
一口に大麻と言っても、所持・使用・譲渡・栽培があり、行為態様によって罰則も違います。
この記事では大麻取締法違反初犯について、主に以下の点に触れながら解説します。
- 逮捕・身柄拘束されるのか
- 起訴されるのか
- どのような刑罰が科されるのか など
目次
大麻は初犯でも身柄事件になる?
ポイント
逮捕されると最大48時間、検察官送致されると更に24時間、勾留されると更に最大で20日間身柄拘束されることになる。そのため、早急に釈放してもらうことが重要。 |


身柄拘束が長引くと生活に影響が出ます。大麻事件で逮捕された場合には、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
大麻は初犯でも起訴される?
ポイント
起訴されると刑事裁判を受けることになる。日本では起訴されると99%有罪になるといわれているため、不起訴を得ることが重要。 |


令和2年犯罪白書によると、大麻取締法違反による起訴率は平成26年から毎年増加しており、平成24年以降50%前後で推移しています。令和元年は、検挙された人のうち、約45%が起訴されています。
これらの数字は初犯の場合を明確に分けていないため目安にしかすぎませんが、初犯だから起訴されないだろうと楽観視するのはやめた方が良いでしょう。
大麻取締法違反の場合、行為によって処罰内容が変わってきます。
大麻取締法<抜粋>
第24条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第24条の2 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。
引用:e-GOV法令検索
大麻所持の場合
所持していた大麻の量が少ない場合
所持していた大麻の量が少ない場合には、自己使用目的である、使用頻度が少ない、大麻への依存度合いが低い等が考えられます。
本人が反省していることに加えて、弁護士により、再犯の恐れが少ない事、家族のサポートなどによる今後の更生の可能性等の主張をすることにより、起訴猶予処分になる可能性が高くなります。
大麻所持初犯で逮捕された場合には、なるべく早く弁護士に相談し、不起訴処分を獲得するための環境整備等を行うことをお勧めします。
所持していた大麻の量が多い場合
所持していた大麻の量が多い場合、常習性がある、あるいは営利目的があるとみなされ、初犯であっても起訴され実刑になる可能性が高くなります。
大麻使用の場合
大麻を自分で使用すること自体は犯罪とは定められていません。そのため大麻を吸っただけでは逮捕されません(2022年5月時点)。
ただ、大麻を吸うためには所持していたと考えられますし、あるいは人からもらって吸った場合には譲り受けの罪が成立します。
そのため、大麻を使用する行為自体では逮捕・起訴されませんが、使用前の行為が犯罪を構成します。逮捕・起訴される可能性は、初犯であっても十分にあります。
大麻譲受の場合
大麻を譲り受け、または譲り渡す行為が起訴されるか否かは、主に以下の事情によって決まります。
- 個人使用目的であるか
- 営利目的であるか
- 少量であるか
- 大量であるか など
譲り受け・譲り渡しの多くの場合、金銭授受が発生します。
個人使用目的で密売人から大麻を購入する、反社会的勢力が転売目的で大麻を購入する、などが考えられます。
個人使用目的で少量購入する場合には、起訴される可能性が低くなりますが、反社会的勢力や密売人からの購入である場合には、起訴されることも考えられます。
営利目的で大量に譲受する場合には、大麻のまん延に重大な影響を与える可能性があるため、起訴される可能性が高くなります。
大麻栽培の場合
大麻の栽培は原則として禁止されています。もっとも、事前に都道府県知事の免許を受けている場合は、合法的に大麻を栽培できます。
自分で使用する場合
自分で使用するためだけに少量栽培していた場合、初犯であれば起訴される可能性は低くなります。
営利目的の場合
営利目的で大量に栽培していた場合には起訴される可能性が高くなります。
大麻の初犯は略式起訴になる?
ポイント
略式起訴の場合、通常裁判よりも早く身柄が解放されるメリットがある。しかし、有罪になれば前科がつくので、できる限り不起訴を目指したい。 |


大麻は初犯でも懲役刑になる?
ポイント
懲役刑になると一定期間刑務所に入れられてしまう。罰金刑や執行猶予など、少しでも負担の少ない処分を目指したい。 |


大麻取締法違反は、初犯であっても常習性が認められる、営利目的であるなどの場合には懲役刑になる可能性は高いと言えます。
大麻所持の場合
所持していた大麻の量が少ない場合
大麻の所持は5年以下の懲役とされています。初犯で単純な所持の場合には、懲役1年執行猶予3年程度が多いです。
所持していた大麻の量が多い場合
営利目的で所持していた場合には、7年以下の懲役、事情によっては追加で200万円以下の罰金です。
大麻譲受の場合
大麻の譲受、譲渡は営利目的か否かによって法定刑が異なります。
非営利目的の場合には5年以下の懲役とされています。営利目的の場合には7年以下の懲役、事情により追加で200万円以下の罰金です。
初犯で非営利目的での譲受の場合には、懲役1年執行猶予3年程度の場合が多いです。
大麻栽培の場合
大麻の栽培も、個人使用目的か営利目的かによって、刑罰が異なります。
自分で使用する場合
大麻栽培の刑罰は7年以下の懲役と定められています。自己使用目的で、自宅でこっそり少量栽培していた場合、初犯であっても処罰の対象です。
営利目的の場合
営利目的の大麻栽培の場合の刑罰は10年以下の懲役、事情によって追加で300万円以下の罰金と定められています。
営利目的での大麻栽培は、初犯であっても重く処罰されます。
大麻は初犯でも実刑になりますか?


大麻取締法違反の場合、行為によっていくつかの類型が定められています。そのため、行為によっては実刑になることもあります。
大麻所持の場合
所持していた大麻の量が少ない場合
大麻の初犯で所持していた大麻の量が少ない場合には、懲役6か月から1年、執行猶予3年が普通です。よほどのことが無い限り実刑になる可能性は低いです。
大麻所持の初犯で実刑になりにくい理由は、少量の所持でも起訴された場合には罰金刑が存在しないため、再犯防止可能性があるにもかかわらず実刑にすると、罪の内容に対して多くの自由が損なわれるためです。
しかし、本人の反省が無く、法廷での態度が悪い、再犯の可能性が極めて高いなどの事情がある場合には実刑になる可能性もあります。
所持していた大麻の量が多い場合
大量に所持していた場合には、継続的な使用や、他への流通の可能性があります。また、営利目的での所持の場合には、より悪質といえるため法定刑が重くなります。初犯であっても3年以上の実刑判決を受ける可能性は高いです。
大麻譲受の場合
大麻譲受は、個人使用目的であっても、反社会的勢力や密売人からの購入であることが多いため、初犯であっても実刑判決を受ける可能性が高くなります。
営利目的である場合には、大麻を流通させ、さらなる大麻事件を生む可能性が高いため、初犯であっても実刑判決を受ける可能性が高いです。
大麻栽培の場合
大麻栽培の場合には、目的によって異なります。
自分で使用する場合
自分で使用するためにごく少量を栽培していた場合には、初犯であれば実刑判決が言い渡される割合はそれほど高くはありません。
営利目的の場合
営利目的での栽培の場合には、さらなる大麻事件を引き起こす可能性が高いため、悪質性が高いと判断されます。初犯であっても実刑判決になる危険性が高くなります。
大麻の初犯で執行猶予を得るポイントは?
ポイント
執行猶予がつけば、猶予期間中に罪を犯さない限り懲役刑が執行されません。社会復帰を早めるためには執行猶予の獲得が重要です。 |


大麻の初犯で逮捕された場合には実刑判決が言い渡される割合はそれほど高くありません。営利目的などのケースでない場合には、執行猶予を目指すことは可能です。
大麻の初犯で逮捕|処分を軽くするためにできることは?
大麻初犯の場合、なるべく処分を軽くするために出来ることは何か、解説します。
弁護士に依頼する
大麻の初犯で逮捕された場合には、早急に弁護士に相談しましょう。大麻初犯の場合には、起訴される前に手続きを終わらせる不起訴処分を目指すことが可能です。
不起訴処分を目指す
大麻は罰金刑が無いので、懲役刑が相当でない場合には不起訴になる可能性が高くなります。
懲役刑が相当でない場合とは、例えば初犯でかつ少量の所持であった場合で、被疑者が深く反省し再犯防止策がとられている場合等です。この場合には検察官が不起訴処分を下します。
弁護士に依頼することにより、被疑者が深く反省していること、再犯の可能性が低いこと、更生の可能性が期待できることを検察官にアピールできます。
再犯防止策を考える
大麻事件は再犯可能性が高いため、どれだけ再犯防止策がとられているかが重視されます。
弁護士に依頼し、被疑者の周りの環境を整えることにより再犯防止対策がきちんとできていることを検察官にアピールができます。
再犯防止のための周りの環境を整えるためには、逮捕後なるべく早い時期から取り掛からなくてはなりません。逮捕されたら早急に弁護士に相談しましょう。
まとめ
大麻の初犯で逮捕されてしまった場合には、証拠隠滅の恐れから逮捕後の勾留が認められやすいです。また、証拠隠滅のおそれから接見禁止処分もつきやすく、接見禁止処分が付くと家族との面会も出来ません。
これらを避けるためには、勾留の要件である逃亡のおそれ・証拠隠滅のおそれが無い事を弁護士に主張してもらいましょう。
大麻などの薬物犯罪では、罪証隠滅のおそれは比較的認められやすいです。罪証隠滅をさせないように監督してくれる方を探すこと、本人からは罪証隠滅しないことの誓約を取ることなどにより、罪証隠滅のおそれが無い事を主張しましょう。
大麻の初犯で逮捕された場合、主に以下が重要です。
- 早急に弁護士に相談し、取り調べへのアドバイスをもらう
- 弁護士による再犯防止策の提案に従う
- 家族の協力・監督を得る環境を整える
- 本人の深い反省 など
厳しい刑罰を回避するためなるべく早く弁護士に依頼し、弁護活動を尽くしてもらうことをお勧めします。