弁護士の接見とは|弁護士費用・面会との違い・接見を依頼する方法
家族が逮捕された場合、逮捕から72時間が経過し勾留が決定するまでの間は、家族が本人と面会することはできません。
こうした状況下では、弁護士が本人と接見し、取調べへの対応方法や家族からの伝言を伝える役割を担います。
突然の逮捕により、今後どうなるのか分からず不安を抱えている本人にとって、弁護士のこうしたサポートは大きな安心材料となります。
さらに、逮捕直後から弁護士に依頼することで、10~20日間の勾留が行われないように対策を講じてもらうことも可能です。
この記事では、以下の点を解説します。
- 弁護士による接見の内容やメリット
- 弁護士と一般の面会との違い
- 接見にかかる弁護士費用の相場
ご家族が逮捕されて、一刻も早く状況を知りたい、早く面会をして適切な助言をしてほしいと希望される方は、すぐにご相談ください。


接見とは
被疑者や被告人と面会すること
接見とは、身柄を拘束されている被疑者や被告人と面会することです。接見の意味は面会と同じです。
ドラマなどで、被疑者や被告人と、アクリル板越しに会話するシーンを見たことがある人も多いでしょう。
突然逮捕され、捜査機関から厳しい取調べを受ける被疑者にとって接見は、精神的な支えとなるほか、刑事手続きへの助言が得られる貴重な機会です。
逮捕後に家族が接見できるタイミング
家族が逮捕された場合、逮捕から72時間以内は、刑事手続きが進められるため、家族であっても接見はできません。
家族が逮捕された本人と接見できるのは、最速で72時間以降の勾留という手続きが決定した後です。しかし、弁護士であれば逮捕直後から接見が可能です。
なお、勾留が決定してしまうと、原則10日間、延長されれば20日間警察の留置場に身柄を拘束されるため、72時間以内に勾留を回避するための対策を講じることが重要です。
弁護士の接見とは?
逮捕は、逃亡や証拠隠滅のおそれがある際に行われ、身柄を拘束されると多くの制限を受けます。
そのような場合でも、日本国憲法や刑事訴訟法によって、被疑者は弁護士と接見する権利が認められています(接見交通権)。
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
② 前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
③ 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
接見交通権は、国家の強制処分で身柄拘束を受けている被疑者が、犯罪の嫌疑を晴らし、心身の自由を回復し、自己の権利と自由を守ることができるよう定められた権利です。
弁護士との接見では、接見時間や立ち会いの制限を受けずに接見が可能です。
弁護士が接見でやること
家族が逮捕された場合、弁護士は接見で以下のようなサポートを行います。
- 取り調べに対するアドバイス
- 今後の事件の見通しの説明
- 会社への説明の相談
- 家族の言葉を伝える
それぞれについて解説します。
取り調べに対するアドバイス
日本の刑事裁判では、取り調べ時に作成された本人の供述調書が重視されます。
そのため、捜査機関は弁護士が就いていない間に捜査機関側にとって都合の良い調書を作成しようとします。
捜査機関は被疑者本人がやったと言うまで、言い回しを変えながら何度も同じことを聞いてきます。
しかし、逮捕直後に弁護士が接見して助言することで、不利な供述を避けられる可能性が高まります。
被疑者には黙秘権があり、供述を拒否することができます。ただし、この権利は適切な場面で行使しなければ、かえって不利に扱われることもあるため注意が必要です。
たとえば、証拠が乏しい場合には黙秘が有効な対応になりますが、軽微な犯罪で不起訴となる可能性が高い場合には、素直に反省の意思を示して供述したほうが、早期に釈放されることもあります。
このように、取り調べへの対応方法は、罪の性質や証拠の有無、今後の手続きの見通しによって大きく異なります。
不利な調書を作成させられる前に、弁護士が接見して適切なアドバイスを行うことで、捜査官との対話に備えることができ、被疑者の権利を守る大きな支えとなります。
今後の事件の見通しの説明
弁護士は、現在の捜査状況や検察官から提出された証拠を確認するなどして情報収集を行い、これまでの経験や判例などから、今後の処分の見通しや流れなどについて丁寧に説明します。
突然逮捕された人で刑事手続きに詳しい人は多くありません。そのため、自身が置かれている立場や状況を正確に理解できず、ひとりで長時間拘束され、いつまでその状態が続くのか、今後どのようになってしまうのか不安になるのは当然です。
しかし、弁護士から、今後の見通しや手続きの流れ、どのような弁護方針なのか説明を受けることで、冷静さや安心を取り戻し、立ち向かうための支えとなります。
家族・本人の伝言を伝える
弁護士は、刑事手続きに対する助言だけでなく、家族から本人へ、本人から家族への伝言を伝えることが可能です。
特に、逮捕された直後は、家族は本人と接見することが叶いません。そのような場合に、家族からの伝言を伝えることができます。
突然の逮捕という事態に直面したご家族は、状況が分からない中で、逮捕された人の体調を気遣う言葉や、家族は味方であると伝えて勇気づけたいなど、さまざまな思いを抱えることが少なくありません。
一方で、本人も家族を案じ、申し訳なく感じていることが多く、そうした中で家族の言葉を受け取ることは、大きな励みや更生への力となります。
同様に、本人から受け取った伝言をご家族に伝えることも可能です。ご家族の方にとっても、本人の伝言を受け取り、今の状況を把握できることは、不安の軽減につながります。
本人に差し入れを渡せる
弁護士は、時間帯を問わずいつでも接見に行くことができ、同様に差し入れも可能です。
これに対し、家族などの一般の方は、面会時間だけでなく差し入れの時間にも制限があります。
たとえば早急に渡したい物がある場合には、弁護士を通じて差し入れをお願いするという方法があります。
特に、逮捕直後や休日に差し入れが必要になったときは、弁護士が代わりに届けることで、本人に必要な物品を渡すことが可能です。
例えば、一般の人は土日の差し入れはできません。このような状況でも、弁護士を介することで、必要なものを差し入れることができます。
弁護士の接見と一般の面会との違い
弁護士の接見は、一般の家族などの面会と以下のような違いがあります。
比較項目 | 弁護士 | 一般(家族など) |
接見のタイミング | 逮捕直後から可能 | 逮捕から72時間以降 |
接見の受付時間 | 24時間365日可能 | 平日の午前9時~午後12時、午後1時~5時まで |
接見時間 | 時間制限なし | 15~20分程度 |
接見回数 | 回数制限なし | 1回まで |
警察官の立ち会い | なし | あり |
接見場所 | 留置場・検察庁でも可能 | 留置場 |
接見時の差し入れ | 受付時間や受付時の制限なし | 平日接見の時間帯ののみで土日不可 |
接見禁止後の接見 | 可能◎ | 不可× |
以下では、弁護士の接見と一般の人の面会の違いについて、解説します。
接見のタイミング
弁護士と一般の方の接見のタイミングには、大きな違いがあります。本人が逮捕された場合、逮捕から72時間以内、勾留決定まで家族は面会できません。
これに対して、弁護士は逮捕直後から、本人との接見が可能です。
接見できる日時・回数
弁護士と一般の方を比較すると、接見できる日時や回数などに違いがあります。
一般の方は通常平日の9時~12時、13時~17時の間でしか面会できません。土日祝日は面会できません。
さらに、一般の方が面会できる時間は15分~20分程度です。話し足りないことがあっても、時間になると強制的に終了させられます。
加えて、一般の方は1日1回しか面会できません。従って、誰か一人でも先に面会している場合には、他の方はその日にはもう面会できなくなります。
一方で、弁護士は土日祝日・早朝・深夜を問わず365日24時間、いつでも接見できます。
弁護士の接見には時間制限はないため、落ち着いてじっくり話ができます。
さらに、弁護士は他の方が面会した後でも、1日に何回でも接見できます。
違い | 弁護士 | 一般の方(家族など) |
接見の受付時間 | 24時間365日可能 | 平日の午前9時~午後12時、午後1時~5時まで |
接見時間 | 時間制限なし | 15~20分程度 |
接見回数 | 回数制限なし | 1回まで |
立ち会いの有無
一般の方が面会するときには留置施設の職員が立ち会い、会話の内容を記録します。これは罪証隠滅などを防ぐために行われますが、事件のことについて話すのは困難です。
弁護士による接見の場合には、警察官の立ち合いがありません。そのため会話の内容が捜査機関に漏れることはありません(秘密交通権)。
刑事訴訟法第39条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
捜査機関に発言内容が漏れる可能性が無いので、自由に弁護士と話せます。警察官の立ち会いも無いため、本人の精神的負担も軽減されるでしょう。
接見場所
一般の方は、通常、留置場や拘置所にいる場合にしか面会できません。
これに対し、弁護士であれば、被疑者が裁判所や検察庁に出向いているときでも接見できます。
刑事事件では、最終的に刑事裁判で訴える(起訴)権限を持っているのは検察であるため、被疑者は検察からも取調べを受けることになります。
検察からの取調べは非常に重要であるため、検察庁に呼び出された場面で接見を行えば、取調べ前に、対応のポイントについてアドバイスを受けることができます。
さらに、勾留が決定する前に裁判所から呼び出されて行われる勾留質問の際も、勾留質問前に弁護士が裁判官と話すことが可能です。
裁判官がどのような点を重視して勾留を検討しているかを把握し、事前に被疑者に伝えることで、勾留質問に対処することができます。
接見時の差し入れ
勾留中は、警察署などで日用品を購入するための現金や衣類などの差し入れが可能です。
この差し入れについても、一般の方が差し入れ可能な時間帯は、接見と同様に平日の午前9時~午前11時までと、午後1時~午後5時までが多く、土日祝日は差し入れができません。
一方、弁護士であれば、曜日や時間帯の制限はありません。
接見禁止後の接見
接見禁止とは、被疑者・被告人が弁護士以外との接見を禁止する処分のことです。
特に、共犯者がいる場合や、組織的な犯罪の事件では、共犯者が接見を行い、口裏合わせや証拠隠滅を指示することを防止するために処分が下される傾向があります。
接見金処分が下されると、家族などの一般の人との接見だけでなく、手紙のやり取りも禁止されることになります。
一方、弁護士は接見禁止処分が下されても、接見が制限されることはありません。
この場合は、弁護士に依頼して、接見禁止の一部解除などをお願いすることになります。
弁護士の接見費用
弁護士に接見を依頼した場合の費用は、依頼する弁護士によって異なります。刑事事件では、以下の弁護士に依頼が可能です。
私選弁護人 | 逮捕前・逮捕後、どのタイミングでも相談・依頼できる |
当番弁護士 | 逮捕後に一度だけ無料で呼べる弁護士で、取調べなどについてアドバイスが可能 |
国選弁護人 | 資力がない場合に、勾留後に国に選任して派遣してもらえる |
私選弁護人
私選弁護人は、逮捕後に家族が探して選んで依頼できる弁護士のことです。もちろん、逮捕される前に本人が相談することも可能です。
私選弁護人は、本人や家族が、刑事事件の実績がある弁護士を選んで依頼することができます。
私選弁護人に接見を依頼した際にかかる費用は、1回3~5万円程度が相場とされています。
接見費用は基本的に着手金や報酬金と別であり、接見ごとに費用が発生する点には注意が必要です。
接見は弁護士に事件解決の依頼が必要ですが、刑事事件を扱っている事務所の中には、以下のようなケースもあります。
- 初回接見や緊急接見として、1度だけ弁護士が接見するというプランを用意している
- 弁護士や事務所以外で活動する(示談など)場合に発生する日当に、接見費用が含まれている
刑事事件を弁護士に依頼した場合の費用の相場は、着手金・報酬金あわせて40~100万円程度です。
ただし、各法律事務所の料金体系や事件の難易度によっても異なります。
弁護士に依頼するかどうかは別として、まずは初回接見のみ依頼して、状況を確認したうえで、依頼するかどうか判断する方法もあります。
私選弁護人は、家族が弁護士を選んで、いち早い接見で状況を確認し、勾留を回避したいなど、早期釈放を望む人におすすめです。
当番弁護士
当番弁護士は、逮捕された後、勾留前までの期間に1度だけ接見に来てもらえる制度で、接見費用は無料です。
当番弁護士は、逮捕された本人が警察に頼んで呼んでもらうか、ご家族が弁護士会に依頼することで派遣してもらえます。
なお、接見してもらった当番弁護士をそのまま私選弁護人として契約することも可能です。
私選弁護人として選任すると、選任後から費用が発生します。
国選弁護人
国選弁護人は、弁護士に依頼する費用が負担できない場合に、国が費用を負担して派遣してくれる弁護士です。
逮捕された本人が、裁判官や警察官に頼んで、勾留決定後に派遣してもらうことができますが、家族が選任を依頼することはできません。
国選弁護人の費用は法テラスが支払うため、費用の負担がない点は大きなメリットです。
ただし、選任されるのが勾留決定後なので、家族は72時間、状況がわからないまま過ごすことになり、逮捕された人は10~20日間勾留される可能性があります。
国選弁護人は、弁護士費用を抑えたいという人におすすめです。
私選弁護人に接見を依頼する流れ
法律事務所に電話で問い合わせる
家族が逮捕されてしまい、今すぐ弁護士に接見を依頼したい場合は、まず刑事事件を取り扱っている法律事務所に問い合わせましょう。
お問い合わせは、メールやLINEなどの方法もありますが、緊急性が高い事案であるため、電話でのお問い合わせが確実です。
刑事事件を扱っている法律事務所の中には、24時間365日対応している所もあるため、時間帯は気にせずお問い合わせください。
なお、警察から逮捕の連絡があった場合は、下記の内容を確認しておくと、弁護士に状況を伝える際もスムーズです。
- どこの警察署で身柄が拘束されているのか・逮捕された場所
- どのような容疑で身柄を拘束されたか
- いつ逮捕されたのか
- 被害者の人数や被害状況など
特に、逮捕や連行された警察署が遠方だと、弁護士がすぐに対応できない可能性があります。
その場合や、逮捕や連行された警察署に近い法律事務所を選んだ方がよいでしょう。
警察署に連絡して接見を行う
連絡を受けた弁護士は、警察署に在監確認をとり、本人が留置されている警察署に接見に向かいます。
ただし、弁護士であっても、事件の詳細を警察から教えてもらえないことも多くあります。
そのため、留置されている警察署の名前や、逮捕された場所の詳細を、弁護士に伝えると接見がスムーズです。
弁護士が逮捕された人と接見した際は、本人から事情を確認し、取調べへのアドバイスや今後の見通し、そして家族からの伝言を伝えます。
依頼者に接見完了の報告をする
接見を終えた後は、弁護士からご家族に接見の報告を行います。
ただし、逮捕された本人が伝えたくないことや、証拠隠滅につながる内容については、弁護士の判断で伝えられないこともあります。
事件の内容や、本人からの伝言などに加え、今後の見通しやご家族にできることをお伝えしたうえで、弁護方針に沿って事件が早期解決できるよう、対応します。
ネクスパート法律事務所の対応
接見や弁護活動を依頼された場合、当事務所では以下のような活動を行います。
相談後ただちに接見を行う
ご家族のご相談を受けた後は、ただちに接見を行います。
ご本人から、事件の事情を確認し、取調べへのアドバイスや今後の見通し、ご家族からの伝言をお伝えします。
勾留を阻止する活動を行う
逮捕された場合、そのまま勾留が認められる確率は高いです。勾留が認められてしまうと、原則10日間、延長が認められるとさらに10日間、最長20日間身柄拘束を受けます。
会社や学校への影響も大きなものとなってしまうため、勾留の阻止や、早期釈放を目指した活動を行います。
ネクスパート法律事務所では、これまで検察の勾留請求を却下するなど、早期に身柄釈放を実現した豊富な実績があります。
示談などによる早期釈放を目指す
被害者との示談成立は、刑事処分が軽減される可能性があります。早期に示談が成立することで、不起訴処分となり、身柄が釈放されることが期待できます。
そのため、被害者がいる犯罪においては、積極的かつ粘り強く示談交渉を行います。
さらに、示談以外にも、供託制度の活用や贖罪寄付、具体的な再犯防止策の提示など、複数の対策を講じることが可能です。
被害者のいる性犯罪や傷害事件、詐欺・強盗、横領事件、再犯が多い窃盗事件、被害者がいない薬物犯罪、少年事件など、幅広い刑事事件に対応可能です。
刑事事件の専門チーム一丸で迅速対応しますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
逮捕・勾留されている本人と会う方法には、家族や知人による面会と、弁護士による接見があります。
家族等の一般の人による面会には様々な制限があり、本人のためにできることに限りがあります。しかし、弁護士は様々な制限を受けずに接見できます。
弁護士が接見に行くと、身柄拘束中の被疑者・被告人に取り調べに対するアドバイスをし、今後の見通しなどをお伝えします。
逮捕されてしまった場合には、早期の身柄解放に向けて、私選弁護人を選任することをお勧めします。
ネクスパート法律事務所では、これまでの刑事事件の実績・知見に基づき、早期接見・早期釈放を目指したサポートが可能です。
専門性の高い刑事弁護チームで迅速対応致しますので、お気軽にご相談ください。