接見を弁護士に依頼するメリット|サポート内容・弁護士費用を解説
身柄拘束中の被疑者・被告人は外部の方と連絡を取れません。また、逮捕・勾留されている方とご家族やご友人が面会するには制約があり、いつでも自由に会えるわけではありません。弁護士が身柄拘束中の被疑者・被告人に会うことを接見といいます。
この記事では、接見を弁護士に依頼するメリットや重要性などをお伝えします。
目次
弁護士の接見とは?
ご家族やご友人による面会(接見)と弁護士による接見は条件や状況等が大きく異なります。この違いにより、刑事事件の最終的な結果が変わる可能性があります。
接見の概要
接見とは、身柄を拘束されている被疑者・被告人と面会することです。身柄拘束中の被疑者・被告人は外部との交流を断たれ、不安感やストレスを感じることがあります。
弁護士の接見は被疑者・被告人の精神的な支えになり、接見時には今後の見通しや取り調べに対するアドバイスももらえます。ご家族からの差し入れ等を代わりに行うことも可能です。
弁護士の接見と一般の面会との違い
身柄拘束中の被疑者・被告人に一般の方が面会しようとすると、以下のように様々な制約があります。なお、留置施設によっては運用が異なる場合があります。
受付時間
一般の方は通常平日の9時~12時、13時~17時の間でしか面会できません。土日祝日は面会できません。
弁護士は土日祝日・早朝・深夜を問わず365日24時間、いつでも接見できます。
面会時間
一般の方が面会できる時間は15分~20分程度です。話し足りないことがあっても、時間になると強制的に終了させられます。
弁護士の接見には時間制限はありません。落ち着いてじっくり話ができます。
面会できる人数
一般の方が面会する場合には、多くの場合一度に3人までと決められています。3人以上で面会に行っても、残りの人は面会室に入室できません。
弁護士は3人を超えても接見できます。
回数
一般の方は1日1回しか面会できません。従って、誰か一人でも先に面会している場合には、他の方はその日にはもう面会できなくなります。
弁護士は他の方が面会した後でも、1日に何回でも接見できます。
立ち合い
一般の方が面会するときには留置施設の職員が立ち会い、会話の内容を記録します。これは罪証隠滅等を防ぐためです。
弁護士は、留置施設の職員の立ち合い無しで接見できるので、事件に関することや家族の状況なども自由に話せます。
接見禁止
逮捕から72時間以内に勾留するかどうかを捜査機関が判断します。この72時間は、弁護士以外の方の接見は困難です。
逮捕直後には接見禁止処分がなされていることが多くあります。その場合、一般の方が面会できるようになるのは、接見禁止が解除されてからです。
通常、共犯者がいる事件や否認事件の場合は接見禁止処分が付され、原則としてご家族でも本人に会えません。
接見禁止中でも弁護士であれば自由に制限なく接見できます。
弁護士が接見でやること
弁護士が接見に行って何をするのか、気になるところだと思います。接見で弁護士が何をするのかについて解説します。
取り調べに対するアドバイス
日本の刑事裁判では、取り調べ時に作成された本人の供述調書が重視されます。そのため、捜査機関は弁護士が就いていない間に捜査機関側にとって都合の良い調書を作成しようとします。
一旦被疑者にとって不利な供述調書にサインをしてしまうと、裁判で事実とは違うと反論しても、信じてもらえなくなります。
事実とは違う不利な供述をしてしまう前に、弁護士が身柄拘束中の被疑者・被告人と接見し、取り調べに対する対応の仕方についてアドバイスします。
今後の事件の見通しの説明
逮捕・勾留されて外部との連絡が取れない状況におかれると、いつまでその状態が続くのか、今後どのようになってしまうのか等不安になるでしょう。
弁護士が接見時に、今後の手続きの流れや見通しなどについて丁寧に説明します。
弁護士に接見を依頼するメリット4つ
ここでは弁護士に接見を依頼するメリットについて詳しく解説します。
接見時に警察官の立ち合いがない
一般の方の面会時には、証拠隠滅のおそれ等があるため警察官の立ち合いのもと、会話の内容が記録されます。そのため、事件のことについて話すのは困難です。
弁護士による接見の場合には、警察官の立ち合いがありません。そのため会話の内容が捜査機関に漏れることはありません。
刑事訴訟法第39条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
引用:e-Gov法令検索
捜査機関に発言内容が漏れる可能性が無いので、自由に弁護士と話せます。警察官の立ち会いも無いため、本人の精神的負担も軽減されるでしょう。
逮捕直後から接見できる
逮捕から72時間以内は、通常ご家族の方でも面会はできませんが、弁護士であれば接見可能です。
逮捕されて精神的に追い詰められている中で、誰にも会えずに捜査機関による取り調べを受けると、取り調べから早く解放されたい一心で無実にもかかわらず虚偽の自白をしまうことがあります。
捜査機関は被疑者本人がやったと言うまで、言い回しを変えながら何度も同じことを聞いてきます。何度も同じことを聞かれているうちに自分がやりましたと言ってしまい、虚偽の自白が記録された供述調書にサインさせられてしまいます。
逮捕直後に弁護士が接見し、取り調べに対するアドバイスをすることで、被疑者にとって不利な供述の回避が期待できます。
また、逮捕された方のご家族は、逮捕された本人の状況等を心配しています。
弁護士が接見することで、逮捕された本人の状況を、守秘義務の範囲内でご家族にお伝えできます。
もちろん、逮捕された本人が、「家族には絶対に伝えないで欲しい」と言うこともあります。その場合にはご家族にお伝えはできません。
経験豊富な弁護士が付いているということだけでも、ご家族の方にとっては心の支えになると思われます。
接見可能な日時や回数の制限が無い
ご家族やご友人の面会には日時や回数等の制限があります。弁護士であれば、実況見分等で外出中である場合等を除き、原則としていつでも本人と接見できます。
本人が弁護士と接見したいと捜査機関に伝えれば、捜査機関がその旨を弁護士に連絡してくれます。
接見禁止の場合も接見できる
接見禁止処分がついていて、ご家族やご友人が面会出来なくても、弁護士は接見できます。ご家族の状況を本人に伝えたり、逮捕された本人の状況をご家族に伝えたりできます。
接見の際に差し入れも可能です。ご家族の写真や手紙なども渡せます。ご家族からの差し入れは身柄拘束されている本人の精神的な支えとなります。
取り調べ中でも接見できる
捜査機関による取り調べの最中であっても、取り調べを中断して接見が行われる場合もあります。
逮捕されたら直ちに弁護士に接見を依頼すべき理由2つ
逮捕された場合には、出来るだけ早く弁護士に依頼することが大事です。その理由をお伝えします。
初回の接見は重要
刑事事件の弁護活動は、「逮捕後の72時間が勝負」といわれています。この「72時間以内」が重要な理由は以下2つです。
- この時間内に弁護士のアドバイス無しに取り調べを受けると、暴力的・誘導的な取り調べによって不利な供述調書が作成されてしまうおそれがある
- この時間内に被害者との示談が成立すれば、その後の勾留や起訴を回避できる可能性が高まる
逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
不当な処遇や違法な捜査を防げる
弁護士が接見に行くと、「弁護士がサポートについている」ことがアピールできます。それにより、不当な処遇や取り調べ段階の暴力的な取り調べ等のような違法捜査の抑止が期待できます。
どの弁護士に接見を依頼すべきか?|弁護士費用から検討
逮捕・勾留されている被疑者や被告人が弁護士を利用できる制度として、当番弁護士制度と国選弁護人制度があります。
当番弁護士は、逮捕期間中(逮捕から最大72時間以内)に1回だけ無料で弁護士に接見してもらえる制度です。その後も継続的に接見してもらいたい場合には、弁護士費用を支払い、私選弁護人となってもらうか、別に私選弁護人を探して依頼することになります。
国選弁護人は、逮捕期間終了後に勾留請求され、あるいは起訴された時に、国が選任する弁護人です。国選弁護人の接見費用はほとんどの場合無料となりますが、判決で費用の負担を命じられることもあります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
接見にかかる弁護士費用
国選弁護人、私選弁護人あるいは当番弁護士に接見を依頼する際にかかる弁護士費用についてお知らせします。
国選弁護人の接見費用
国選弁護人は被疑者・被告人の請求に基づき国が選任するため、基本無料となっています。ただし、国選弁護人を利用できるのは、資力が乏しいなどの理由で私選弁護人を依頼できない人に限られています。
私選弁護人の接見費用
私選弁護人に接見を依頼した場合にかかる費用は、事務所ごとに異なります。一般的には、1回3~5万円くらいに設定している事務所が多いです。
当番弁護士の接見費用
当番弁護士は、逮捕された後、勾留前までの期間に1度だけ接見に来てもらえる制度で、費用は無料です。
無料で接見に来てもらえるのは1度だけなので、接見に来てくれた時にどのようなことを質問するか等を事前に準備しましょう。
なお、接見してもらった当番弁護士に再度接見に来てもらいたいと思った場合には、私選弁護人として選任する必要があります。私選弁護人として選任すると、選任後から費用が発生します。
まとめ
逮捕・勾留されている本人と会う方法には、家族や知人による面会と、弁護士による接見があります。
家族等の一般の人による面会には様々な制限があり、本人のために出来ることに限りがあります。しかし、弁護士は様々な制限を受けずに接見できます。
弁護士が接見に行くと、身柄拘束中の被疑者・被告人に取り調べに対するアドバイスをし、今後の見通しなどをお伝えします。
逮捕されてしまった場合には、早期の身柄解放に向けて、私選弁護人を選任することをお勧めします。