リベンジポルノとは|リベンジポルノ防止法の構成要件・対処法

リベンジポルノとは、元交際相手や元配偶者などに振られた腹いせや嫌がらせを目的に、交際時に撮影したプライベートな画像や動画をインターネットなどを通じて、不特定多数に公開する行為のことです。

警察庁の統計によると、2023年のリベンジポルノに関する相談件数は1,812件で、リベンジポルノ防止法施行以降で最多となりました。

相談内容では、画像を所持されている・撮影された(35.9%)、画像を公表すると脅された(31.5%)というケースが多く、被害者の年齢層は20代が約40%、10代が約30%を占めています。

加害者と被害者の関係では、交際相手(元交際相手を含む)が48.6%と最多で、次いでネットで知り合った知人・友人が21.1%となっています。

こうしたプライベートな画像をな画像を不特定多数に公開すると、リベンジポルノ防止法に違反して逮捕される可能性があります。

この記事では、リベンジポルノについて以下の点を解説します。

  • リベンジポルノとリベンジポルノ防止法の構成要件
  • リベンジポルノ以外で成立する罪や拡散するリスク
  • リベンジポルノの被害者・加害者がすべきこと

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目次

リベンジポルノとは

リベンジポルノとは、元交際相手などと破局したことに対する復讐として、相手の裸の写真や動画などをインターネットに流出させ、不特定多数に公開する行為のことです。

SNSで出会った知らない相手の性的な画像を公表する行為も該当します。リベンジポルノの被害者は、女性だけでなく男性も含まれます。

リベンジポルノ防止法は、2014年に施行された法律で、正式には私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律といいます。

この法律が制定された背景には、2013年に発生したストーカー殺人事件があります。

事件では、加害者が被害者からの連絡を拒否されたことに逆上し、被害者の私的な画像をインターネットにアップロードするという行為が問題視され、法整備が進められることになりました。

リベンジポルノ防止法の構成要件

リベンジポルノ防止法は、私的な性的画像や動画を無断でインターネットなどに公開することを禁じた法律です。

正式名称は私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律であり、被害の拡大を防ぐために制定されました。

以下では、この法律の概要および犯罪として成立するための構成要件について詳しく解説します。

リベンジポルノ防止法の禁止行為と罰則

リベンジポルノ防止法では、被害者の私事性的画像記録(しじせいてきがぞうきろく)を不特定の人、多数の人に提供する行為(公表罪)や公表目的で提供する行為(公表目的提供罪)を禁止しています。

(私事性的画像記録提供等)

第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。

3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

引用:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律 – e-Gov

罰則は以下のとおりです。

公表罪 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
公表目的提供罪 1年以下の懲役または30万円以下の罰金

規制対象となる私事性的画像記録とは

リベンジポルノ防止法で規制されている私事性的画像記録とは、以下のものが該当します。

  • 性交または性交類似行為をしている人の姿態
  • 他人が人の性器など(性器、肛門または乳首)を触る行為や姿で性欲を興奮させるまたは刺激するもの
  • 衣服の全部または一部を着けない人の姿態で殊更に人の性的な部位(性器などまたはその周辺部位、臀部または胸部)が露出されまたは強調されているもので、性欲を興奮させるまたは刺激するもの

交際中に撮影された画像や動画だけでなく、それが保存されたUSBメモリやCD-ROM、さらにはネット上にアップされたデータや印刷物も、私事性的画像記録に該当します。

インターネット上へのアップロードは、リベンジポルノとしてよく見られる代表的な手口ですが、それに限りません。

たとえば、過去には元交際相手の裸の写真を駐車場にばらまいたケースで、実際にリベンジポルノ防止法違反による逮捕が行われた事例もあります。

つまり、ネットへの投稿だけでなく、紙に印刷された写真などを配布した場合も、法的に処罰の対象となるのです。

なお、撮影当初から第三者に見られることを前提とした画像や動画、たとえば商業用のAVやグラビア写真などは、私事性的画像記録には含まれません。

不特定または多数に提供することの定義

リベンジポルノ防止法違反のもう一つの構成要件は、不特定または多数に提供することです。

不特定または多数とは、知らない人、もしくは多数の人に閲覧できる状態にすること、提供することを指します

典型的な例として、SNSなどに第三者が閲覧可能な形で画像や動画をアップロードする行為が挙げられます。

一方で、第三者が撮影対象者(被害者)を特定できなければ問題ないのではないかとの疑問もあるかもしれません。

確かに、被害者の顔や名前が明確に写っている場合は当然違法ですが、顔が写っていなくても、ニックネームや勤務先、学校名などを併せて投稿した場合には、閲覧者が被害者を特定できる可能性があるため、同様にリベンジポルノ防止法違反に該当します。

実際、同法の公表罪は、第三者が被害者を特定できる手段が含まれていれば成立するものとされています。

顔が判別できなくても、画像の背景や写っている持ち物、投稿文の内容などから個人が特定できる場合には違法と判断されることがあります。

たとえ一般の第三者が特定できなくても、家族や友人などの近しい人物が識別できれば足りるとされています。

2024年からは警察が押収した画像は削除可能に

これまでは、盗撮画像や児童ポルノなどで撮影された画像は、加害者が刑事裁判で有罪になった際しか、没収できませんでした。

そのため、たとえ被害者が削除を強く希望していても、加害者が起訴されなかった場合や、所有権の放棄に同意しなかった場合には、画像データが加害者に返還されるという運用がなされていたのです。

しかし、2024年6月の法改正により、押収物に記録された性的な姿態等の画像については、刑事裁判を経ずとも、行政手続きとして削除・廃棄できる制度が導入されました。

この新制度により、盗撮や児童ポルノ、リベンジポルノといった被害画像を保存しているSDカードや記録メディアについて、検察官が起訴・不起訴にかかわらず判断し、消去または廃棄を行うことが可能となりました。

リベンジポルノで成立する可能性がある犯罪

元交際相手などの私事性的画像記録の撮影や公表では、リベンジポルノ防止法以外でも犯罪が成立する可能性があります。

以下では、リベンジポルノ防止法以外で成立する可能性がある犯罪を解説します。

撮影罪

相手の私事性的画像記録を公表する以前に、本人の同意なく性的な画像や動画を盗撮した場合は、2023年7月13日に施行された撮影罪が成立する可能性があります(略称:性的姿態撮影等処罰法)。

撮影罪は、以下のケースで成立します。

  • 胸や性的な部位、下着、わいせつな行為や性交などをひそかに撮影する行為
  • 相手が拒否できない状態(アルコール・薬物・睡眠の状態、その他心理的な影響など)に乗じて性的姿態を撮影した場合
  • 自分しか見ないと誤信させて性的姿態を撮影した場合 など

撮影罪の罰則は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。

参考:性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律 – e-Gov

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わいせつ物頒布罪

わいせつ物頒布罪とは、わいせつな文書・写真・動画・記録などを、不特定または多数の人に向けて、インターネット上などで公然と陳列・交付・有償で頒布する目的で所持した場合に成立する犯罪です。

わいせつ物頒布罪の罰則は、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、もしくは科料で、懲役と罰金が併科されることがあります。

(わいせつ物頒布等)

第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

引用:刑法第175条 – e-Gov

なお、リベンジポルノ防止法との違いは、復讐などの目的以外で私事性的画像記録を陳列した場合でも成立する点です。

ただし、わいせつ物頒布罪におけるわいせつ物の定義は、いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通の人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものと定義されていました(最高裁判所判決昭和32年3月13日)。

ただし、この定義は時代や社会情勢によって解釈が変わることがあります。

一般的には、性器が明確に写っていればわいせつ物とされますが、モザイク処理が施されている場合には、わいせつ物に該当しないと判断される可能性もあります。

児童ポルノ禁止法違反

被害者が18歳未満であった場合は、児童ポルノ禁止法違反が成立する可能性があります(正式名称:児童買春・児童ポルノ禁止法)。

児童ポルノ禁止法では、児童ポルノの所持・提供・陳列・製造・運搬・輸出入を規制しており、該当した場合は処罰対象となります。

被害者が18歳未満の場合、私事性的画像記録を所持すると所持罪・保管罪、他者に提供・陳列すると提供罪や陳列罪が成立すると考えられます。

児童ポルノ禁止法違反 内容 罰則
所持罪・保管罪 自己の性的好奇心を満たすために所持していること 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
提供 第三者に対して児童ポルノを提供すること 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
陳列 不特定または多数が認識できる状態に置くこと 5年以下の懲役または500万円以下の罰金

名誉毀損罪

リベンジポルノを公表する行為は、名誉毀損罪が成立する可能性があります。名誉毀損罪とは、公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。

(名誉毀き損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第230条 – e-Gov

名誉毀損罪は、不特定または多数が認識できる状態であること、被害者の社会的評価を低下させるような事実を示すこと、被害者の名誉を毀損することで成立します。

名誉を毀損罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

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脅迫罪・強要罪

私事性的画像記録を使用して、相手を脅迫した場合や、義務のないことを行わせた場合、脅迫罪や強要罪が成立します。

罪名 概要 罰則
脅迫罪(刑法第222条 自分や親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知して脅迫した場合に成立 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
強要罪(刑法第223条 自分や親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知して、脅迫や暴行を用いて義務のないこを行わせたような場合に成立 3年以下の懲役

この場合、性的な画像をばらまくぞといった発言を行えば脅迫罪、性的な画像をばらまかれなくなければもう一度交際しろと脅せば強要罪が成立する可能性があります。

さらに、こうした画像を拡散されたくなければ金銭を払えと脅す行為は恐喝罪に該当します。

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ストーカー規制法違反

ストーカー規制法とは、恋愛感情や好意が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足させる目的で、特定の人やその家族などにつきまといなどの行為を規制する法律です。

リベンジポルノ防止法とは直接の関係はありませんが、元交際相手に対して、恋愛感情や復讐心に基づきストーカー行為を行った場合、ストーカー規制法違反が成立する可能性があります。

例えば、以下の行為がストーカー規制法で禁止されている行為です。

  • つきまとや待ち伏せ、押しかけ、うろつき
  • 監視していることを告げる
  • 面会や交際の要求
  • 家の前で怒鳴るなどの乱暴な言動
  • 無言電話、連続した電話やメール・SNS
  • 汚物などの送付
  • 中傷メールを送る・SNSに投稿するなどして名誉を傷つける
  • 性的な写真を送る・電話などで性的な内容を告げる
  • GPS機器の取り付け・GPSによる位置情報の取得

ストーカー規制法に該当するストーカー行為をした場合の罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

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リベンジポルノを拡散するリスク

元交際相手や元配偶者など、恋愛感情のもつれによる復讐心から、感情的に私事性的画像記録を公表すると、以下のようなリスクがあります。

  1. 逮捕される可能性がある
  2. 学校や会社・家族に発覚する可能性がある
  3. 刑事裁判で有罪となる可能性がある
  4. 被害者から損害賠償請求を受ける

以下では、リベンジポルノ防止法に違反する私事性的画像記録を拡散するリスクについて解説します。

逮捕される可能性がある

被害者の私事性的画像記録を公表するなどすると、被害者が警察に被害を訴えて、逮捕される可能性があります。

リベンジポルノ防止法違反の全国の逮捕率は公表されていません。

しかし、警察庁の統計では、2023年にリベンジポルノ防止法で検挙された件数は62件でした。

他にも、私事性的画像記録に関連する事案で、253件が検挙されています。内訳は以下のとおりです。

犯罪種別 2021年 2022年 2023年 2023年(割合%)
刑法犯・他の特別法犯 242 213 253
脅迫 40 37 57 22.5%
児童買春・児童ポルノ禁止法違反 47 49 55 21.7%
強要 33 34 28 11.1%
ストーカー規制法違反 18 21 24 9.5%
名誉毀損 10 5 11 4.3%
わいせつ物頒布

その他

8 5 7 2.8%
その他 86 62 71 28.1%

※その他は、暴行・傷害・恐喝・不同意性交等

参考:令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について – 警察庁

このように、リベンジポルノを行った場合は、リベンジポルノ防止法違反以外でも検挙される可能性があります。

さらに、逮捕は逃亡や証拠隠滅のおそれがある際に行われます。

被害者の私事性的画像記録を公表した場合に、画像を削除するなど証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、逮捕されることも考えられます。

逮捕された場合は、48時間以内に警察から検察に身柄が送致され、24時間以内に勾留の要否が判断されます。

勾留が決定した場合は、警察の留置場に身柄を拘束されることになります。

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学校や会社・家族に発覚する可能性がある

リベンジポルノ防止法や関連する犯罪で逮捕された場合、勾留される可能性があります。

勾留期間は原則10日間で、延長が認められるとさらに10日間、最大20日間にわたって身柄を拘束されます。

この間は登校や出勤ができず、外部との連絡も制限されるため、日常生活に大きな支障をきたします。

仕事をしている場合、10〜20日間も無断で欠勤すれば、逮捕された事実を隠し通すのは困難です。

さらに、家族と同居しているケースでは、警察が自宅に訪問してその場で逮捕されることもあり、家族に逮捕の事実や事件の内容が知られてしまう可能性があります。

加えて、リベンジポルノ以外にも脅迫罪や名誉毀損罪などで罪に問われている場合、再逮捕や勾留が続き、拘束期間が長引くことも考えられます。

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刑事裁判で有罪となる可能性がある

リベンジポルノは親告罪であるため、被害者が刑事告訴を行えば、検察が刑事裁判で訴える(起訴)する可能性があります。

特に、同種の前科がある場合や、リベンジポルノ以外にも犯罪行為に関与しており、被害者と示談が成立しておらず、反省していない場合は、検察が起訴することもあります。

日本の刑事裁判の有罪率は99.9%とされているため、起訴された場合は、高確率で有罪判決が下されるおそれがあります。

さらに、リベンジポルノ以外にも脅迫罪や名誉毀損罪などで起訴された場合は、最も重い刑罰の罪の1.5倍を上限として量刑が決定します(併合罪)。

脅迫罪や名誉毀損罪の場合、最大で懲役4年6か月を上限として、処分が下される可能性があります。

被害者から損害賠償請求を受ける

被害者の私事性的画像記録を公表すると、刑事処罰とは別に、被害者から民事訴訟で損害賠償を請求される可能性もあります。

民法第709条(不法行為)に基づき、他人に損害を与えた場合には、その損害を賠償する義務が生じます。

リベンジポルノでは、被害者の名誉がプライバシーが侵害されたことを理由に、精神的な苦痛に対する慰謝料の支払いが命じられる可能性があります。

リベンジポルノの慰謝料の相場は、おおよそ50万円~100万円とされています。

実際にリベンジポルノ防止法違反で逮捕・有罪となった事例

以下では、実際にリベンジポルノ防止法違反で、逮捕・有罪となった事例を紹介します。

SNSのプロフィールに画像を公開した男性を逮捕

SNSのプロフィールに、知人女性の顔や胸が撮影された画像を設定し、不特定多数が閲覧できる状態にした男性がリベンジポルノ防止法違反の疑いで逮捕されました。

この事件は、被害女性が、SNSで知り合った人から画像を拡散されていると警察へ相談していました。

参考:SNSプロフィル画面に知人女性の顔と胸の写真、リベンジポルノ容疑で男を逮捕 – 読売新聞オンライン

被害者の性的な画像を送りつけた男性に有罪判決

SNSで女性を脅し、性的な画像を流出させたとして、リベンジポルノ防止法違反や脅迫罪に問われた男性に対し、懲役3年、執行猶予4年が言い渡されました。

男性は、SNSで女性に対し、性的な画像を多数回送信したうえで面会を要求。要求に応じなければ、画像を友人や職場に送ると脅し、実際に7回にわたり画像を送信しました。

さらに、発覚を逃れるために複数の携帯電話やSNSアカウントを使い分けてメッセージを送信しており、計画的な手口が明らかになっています。

裁判官は女性の気を引くためという動機や経緯には酌量の余地がないと指摘。

一方で、被告が犯行を認めて反省していることなどを考慮し、執行猶予付きの判決となりました。

参考:誤認逮捕問題、なりすまし美容師に有罪判決 女性に性的画像送り脅迫 – 産経新聞

行為を撮影・販売した男性に有罪判決

女性らとの性行為を隠し撮りして、動画サイトに投稿を繰り返した男性に、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列とリベンジポルノ防止法違反の罪で、懲役3年、執行猶予5年、罰金100万円の判決が言い渡されました。

この事件は、出会い系アプリを通じて知り合った10~30代の女性8人との性行為を盗撮し、女性の顔がわかる状態で、動画投稿サイトにアップロードしたものです。

男性は、ホテルの部屋の壁に小さな絵画をかけておき、絵画に開けた小さな穴からスマートフォンで隠し撮りを行っていました。

参考:絵画の穴からスマホで…性行為の隠し撮り、被害気づいて – 朝日新聞

【被害者】リベンジポルノの被害に遭った場合の対処方法

リベンジポルノは、被害者の感情や名誉を傷つける犯罪行為です。

被害に遭った人の中には、周囲に知られているのではないかという恐怖や苦痛から、日常生活が困難になるケースもあります。

もしリベンジポルノの被害に遭った場合は、画像や動画の拡散を食い止めるために、早急な対処が必要です。以下では、被害者向けにリベンジポルノの被害に遭った場合の対処方法を解説します。

被害の証拠を集める

リベンジポルノの被害に遭った場合、まず画像や動画を削除したいと考えるのが通常です。しかし、画像や動画を削除してしまうと、被害に遭った証拠を示すことができません。

一方で、被害の状況を記録して証拠を集めておくことで、刑事告訴や損害賠償請求を行う際に、どのような被害に遭ったのかを示すことができます。

さらに、法的手続きで削除を求める際も、裁判所に削除の判断を下してもらうためにも、証拠は必要です。

そのため、被害が発覚した場合は、以下の証拠を記録しておくのが望ましいです。

  • 投稿された画像のURLや日時が表示された状態でスクリーンショットを撮る
  • 動画の場合は、動画の録画を撮る
  • 画像や動画の投稿日時を記録しておく

SNSに対して削除依頼を行う

十分な証拠を集めたら、SNS、掲示板、動画サイトなどに削除依頼を行います。

削除依頼は、サイト運営者や管理者に直接削除を依頼する方法の他、裁判手続きで削除を求める方法があります。

投稿された画像が動画がリベンジポルノであれば、基本的には応じてくれるサイトが多いと考えられます。削除に応じないサイトがあった場合は、裁判手続きを経て削除を行う必要があります。

なお、こうした投稿記録は3か月〜半年ほどで自動的に消去されるケースが多いため、加害者を特定したい場合は、できるだけ早く対応することが重要です。

警察に被害を相談する

リベンジポルノの被害に遭った場合は、警察に被害を相談することで、刑事事件として捜査や逮捕を行ってくれる可能性があります。

警察に被害を申告する場合も、被害に遭った証拠が必要です。

さらに、加害者を処罰してほしい場合は、刑事告訴の手続きを行うとよいでしょう。リベンジポルノは被害者の刑事告訴がなければ、検察が起訴できない親告罪です。

傷害事件のように、被害者が刑事告訴しなくても、捜査や起訴が行われる非親告罪と違い、加害者の処罰を求める場合は、刑事告訴が必要となります。

これは、公開の裁判で審理が行われた場合に、被害者のプライバシーを守るための措置ですが、処罰を希望する場合は、刑事告訴を行うとよいでしょう。

捜査機関に被害を相談しても、刑事事件として加害者に処罰を求めることは可能です。

ただし、ネットに公表された画像や動画の削除を求めることはできない点には注意が必要です。

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画像の削除はセーフラインに相談する

リベンジポルノの画像を削除したい場合は、一般社団法人セーファーインターネット協会が運営するセーフラインに相談するのが望ましいです。

セーフラインでは、画像や動画の削除を無料で行ってくれるほか、相談窓口の紹介も行っております

一人で悩む必要はありません。動画の削除については、セーフラインに相談するとよいでしょう。

弁護士に相談して損害賠償請求を検討する

リベンジポルノを行った相手に対して、精神的な苦痛に対する慰謝料を請求する場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

慰謝料請求は、民法で定められた不法行為に対する損害賠償請求が根拠となるため、刑事手続きとは別のものとなります。

ただし、リベンジポルノの慰謝料の相場は、おおよそ50万円~100万円とされているため、弁護士費用なども考慮して、請求するかどうか判断することが重要です。

さらに、加害者側の弁護士から示談を持ちかけられることもあります。

相手の弁護士が示談交渉を持ちかけてきた場合は、自分の気持ちを素直に伝え、示談金について交渉する方法もあります。

この方法であれば、相手の弁護士が交渉を行うため、金銭的な負担はありません。

【加害者側】リベンジポルノを公表した場合にした方がよいこと

加害者がリベンジポルノを公表した場合、被害者の訴えを受けた警察の捜査によって、逮捕や勾留、有罪や前科となるリスクが生じます。

以下では、加害者に向けてリベンジポルノを公表してしまった場合に、適切な対応について解説します。

弁護士に相談する

リベンジポルノを公表した場合は、早急に弁護士に相談するのが望ましいです。

被害者が被害に気付き警察に相談するほか、刑事告訴を行った場合は、捜査が行われ、逮捕される可能性があります。

また、リベンジポルノ以外で、脅迫罪や名誉毀損罪などが成立した場合は、それぞれの罪で再逮捕や勾留も考えられ、拘束期間も長期に及ぶ危険性があります。

弁護士に相談することで、今後の見通しや逮捕のリスク、今すべきことなどの助言が得られます。

こうした不利益を回避するには、早急に弁護士に相談して、後述するような適切な対応を行うことが重要です。

被害者に謝罪し示談交渉を行う

リベンジポルノによる逮捕や起訴を回避するには、被害者に謝罪して示談交渉を行うことが非常に重要です。

被害者との示談の成立は、当事者間での事件の解決を意味し、逮捕や起訴が回避できる可能性があります。

特に、リベンジポルノは親告罪であるため、示談により被害者に刑事告訴を取り下げてもらうことで、捜査が行われず、起訴されずに済むことが期待できます。

ただし、検察が起訴を行うまでに刑事告訴を取り下げてもらう必要があります。

なお、加害者が被害者と直接示談交渉をするのは以下のようなリスクがあるため、おすすめできません。

  • 被害者が恐怖や怒りで示談交渉を拒絶する可能性がある
  • 適切な示談金の金額がわからないため、相場よりも高額な金額で示談する可能性がある
  • 示談の過程で別のトラブルに発展するリスクがある

弁護士に依頼することで、被害者も警戒を解いて示談交渉に応じてもらえる可能性があるほか、画像や動画の削除の提案を行うことで、刑事告訴の取り下げに合意してもらえることが期待できます。

また、限られた時間の中で示談を成立させる必要があるため、逮捕される前に弁護士に依頼するのが望ましいです。

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リベンジポルノに関するよくある質問

リベンジポルノ防止法に未遂罪はある?

リベンジポルノ防止法には、未遂罪の定めはありません。

しかし、ネット上などに画像や動画を投稿せずとも、撮影行為や所持していること自体が違法行為に該当する可能性はあります。

例えば、被害者の同意なく性的な写真を盗撮した場合は撮影罪、被害者が18歳未満の場合は、児童ポルノの単純所持罪に該当し、処罰されることが考えられます。

示談は弁護士なしでもできる?

法律上、示談は当事者同士でも可能ですが、リベンジポルノのように感情的な対立が強い事案では、弁護士を通じて行うのが望ましいです。

特に被害者は、リベンジポルノにより名誉を傷つけられ、日常生活にも支障をきたしていることが考えられます。

加害者側が示談交渉を持ちかけても、恐怖や怒りから示談交渉を拒否する可能性があります。

さらに、これまでの経緯によっては、被害者への接触がストーカー行為と判断される危険性もあるため、謝罪や示談交渉は慎重に進める必要があります。

弁護士に依頼すれば、適切な条件での示談交渉や、加害者、被害者双方にメリットがある示談条件の提示が可能です。

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まとめ

リベンジポルノ防止法に違反した場合、被害者の被害により警察が捜査を行い、逮捕される可能性があります。

さらに、撮影罪や児童ポルノ禁止法違反、名誉毀損罪や脅迫罪などが成立すれば、他の罪で再逮捕や勾留、そして重い処分が下される可能性があります。

リベンジポルノを拡散してしまった場合は、早急に弁護士に相談して適切な対処をするのが望ましいです。

一方、被害者は証拠を集めた上で、セーフラインに連絡して画像を削除してもらってください。

被害内容自体を警察や弁護士に伝えるには抵抗がありますが、一人で悩まず専門家の力を借りて解決することが重要です。

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