釈放とは?仮釈放・処分保留・保釈との違い|釈放その後はどうなる?

釈放とは、一般的に身柄拘束から解放されることを指します。

日常生活で釈放という言葉を使うシーンは限られていますが、よく似た言葉も多くあります。

そのため、次のような言葉と混同している人もいるかもしれません。

  • 保釈
  • 仮釈放
  • 処分保留で釈放 など

この記事では次の点をわかりやすく解説します。

  • 釈放の言葉の意味とよく似た保釈や仮釈放、処分保留との違い
  • 刑事事件で釈放されるタイミングや釈放の理由
  • 早期の釈放を目指すためにできること

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釈放とは身体拘束から解放されること

釈放(しゃくほう)とは、身柄拘束から解放されることを言います。

留置場や刑務所から出られることなどを指すのが一般的です。

刑事手続き上では、刑事裁判になる前(起訴前)の身柄解放という文脈で使われることが多いです。

処分保留で釈放とは

処分保留とは、刑事裁判を行うかどうかの処分を保留にして、身柄を釈放することです。

逮捕された人(被疑者)は、検察によって起訴され(刑事裁判で訴えられること)、有罪か無罪か、どういう罰になるのか判断されます。

しかし、逮捕後の身柄拘束には制限時間が設けられています。

その期間内で犯罪が立証できる証拠などが見つからない場合、検察は起訴できません。

十分な証拠が集まらなかったけど、犯罪がなかったとも言い切れない。身柄拘束の期限が来たので釈放するというのが処分保留です。

似ている言葉に、不起訴というものがあります。

不起訴は刑事裁判にせず、事件を終了させることです。身柄も釈放されます。

処分保留と異なるのは、検察が起訴しないと判断して事件が終了となる点です。

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釈放とほかの言葉の違い

刑事手続きでは「保釈」「出所」「仮釈放」など釈放とよく似た言葉があります。

ここでは、釈放と他の言葉の違いをわかりやすく解説します。

釈放と保釈の違い

釈放は、留置場や刑務所から出て、身柄拘束から解放されること全般を指します。

保釈(ほしゃく)は、起訴後に裁判所の許可のもと、保釈金を納付して、一時的に身柄拘束から解放される制度のことです(刑事訴訟法第89条)。

身柄拘束から解放されるという点は共通していますが、次のような違いがあります。

釈放 保釈
行われるタイミング 起訴される前 起訴された後
身柄拘束から解放する人 警察や検察の判断 裁判所の許可
必要な費用 不要 保釈金

保釈制度が申請できるのは、起訴後も身柄拘束が続いた場合です。

保釈と釈放では、起訴前後の手続きの違いや、身柄を解放する人や費用の有無といった点が異なります。

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釈放と出所の違い

出所とは刑を終えて、刑務所から出ることです。

出所は、刑務所からの解放と限定的なのに対して、釈放は刑事手続き上の身柄解放全般を指す広い言葉です。

釈放は、起訴前の身柄解放という意味合いで使われることが多いです。

刑事裁判で判決確定後に、服役して罪を償い解放される出所とは意味が違うことがわかります。

釈放と仮釈放の違い

仮釈放とは、更生の様子が見られる受刑者を、刑期満了前に一度釈放して、一般社会で更正を図る制度のことです(刑法第28条)。

釈放は広義の身柄解放を指す言葉で、仮釈放は制度の名前です。

次のような違いがあります。

釈放 仮釈放
行われるタイミング 起訴される前 刑事裁判で判決確定後に刑務所に収容され、一定期間服役した後
身柄拘束から解放する人 警察や検察の判断 行政官庁の判断
条件 特に決められておらず警察や検察の判断次第 更生の様子が見られること

懲役はその刑期の3分の1を、無期懲役は服役から10年経過したこと など

釈放されるタイミングや理由

逮捕されてしまったとしても、理由によっては釈放されることがあります。

ここでは、釈放されるタイミングと理由を解説します。

逮捕~送致前|微罪処分による釈放

逮捕後に最も早く釈放されるのが、微罪処分となった場合です。

刑事事件では、逮捕後に検察が起訴か不起訴か判断するため、身柄や事件の書類は警察から検察に引き継がれることになります(送致)。

しかし、軽微な犯罪などで送致が不要であれば、微罪処分として警察の判断で身柄が釈放されます(刑事訴訟法第246条)。

(微罪処分ができる場合)
第198条 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
引用:犯罪捜査規範第198条

例えば次のようなケースだと微罪処分として釈放される可能性があります。

  • 窃盗、置き引き、暴行、傷害、横領、詐欺、賭博などで衝動的な犯行で、被害が軽微であること
  • 被害者に謝罪や弁償が済んでいること
  • 被害者が処罰を望んでいないこと
  • 前科や前歴がないこと
  • 加害者を監督する身元引受人がいること

法務省によると2022年に微罪処分で処理された人員は4万7,587人で、検挙人員の28.1%でした。

微罪処分で釈放されれば、生活には影響しませんし、前科もつきません

ただし、逮捕された場合は、捜査対象となった前歴は残り、身元引受人が家族なら、家族に知られることになります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第2章 検察 第1節 概説 – 法務省

送致~勾留前|勾留請求なし・却下による釈放

検察は、警察から事件を引継ぎ、24時間以内に被疑者の①起訴、②不起訴、③勾留のいずれかを判断します。

勾留とは、逃亡や証拠隠滅防止のために、警察の留置場に身柄を拘束することです。

勾留されてしまうと、10~20日間も身柄拘束を受け、社会復帰が困難になるおそれがあります。

勾留が求められるケースは次のとおりです。

  • 被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるとき
  • 被疑者が住所不定のとき
  • 被疑者が証拠隠滅や逃亡するおそれがあるとき

参考:刑事訴訟法第60条

逃亡や証拠隠滅のおそれがない、家族が身元引受人となって監督するなど、勾留が不要であると裁判所が判断すれば、すぐに釈放されることになります。

法務省によると、2022年の勾留状況は次のとおりです。

勾留が請求された割合 93.9%
勾留が認められた割合 96.2%

つまり、逮捕されたまま送致されると、高確率で勾留されるおそれがあります

早期に弁護士に相談して、勾留が回避できるようにサポートを受けることが重要です。

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勾留後|処分保留・不起訴処分による釈放

勾留は、国による強制的な身柄拘束で、被疑者にとっては大きな不利益となります。

そのため、勾留は最長でも20日間という期限が設けられているのです。

検察はこの勾留の満期までに、起訴か不起訴かを判断しなければなりません。

勾留から釈放されるケースは次のとおりです。

不起訴になった さまざまな事情を考慮して、検察が起訴しないと判断して不起訴になる

不起訴になれば事件は終了する

処分保留になった 勾留満期までに起訴できる証拠が不足しているため、処分保留で釈放される
略式起訴になった 裁判をせず、書面での審理で罰金を科して事件が終了する手続き

同意して罰金刑が科されると釈放されるが前科もつく

処分保留の場合は、新たな証拠が見つかったり、余罪があったりした場合に、捜査が行われて、起訴される可能性があります。

法務省によると、2022年の起訴率は36.2%でした。

起訴後の有罪率は99%とほぼ有罪となるため、起訴される前に弁護士の相談することが大切です。

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起訴後|保釈請求による釈放

逃亡や裁判に出廷しないおそれがあると判断されると、起訴後も勾留される可能性があります。

起訴後の勾留は、基本的に2か月ですが、裁判官が必要だと判断すれば、さらに1か月更新されることになります。

また、死刑や無期懲役など、重い法定刑が科される犯罪に関しては、更新に制限がありません。

刑事裁判が終わるまで勾留されるおそれもあるのです。

このような起訴後の勾留から釈放してもらう制度が、保釈制度です。

保釈制度は、裁判所に保釈金を預け、被告人(起訴された人)を釈放して社会復帰できるようにする制度です。

保釈されるには、刑事裁判に出廷するなどのルールを守り、担保として保釈金を預ける必要があります。

法務省によると2022年の起訴後の勾留率と、保釈率は次のとおりです。

裁判所 勾留率 保釈率
地方裁判所 72.6% 32.2%
簡易裁判所 60.7% 17.9%

保釈率は1~3割程度です。

証拠隠滅のおそれがあるなどと判断されると、保釈は却下されてしまう可能性があります。

保釈申請は何度でもできますので、諦めずに弁護士に相談しましょう。

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刑事裁判|実刑以外の判決による釈放

刑事裁判になっても次のケースなら釈放されることになります。

  • 懲役を言い渡されたが執行猶予(全部執行猶予)がついた
  • 言い渡されたのが罰金刑だった

執行猶予がつくと、執行猶予の期間中に罪を犯さなければ、刑も執行されずに済みます。

ただし、執行猶予がつくには次の条件を満たす必要があります。

  • 前に禁固以上の刑に処されたことがない
  • 禁固以上の刑に処されたが、執行猶予や服役期間から5年以上経過している
  • 言い渡された量刑が3年以下の懲役や禁固、または50万円以下の罰金であるとき
  • 前に禁固以上の刑を言い渡され、その全部を猶予された者が1年以下の懲役、禁固を言い渡されたとき

参考:刑法第25条 – e-Gov

そのため言い渡された量刑が3年を超えるような場合は、執行猶予はつかずに、刑務所に収容されることになります。

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釈放されたその後はどうなる?

ここでは、保釈されたその後について紹介します。

起訴前の釈放なら捜査が続く

起訴される前に釈放されるケースには次のものがあります。

  • 勾留が不要だった
  • 処分保留になった
  • 不起訴になった

身柄が釈放されたとしても、不起訴処分として起訴されないことが確定していない限りは、捜査が継続することが考えられます。

検察庁から呼び出しがあることも

勾留が不要だとして身柄が釈放されても、在宅事件として捜査は継続されます。

在宅事件の場合は、通常通り会社や学校に行くことができます。

しかし、定期的に検察庁に呼び出されて、取り調べを受けることになります。

身柄拘束が不要であるというだけで、起訴される可能性は残されています。

在宅事件で捜査を受けている場合も、弁護士に相談して適切なサポートを受けることが大切です。

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余罪があれば再逮捕されることもある

逮捕や勾留は、国による強制的な身柄拘束であり、被疑者に大きな不利益となるのは先述したとおりです。

そのため、1つの犯罪に対して逮捕や勾留ができるのは1度までと決められています(再逮捕再勾留禁止の原則)。

処分保留や不起訴などで釈放された場合、その犯罪に関して逮捕されることはありません。

しかし、余罪があった場合は、別の犯罪事実に対して再逮捕されるおそれがあります。

処分保留で釈放されたとしても、起訴される可能性は残されていますし、余罪と一緒に起訴されるとその分重い処分が下される可能性があります。

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早期の釈放を目指すためには

早期の釈放を目指すためには、まずは弁護士に相談することが大切です。

先述したとおり、逮捕されてしまうと90%以上と高確率で勾留が認められてしまうおそれがあります。

10~20日間も勾留されてしまえば、仮に不起訴になったとしても生活に影響が及ぶことになるでしょう。

ここでは、早期の釈放を目指すためにすべきことを解説します。

逮捕直後であれば勾留を阻止する

もし逮捕されてしまった場合は、弁護士に相談をして勾留を阻止することが大切です。

弁護士は次のように主張して、勾留が不要であると検察や裁判官に訴えます。

  • 家宅捜索などで物証が押さえられているため証拠隠滅のおそれがない
  • 被害者と示談が成立しており、被害者が処分を望んでいない
  • 身元引受人がいて監督をしてくれるので、逃亡のおそれはない
  • 定職についているため、勾留により失職のおそれがあり更生に影響する など

こうした事情を書面にまとめたり、裁判所に勾留請求却下の意見書を提出したりしてくれます。

しかし、逮捕された人が弁護士に連絡する方法を知らなければ、勾留後まで国選弁護人が選任されません。

そのため、逮捕されてしまった場合は、ご家族がいち早く刑事事件の実績がある弁護士に相談することが重要です。

勾留への異議の申立てを行う

仮に勾留されてしまっても、勾留に対して準抗告や取消請求を行ってもらうことができます。

勾留に対する準抗告(刑事訴訟法第429条1項 勾留の決定自体が違法であると裁判所に不服申し立てをすること
勾留の取消請求(刑事訴訟法第87条1項 勾留決定後に、勾留の要件がなくなったとして、勾留を取り消してもらうよう裁判所に訴えること

勾留に対する不服申し立てとしては、準抗告を行うケースが多いです。

準抗告をすると、勾留を判断した裁判官とは別の裁判官が、勾留は妥当だったのかどうか審理をします。

準抗告が認められて早期に釈放されれば、日常生活への影響も最小限で済む可能性があります。

起訴された後は保釈手続を速やかに行う

起訴後も勾留が続いてしまった場合は、保釈請求を行います。

保釈は、配偶者や親族、兄弟姉妹であれば請求可能ですが、保釈請求書の作成が必要となり、弁護士が行うことが一般的です。

保釈請求書には次のような内容を盛り込み、裁判所に提出します。

  • 保釈の条件を満たしていること
  • 示談の成立により、証拠隠滅や被害者への脅迫行為をするおそれがないこと
  • 保釈の必要性、被告人の家族の状況
  • 家族が身元引受人となり監督することで逃亡のおそれがないこと など

保釈請求が却下された場合も、保釈請求の却下に対して準抗告などを行うことが可能です。

このように弁護士に依頼することで、身柄が釈放してもらえるようにサポートしてもらえます。

釈放でよくある質問

ここでは、釈放についてよくある質問に回答します。

釈放後に警察から監視される?

基本的には、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されるため、釈放後も監視が続くというケースは少ないかと思います。

ただし、別の犯罪の捜査対象となったような場合は、捜査の過程で監視されることは考えられるかもしれません。

起訴後に保釈された場合も、基本的には警察などから監視されることはありません。

もっとも、社会的な影響の大きい事件などでは、例外的に警察が被告人を監視していたケースもあります。

釈放にお金はかかる?

起訴前の釈放であれば、お金はかかりません。

起訴後に保釈制度を利用する場合は、裁判所に保釈金を納める必要があります。

保釈金の金額は、個人によって異なりますが、相場は150万円ほどと言われています。

保釈のルールを破った際に没収されると困る金額が設定されます。

釈放に身元引受人は必要?

法律上は、釈放に身元引受人が必要であると定められているわけではありません。

しかし、釈放や保釈を認めてもらう上では、被疑者や被告人が逃亡や証拠隠滅、被害者にお礼参りをするおそれがないと、検察や裁判所の承諾が欠かせません。

家族などの身元引受人がいれば、生活を監督してもらえると評価され、釈放の判断に有利に働くことが考えられます。

身元引受人がいない場合は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと立証するのが難しく、釈放してもらえない可能性があります。

身元引受人は、同居している家族や親族になることが多いですが、会社の上司や友人でも可能です。

ただし、監督が期待できるという意味で、同居している家族や親族の方が望ましいでしょう。

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まとめ

ひとえに釈放といっても、釈放されるタイミングや条件などがあります。

一度逮捕されたり、勾留が続いたりしてしまうと、本人や家族の力だけで釈放してもらうのは難しいでしょう。

今後の人生に大きな影響が及んでしまう前に、刑事事件の実績がある弁護士を味方につけて、早期釈放を目指すことが重要です。

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