保釈とは|保釈請求から保釈決定までの流れを解説

「釈放」や「保釈」という言葉を聞いたことがあると思います。なんとなく同じなのかな?と思われる方が多いと思いますが、厳密には違います。

 

釈放は、逮捕や勾留、刑の執行による留置場や拘置所、刑務所などの拘束から解放されることをいいます。保釈は、起訴後の被告人勾留から一時的に解放されることをいいます。

 

刑事事件では、釈放と保釈は、解放されるタイミングや手続が異なります。この記事では

保釈と保釈金について、詳しく解説します。

 

保釈とは

保釈とは起訴された後の釈放のことです。起訴前の勾留中は認められません。

 

ここでは、保釈の概要や種類、条件について解説します。

 

保釈の概要

保釈は、一定の要件を満たした場合に、保釈金(保釈保証金)の納付を条件として、被告人(起訴された人)に対する身柄拘束(勾留)の執行を一時停止し、身柄を解放することです。

 

保釈の種類

保釈は以下の3種類に分けられます。

  • 権利保釈
  • 裁量保釈
  • 義務的保釈

 

順に解説していきます。

 

権利保釈

権利保釈とは、保釈の請求があった場合、刑事訴訟法第89条1号から6号に該当しない場合に保釈するものです。

 

刑事訴訟法第89条

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

 

引用:e-Gov法令検索

 

権利保釈を得るためには厳しい条件が課されています。この中でも主に「逃亡のおそれ」・「罪証隠滅のおそれ」がある場合に権利保釈が認められないケースが多いです。

 

裁量保釈

裁量保釈とは、前記刑事訴訟法第89条の1号から6号に該当する場合(権利保釈が認められない場合)でも、裁判所の裁量により保釈するものです。

 

刑事訴訟法第90条

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

 

引用:e-Gov法令検索

 

裁量保釈が認められるには逃亡、罪証隠滅のおそれがないことを示す特別な事情が必要です。主な事情は以下のとおりです。

 

健康上の不利益 持病が日に日に進行し、留置場や拘置所では対応できないほど悪化している場合

(ただし、留置場・拘置所での医師による処置で対応できる程度の持病は該当しない)

経済上の不利益 被告人が会社経営者で直ちに保釈されないと事業の継続が困難になって会社が倒産し、家族や従業員の生活に影響を及ぼしかねない場合
社会生活上の不利益 身柄拘束が継続すると、退学処分や懲戒解雇処分を受けるなど、社会復帰後の生活に影響を与える場合
その他の事情 高齢の親、幼児など養育すべき者がおり、被告人が保釈されなければこれらの者が生活出来なくなる場合

 

義務的保釈

義務的保釈とは、身柄拘束が不当に長くなった場合に、被告人・弁護士からの請求、あるいは裁判所による独自の判断で保釈するものです。

 

刑事訴訟法第91条

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

 

引用:e-Gov法令検索

 

実務上、義務的保釈の例は多くありません。

 

保釈請求できる人

保釈請求は誰でもできるわけではありません。申請できる人は以下のとおりです。

  • 被告人、またはその弁護士
  • 父、母などの法定代理人
  • 保佐人
  • 配偶者
  • 直系の親族もしくは兄弟姉妹

 

保釈請求をするには、裁判所に「保釈請求書」という書類を提出します。ご家族が作成して提出することもできますが、まずは弁護士に依頼をして、作成・提出してもらうのが良いでしょう。

 

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保釈の条件

保釈請求がすべて認められるとは限りません。保釈には一定の条件があります。

 

主な条件は以下の通りです。

  • 一定以上の罪を犯していない
  • 以前に一定以上の罪を犯していない
  • 常習性がない
  • 罪証隠滅のおそれがない
  • 被害者や関係者に危害を加えるおそれがない
  • 住居などが決まっており、逃亡のおそれがない

 

保釈の取消

保釈請求の結果保釈されたとしても、次の条件に当てはまる場合は保釈が取り消されます。

 

刑事訴訟法第96条

第九十六条 裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。

一 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。

二 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

四 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。

五 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

 

引用:e-Gov法令検索

 

保釈が取り消されると、保釈金の一部または全部が没収されます。保釈請求をする場合は、弁護士と本人、および家族の間で慎重に協議し、納得したうえで行いましょう。

 

保釈金とは?金額の基準と相場について

「保釈金」という言葉を耳にしたことがあると思います。

そもそも保釈金とはどういったものなのでしょうか。

ここでは保釈金について解説します。

 

裁判所は被告人の出頭を確実にする必要性に応じ、被告人の資産等もふまえ、保釈金を高めに設定します。

 

保釈金の概要

保釈金(保釈保証金)とは、被告人が起訴後、保釈を認めてもらうために裁判所に納める金銭です。裁判所に「支払うお金」ではなく「預けるお金」です。保釈の条件に違反がなく、裁判が無事に終了すれば全額返却されます。

 

被告人に逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合や、死刑になる可能性が高い事件では、例え高額な保釈金を納めようとしても、認められません。

 

保釈金の相場

以下の場合における保証金の相場は150万円程度です。

  • 初犯や比較的軽微な罪である
  • 逃亡・罪証隠滅のおそれがない
  • 執行猶予が見込める事案

 

ただし、被告人の資産状況や、罪証隠滅や逃亡のおそれなどがある場合は高額になります。

 

保釈金を準備できない場合に利用できる制度

保釈金が高額ですぐに準備できない場合は、保釈保証金立替制度の利用を検討しましょう。

 

ここでは以下2点について解説します。

  • 日本保釈支援協会
  • 全弁協の保釈保証書発行事業

 

 

日本保釈支援協会|保釈保証金立替システム

保釈保証金立替システムとは、保釈金を準備できない方に代わって、一般社団法人日本保釈支援協会が保釈金を納付(立替)します。

 

利用できるのは被告人以外の方(被告人のご家族など)です。立替には立替手数料と事務手数料がかかります。立替金額の上限は500万円です。立替手数料、事務手数料は立替金額によって異なります。

 

立替期間は2ヶ月間です。その後は2ヶ月毎に延長可能ですが、始めに支払った額と同額の立替手数料、事務手数料を支払います。ただし、延長してから1か月以内に支払った場合は、延長手数料の半額が返金されます。

 

保釈保証金立替システムを利用する場合は、弁護士が手続を進めてくれるので、よく相談しましょう。

 

詳細は下記をご参照ください

一般社団法人日本保釈支援協会:保釈保証金立替システム

 

保釈保証書の提出

保釈を得るためには保釈金の納付が必要です。ただし、被告人以外が「保釈保証書」を提出することで保釈金の代わりにできます。

 

刑事訴訟法第94条

第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。

②裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。

③裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。

 

引用:e-Gov法令検索

 

上記の「保証書」が保釈保証書です。

 

保釈保証書は、弁護士の申込により全弁協(全国弁護士協同組合連合会)が発行します。万が一の際の保釈金の支払いは全弁協が行います。

 

保釈金が用意できなければ、保釈が可能な被告人でも身柄は拘束されたままです。弁護士個人ではなく、全弁協がリスクを負うことで、保釈金を準備できない被告人にも平等に保釈の機会が与えられます。

 

ただし、資産がまったくない方の場合は申込ができません。手続は弁護士がしてくれるので、よく相談しましょう。

 

詳細は下記をご参照ください。

全国弁護士協同組合連合会:保釈保証書発行事業

 

保釈請求から保釈金還付までの流れ

保釈請求から保釈金還付までの流れを7つのステップにわけて解説します。

保釈金の準備

保釈金の額については以下の規定に基づき裁判所が金額を決定します。

 

刑事訴訟法第93条

第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。

② 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。

③ 保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。

 

引用:e-Gov法令検索

 

弁護士が事前に裁判所に代納付の許可を得て、ご家族等から保釈金を預かり納付します。

 

保釈金は、保釈許可決定が出た後で弁護士に預けても良いのですが、振込手続きがその分遅くなり、釈放も遅くなる可能性があります。

 

保釈金が高額ですぐに準備できない場合は、前述した保釈保証金の立替制度を検討しましょう。

 

保釈申請

被告人、またはその弁護士が「保釈請求書」を作成し、裁判所に申請します。ただし、被告人本人は勾留中のため、弁護士に提出してもらうケースがほとんどです。

 

保釈請求書に記載する内容は、主に以下の項目です。

  • 被告人の住所・氏名・生年月日
  • 請求の趣旨
  • 請求の理由
  • 添付資料 など

 

添付資料とは、事前に示談交渉が成立している場合の示談書の写し、身元引受書、上申書等です。

 

裁判官面接・検察官意見

保釈可否の決定を出す前に、裁判官が検察官の意見を聞きます。その際、「不相当」と回答された場合は、その理由も書面で提出されます。ただし、その書類を閲覧できるのは保釈可否の判断がされた後です。

 

弁護士が希望すれば、担当裁判官と面接できます。その際、保釈金についての話が出れば、保釈許可の決定が下りる可能性が高いでしょう。

 

保釈許可決定

裁判官は、検察官意見および弁護士との面接を行ってから、保釈を認めるかどうかを決定します。その際に、保釈金の金額と保釈後の行動制限などについても合わせて決定します。

 

保釈許可決定が下りると、弁護人が裁判所の担当部署で以下の2点を受け取ります。

  • 保釈許可決定書
  • 保管金提出書

 

保釈請求の結果に対して、「準抗告」により不服申立てができます。この準抗告は、弁護士側は保釈請求が不許可の場合、検察側は保釈請求が許可された場合と、どちらの側からも申立てができます。

 

準抗告が申立てされると、担当裁判官以外の3人の裁判官があらためて保釈について判断します。

 

保釈金の納付

保管金提出書には、保釈金額が記載されています。あらかじめ準備しておいた保釈金を裁判所へ納付します。

 

保釈金の代わりに以下のものが認められる場合があります。

  • 有価証券
  • 裁判所が適当と認めた被告人以外の者の差し出した保証書

 

出納課で保釈金の納付を確認すると、以下の2点が弁護士に渡されます。

  • 保管金受領証書
  • 保釈許可決定書(領収印が押印されたもの)

 

保釈金に納付期限はありませんが、早く保釈されるように速やかに納付します。

 

保釈金の納付は、裁判所に申告しておけば遅い時間でも対応してもらえます。保釈決定が出ると、遅い時間でも釈放されます。電車がない時間の釈放の場合は、タクシーを利用するかご家族等に迎えにきてもらいましょう。

 

保釈

保釈の担当部署に保釈許可決定書を提出すると、検察庁に報告がなされます。その後検察庁から留置施設に釈放の指示が出され、保釈されます。

 

納付から釈放までは2~3時間かかることが多いです。荷物が多いときは身元引受人等が弁護士と一緒に迎えに行くのが良いでしょう。保釈後の注意点などについても、詳しく説明してもらえるので、弁護士と一緒だと安心です。

 

保釈後は、通常の生活ができます。ただし、裁判所から条件が出されている場合は、必ず守らなければなりません。万が一違反すると、保釈決定が取り消され、保釈金も戻ってきません。

 

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保釈金の還付

裁判所に預けた保釈金は、保釈中の条件に違反しなければ、判決後に返金されます。

 

多くは弁護士を選任し保釈申請等の手続をしてもらうので、弁護士の指定口座に返金されます。弁護士費用などの支払いが終わっていないときは、そこから精算してもらえる場合があります。

 

まとめ

保釈を得るためには、まず裁判所に対する保釈請求が必要です。

しかし、保釈請求書の作成や保釈金の準備等、裁判官被告人自身やご家族だけで対応するのは難しい面もあります。

刑事事件の経験が豊富な弁護士のサポートが不可欠です。

 

保釈に関するご相談は、ネクスパート法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

 

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