過剰防衛と緊急避難とは?正当防衛とどう違う?
正当防衛という言葉は、日常生活の中でも聞くことがあり、なんとなくの意味がわかっているという方も多くいらっしゃると思います。
この記事では、正当防衛と似ていて混同しやすい過剰防衛と緊急避難について解説していきます。
目次
正当防衛とは
まずは、正当防衛についてです。
正当防衛とは急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為のことです。
もう少し詳しく言うと、現在まさに自分やまわりの人の命や財産を侵害されている、あるいはそれが間近に迫っている状況の場合、防衛の意思があり、防衛のために必要かつ相当である行為であれば、その行為は犯罪として罰せられないというものです。
- ①急迫性があるか
- ②不正の侵害であるか
- ③防衛の意思があったか
- ④防衛行為の必要性があったか
- ⑤防衛行為の相当性があるか
これらの条件を満たすと正当防衛と認められます。
正当防衛についての詳細は下記の記事でご確認ください。
過剰防衛とは
それでは過剰防衛とはどういうものなのでしょうか。
防衛の程度を超えた行為を過剰防衛といいます。先述した正当防衛が成立する条件の中の、⑤防衛行為の相当性があるかどうかという条件を満たさないと過剰防衛となります。
正当防衛が成立すれば、犯罪として罰せられることはありませんが、過剰防衛の場合には、刑を減軽、または免除することができると定められています。
緊急避難とは
緊急避難は、法律(刑法)で次のように定められています。
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
この法律の条文を3つにわけて確認していきましょう。
①自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため
自分だけでなく、他人の法益に対する生命、身体、自由又は財産に対する危難の場合でも緊急避難は成立します。
現在の危難とは、現に存在しているか、または間近に迫っている法益に対する侵害又またはその危険のある状態のことです。
その危難を避けるための行為であることが必要です。
②やむを得ずにした行為
やむを得ずにした行為とは、危難を避けるために必要な唯一の方法であって、他に方法がなかった、ということです。
③これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合
この行為によって侵害された法益が、免れた危難の法益を超えていない必要があります。価値の小さい法益から避けようとした行為が、それよりも大きい法益を侵害することになってしまってはいけません。
これらの条件が満たされ緊急避難と認められれば、処罰されることはありません。
ただし、避難した行為がその程度を超えた場合には、刑を減軽、または免除することができると定められています。
正当防衛とどう違う?
過剰防衛と正当防衛との違いは、防衛行為の相当性があるか否かというところです。防衛行為の相当性があれば正当防衛が成立し無罪となり、相当性がない場合には過剰防衛となり刑の減軽、または免除にとどまります。
緊急避難と正当防衛には、正対正か、正対不正か、という違いがあります。
緊急避難は正対正、つまり侵害してしまった自分も正当な行為をしており、侵害されてしまう側も正当な利益を侵害されたということになります。
一方で、正当防衛の場合には、相手からの不正の侵害に対して反撃をするものです。そのため、正対正となる緊急避難の方が正当防衛よりも成立するための要件が厳しくなっています。
まとめ
日常生活の中で、いつ何時事件や災害に巻き込まれてしまうかは予測がつきません。正当防衛や緊急避難が成立すると思っていた行為でも、すべての要件に該当するか、またその客観的な証拠があるかによって正当防衛や緊急避難が成立しないことも考えられます。
正当防衛や過剰防衛、緊急避難に当てはまるかの判断は大変難しいケースもあります。
個別の事情については弁護士に相談することをおすすめします。