結婚していないパートナーが浮気した場合の慰謝料請求の可否

  • 最終更新日: 2024.02.16

結婚していないパートナーが浮気をしていた場合、不倫と同様に慰謝料請求ができるのではないかと考えていませんか?

結論から申し上げると、法律上結婚していないパートナーの浮気に対して慰謝料請求をすることはできません。
しかし、例外的に慰謝料請求ができる場合もあります。

そこで、本記事ではどのような場合に、結婚していなくても浮気で慰謝料請求ができるのかについてご紹介いたします。

結婚していないパートナーが浮気していても原則として慰謝料請求はできません

不倫と異なり、結婚していないパートナーが浮気した場合、原則として慰謝料請求はできません。

なぜなら、この場合はあなたの法律上保護される利益が侵害されたとは言えないからです。

慰謝料請求をするためには、あなたの法律上保護される権利や利益が侵害されている必要があります。
結婚している夫婦の一方が不倫をした場合、他の配偶者は婚姻共同生活の平穏や妻としての権利が侵害されます。これらの利益や権利は法律上保護されているため、損害賠償請求ができるのです。

しかし、結婚していない場合はこのような権利がないため、法律上保護された権利や利益がなく慰謝料請求はできません。

慰謝料請求ができる例外的な場合

もっとも、例外的に慰謝料請求ができる場合があります。

それは、婚約関係にある場合内縁関係にある場合です。

婚約関係にある場合

婚約関係にあり、パートナーの浮気によって婚約破棄をせざるを得ない場合には、慰謝料請求をすることができます(最高裁昭和38年9月5日判決参照)。

あなたが慰謝料請求するには、以下の点を証明する必要があります。
① 婚約していたこと
② 婚約が正当な事由なく破棄されたこと

①婚約していたこと

東京地裁平成25年11月6日の裁判例は、婚約の成立について以下のとおり判断しています。

婚約は,将来夫婦になろうという男女間の真摯な合意があれば足り,特段の形式を要しないものと解される

最判昭38年9月5日の判例では、当事者が婚約をしたうえ、長期間にわたり肉体関係を継続した場合において、たとえその関係を両親兄弟に打ち明けず世情の習慣に従って結納を取り交わし、あるいは同棲しなかったとしても婚約は成立すると判断されています。

上記の裁判例から、特定の行為によって婚約が判断されるのではなく、婚約の有無は個別事情に応じて将来夫婦になろうという合意があればよいということになります。

以下の婚約の成立を認めた裁判例を参考にすると、次のような行為があれば、婚約があったと認められやすくなる傾向があります。

  • 結納
  • 婚約指輪の購入
  • 両家の顔合わせ
  • 結婚式場の予約
  • 第三者への報告など

当事者間の合意のみでは、婚約が成立していないと判断されてしまうこともあるため、客観的に婚約の合意があったことを裏付ける事実があると、①婚約していたことが認められやすいです。

【婚約の成立を認めた裁判例】

東京地裁平成25年11月6日
結婚の申込み、双方の親に結婚の意思を伝えた、結婚式場の下見・仮予約をした事実等を認定し、婚約の成立を認めた。

東京地裁令和4年6月22日
これからもずっと一緒にいてほしい旨を伝えられた、今後の生活を守る旨、お互いに支え合う旨のメッセージを受け取ったこと、お互いの名前・交際開始日が掘られた高価なペアリングをプレゼントされたことから婚約を認めた。

神戸地裁平成14年10月22日
原告及び被告は、互いにその両親や友人に対し、相手方を婚約者としてあるいは結婚を前提とした交際相手として紹介していること等を考慮し婚約を認めた。

②婚約が正当な事由なく破棄されたこと

婚約関係がパートナーの浮気を原因として破棄となった場合には、②婚約が正当な事由なく破棄されたといえ、慰謝料請求をすることができます。

この場合、あなたはパートナーが浮気をしていた事実によって婚約が破棄になったことを証明する必要があります。

この証明をするために有効な証拠としては、以下のものが挙げられます。

  • 婚約者が第三者とラブホテルに入っていく写真や動画、
  • 宿泊を伴う旅行をしたことや肉体関係に至ったことを内容とするメッセージなど

【婚約中の浮気により慰謝料請求を認めた裁判例】

内縁関係にある場合

内縁関係にある場合には慰謝料請求をすることができます。

内縁関係とは、婚姻関係にないため法律上は正式な夫婦ではありませんが、婚姻の意思を有して共同生活を営んでおり、社会的には夫婦と認められている関係をいいます。

慰謝料請求をするためには、以下の点をあなたが証明する必要があります。

  • 内縁関係があったこと
  • パートナーの浮気で内縁関係が解消されたこと

内縁関係が認められるためには、少なくとも次の事情が必要です。

  1. お互いに婚姻の意思があること
  2. 結婚している夫婦同然の共同生活を送っていること

上記aについては、結婚式を挙げている場合第三者に妻や夫として紹介している場合に認められやすいです。
bについては、一般的に3年以上同棲している場合、認められやすいです。

その他に内縁関係を証明する書類として以下のものがあります。

住民票

住民票を同じにし、続柄の欄に「妻(未届)」「夫(未届)」といった記載をすると内縁関係を証明する有効な証拠になります。

賃貸借契約

同居人の欄に「内縁の妻/夫」「妻/夫(未婚)」のように記載することで内縁関係を証明する有効な証拠になります。

健康保険証

健康保険法において被扶養者の配偶者の範囲は「事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」とされています。

そのため、一定の要件を満たすことで内縁の妻又は夫を健康保険の被扶養者にすることができます。よって、このような保険証は内縁関係の証拠として有効です。

【内縁が認められた裁判例】

東京地裁平成30年1月26日
同居期間が三か月であり、共同生活が短いこと、結婚式を挙げたのは被告の母が余命いくばくもなかったため、ウェディング姿をみせたかったことが動機であることを考慮しても、原告が被告にプロポーズをして被告がこれに応じていること、被告が上司に結婚報告をしていること、共に生活するマンションを購入して共同生活をしていること、結婚式や披露宴を行っていることを考慮し、結婚式後から内縁関係にあったと認定した。

東京地裁平成24年6月22日
同居期間が8年間であること、同居関係の維持・貞操義務の負担等の確認を求めたものとみるべき誓約書が存在したことから内縁関係の存在を認めた。

内縁関係が認められれば、婚姻関係にある場合と同様に内縁関係にある当事者は貞操義務が認められることになります。

そのため、パートナーとの浮気(不貞行為)を行った場合には貞操義務違反があり、あなたは慰謝料請求をすることができます。

【内縁関係中の浮気により慰謝料請求を認めた裁判例】

どうしても慰謝料請求をしたい場合に取り得る手段(婚約、内縁関係にない場合)

パートナーと婚約関係、内縁関係にないけれど、どうしても慰謝料請求をしたい場合にとりうる手段としてあげられるのは、当事者間で慰謝料を支払う旨の合意を行うことです。

応じてもらえる場合には、合意書を作成しましょう。

もっとも、相手に合意をしてもらいたいがために、「浮気していた事実をばらす」などと脅したり、暴行したりした場合、取り付けた合意は公序良俗(民法90条)に反して無効となります。

これらの行為は刑法上脅迫罪や暴行罪に該当する恐れがあり、刑事罰を受けてしまうこともありますので、違法行為を用いて支払いの合意を取り付けることはやめましょう。

まとめ

結婚していないパートナーが浮気をした場合、慰謝料請求をするためには上記のような婚約関係、内縁関係が必要となります。

パートナーとの関係が婚約関係や内縁関係にあたるのかについての判断は、法律的な知見が必要となることもあります。
関係性がはっきりしていても不貞があったとみとめられるためにどのような証拠を集めたらいいのか悩む方もいらっしゃるかと存じます。

ネクスパート法律事務所では浮気・不倫に関する相談を9,800件以上承ってまいりました。
内縁関係・婚約中のパートナーの浮気で150万円以上の慰謝料請求をご検討の方はぜひお気軽に当事務所までご連絡ください。

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